オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 製作編(1) 穴あけと仮組

Pre_Shassis_01.jpg
電池式プリアンプの製作に入る。本体ケースとしてリード社のP-1を選んだ。W=200、D=150、H=60で大きさはちょうど良い。そこにそのまま部品を取り付けて完成としても構わないのだが、少し見栄えのことを考えてフロントパネルを貼り付けることにした。厚さ4mmのアルミ板を新潟の業者に発注し、寸法指定して切断まで行ってもらった。

ホームセンターなどでもアルミ板は手に入るけど、さすがにt=4mmは切断も手強く、切り端が出ても使いようがない。なので素直に業者に発注したほうがいいと判断した。幅205mm、縦65mmの注文で、送料を入れても1000円以内。また何かあれば利用させてもらおうと思っている。だが、寸法指定の切断だけお願いしたわけなので、仕上げはこちらで行わないといけない。

金属用ヤスリで少しずつ修正し、できるだけ綺麗な角度と表面に仕上げていく。本体ケースの穴あけ作業と同様に、純然たる肉体労働であるがこういう作業は嫌いではない。ある程度仕上がったら、最後にコーナーに少しRを付けておく。これは、とがったままだと危ないので面取りを兼ねてRを付けるわけだが、最近の製品はどうも丸くなりすぎているものが多いような気がしてならない。

Pre_Shassis_02.jpg修正作業ができたら、#320くらいの紙ヤスリをかけて表面に少し傷をつけておく。これは本体ケースと接合するため。本体ケースはすでに塗装済みなので、接合部分の塗装は剥がしておく必要がある。#100くらいの紙ヤスリで短時間にてさくっと仕上げたい。今回は100円均一店などで販売している「メッシュヤスリ」を使った。塗装をすべて剥がせたら#320の紙ヤスリで研磨しておく。

金属と金属の接合は初めての経験でよくわからぬので、ネットで調べてなんだか使えそうな「セメダイン スーパーXクリア」の一番小さなものをホームセンターで購入した。接合する前に接着面の油脂成分を取り除いておく必要がある。万全を期してトルエン(シンナー)でしっかり拭いた後、だめ押しのつもりでランプ用工業アルコールで拭き、よく乾燥させてから接合に臨む。

接着剤の説明書をよく読み、接合部分の両方に薄く塗った後5~10分放置し、接合する。瞬間接着剤ではないのである程度動かすことができるようだ。修正しながら、クランプの用意をする。写真一枚目はフロントパネルと本体ケースを接合し、クランプをかけているところ。そこまでするか、と自分でもちょっと笑ってしまうけど、クランプとハタガネなど総動員してがっちりおさえるようにしている。

Pre_Shassis_03.jpg接着剤の説明によると「約1~2時間で動かなくなり、約24~48時間で実用強度に達します(23℃湿度50%)」とあるので、2日間放置しておいた。パネルと本体は別口で作業したほうがいいのかもしれないが、穴の寸法(位置)がずれてないかとか、そんなつまらぬ心配をするくらいなら、一気に穴をあけてしまいたい、というのが本音である。2日後、クランプを外してみると、もう手では引き剥がすことのできぬくらいに接着されていた。

穴あけ位置はCADで作った図面をPDFにして印刷、これをケースに貼り付けてケガキを行う。何度やっても中心は微妙にずれるもので、あまり神経質になる必要はないと思う。その代わり、仕上げのラインをはっきり描いておきたい。キリで印をした(あるいはピンバイスで当たりを付けた)後、ハンドドリルに2mm程度のドリルビットを取り付け、穴をあける。後はステップドリルやテーパー・リーマーを併用して穴を広げ、部品を取り付けながらヤスリで仕上げていく。

それにしても、プッシュスイッチのために10φの穴を7個、正確な位置に、しかも綺麗に穴あけするのは至難の業である。どうせ中心はずれるものだからくよくよしない。ずれた穴を含めた最小の同心円を描き、手作業でヤスリを使って穴を広げる。真円に近いものができたら、改めてステップドリルで穴を広げていく。部品を傍らに用意して、当てはめながら穴を開けすぎないように気を付ける。写真二枚目は、穴あけ作業を終えたところ。

Pre_Shassis_04.jpg仮組をしておかないと、後で部品が収まらないと苦労することになりかねない。今回は多連プッシュスイッチを使用した事情もあって、ケースを天地逆に使用することになった。天板にすべてを取り付けた吊り下げ式にすると天地逆を回避できるが、その場合パネルのデザインを水平反転しなければならない。苦渋の決断だが、ケースを天地逆で使うのが手の打ちどころと判断した。もう少しケースを慎重に探すべきだったのかもしれない。

なお、これは重要なことで補足しておくが、拙機は0.8tのケース本体に4tのアルミ板を貼り付けたので、合計4.8tになり、可変抵抗器やロータリースイッチを取り付けるのが難しくなる。ねじ部は長さに限度があるからで、実はロータリースイッチの本体を少し削って(!)調整したことを正直に書いておきます。このような無謀かつ野蛮な行為は、本当はあってはならぬことであるのは言うまでもない。

フロントパネルの厚さは最大でも4mm未満、できれば3mm以内に収めるべきで、どうしても肉厚のパネルが欲しい場合は調節ノブの外径に合わせた穴をあけ、落とし込みにする必要があるでしょう。そして調節ノブを固定するレンチとの兼ね合いもあるのだから、肉厚パネルは完全に接着してしまうのではなく、着脱可能な方法で本体ケースに固定するのがベストでしょう。


【付記】
● ドリルで穴をあける際の切削油、使うと使わないではかなり作業効率に違いがあります。ホームセンターでそんなに高くない(というかあっけないほど安い)値段で売っていますので、ぜひ使ってみることをお勧めします。

もう一つは手袋。ヤスリをかける時など、手袋をはめると作業効率が上がります。えっ、そんなバカな、と仰る方は一度実行なさることをお勧めします。ただの「軍手」でも構いませんが、滑り止めが付いた手袋だと、一層作業効率が捗ります。サイズはできるだけフィットしたものがいいのは言うまでもありません。

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オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 配線パターン編

PreUniversal_01.jpg
遅れに遅れている電池式プリアンプだが、面倒なんだから仕方がない。で、今どこでもたもたしているかというと、ユニバーサル基板の配線である。けっこう部品があるので、以前作ったパワーICを使ったアンプのように、とにかく部品を乗せてしまってダイレクト配線だ、みたいなわけにはいかない。入念に行かないと、誤配線をしてしまったら目も当てられないことになってしまう。ここは慎重に、かつできるだけ簡単に行こうと思う。

紙に手で実態配線図を描くのがいちばん手っ取り早いかもしれないが、今はいろいろツールもそろっているので、今回はユニバーサル基板配線支援ソフト(?)のPasSを導入してみた。ほぼ原寸通りの部品配置をPC上で行うことができる便利なソフトで、上手に使えば配線パターンも自動で行ってくれる優れもの。今回はすべてパターンにするのではなく、所々例によってダイレクト配線も使うので、PasSの自動配線テクノロジーは使わない。

黄色の箱型フィルムキャパシターはPasSの部品ライブラリーにないので自作するほかない。といって大げさなものではなく、マニュアルに従ってWindowsのPaintを使って作るだけなのでわりとすぐにできる(?)と思う。後は、部品を適当に置いて、最も合理的な配置にするだけなんだけど、これが結構難しい。小さな基板に無理やり詰め込んだ感じがしないでもない。これは、家にある余った基板を使ったからこうなっただけで、こんな小型基板に無理やり詰め込む必要はないと思う。

PreUniversal_02.jpg配置ができたら、PrtScrでクリップボードに送り、Paintを開いたらペースト、必要な部分をトリミングし、ビットマップ形式(.bmp)で保存し、それをInkscapeにインポートして配線を考える。難しく考えず、とにかく結んでしまえ、という方式で進めていこう。ユニバーサル基板の基本は水平、垂直、斜め45度で配線することだが、被覆線を使えば自由に配線してかまわない。ユニバーサル基板だけ使って、あとはすべて被覆線で配線するという方式のほうが、ふだん基盤を使わない真空管アンプ製作者には向いているかもしれない。

とりあえず配線して、しばらく眺めているうちに、無駄な部分や冗長な部分が見えてくるので少しずつ修正していく。部品の配置転換をする必要が生じたなら、もう一度PasSに戻って配置転換し、Inkscapeに戻して作業を進める。焦る必要はないんだぞ、とか思いながら進めるが、やはりけっこう手間がかかって面倒くさいものである。ちなみに、配線をする時はレイヤーをかけることを忘れてはいけない。元画像と配線を別にしておける、これがInkscapeを使うメリットである。

RugPlatePattern.jpg画像一枚目が、一応配線を済ませたもので、こういうふうに上から見てこことここを結ぶんだ、とした方がわかりやすいんじゃないかと思う。これを、すべて選択して水平反転(鏡像化)し、元画像の不透明度を下げたものが画像二枚目。これ、要するに裏側から見たものに相当するわけで、裏から見たらこうなるから、ええと……とか一切考えずに済むわけです。こういった一連の作業がPCを使うとすぐできるので非常に便利である。

一方、トーン回路の平ラグ配線パターンなどは、PC上でやるより紙とペンでやったほうが早い。用途に合わせて臨機応変に望みたい。これも、「まずは結んでしまえ式」でパターンを描き、何度か繰り返しているうちに無駄が省けて合理的なパターンになってくる。トーン回路の入出力端子は10か所あるので、とりあえず5pの平ラグで始めたが、最終的には4pの平ラグ板でじゅうぶん間に合うことが確認できた(画像三枚目)。これを確認してから、日本橋で買い物をするわけです。


【付記】
● 画像は例によって最終形ではなく、途中のプロトタイプで、間違いがあるのがわかります。じつにのんびりとしか進めない電池式プリアンプですが、目的に能力が追い付かないのだから仕方ありません。絶対、2月中には完成までもっていくぞ、というつもりでやってはいるのですが……


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オペアンプたった1個の電子式プリアンプ パネルデザイン編

PreDesign_01.jpg
部品があらかた揃ったなら、今度はフロントパネルとバックパネルのデザインに移る。なんとなくQUAD22とかQC2みたいにしようと考えたけど、本格的にするのなら、あのRが付いたパネルをフロントパネルに貼り付けないといけない。できぬではないが、非常に面倒くさい。だからこの際、あまりQUADに似せようと奮闘するのをやめ、それなりに、なんとなく雰囲気が似ているくらいで止めておこうと思う。

コントロール・ノブの大きさを把握し、CAD画面上に適当に配置してみる。ケースも、手に入るものでそれなりに使えそうなものから寸法を割り出しておく。あまり神経質にならずに、本当に適当に配置すればよい。それで、後から動かして修正すればいいだけの話。画像一枚目の上がフロントパネルで、下がバックパネル。CADを使ったのは、そのほうが寸法指定とか角度指定がやりやすいからである。

CADだけですべてできぬわけではないのだが、CADは文字入力と全体のデザイン的配置が苦手である。だからこれをベースにして、Windowsのアクセサリー「ペイント」などを利用してビットマップ形式で保存し、それをドロー系ソフト(ベクター画像ソフト)にインポートする。ドロー系ソフトとしてAdobe社のIllutratorが有名であるが、たかが自作プリアンプのためにIllutratorを購入するなど到底できないので、フリーソフトのInkscapeを使うことにした。

PreDesign_02.jpgドロー系ソフトにしたのは、縮小・拡大しても画像の解像度に変化がないからで、ペイント系ソフトを使うのなら、原寸大の画像を作製すればよい。要するに、自分でシルクスクリーン印刷の製版をするのであれば、ソフトは何を使っても構わない。CADで描いた図の上にレイヤーをかけ、レイヤー上に直線とか文字を配置していったのが画像二枚目。CADの元画像がレイヤー越しに透過しているのでなんだか薄汚く見えているのがわかると思う。

結局、アンプのフロントパネルに必要なのは、コントロール・ノブ周辺の文字やちょっとした直線だけなので、すべてデザインが済んだなら、元画像を削除してレイヤーを統合、そして一応完成ということになる。画像二枚目のパネルデザインをご覧になると、なんだかバランスが悪いと感じられると思うが、これは最終形ではなく、プロトタイプなのでこんな画像になっているとご理解いただきたい。これを、少しずつ移動したり、デザインを変更したりして最終的な形に持っていくつもりである。

フロントパネルとバックパネルのデザインができたら、シルクスクリーン印刷の製版をしないといけないが、それと並行して製作編に入ってもいいんじゃないかと思う。本体ケース(シャシー)の穴あけとか、部品の仮組、それが済んだら本体ケースの塗装になる。塗装が済んだ後で、最大の難題であるフロントとバックパネルのシルクスクリーン印刷に入り、それができたら組み立て最終と音出しになるんだけど、たぶん今年中にはできないんじゃないかと思う。


【付記】
● フロントパネルのデザインは思ったより難航しています。何しろ、ずぶのど素人が使い慣れぬドロー系ソフトを何とか使って、やっているわけですからね。はてさて、本当にできるのか、わからなくなってきましたよ。


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オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 部品調達編

Battery_Pre_Parts01.jpg
電池式プリアンプの回路を煮詰めたら、次は部品調達にかかろう。今回の最大の難点と思われる多連プッシュスイッチが、発注した業者から届いた。11月の初めごろに発注したから、納期は3~4週間といったところ。写真一枚目がその現物だが、ボタンが7個並んでいる。1~3の3連で入力切替、4~6の3連はモード切替、7番目は電源スイッチとLEDに使う予定である。送料抜きで約4000円ほどかかってしまった。おそらく最も高くついた部品になるだろう。

このスイッチ、一つのボタンに6つの端子が付いている。縦に2回路並んでいるようで、回路計の導通で調べてみたところ、開放時には手前と中央に導通があった。押し込んでみると、中央と奥に導通がある。だからこれは、スイッチを押して回路の選択にも使えるが、オンとオフで信号の切替もできる、ということだろう。つまり、手前片側3端子をすべて直列で配線すると全開放時には第4番目の入力端子として使える。具体的な運用例としては、店で全開放時には有線放送になり、どれか一つを押すと、それが選択されて有線放送は消える、という感じだろうか。

これをモード切替に適用すると、通常いじる必要のない「ステレオ再生」をそれこそ全開放に設定し、どうしても必要な時だけボタンを押す、というふうにすれば、現在3個あるスイッチを2個に軽減できたわけである。まあ、これも、買った後で調べてわかったことであって、発注するときにはよくわからない感じだったのだ。だからもし、次に買うことがあれば、そんなふうにしたらいいんじゃないかと思う。いいアイディアは、常に遅れてやってくる、というのが私の場合、なんだか定番になっているような気がする。

マスターボリュームにはアルプスのRK27型2連可変抵抗器を使った。これは6463シングルに使うつもりだったが、スペースの関係上、使えなかったので今回登場してもらうことにした。基板用ではんだ付け端子がないけれど、クリックつきで高級感がある。バランス調整用はアルプスのRK163型(MN)、トーン調整用も同社のRK163型(C)を、それぞれ三栄電波の通販で求めた。三栄電波ではRK27型の特注も受け付けているようなので必要な人は利用すればいいと思う。

調整つまみ(コントロール・ノブ)も今回は通販で求めた。サトー・パーツのモールド型ノブで、高級感がある金属製ノブを避け、どことなく古典的な雰囲気を探ってみた。サトーやLEXのほかにマーベル社のつまみがあって、これは製品紹介のページを見ているだけでうっとりしてしまうほどのものだが、マーベル社のつまみを扱っている店が少なく、同社でも個人販売をしていないのが残念だ。アルプス電気で一部取り扱っているようだけど、とても見辛くて、本気で売る気があるのかどうか、疑問を感じるほどだ。

Battery_Pre_Parts02.jpg主だった部品を通販でもとめたら、後は大阪日本橋の電気街で必要な電子部品を買い求める。シリコンハウス共立で「低電圧単電源のオペアンプを探しています」と伝えると、店員がちょうど良い物を見繕って勧めてくれた。TI / バーブラウンのOPA2350というもので、これで500円以下のオペアンプ。ついでにアルプスのロータリースイッチ(3回路4接点、ノン・ショーティング)を買い求めた。ステレオで3系統の出力だから2回路3接点でいいのだが、アルプスのこのシリーズには存在しない。

アルプスのロータリースイッチの全製品一覧を見ると、別のタイプで2回路3接点のものがある。ショーティング型で、入力信号の切替にはそれがちょうどいいかもしれないが、負荷や電源電圧の切替には使いたくない。今回買い求めた製品も、たぶん一時的に生産中止になっていたものではないかと思う。デジットのウェブログに「アルプスのあれが帰ってきた」とあるのを見て、買うことができた。大阪日本橋でアルプスのロータリースイッチを買うのなら、シリコンハウス共立かデジットに行くといいと思う。

残るはCR類であるが、いつも千石電商で買うようにしている。ここは、いくつも仕切ったトレイを用意していて、抵抗器の値ごとに区別しておくと、包装時に区分けしてくれるので使う時に便利なのだ。他の店だと、すべて一つの袋にじゃらっと入れるだけ。キャパシターはフィルム系だったらなんでもいい(おいおい)ので、見た目で小さいものを選んだ。電解キャパシターは耐圧10Vのかなり小さなものを選び、抵抗器は1本5円のカーボン抵抗にした。いずれもオーディオ用を避け、汎用・産業用を選択した。

プリアンプの本体ケース(シャシー)はまだ選んでいない。調節ノブと多連プッシュスイッチが揃わないとフロントパネルのデザインはできないし、多連プッシュスイッチとユニバーサル基盤、平ラグがどれくらいの空間を必要とするかで決まるから、箱はそれらが決定してから最後に決めることになるだろう。少しずつ完成に近づいてはいるのだが、まだ最大の難点、フロントパネルの印字をどうするか、これでかなり悩むことになりそうな気がしている。


【付記】
● 電池式プリアンプ、さくっと作ってしまいたいものですが、なかなかそうも参りません。慌てず、あきらめず、少しずつ進めていくしかなさそうです。部品調達は、たいてい一度では終わらぬもので、何かちょっとしたものを買い忘れていたり、部品表に書き込むのを忘れていたりするものですね。どのみち、また何度か日本橋に行くことになりそうです。


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オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 構想・設計編

BatteryPreAmp_Design_Original.jpg
このところ、JBLのD130で楽しく聴いているが、音源や状況によってはもう少し高域・低域ともに欲しいなあと思うこともある。たとえば夜遅く、音量を絞っているときなど、高域と低域が聴こえにくくなることがあるし、加齢とともに高域が聞こえにくくなっていくのには逆らえない。そんなことから、トーン・コントロールの付いたプリアンプが欲しいなあ、と思っていた。気に入ったプリアンプが市場にないのなら、例によって自分で作るしかあるまい。

近頃はどういうわけか入力切替と音量調節だけのプリアンプが幅を利かせており、それ以外の機能は「不要な、音を悪くするアクセサリー」と考えられている風潮がある。たしかに、必要以上に接点を増やすのは良くないだろうし、低域・高域ともに伸び切って左右差がほとんどないスピーカーで聴くならバランス調節もトーン・コントロールも不要、となってもおかしくない。それはそれでいいだろう。だが、私(乙山)が自分用に使うプリアンプはそうであってはならない。

トーン・コントロールは上述の理由から必ず付いていないといけないし、バランス調節も必要である。たとえば、ヴィンテージ・ユニットを購入した場合、必ずしも左右の音圧が一致しているとは限らないし、聴く側の両耳がいつまでも健全であるとも限らぬのである。どうしても欲しかったヴィンテージ・ユニットが一個しかなく、とりあえずモノラルで聴いているけれどちょっと他の物と合わせてステレオで聴きたいこともあるだろう(ないない!)。

最後のはちょっとこじつけっぽいけど、気の利いたプリアンプや本当のプロ機にはバランス調節が付いているものだ。それと、ステレオ/モノラルのモード切替もあってほしい。例えば、上述のように、どうしても欲しかったヴィンテージ・ユニットが一個だけある場合、モノラル再生したくなる。現在、モノラル音源のCDをかけると左右から同じ音が鳴って、真ん中あたりに音が集まるようになっているけれど、あれは本当は一本のスピーカーだけで聴いたほうがいいような気がする。

それに、たとえば245のナス型管とかシーメンスのEdなんかが偶然一本だけ手に入ったら、二本揃うのを待つよりモノラルのパワーアンプをこしらえたくなるんじゃなかろうか。だから最新のステレオ音源を、わざわざミキサー回路を通じてモノラル化し、それをモノラルのアンプ、一本のスピーカーで聴きたいことだってある、と思う(ないか)。モード切替はモノラル(左)/ステレオ/モノラル(右)と万全に備えたい。リバースはさすがに必要ないと思う。

これはあってもなくてもいいけれど、あると便利に思うのは出力切替。真空管アンプ好きの人なら何台もアンプを持っているはずだし、スピーカーもメイン機とサブ機があったりするんじゃなかろうか。システム自体が何系統もある人はいいけれど、システムやスピーカーのセレクターを使っている人もいるんじゃないかと思う。だったら、プリアンプで出力切替をしたほうが話が早いと思うのは私だけだろうか。

というわけで、入力切替、音量調節、バランス調節、トーン・コントロール、モード切替(と出力切替)を備えたライン専用プリアンプを構想している。で、これを真空管式で本格的に作るのではなく(おいおい)、オペアンプを使って電池式でできないだろうかと考えた。なんでそうなるんだ、という声が聞こえてきそうだが本気である。以前、パワーICを使って0.4W電池式アンプを作った際、電池式っていいもんだなあ、とつくづく思ったのである。

それにスピーカーも100dB超の高感度で、プリアンプでノイズを発生させると厄介なのである。多分、ラインレベルだったらそんなに心配することはないと思うが、何しろこちらはずぶのど素人である。どこでどんな間違いをしでかすかわからない。真空管式だとどうしても電源トランスを導入せねばならず、下手をするとハムノイズやその他ノイズを出してしまいかねない。ここは、安全かつ安心、しかも安価ということなしのオペアンプでいきたい。

通常オペアンプは正負電源を用意するのが建前だが、低電圧の単電源で使える「レール・トゥ・レール」仕様のオペアンプがある。これだったら電池駆動も可能だし、レール・トゥ・レールのオペアンプは電源電圧付近までフルスウィングするので出力電圧もじゅうぶんである。具体的には単3電池×3の4.5V電源の場合、およそ4V(p-p)、1.4V(rms)の出力電圧を見込める。利得も30~40dBはふつうに稼げるので、利得の面でもおそらく問題はないだろう。

実際に運用するとなると、トーン回路はCR型かバクサンダール型になるわけだが、前者の場合ヴォルテージ・フォロワー(バッファー)→トーン回路→アンプ回路となり、後者も反転回路になるゆえもう一つの反転回路が必要で、いずれにしてもオペアンプはデュアルで2個、シングルだと4個必要である。電池式だからできるだけ素子の数を減らしたいところである。デュアルオペアンプを使い、非反転回路の帰還部分にCR型トーン回路(可変抵抗はC型)を挿入すれば、オペアンプたった1個でなんとかなるのではないか。

オペアンプたった1個の電池式プリアンプ。ううむ、このあっけなさ、なんだかQUAD22を思わせる雰囲気じゃありませんか。QUADのピーター・ウォーカー氏が現在いたとしたら、やったかもしれないなあ、なんて一人で勝手に想像して楽しくなった。この際だから、外見もQUADにどことなく似たような感じにできればいいなあ。実際に作るのも楽しいけれど、こんなふうに構想している段階が一番楽しいのかもしれない。だけど本当にできるんだろうか。


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【付記】
● QUADみたいにするのなら、ぜひとも使いたい多連プッシュスイッチ。どうやらそれが今回の最大の難題になりそうな気がしてきました。多連プッシュスイッチが入手できぬ場合、ふつうのロータリースイッチを使うしかないのですが、それも近頃は良品が少なくなってきたようです。マイクロ・コンピューターで制御したセレクターもあるのでしょうが、電池式のこともあり、ここは電源の要らぬ機械式で行きたいところです。

もう一つの難所、それは前面パネルの印字です。インスタント・レタリングが昔はたくさんあったのですが、いまは少なく、シルク・スクリーンで行うしかなさそうです。原稿を作ってシルクの版を焼き、そして印刷するのですが、この工程が面倒です。しかも一回だけの印刷で……透明フィルムに反転して印刷したものを透明アクリル板に貼り、LEDのバックライトでマッキントッシュのプリアンプのようにするとシルク印刷を回避できますが、電池式プリアンプではできません。たぶん、製作に入るのはかなり後のことになると思います。


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只野乙山

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