オペアンプたった1個の電子式プリアンプ パネルデザイン編

PreDesign_01.jpg
部品があらかた揃ったなら、今度はフロントパネルとバックパネルのデザインに移る。なんとなくQUAD22とかQC2みたいにしようと考えたけど、本格的にするのなら、あのRが付いたパネルをフロントパネルに貼り付けないといけない。できぬではないが、非常に面倒くさい。だからこの際、あまりQUADに似せようと奮闘するのをやめ、それなりに、なんとなく雰囲気が似ているくらいで止めておこうと思う。

コントロール・ノブの大きさを把握し、CAD画面上に適当に配置してみる。ケースも、手に入るものでそれなりに使えそうなものから寸法を割り出しておく。あまり神経質にならずに、本当に適当に配置すればよい。それで、後から動かして修正すればいいだけの話。画像一枚目の上がフロントパネルで、下がバックパネル。CADを使ったのは、そのほうが寸法指定とか角度指定がやりやすいからである。

CADだけですべてできぬわけではないのだが、CADは文字入力と全体のデザイン的配置が苦手である。だからこれをベースにして、Windowsのアクセサリー「ペイント」などを利用してビットマップ形式で保存し、それをドロー系ソフト(ベクター画像ソフト)にインポートする。ドロー系ソフトとしてAdobe社のIllutratorが有名であるが、たかが自作プリアンプのためにIllutratorを購入するなど到底できないので、フリーソフトのInkscapeを使うことにした。

PreDesign_02.jpgドロー系ソフトにしたのは、縮小・拡大しても画像の解像度に変化がないからで、ペイント系ソフトを使うのなら、原寸大の画像を作製すればよい。要するに、自分でシルクスクリーン印刷の製版をするのであれば、ソフトは何を使っても構わない。CADで描いた図の上にレイヤーをかけ、レイヤー上に直線とか文字を配置していったのが画像二枚目。CADの元画像がレイヤー越しに透過しているのでなんだか薄汚く見えているのがわかると思う。

結局、アンプのフロントパネルに必要なのは、コントロール・ノブ周辺の文字やちょっとした直線だけなので、すべてデザインが済んだなら、元画像を削除してレイヤーを統合、そして一応完成ということになる。画像二枚目のパネルデザインをご覧になると、なんだかバランスが悪いと感じられると思うが、これは最終形ではなく、プロトタイプなのでこんな画像になっているとご理解いただきたい。これを、少しずつ移動したり、デザインを変更したりして最終的な形に持っていくつもりである。

フロントパネルとバックパネルのデザインができたら、シルクスクリーン印刷の製版をしないといけないが、それと並行して製作編に入ってもいいんじゃないかと思う。本体ケース(シャシー)の穴あけとか、部品の仮組、それが済んだら本体ケースの塗装になる。塗装が済んだ後で、最大の難題であるフロントとバックパネルのシルクスクリーン印刷に入り、それができたら組み立て最終と音出しになるんだけど、たぶん今年中にはできないんじゃないかと思う。


【付記】
● フロントパネルのデザインは思ったより難航しています。何しろ、ずぶのど素人が使い慣れぬドロー系ソフトを何とか使って、やっているわけですからね。はてさて、本当にできるのか、わからなくなってきましたよ。


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オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 部品調達編

Battery_Pre_Parts01.jpg
電池式プリアンプの回路を煮詰めたら、次は部品調達にかかろう。今回の最大の難点と思われる多連プッシュスイッチが、発注した業者から届いた。11月の初めごろに発注したから、納期は3~4週間といったところ。写真一枚目がその現物だが、ボタンが7個並んでいる。1~3の3連で入力切替、4~6の3連はモード切替、7番目は電源スイッチとLEDに使う予定である。送料抜きで約4000円ほどかかってしまった。おそらく最も高くついた部品になるだろう。

このスイッチ、一つのボタンに6つの端子が付いている。縦に2回路並んでいるようで、回路計の導通で調べてみたところ、開放時には手前と中央に導通があった。押し込んでみると、中央と奥に導通がある。だからこれは、スイッチを押して回路の選択にも使えるが、オンとオフで信号の切替もできる、ということだろう。つまり、手前片側3端子をすべて直列で配線すると全開放時には第4番目の入力端子として使える。具体的な運用例としては、店で全開放時には有線放送になり、どれか一つを押すと、それが選択されて有線放送は消える、という感じだろうか。

これをモード切替に適用すると、通常いじる必要のない「ステレオ再生」をそれこそ全開放に設定し、どうしても必要な時だけボタンを押す、というふうにすれば、現在3個あるスイッチを2個に軽減できたわけである。まあ、これも、買った後で調べてわかったことであって、発注するときにはよくわからない感じだったのだ。だからもし、次に買うことがあれば、そんなふうにしたらいいんじゃないかと思う。いいアイディアは、常に遅れてやってくる、というのが私の場合、なんだか定番になっているような気がする。

マスターボリュームにはアルプスのRK27型2連可変抵抗器を使った。これは6463シングルに使うつもりだったが、スペースの関係上、使えなかったので今回登場してもらうことにした。基板用ではんだ付け端子がないけれど、クリックつきで高級感がある。バランス調整用はアルプスのRK163型(MN)、トーン調整用も同社のRK163型(C)を、それぞれ三栄電波の通販で求めた。三栄電波ではRK27型の特注も受け付けているようなので必要な人は利用すればいいと思う。

調整つまみ(コントロール・ノブ)も今回は通販で求めた。サトー・パーツのモールド型ノブで、高級感がある金属製ノブを避け、どことなく古典的な雰囲気を探ってみた。サトーやLEXのほかにマーベル社のつまみがあって、これは製品紹介のページを見ているだけでうっとりしてしまうほどのものだが、マーベル社のつまみを扱っている店が少なく、同社でも個人販売をしていないのが残念だ。アルプス電気で一部取り扱っているようだけど、とても見辛くて、本気で売る気があるのかどうか、疑問を感じるほどだ。

Battery_Pre_Parts02.jpg主だった部品を通販でもとめたら、後は大阪日本橋の電気街で必要な電子部品を買い求める。シリコンハウス共立で「低電圧単電源のオペアンプを探しています」と伝えると、店員がちょうど良い物を見繕って勧めてくれた。TI / バーブラウンのOPA2350というもので、これで500円以下のオペアンプ。ついでにアルプスのロータリースイッチ(3回路4接点、ノン・ショーティング)を買い求めた。ステレオで3系統の出力だから2回路3接点でいいのだが、アルプスのこのシリーズには存在しない。

アルプスのロータリースイッチの全製品一覧を見ると、別のタイプで2回路3接点のものがある。ショーティング型で、入力信号の切替にはそれがちょうどいいかもしれないが、負荷や電源電圧の切替には使いたくない。今回買い求めた製品も、たぶん一時的に生産中止になっていたものではないかと思う。デジットのウェブログに「アルプスのあれが帰ってきた」とあるのを見て、買うことができた。大阪日本橋でアルプスのロータリースイッチを買うのなら、シリコンハウス共立かデジットに行くといいと思う。

残るはCR類であるが、いつも千石電商で買うようにしている。ここは、いくつも仕切ったトレイを用意していて、抵抗器の値ごとに区別しておくと、包装時に区分けしてくれるので使う時に便利なのだ。他の店だと、すべて一つの袋にじゃらっと入れるだけ。キャパシターはフィルム系だったらなんでもいい(おいおい)ので、見た目で小さいものを選んだ。電解キャパシターは耐圧10Vのかなり小さなものを選び、抵抗器は1本5円のカーボン抵抗にした。いずれもオーディオ用を避け、汎用・産業用を選択した。

プリアンプの本体ケース(シャシー)はまだ選んでいない。調節ノブと多連プッシュスイッチが揃わないとフロントパネルのデザインはできないし、多連プッシュスイッチとユニバーサル基盤、平ラグがどれくらいの空間を必要とするかで決まるから、箱はそれらが決定してから最後に決めることになるだろう。少しずつ完成に近づいてはいるのだが、まだ最大の難点、フロントパネルの印字をどうするか、これでかなり悩むことになりそうな気がしている。


【付記】
● 電池式プリアンプ、さくっと作ってしまいたいものですが、なかなかそうも参りません。慌てず、あきらめず、少しずつ進めていくしかなさそうです。部品調達は、たいてい一度では終わらぬもので、何かちょっとしたものを買い忘れていたり、部品表に書き込むのを忘れていたりするものですね。どのみち、また何度か日本橋に行くことになりそうです。


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オペアンプたった1個の電池式プリアンプ 構想・設計編

BatteryPreAmp_Design_Original.jpg
このところ、JBLのD130で楽しく聴いているが、音源や状況によってはもう少し高域・低域ともに欲しいなあと思うこともある。たとえば夜遅く、音量を絞っているときなど、高域と低域が聴こえにくくなることがあるし、加齢とともに高域が聞こえにくくなっていくのには逆らえない。そんなことから、トーン・コントロールの付いたプリアンプが欲しいなあ、と思っていた。気に入ったプリアンプが市場にないのなら、例によって自分で作るしかあるまい。

近頃はどういうわけか入力切替と音量調節だけのプリアンプが幅を利かせており、それ以外の機能は「不要な、音を悪くするアクセサリー」と考えられている風潮がある。たしかに、必要以上に接点を増やすのは良くないだろうし、低域・高域ともに伸び切って左右差がほとんどないスピーカーで聴くならバランス調節もトーン・コントロールも不要、となってもおかしくない。それはそれでいいだろう。だが、私(乙山)が自分用に使うプリアンプはそうであってはならない。

トーン・コントロールは上述の理由から必ず付いていないといけないし、バランス調節も必要である。たとえば、ヴィンテージ・ユニットを購入した場合、必ずしも左右の音圧が一致しているとは限らないし、聴く側の両耳がいつまでも健全であるとも限らぬのである。どうしても欲しかったヴィンテージ・ユニットが一個しかなく、とりあえずモノラルで聴いているけれどちょっと他の物と合わせてステレオで聴きたいこともあるだろう(ないない!)。

最後のはちょっとこじつけっぽいけど、気の利いたプリアンプや本当のプロ機にはバランス調節が付いているものだ。それと、ステレオ/モノラルのモード切替もあってほしい。例えば、上述のように、どうしても欲しかったヴィンテージ・ユニットが一個だけある場合、モノラル再生したくなる。現在、モノラル音源のCDをかけると左右から同じ音が鳴って、真ん中あたりに音が集まるようになっているけれど、あれは本当は一本のスピーカーだけで聴いたほうがいいような気がする。

それに、たとえば245のナス型管とかシーメンスのEdなんかが偶然一本だけ手に入ったら、二本揃うのを待つよりモノラルのパワーアンプをこしらえたくなるんじゃなかろうか。だから最新のステレオ音源を、わざわざミキサー回路を通じてモノラル化し、それをモノラルのアンプ、一本のスピーカーで聴きたいことだってある、と思う(ないか)。モード切替はモノラル(左)/ステレオ/モノラル(右)と万全に備えたい。リバースはさすがに必要ないと思う。

これはあってもなくてもいいけれど、あると便利に思うのは出力切替。真空管アンプ好きの人なら何台もアンプを持っているはずだし、スピーカーもメイン機とサブ機があったりするんじゃなかろうか。システム自体が何系統もある人はいいけれど、システムやスピーカーのセレクターを使っている人もいるんじゃないかと思う。だったら、プリアンプで出力切替をしたほうが話が早いと思うのは私だけだろうか。

というわけで、入力切替、音量調節、バランス調節、トーン・コントロール、モード切替(と出力切替)を備えたライン専用プリアンプを構想している。で、これを真空管式で本格的に作るのではなく(おいおい)、オペアンプを使って電池式でできないだろうかと考えた。なんでそうなるんだ、という声が聞こえてきそうだが本気である。以前、パワーICを使って0.4W電池式アンプを作った際、電池式っていいもんだなあ、とつくづく思ったのである。

それにスピーカーも100dB超の高感度で、プリアンプでノイズを発生させると厄介なのである。多分、ラインレベルだったらそんなに心配することはないと思うが、何しろこちらはずぶのど素人である。どこでどんな間違いをしでかすかわからない。真空管式だとどうしても電源トランスを導入せねばならず、下手をするとハムノイズやその他ノイズを出してしまいかねない。ここは、安全かつ安心、しかも安価ということなしのオペアンプでいきたい。

通常オペアンプは正負電源を用意するのが建前だが、低電圧の単電源で使える「レール・トゥ・レール」仕様のオペアンプがある。これだったら電池駆動も可能だし、レール・トゥ・レールのオペアンプは電源電圧付近までフルスウィングするので出力電圧もじゅうぶんである。具体的には単3電池×3の4.5V電源の場合、およそ4V(p-p)、1.4V(rms)の出力電圧を見込める。利得も30~40dBはふつうに稼げるので、利得の面でもおそらく問題はないだろう。

実際に運用するとなると、トーン回路はCR型かバクサンダール型になるわけだが、前者の場合ヴォルテージ・フォロワー(バッファー)→トーン回路→アンプ回路となり、後者も反転回路になるゆえもう一つの反転回路が必要で、いずれにしてもオペアンプはデュアルで2個、シングルだと4個必要である。電池式だからできるだけ素子の数を減らしたいところである。デュアルオペアンプを使い、非反転回路の帰還部分にCR型トーン回路(可変抵抗はC型)を挿入すれば、オペアンプたった1個でなんとかなるのではないか。

オペアンプたった1個の電池式プリアンプ。ううむ、このあっけなさ、なんだかQUAD22を思わせる雰囲気じゃありませんか。QUADのピーター・ウォーカー氏が現在いたとしたら、やったかもしれないなあ、なんて一人で勝手に想像して楽しくなった。この際だから、外見もQUADにどことなく似たような感じにできればいいなあ。実際に作るのも楽しいけれど、こんなふうに構想している段階が一番楽しいのかもしれない。だけど本当にできるんだろうか。


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【付記】
● QUADみたいにするのなら、ぜひとも使いたい多連プッシュスイッチ。どうやらそれが今回の最大の難題になりそうな気がしてきました。多連プッシュスイッチが入手できぬ場合、ふつうのロータリースイッチを使うしかないのですが、それも近頃は良品が少なくなってきたようです。マイクロ・コンピューターで制御したセレクターもあるのでしょうが、電池式のこともあり、ここは電源の要らぬ機械式で行きたいところです。

もう一つの難所、それは前面パネルの印字です。インスタント・レタリングが昔はたくさんあったのですが、いまは少なく、シルク・スクリーンで行うしかなさそうです。原稿を作ってシルクの版を焼き、そして印刷するのですが、この工程が面倒です。しかも一回だけの印刷で……透明フィルムに反転して印刷したものを透明アクリル板に貼り、LEDのバックライトでマッキントッシュのプリアンプのようにするとシルク印刷を回避できますが、電池式プリアンプではできません。たぶん、製作に入るのはかなり後のことになると思います。


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フルレンジ道楽(1)JBL D130




〈遊歩者 只野乙山〉 随時更新(?)気まぐれ企画
【フルレンジ道楽】



JBL_D130_01.jpg
JBLのD130は、かのジェームズ・バロウ・ランシングが「家庭用の美しいスピーカーを作りたい」とアルテック・ランシングを辞め、JBLを立ち上げた後に発表された最初期のスピーカーで、ランシング自身の設計による。100dBを超える高い能率を持ち、38cmという大きな口径でありながら高域もそこそこ伸びていて「フルレンジ」としても使えるというが、JBLの製品としては075などのトゥイーターを追加したものになっており、D130だけのモデルは存在しない(と思う)。

だけど、16cmでバランスがいいという感覚からすると、38cmでは高域が……と思ってしまうし、資料で周波数特性を見ても、低域、高域ともにだら下がりの「カマボコ型」なのである。これではハイファイは厳しいんじゃなかろうか、と当初D130を敬遠し、ベイマの30cmフルレンジでやろうと構想していたほどなのだ。頭ではわかっている、でも……あの604を設計したランシング、38cm口径では高域の不足も知り尽くしている男が設計したD130がどうも気になっていた。

ほぼベイマの30cmで決まりかけていたのだが、コイズミ無線扱いのそれが欠品中だった。どうしたものか、と某サイトの中古品を見ていたら、あのD130がちょっと安くなって出ていたのである。理由は左右のコーン紙の色が違う、とある。なんだそんなこと、シリアル番号が離れていようと、ヴォイスコイルの抵抗値が多少違っていようと構わない、バランス調整でセンターに定位するようにすればいいだけではないか。と思っていたら、手が勝手に(うそうそ)購入ボタンを押していた。

JBL_D130_02.jpgそんなわけでD130が我が家にやって来た。後面開放型の箱を作って装着し、聴いてみる。もう何年も放置されていたのだろうか、寝ぼけたような音に感じたが、めげずに小音量で「慣らし運転」を続けた。すると、少しずつ音が変わってきたように思えたので、いよいよ本格的に聴きこんでみよう。併用アンプは6463シングル0.5Wアンプ、このユニットを想定して作ったのだが、D130用であるが故の工夫は特にしておらず、汎用アンプである。音源はCDのみ、携帯型CDプレーヤー(おいおい)にて出力、パワーアンプにダイレクト接続している。

D130が聴けるようになったら、まずクラシック音楽を聴こうと思っていた。えっ、JBLでクラシックだと? JBLといえばジャズかロックだろうが、という声が聞こえてきそうだがクラシックである。我が家ではジャズもロックもクラシックも全部聴くので、どれもうまく鳴ってくれなくては困る。特定のジャンル向きのスピーカーなどいらぬのである。というわけでベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番(シュミット=イッセルシュテット/ウィーン・フィル/バックハウス、1958年録音)を聴いてみた。

多少古いがステレオ録音で音源としては申し分ない。オーケストラの雰囲気とかスケール感も再現できているように感じるし、ピアノも美しく聴こえる。コントラバスもしっかり聴こえてくる。重厚な感じはない代わり、軽やかでのびやかな低音に思う。次に古い音源としてベートーヴェンの『第9』(トスカニーニ/NBC交響楽団、1939年録音)の第3、第4楽章を聴く。この音源は小さなスピーカーで聴くと缶詰音楽のように感じるが、D130では詰まった感じではなく、かなりうまく再生してくれるように感じた。

JBL_D130_03.jpg他日、再び『第9』(シュミット=イッセルシュテット/ウィーン・フィル、1965年録音)を聴いてみたが、なかなかいい感じではないか。いけるとは思っていたけれど、D130一発でシンフォニーが楽しめるのはうれしいことである。他にもモーツァルトの交響曲「ハフナー」と「リンツ」(ホグウッド/エンシェント室内楽団)やバッハのオルガン曲、ハープシコードによる『ゴルトベルク変奏曲』、『ブランデンブルク協奏曲』なども聴いたが、とくに不満には思わなかった。

パルシヴで均一な音源(ロック/ポップ)はだいたいどのスピーカーでもうまく鳴るものだが、一応聴いておきますか。オーディオ・オリエンテッドと思われるスティーリー・ダン『エイジャ』やリッキー・リー・ジョーンズの一枚目、イーグルス『ホテル・カリフォルニア』など、どれも聴いていて心地よい。38cmということで高域を心配したけれど、そんなに悪くないと思う。むしろ38cmなのに、よく細やかな表現ができるんだなと感心したほどである。

さて、高域が弱いD130にとって最もシビアな音源(? 本当はシンフォニーがうまく鳴るかどうかで決めたいところ)として選んだのはウィンダム・ヒル・レーベル、ジョージ・ウィンストンの『December』である。ちょっとエコーが効きすぎている感がしないでもないが、ピアノがどれだけきっちり再現できるか試してみた。夜遅く、静まり返った中で音量を絞ってだが、思った以上にきれいな音ではないか。高域もC6周辺までいけてるんじゃなかろうか。せいぜい3kHz~5kHzまで、という頭でわかっている情報とはどうも様子が違うとしか思えない。

JBL_D130_04.jpg最後にジャズ。男性ヴォーカルとしてボズ・スキャッグス(おいおい)の『バット・ビューティフル』と『スピーク・ロウ』。ヴォーカル領域の再生は最も得意なんだろうか、聴いていて「はっ」とする瞬間が何度もあった。女性ヴォーカルはできるだけ新しい音源を、ということでノラ・ジョーンズ、ソフィ・ミルマン、マデリン・ペルー、ダイアナ・クラール、そしてメロディ・ガルドーを聴いた。思いの外、最新の音源をうまく鳴らすことに驚いてしまった。

全般的な傾向としては低音が軽めだということで、これは高域を伸ばすために低域を犠牲にしたD130の性質に加えて、後面開放型エンクロージャーによる部分が大きい。だが上質な軽やかさと伸びやかさがあり、自然な感じのする低音である。このあたりは好みの分かれるところと思うけど、個人的には後面開放型の自然な感じを気に入っている。音源によってはもう少し低音に「押し」が欲しいところだが、これはトーン・コントロールで何とかなるだろう。

どうしても迫力も重量感もたっぷりの低音にしたければ、バスレフ型エンクロージャーを採るべきだが、そうして低域を伸ばすと、高域とのバランスが崩れてしまって、トゥイーターが欲しくなるように思えた。それを具体化したのがC36やC38の姿で、製品としてはやはりそうするのがベストだろう。D130一発だけの場合、平面バッフルや後面開放型を選ぶ人がわりといるのも、なんとなくわかる気がする。そのほうが、フルレンジとしてはバランスが取れているのだと思う。

JBL_D130_05.jpgもう一つ言えることは、ジャズのカルテットなどを聴いていると、ハイハットがおとなしめだということだろうか。人によっては「ハイハット(シンバル)が後退している」または「聴こえない」と思うかもしれない。これはD130の限界なのかもしれないが、ふつうドラムって後ろで鳴っているものでしょう? ベースがブンブン唸って、ハイハットがシャカシャカ鳴っていないと気が済まない人は、素直にD130にトゥイーターを足したほうが満足できるだろう。というか130A+トゥイーターを選ぶべきでしょう。

低域、高域ともに不足している、むかし懐かしい音、みたいなものをどこかで予想していた。しかしそれは見事に覆され、思った以上にハイファイな感じがした。だがこれは「せっかく買ったんだからいい音で鳴ってくれないと困る」というバイアスがかかった状態で聴いている人間の報告だからあてにならず、話半分でお願いしたいところである。最新の、高域・低域ともに伸び切った優秀なスピーカーを普段聞いている人が聴いたなら、また違った印象になるのではないだろうか。


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【付記】
● 能率100dB超のスピーカーにつないでもアンプのノイズは全く気にならぬレベルだったのもうれしいことでした。そしてたった0.5Wの出力なのにうるささが心配になるほどなのです。おそらく今の環境ではD130の実力を出し切ることは難しいでしょう。田舎の一軒家に近いような環境だと、思う存分D130を鳴らすことができるのかもしれません。

「JBLとジャズ」というのは「作られたイメージ」だと思います。ウェスタン・エレクトリックやアルテックが活躍していた1930~50年代の音源はポピュラー音楽とクラシック音楽が大半だったのではないか(1945年からジャズも入ってくる)。だから、ウェスタンやアルテック、そしてランシングも、音源としてクラシック音楽を視野に入れぬわけがなく、むしろクラシック音楽の再生に全力を傾けたと想像しています。実際に聴いてみて、D130でクラシック音楽というのはたいへん楽しい経験でした。


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後面開放型スピーカー箱 完成編 オイルフィニッシュ

watoco_MediumWalnut (1-1)
とうとう製作工程としては最終の、フィニッシュの段になった。フィニッシュのやり方はいろいろあるけれど、今回はオイル系塗料でフィニッシュをすることにした。そのオイル系塗料も多々あるが、今回はワトコオイルの「ミディアムウォルナット」を下地塗料として使い、ワックスにはブライワックスの「チューダーオーク」を用いて仕上げていく。イメージは「枯れているけれど深い色合い」で、それを何とか目指してみた。

ワトコオイルを塗装する前にある程度表面を磨いておく必要があるけれど、オーバーサンディング(研磨しすぎ)に注意しないといけない。何しろ相手は0.3mmの「紙のような木」である。研磨はほどほどにして早速ワトコオイルを塗っていく。刷毛と容器を用意し、オイルを容器に移して刷毛で木目に沿って塗っていく。「一回目は多めに塗る」などとあるけれど、これは厚い天然木の話で、つき板だったら薄くてもいいんじゃないだろうか。

一回目の塗装を終えて十数分経過すると、二回目のオイル塗装を行う。#400の耐水紙ヤスリを使ってウェットサンディングを行うが、そんなにごしごし削る必要はない。「必要であれば」とあるので、場合によってはウェットサンディングを省いてもいいのではないかと思う。その後、ウェス(ぼろ布)で表面をよく拭き取っておく。乾燥は時期にもよるが、説明書には24時間かかるとある。

Briwax_tuderoak.jpgワトコオイルは独特の臭いがあるので、苦手な人は室内で塗装を行わぬほうがいい。ベランダとかガレージのような場所に塗装したら放置しておくのがいいだろう。場合によっては2~3日の間、例の臭いが続くこともある。今回は塗装後3日以上そのまま放置しておいた。さすがに空気中に例の臭いが漂うことはなくなったけど、箱に鼻を近づけてみるとまだ臭いがしていた。写真一枚目は塗装後、3日以上経過したワトコオイルの状態を写したもの。

さて、正直に告白しておかねばならないが、今回はフィニッシュを失敗してしまったんである。白木に近いシナ天然木を選び、そこにわりと濃い目のオイルを塗装したところ、やはり白い部分があちらこちらに残ってしまった。これは、木工ボンドが表面に残っている場合と、オーバーサンディングによる場合と二種類あるが、自分の場合、それらが混じり合った非常にまずいパターンになってしまった。

オイル系塗料は下地の状態をそのまま出してしまうので、仕上げには慎重を期さねばならない。だが、つき板をそんなに研磨するわけにもいかず、仕上げが甘くなってしまったのだ。白木に近いものならナチュラル系の薄い塗料を選び、濃い色に仕上げたいのなら、つき板もわりと濃い目のものを選ぶことをお勧めする。白木に濃い目のオイルというのは、最もシビアな選択だったわけで、このあたりにずぶのど素人さが表れているとしかいいようがない。

C36typeFinish_01.jpgホームセンターで補修用マーカーなどを買ってごまかすしかないだろう。完全主義者や潔癖症の人は剥がしてやり直したくなるかもしれないが、もうそんな気力は残っていない。商品ではないのだから、見た目が悪いのを我慢すれば済むだけのこと。それに、これを見るたびに己の甘さを思い知らされることになるのだからいい薬にもなるだろう。あんまりくよくよしても仕方がない。

ワトコオイルが乾燥したら、今度はブライワックスを塗る。ぼろ布にとってこすり付けるようにしてのばす。今は気温が高めだから、ブライワックスも半液体状で塗りやすい。塗装後、しばらく置いてブラッシングをする。これは、たわしやブラシなどを用いるといい。最後にポリッシングをするが、考えてみるとこれは「靴磨き」と全く同じ要領である。写真二枚目はブライワックスと、それを塗布して磨いた木の様子である。

ブライワックスの乾燥はわりと早めで、何日も置いておく必要はない。乾燥したら拭き取って、乾いた布で磨いたら終了。出来上がったところにユニットを取り付けて記念撮影であるが、かねて用意しておいた金属脚も取り付けておこう。これでグリルクロスが落下するのを防いでいるわけで、今回の設計ではぜひ金属脚を取り付けないといけない。これがあると、ずいぶん「それっぽく」なるけれど、三本脚ではだませないでしょうね。

C36typeFinish_02.jpgこれはですね、25cmという奥行きを見たとき、直感的に「三本脚の支持がいいんじゃないか」と思ったのでこうしたけれど、正直に書いておくと少し不安定である。すぐコケてしまうわけではないけれど、盤石の安定感はない。もし四本脚のほうがいいようなら、後で追加変更もできるからおいおい考えていこうと思う。さあ、これですべてが終了しましたよ。ずいぶん時間がかかったけれど、ようやくここまでたどり着くことができた。

えっ、肝心の音はどうなっているんだって? いやあ、この記事はですね、「箱を作る」記事なわけですから、箱ができたらそれで終了なんです。JBL-D130の音は、新企画「フルレンジ道楽」でお届けする予定になっている。というわけで、優勢に攻めておきながら最後にカウンターパンチを食らってぶっ倒れたボクサーの気分である。今回の工作で、木工の楽しさと難しさを存分に味わわせてもらったように思う。ちょっとほろ苦い気分で祝杯を傾けている。


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【付記】
● オイルフィニッシュは難しいですね。下地がそのまんま出てしまうわけでして、下地の処理の甘さを事前に見抜くのは本当に難しい。しかもつき板なわけですからごしごし磨くわけにもいかないし……反省材料がたくさん残った工作になりました。まあだけど、表面さえ気にしなければ、そこそこ、うまくいったんじゃないかと思います。


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只野乙山

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