目玉焼き丼を食う

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バー〈フラヌール〉でお客様が私(只野乙山)を見た感想でわりとあるのが「もっと体格のいい人(もっと太っている人)だと思った」である。これはおそらく、ウェブログの記事でラーメンと炒飯のセットばかり書いているので、そう思われたのだと想像するが、たとえば神戸元町とか三宮周辺へは週一回で通っていたので、毎日ラーメンと炒飯のセットを食べているわけではない。

以前の職場なら移動することが多かったので、途中〈阪急そば〉で何かそばなどを食べて終了、というパターンが多く、ふだんは意外にもそんなに「がっつり」食べているわけじゃないんですよね。むしろかなり小食と言っていいのではないだろうか。何しろできるだけ「腹八分目作戦」を心がけており、休日の昼食など干し蕎麦100gをゆでてワサビとめんつゆで食べるだけ、のこともある。

最近は夜がどうしても遅くなるので「深夜食」(炭水化物と油脂を避けるのがポイント)を食べて睡眠、昼近くに起きて「昼食」、そして開店前の腹ごしらえとしての「夕食」というパターンになってしまった。近所にはランチをやっている飲食店や弁当屋がたくさんあるので昼食には困らないけれど、11時過ぎに行くか、13時過ぎに行くかを選ばないと混雑していて慌ただしいことこの上ない。

なので当初は喜んでいたけれど、だんだん混雑を避けてランチをとるのが面倒になってきて、自宅で軽いものをさくっとこしらえて済ませてしまうようになった。今回は実行している方も多いと思う「目玉焼き丼」。前夜から米100gを洗ってザルにとり浸水を済ませた米を保存容器に移して冷蔵庫に入れておくのが最大のポイント。すぐに炊けるようにしておかないと、やる気が起きないんですね。

炊飯専用土鍋を〈フラヌール〉に持って行ってしまったので、家にある鍋を使って炊飯を行う。いや、炊飯器などなくても米は炊けるんですよ。一人分だけだったら、炊飯器を使うより鍋のほうがいいかもしれない。浸水を済ませた米と同量の水で加減はOKで、実際には米100gに対して水110~120mlの間のいずれかに自分の最適ポイントがあると思う。

米を蒸らしている間に味噌汁の用意をする。できるだけ高たんぱく低カロリーを目指して木綿豆腐を具材にした。大阪市内に引っ越してきて困ったのは「コープこうべ」の食材が入手できないことだろうか。私はコープこうべの木綿豆腐が大好きなのだ。あれに代わる物はないと断言してもいいくらいで、またコープこうべの「五割蕎麦」がないのも悲しい。

MomenTofu_FM.jpgところが、自宅近所のファミリーマートで木綿豆腐を買ったところ、これがかなり「いける」ことがわかった。コンビニ店の豆腐がこれほどとは思わなかった。だけどこれ、店舗によって置いている所とそうでない所があって困惑してしまう。どのコンビニだって同じでしょ、と思っていたが、店長の仕入れのセンスでラインナップが少しずつ変わってくるようなのだ。

タイマーを見ながら、蒸らしが終わる2分ほど前にフライパンに少量の油を入れてバーナーを点火。フライパンが熱せられたのを見て卵を割り入れる。白身がある程度固まり、黄身はほとんど生の状態がいいのではないかと思う。そんなに時間はかからないけど、目玉焼きの仕上がりは好みでいけばいいだろう。これを炊きあがったご飯の上にのせて出来上がり。

黄身をぐちゃっと潰したところに醤油を垂らし、軽くかき混ぜて食べる。いやあ、うまいなあ! もうこれだけでじゅうぶんである。炊きあがったご飯全体に黄身が行き渡ることはないので、残りのご飯は豆腐の味噌汁で食べ切ってしまうという寸法。卵がなくても、ふりかけと味噌汁だけで炊き立てのご飯は美味しく食べることができるんですね。


【付記】
● 目玉焼きの食べ方として、ハムエッグやベーコンエッグはとてもよく出来ていますね。だけど「目玉焼き丼」もかなりいい線をいってるんじゃないかと思いました。


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マルツネ「播州中華そば」を食う

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どこかで見かけて興味を持ったもののその場で買うことができず、また今度にしようと思って後日買いに行ったら商品がなくなっていた、ということはわりとあるのではないかと思う。私(乙山)にとってそれは「播州中華そば」である。大阪池田市の業務用食料品店で見かけて「今度試してみよう」とひそかに楽しみにしていたのに、いつの間にか棚から消えていたのである。

播州中華そばは、兵庫県たつの市にあるマツルネという製麺会社が製造販売しているもので、業務用1kgの袋入りで売られている。ずっと探していたけれど、池田周辺ではどこにも売っていなかった。ところが、松屋町筋と中央大通りの交差点付近にある業務用食料品店で買い物をしているとき、播州中華そばが置いてあるのを見た。瞬間、買い物かごに入れたのは言うまでもない。

業務用だけあって1kg=337円(税抜)である。一食分が乾麺100gとすると36.4円(税込)ということになる。何ともありがたく頼もしい(?)心の友ではないか。だけどスープが付いていないので、自分で何とかしないとならぬ。ヒガシマルの「ラーメンスープ」を使ってもいいだろうし、液状の袋入りスープなどもあるのでそれも良かろう。あるいは「タモリ流インスタントラーメン」をやるのも一興だ。

「ラーメン」というキーワードでYouTubeを見ていると、「秘伝の醤油ダレ」という動画があって、どうも元ラーメン店経営者が動画をアップしているようだ。淡口、濃い口醤油、ナンプラー、砂糖、酒、ショウガ、葱、煮干しなどを使って醤油ダレを作るのが面白く、自分でもやってみることにした。材料は多めなので、1/4くらいの分量でやるとちょうどいいと思う。

これをそのまま拙ウェブログに掲載するのはまずいので割愛させていただくが、YouTubeで検索すれば容易に探すことができると思う。これを作ったのは池田に住んでいる時だったので、引っ越しの時も大事にくるんで段ボール箱に詰め、できるだけ早く取り出して冷蔵庫に移しておいたのだ。この、秘伝の醤油ダレに、顆粒状の鶏がらスープと創味シャンタンで作ったスープを合わせる。

創味シャンタンはねり状中華スープで、類似品に「ウェイパー」などがある。じつはウェイパーは創味のOEMによるもので、ウェイパーと創味シャンタンの中身はほぼ同じものだと思う。ただし、OEM契約が切れたようで、双方とも新製品を出しているのをご存知の方も多いだろう。真相は定かでないが、ウェイパーは独自工場を持ち、かつてのウェイパーの味は新しい創味シャンタンに引き継がれているのではないかと想像している。

Banshu_Chukasoba_02.jpgでは調理に取りかかりますか。播州中華そば100gをゆでるのだから、お湯は1リットル用意する。即席めんの感覚で500ml前後のお湯でやってはいけない。スパゲッティをゆでるのと同じ感覚で、できるだけたっぷりのお湯でゆでるのが最大のコツと言える。「6分間ゆで、水で洗ってから使う」とあるのだが、面倒くさいのでゆで上げたらそのまま水切りをしてラーメン鉢に投入した。

もちろん、スープは別立てにして鍋で用意しておく必要がある。約300mlを計測しないといけないが、計量カップは「フラヌール」に持って行ってしまった。どうしたものか、と思案していると10オンス・タンブラーがあるではないか。10オンスということは約300mlあるはずなので、これを使用する。顆粒状鶏がらスープと創味シャンタン、そして「ほんだし」を少しだけ入れる。

秘伝の醤油ダレはスープ300mlに対して10ml前後が適量ではないかと思う。鶏がらスープと創味シャンタンにも塩味が入っているので、分量を間違えると全体に塩辛いスープになってしまうのでご注意を。麺がゆで上がる30秒ほど前に、ラーメン鉢に秘伝の醤油ダレと葱を入れ、そこに沸騰したスープを注いでおく。ゆで上がった麺を水切りし、鉢に移して出来上がり。

さて、料理ができましたよ。麺はストレート中太というよりストレート太麺という感じだ。スープの色はこんなものではないかと思う。乗せているものは葱だけというシンプルなラーメンだが、即席めんというのはこんなものではないかと思う。たんに他の材料がないだけという横着の極みを地でいっただけというのが本当のところ。

うむ、播州中華そば、なかなかいけるではありませんか。「ラーメンとして絶品」とまではいかないにしても、ふつうにおいしい。今回はゆで上げた麺をそのまま使ったので、多少スープが濁ってしまった。やはり一度水洗いしてから再度温めて食べるのが一番いいのかもしれない。歯応えも、そうしたほうが良くなるような気がする。


【付記】
● ずっと探していた播州中華そば、なかなかのものでした。好みとしてはもう少し細麺が良いのですが、これくらいの太さの麺も、それはそれで良いのではないかと思いました。さて、これが〈フラヌール〉の裏メニューになるかどうかは、まだわかりません。もう少し他の麺も当たってみたいと思います。


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ちゃんぽん調査隊(11)



〈遊歩者 只野乙山〉 冬季限定企画
【ちゃんぽん調査隊】



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異動の関係で、所用で堺東に来ることはもうないだろうと思う。最後の日、午前中で仕事を終えたので昼からフリーである。こんなとき、すかさず立ち飲み屋に行ったりすることもあるが、ちょっと迷った。そう、あの店、あんかけちゃんぽんが450円の〈太興飯店〉のことが頭をよぎった。だが今日は難波で降りて電子部品を買う予定もある。歩き回る距離が多くなり過ぎはしないだろうか。

そんなふうに色んなことを考えながら堺東銀座商店街をぶらぶら歩いた。〈スイス〉でさっとピラフを食べて済ませるのも悪くない。最後にもう一度〈モナミ〉で特製ヤキメシを食べるっていうのはどうだろう。〈源ぺい〉でてんぷらと寿司をつまみながらビールを一杯なんていいじゃないか。じつは昼からやっている串かつ屋や立ち飲みを知っているが、踏みとどまって堺東銀座商店街の入り口付近にある煙草屋でオレンジ色のBiCのライターを買った。

12時を過ぎているのになんでこんなにぶらぶらしているかというと、12時台に入店したくないからである。以前それでひどい目にあったことは記事に書いた。昼から仕事がある場合、とにかくどこかで食事を済ませる必要があるが、今日は自由の身。時間はいくらでもあるわけで、午後一時くらいに入店というパターンにしたい。えっ、ていうことはまだ〈太興飯店〉に行く気があるのか?

いつしかバルマカーン・コートのポケットに手を突っ込んで、西へ向かって歩いていた。空は晴れわたってまことに気持ちがいい。最後なのだから、ゆっくり歩いて風景を目に焼き付けておきたい。「おしゃべりダック」という意味不明な名称の「ホテル」を横目に通り過ぎる。だが最初に遠くから見たとき、それをちょっと違う別の言葉だと思い込んでしまったことを正直に書いておこう。

堺山之口商店街を横切るとき、〈力餅食堂〉が目に入った。いつかそこで中華そばを食べるつもりだった。〈中央軒〉も一度は利用したかったし、〈味亭〉も興味はあったが入店できなかった。ラーメン店も含めると、堺には相当数の中華料理店がある。一年間ではそのすべてを網羅できなかったが、週に一度だけでは仕方がない。それにしても堺は面白くて素敵な町だ。

〈太興飯店〉に到着したのは12時50分頃。もう少し時間があるので南海本線堺駅の高架下周辺をぶらぶらし、卸売市場にも足をのばしてみたが、昼過ぎだけあってまったく閑散としていた。〈太興飯店〉に入ってみると、客はだれもおらず、いつもと違った席に座った。メニューもちゃんとある。見ると、「チャンポン」と「あんかけチャンポン」は別に書いてある。「あんかけチャンポン」を頼んだ。

ほどなくして料理が来ましたよ。もう仕事は終わったんだからビールを頼んでもいいのだが、ちゃんぽんを全部食べるとかなり腹いっぱいになるので無理である。豚肉、海老、イカ、キクラゲ、キャベツ、モヤシ、葱、人参と野菜たっぷり、それがしっかりとろみのついた中華あんと一緒になっている。しょうゆは薄目ですね。麺は中太の縮れ麺、長崎ちゃんぽん流の太麺でないのがいい。

これを、ゆっくり時間をかけてすべて食べ切るのだ。途中でジャケットを脱ぎ、シャツの袖をまくり、ネクタイをぬるめて対応しないと汗が出て困る。いや本当、ちゃんぽんは体の芯から温めてくれるし、これ一杯で他は何もいらないほど完結している。ずば抜けて美味しいとか、そういうわけではないんだけど、この店の料理はたいへん気に入っている。しかもこれで450円、じつに幸せな気分になって店を出た。


【付記】
● 結局、堺でいちばん多く通ったのが〈太興飯店〉になってしまいました。同店では「ラーメンとチャーハンのセット」、「ちゃんぽん」、そして「あんかけちゃんぽん」のすべてを味わうことになったのです。堺ではまだ行っていない中華料理店もあって、この町に来なくなるのが残念になってしまうほどです。


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ちゃんぽん調査隊(10)



〈遊歩者 只野乙山〉 冬季限定企画
【ちゃんぽん調査隊】



TaikohHanten_Champong.jpg
なんだか妙に間が悪いということはあるものだ。その日、以前利用した南海本線堺駅周辺の中華料理店〈太興飯店〉でちゃんぽんを食べようと堺東から約25分てくてく歩き、入店したはいいものの、見ると満席である。こういう場合、ふつうあっさり諦めるのだが、なにしろここのちゃんぽん目当てで歩いてきたこともあって、一瞬踵を返すのをためらった。すると、店の人が、相席でもいいですか、と勧めてくれたのでとにかく座ることにした。

頼むものはもうちゃんぽんと決めてあるので、すぐさま「ちゃんぽん」と注文する。なぜかその席にメニューはなく、壁に「あんかけチャンポン450円」とあるので大丈夫である。ところが、ふと周囲を見回すと、相席で前に座っている男性、そして二人連れや家族連れで来店している客たちも、まだ料理を待っている様子である。どうやら、私(乙山)は満席状態になって料理を待つ客として最後の最後に注文してしまったようなのである。

別に店の調理は遅いわけではないが、こういう場合、どうしても時間がかかってしまう。前に座った男性に中華丼が届いたけれど、まだ私のちゃんぽんは調理にもかかっていない様子である。遠路歩いてきて腹が減っている状態で、目の前で人が料理を食べているのを見ながら待たされるというのは愉快な経験であるはずもなく、雑誌でも読んでいるふりをして延々と待つ。ちなみに私は行列ができている店は必ずパスする人間である。

初めのほうに食べ始めた客が支払いを済ませ、空席ができても「こちらへどうぞ」というような気遣いはないようなので、私もそのまま座って待ち続ける。気が利かないなあとは思うけれど、それで怒るほどのことでもなかろう、と心の広い人間であるかのようにふるまう。前の男性が中華丼を食べ終わって、のんびりと新聞に目を通している段になって、ようやく料理が来ましたよ。注文してから約25分が経過していた。

ところが、である。目の前に置かれたちゃんぽんは、どう見てもあんかけちゃんぽんではなく、ふつうの(?)とろみのついていないちゃんぽんではないか! 店の人に、あのう、あそこにあんかけチャンポンって書いてあるんですけど、というと、何かもごもご言っているだけで少しも要領を得ないのである。いったいこれはどういうことなのか? 要するに、「ちゃんぽん」と「あんかけチャンポン」の二つがあって、きっちり分けて注文しないといけないということなんだろうか?

だったら壁にも二つ書いておくべきじゃないか! 壁には「あんかけチャンポン」とだけあるから、ちゃんぽんは一つだけだと思い込んでしまうではないか。二つあるんだったら厨房に注文を通す前に「どちらにしますか?」と確認してくれたっていいだろうに。だが、そういう理屈を話してみたとて通じる相手ではなさそうなのだ。ここで、これは注文と違う、あんかけちゃんぽんを持って来い、ということもできるはずだが、今日の私は心の広い人間を演じているはずだった。

問題など微塵もなかったかのように平然と箸を持ち、ちゃんぽんに取り掛かろうとした時、ここまで約25分かけて歩いてきたことを思い出した。ということは、帰りにもそれだけの時間を要するわけだから、いつものようにゆっくりちゃんぽんを平らげる時間的余裕がないことが判明した。なんということだろう。散々待たされた挙句、ゆっくり味わうこともできないってわけか。しかしこれは私の事情であって、店が悪いわけではないのだ。

やれやれ、まったく、妙に間の悪い日があるものだ。急いでちゃんぽんを食べていると、後から入ってきた客がメニューを見て「あんかけチャンポン」にしてください、と言った。すると厨房に「チャンポンはあんかけで」と注文を通したのだが、こういうのはできれば聞きたくなかったな。だけど、もう二度と来ないとは思わぬ。店が悪いわけではない、間が悪かっただけじゃないか、と思いながら寒風の吹く街を急ぎ足で歩いた。


【付記】
● 急いで食べたのでいつものようには書けませんでした。ですがこのちゃんぽん、これで450円なんですね。800円の店もあることを思えば、凄いことです。またここに来て、今度こそ「あんかけちゃんぽん」を食べたいものですね。


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焼きそば定食を食う

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幼少の頃、夏になるとよくプールに連れて行ってもらったのを覚えている。昔は阿倍野プールというのがあったし、飛び込み台があった牧野プール(?)や箕面の高原プールにも連れて行ってもらった。一番たくさん行ったのは箕面高原プールだが、午前中からプールに入って、昼時になってお腹が空いたとき、しばしば食べたのが焼きそばである。今から思えばただの焼そばなんだけど、妙においしくて、今でもあのプールサイドで食べた焼きそば以上においしい焼きそばはないような気がする。

そんなふうに、焼きそばだけで軽い食事代わりにすることもできるのだが、焼きそばはビールのお供にもぴったりである。たとえば中華料理店などで、餃子と焼きそばにビールを合わせている人をよく見かけるように、焼きそばは小腹を満たすだけではなく、ビールのあてにもなるのだと思う。自分でも、餃子でまず一杯やった後、もうちょっと腹に何か入れたいときなど、つい焼きそばを頼んでしまうことがあるくらいだ。

そこまではいいとして、関西には「焼きそば定食」なるものが存在している。関西の全域に必ずあるわけではないと思うが、自分の経験による類推では関西の広範囲において喫茶店、お好み焼き屋、定食屋などでランチメニューとしてごくふつうに見かけるものだ。多くはソース味の焼きそばにご飯と漬物、味噌汁がセットになった形式で、一部の店では小鉢が付いていたりすることもある。

関西から出たことがないので、焼きそば定食はどこにでもあるものだと思っていたけれど、そういうものはないという地域もある、というか、ない地域のほうが多いのかもしれないのだ。考えてみると、焼きそばをおかずにご飯を食べるということは、炭水化物に炭水化物を合わせていることになり、「そういう食べ方はふつうしないでしょう」ということになるのだそうだ。そう言われてみると、たしかに炭水化物と炭水化物、これは危険な香りがするではないか。

だけど関西では「うどん定食」とか「そば定食」もふつうに存在している。これは何かというと、たとえばきつねうどんにかやくご飯を合わせた定食で、かやくご飯が稲荷寿司になったり、おにぎり、バッテラ(しめサバの押し寿司)になったりすることもある。いくらなんでも、きつねうどんに稲荷寿司を合わせることだけはしたくないが、うどん定食やそば定食だって炭水化物まみれではないか。関西以外の人たちは、うどんやそばにちょっとだけご飯ものを合わせることをしないのだろうか。

Lilac_02.jpg炭水化物に炭水化物を合わせることにさほど抵抗がない私(乙山)でも、いささか抵抗を感じるのが「お好み焼き定食」。これはお好み焼きにご飯とみそ汁を合わせたもので、お好み焼き屋の一部(ひょっとしたら多くの店?)で出されるようだが、まだ食べたことがない。ちなみに、「たこ焼き定食」はさすがに一度も見たことはないけれど、大阪のどこかで、人知れず存在しているかもしれない。

焼きそば定食に話をもどすと、自分の感覚からすれば、ソース味の焼きそばはご飯のおかずに「なる」のである。焼きそばには豚肉とキャベツなど野菜も入っており、それを食べた後にご飯を含み、咀嚼したのち味噌汁に手を付けるという寸法である。漬物が付いていることも多いので、それでご飯を食べたのち味噌汁、というパターンもあり、焼きそばの麺を純粋におかずにするという感じではないのである。いや、自分はふつうにそうしている、という関西人がいるかもしれないが。

12月某日、さっと昼食を済ませるつもりで〈阪急そば〉池田店に行ってみたら満席である。仕方がないので高架下の〈ライラック〉という喫茶店に入った。カレー、ピラフ、スパゲッティ、焼肉定食、そして焼きそば定食がある。なぜなのか、自分でもわけがわからぬが焼きそば定食を注文してしまった。己の庶民感覚の根深い部分に存在する、なにか懐かしさのようなものを感じながら、焼きそば定食を食う。

食後、アイス・コーヒーを注文する。えっ、この時期になんで? という声が聞こえてきそうだが、ホット・コーヒーを頼むと、なぜか最後まで飲まずに残してしまうことが多いのだ。あ、また残してる、と一緒にいたひとに何度言われたことだろう。焼きそば定食とアイス・コーヒーを合わせても800いくら、アイス・コーヒーの味に関してコメントは控えておこう。もしここで、上出来のアイス・コーヒーが出てきたら私はひっくり返ってしまっただろう。濃くてコクのあるアイス・コーヒーは、もうこの世には存在しないのである。


【付記】
● ソース味の焼きそば自体は、あまねく全国に広まっていると思われますが、ソース焼きそばも東京と大阪では違う、と聞いたことがあります。どんなふうに違うのかわかりませんが、おそらく、東京のソース焼きそばは「ご飯のおかずにならない=それだけで完結している」ものではないかと想像しています。東京に行く機会があったら、ぜひ確認しておきたい「東京ソース焼きそば」であります。


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只野乙山

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⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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