雷こんにゃく

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無性にこんにゃくが喰いたくなることがある。仮にそれを「突発性こんにゃく渇望症候群」とでも名付けておくが、とにかくこんにゃくが喰いたくてたまらない。そんなバカな、と人は思うだろうが、私(乙山)はすき焼き風煮にも糸こんにゃくが入ってないと気が済まぬ人間である。駅前のスーパーマーケットに板こんにゃくが89円で販売していたので、つい二つもつかんで買い物かごに入れてしまった。

よく「ピリ辛こんにゃく」を作って食べている。ゴマ油で豆板醤を炒め、薄切りにしたこんにゃくを投入してさらに炒め、酒・醤油・みりんで味を付ける簡単料理である。今回もそれにしようかなと思ったが、よく似た料理に「雷こんにゃく」というものがある。上述のピリ辛こんにゃくのように豆板醤は使わぬ代わりに、唐辛子を炒めて辛みを出すもので、好みで一味(七味)唐辛子を加えることもある。

今回は「雷こんにゃく」にしてみよう。しかも乙山流横着の極みということで、できるだけ手軽にできるよう工夫する。ピリ辛こんにゃくも雷こんにゃくも、少し汁を残した状態で仕上げ、それを器にとって冷ます段階で味が染みていく。だったら、初めから味を染み込ませたこんにゃくを、炒めて仕上げればいいではないか? このやり方だと、炒め終わったらすぐ食べられるという利点がある。

料理に取り掛かる。まずこんにゃくの表面に軽く切れ目を入れる。こんにゃくをまな板の上に置いたら斜め45度に軽く細かく切れ目を入れ、今度は方向を変えて初めの切れ目に90度交差するように包丁を入れる。思ったよりこんにゃくは切れてしまうので、軽く入れるのがポイント。だけど、別に切れ目を入れなくたっていいんじゃないかとも思う。おでんのこんにゃくに切れ目は入っていないものが多いけど、だからと言って味が染みていないわけではないでしょう?

こんにゃくの大きさは好みでいいと思うが、今回は短辺を四等分してこんにゃくを細長い棒状にし、それを揃えて四角のこんにゃくを切り出していく。指でちぎったほうが旨いという人もいるだろうし、大きくごろっとしたのが好き、という人もあるだろう。好みに応じて、いろんな形の雷こんにゃくがあっていいと思う。全部切ってしまったら、数分間ゆがいておこう。

ゆであがったこんにゃくを笊(穴あきボウルとかストレーナー)にとり、まだ熱いうちに保存容器に移し、そこに市販のめんつゆ(そばつゆ)を注ぎ入れ、そのまま放置する。味の染みる目安はだいたい3時間くらいだろうか。私など、半日くらいそのまま放ったらかしにすることもあるが大丈夫である。時間がない場合は1時間くらい漬け込んだものを炒めて、その後煮汁を入れて煮切ってしまえばよい。

じゅうぶん味がしみ込んだこんにゃくを再び笊などにとって水気をきりがてら、しばらく放置しておく。これも、面倒くさい場合はそのまま料理に取り掛かって構わない。フライパンなどにゴマ油を入れ、唐辛子一本を輪切りにしたものを炒め、こんにゃくも炒める。辛いのが好きな人は、初めから唐辛子を投入して、辛みをゴマ油に移してしまうのがお勧め。辛いのが苦手な人は、こんにゃくを炒める途中で唐辛子を入れるようにするとよい。

中火でのんびり、こんにゃくの表面に多少焦げ目がついてもかまわない、くらいの感じで炒める。好みにもよると思うが、ある程度炒めこんだ方がいいかもしれない。かなりピリッと来るのが好きなので、ここでさらに追加の一味唐辛子を投入して出来上がり。味はじゅうぶん付いていると思うが、味見をして薄いようなら、酒・醤油・みりんで味を濃くする。または、めんつゆを追加して炒め煮にするといいのではないかと思う。

好みにもよるが、初めに唐辛子の輪切りを炒め、最後に一味唐辛子を投入した場合、かなり辛くなる。なので最初の唐辛子の輪切りだけか、最後の一味唐辛子だけか、どちらかに絞ったほうがいいのではないかと思う。いやホント、冗談抜きで辛いですよ。いわゆる「激辛」が好きな人は大丈夫だろうけど、あまり辛すぎるのも困りもの。最後にしょうゆとみりんを加えて、「照り」を付けるようにすると味が決まると思う(写真はそれをしていません)。

今回は黒っぽいこんにゃくを選んだので、それが引き立つように白っぽい器に盛ってみた。食べてみると、ううむ、なかなかピリッとくるではないか! だけど味はじゅうぶん染み込んだこんにゃく、なかなかいけますよ。ビールにも、日本酒にもぴったり合うんじゃなかろうか。汁気は全くないけれど、保存容器に入れて冷蔵庫で3~4日は持ちます。風呂上がり、とりあえずビールで一杯、というときや、もう一品何か欲しい時など重宝しますね。


【付記】
● 一人で板こんにゃく2枚もどうするんだ、という声が聞こえてきそうですが、けっこう消化してしまえるものです。こんにゃく好きの家族(?)なら、あっという間になくなってしまうかも。


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2014年最初のおでん

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先日、涼しいどころではなく、寒く感じるまで温度が下がった日があった。こうなると、鍋物など何かあったかい食べ物が恋しくなってくる。鍋は乙山流(?)横着鍋で、鶏肉、水菜(白菜)、えのき茸、木綿豆腐、くずきりだけを使い、それを出汁もとらずに「ヒガシマルうどんスープ」で煮込むという横着の極みである。味が付いている汁を小鉢に取り、それに柚子胡椒、柑橘類の汁、七味唐辛子を入れて食べる。

残った出汁はふつうなら雑炊にするところだけど、夜に炭水化物をとるのはできるだけ控えている。翌日、朝か昼に雑炊をすることになるのだが、これも炊いたご飯が冷凍保存してある場合だけで、雑炊のために米を炊くことはない。すると、どうしても鍋の出汁が残ってしまうことになるのだが、捨ててしまうのはもったいない。これをおでんに使ったらどうだろう、と考えた。本当は、きっちり出汁を取ったほうがうまいに決まっているのだが、面倒(おいおい)ではないか。

というわけで今年最初のおでんと相成った。おでん種も、本当はあれこれとあったほうが楽しいのだが、保温調理器を使う関係上、そんなにたくさん入れるわけにはいかない。保温調理器を買う時にいちばん小さいタイプを選んでしまったせいなんだけど、こればかりは仕方がない。だから自分がおでんを注文するときに頼むものは何だろう、と思い出して種を選んで絞り込んでみよう。

まず、厚揚げ。これを外すわけにはいかない。そして大根。出汁が染みた大根はやはりうまいもので、これこそおでんの楽しみではないか。次にこんにゃく。たいてい三角になった分厚いものが出されるけれど、個人的には「結びこんにゃく」のタイプが好きである。それからちくわ。おでんに練り物は付き物だろうけど、自分としてはちくわだけでじゅうぶんである。そして、何か肉類を、これはすじ肉でも鶏肉でもいい。

今回は手羽先を使った。おでん種としての手羽先は、なかなかいけると思っている。鶏が嫌いな人はダメかもしれないが、おでんでじっくり煮込むと、皮のところや軟骨のところがするっと外れてまことに気持ちがいい。まあだけど、手羽先そのものより、「手羽中」のほうが食べやすくていいかもしれない。すじを煮込んだ後のおでん出汁は冷えると固まるが、手羽先でも冷えるとぷるんぷるんになるのである。

そして、できれば入れておきたいのが「青菜」。ここでは「しろ菜」というものを選んだ。おそらく小松菜と青梗菜を掛け合わせたものと想像するが、小松菜の苦みが少なく、青梗菜の中国野菜らしさが少ない、和食に合いそうな野菜で気に入っている。場合によっては手に入らぬこともあるが、あれば必ず手にしている。これは、一緒に煮込むのではなく、食べる直前に別の鍋におでん出汁を取って、さっと煮て合わせる。そうしないと、青さが失われてしまう。

今回、種を絞ったのであれこれ入っていないけど、おでんはやはりうまいねえ。ビールは最初の一杯だけにして、あとはお酒の冷やでいこうじゃないか。燗酒はまだちょっと早いかな、という感じである。とあるウェブログで、おでんにうどんをいれた「おどん」が旨い、とあって、ものすごく実行してみたい気持ちになったけど、ここは我慢をしなければならぬ。夜に炭水化物はできるだけ控え……いや、禁物なのである。


【付記】
● 夜に炭水化物は絶対だめだ、というわけではないと思うのですが、やはり自分なりのルールを作らねばなりません。だったら昼に「麺+ご飯」をやめたらどうだ、という声が聞こえてきそうだが、それはあまりにも図星過ぎて……


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乙山流すき焼き風煮

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生徒学生時代は遠足によく行ったけれど、集団行動が苦手な私(乙山)は遠足にあまり良い思い出がない。高校生になると、体調の不良を訴えて(というか偽って)自主的に遠足を辞退することもあるほどの隠れ不良だった。そんな私だが、今でも心に残っている遠足がある。それは小学校6年生のとき、担任の先生が学級の生徒たちを連れて、日曜日にどこかの河原で自炊をするという非公式の「遠足」だ。

自炊といっても飯盒で米を炊き、おかずは先生の言によると「すき焼き風ごっちゃ煮」だった。どこで調達したのか大きな鍋に牛肉や白菜などを入れ、味付けは砂糖と醤油で行ったのではないかと思う。飯盒で炊いたご飯に「すき焼き風ごっちゃ煮」はとてもおいしかったのである。たぶん秋のよく晴れた日だったと記憶しているが、その後、川に飛び込んだりする者もあったのではないか。

「すき焼き風ごっちゃ煮」とは要するに、すき焼き風の煮物、ということだろう。これは全国各地に家庭料理として存在するのではないかと思われる。ネットで「すき焼き風煮」というレシピさえあるくらいだから、だれでも一度は食べたことのある料理じゃなかろうか。例によって仕事帰りに駅前のスーパーマーケットで牛肉の細切れを見かけたとき、ふとすき焼き風の煮物が食べたくなったのである。

すき焼き風煮を作る材料の根源は牛肉であるが、それ以外には何を入れるといいだろう。近頃の私は、できるだけ具材を減らして簡素なものに仕上げるようにしている。たんに横着なだけかもしれないが、これだけは必要であると思われる素材を選ぶとしたら、第二番目は「糸こんにゃく」ではないか。えっ、そんなバカな、と思われる方もいらっしゃると思うが、乙山流すき焼き風煮において、糸こんにゃくなしはあり得ないのである。

三番目は「白葱」である。柔らかく煮えた白葱はもはや甘いほどで、しかも牛肉の臭み消しにも役立つ。この三本柱で乙山流すき焼き風煮は成立するのだが、ここに木綿豆腐を加えることにした。甘辛い汁が染みた木綿豆腐はうまいに決まっているではないか。しかしこれは駅前のスーパーマーケットではなく、コープこうべの「木綿豆腐」でなくてはならぬ。牛肉と葱、糸こんにゃくだけを買ってミニコープに赴いた。

下拵えをする。糸こんにゃくはゆがいて笊(穴あきボウル)にとっておき、木綿豆腐は重石をかけて水気を抜いておく。これで下ごしらえは終了で、中華鍋に油を入れ、牛肉を炒める。ある程度火が通ったら糸こんにゃくを入れてさらに炒め、味付けに移る。砂糖を切らしているのでみりんと酒を入れて煮込み、しばらくしてから濃口醤油を投入する。ここは、濃口醤油でなくては雰囲気が出ない。

白葱は青い部分もすべて入れ、同時に豆腐も入れる。豆腐を入れたらできるだけ形が崩れぬよう気を付けてかき混ぜ、ある程度煮込んだら火をとめて放置する。白葱は余熱で勝手に火が通るものだし、木綿豆腐はそのままでも食べられるものだから、そんなに長時間煮込む必要は全くない。煮込んでも味は染み込まぬもので、火を止めて冷めていく段階で味が染み込んでいく。

出来上がりをそのまま食べたい、という場合は白葱に火が通って柔らかくなるまで弱火でことこと煮詰めればいいと思う。ほとんど汁気がないので、火を強めるとすぐ煮詰まってしまうのでご注意を。木綿豆腐もあまり煮込み過ぎると「す」が立ってしまうので面白くない。くれぐれも煮込み過ぎに注意が必要である。食べる前から作っておいて、火を止めてしばらく放置しておき、直前にもう一度軽く火を通して温めるくらいがいいのではないかと思う。

酒のあてとして作ったのでそんなに甘辛くなっていないし、色ももう少し付いていたほうが雰囲気が出るのではないかと思う。醤油の甘辛煮は、しっかりと醤油の色が付いていないと話にならないという人もいるのではないか。実際、確かにあの醤油の色は郷愁をそそる何かがあるような気がする。あんまり色は濃くないけれど、牛肉と糸こんにゃく、白葱、そして豆腐、これだけでじゅうぶん、「すき焼き」の感じがするように思う。


【付記】
● 牛肉の細切れが手に入ると、必然的に「肉じゃが」か「すき焼き風煮」になってしまいます。もう少し工夫をせんといかんなあ、とは思うのですが、つい……根っからの横着者とは乙山のことです。


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豚バラ肉と根菜のごった煮

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夏は暑苦しいので煮炊き物は避け、生野菜を切ってドレッシングの成分のようなもの(塩、胡椒、酢、醤油、辛子マヨネーズ少々)を混ぜるだけといった横着サラダを作って食べることが多い。生野菜はそのとき手に入るものなら何でもいいが、主に胡瓜、小型トマト、玉ねぎ、人参、レタス(グリーンリーフ)などである。それと忘れてならぬのは少しだけ肉類を入れることで、ツナ缶とかビアソー(超薄切りのボローニャ・ソーセージ類似品)などを混ぜ込むようにしている。

それに葱と鰹節を乗せた冷奴で終わってしまうことも多い。えっ、それで、お昼は干し蕎麦だけでしょ? 晩御飯がサラダと冷奴? それって病人食じゃないですか、と呆れられることもしばしばだが、それほど身体を動かす重労働をしているわけではないのだからこれで倒れることはない。とくにダイエットをしている、という意識などないのである。

とはいっても、また生野菜か……といささかうんざりすることもたまにあるのは事実である。そんな折、いつものように閉店直前に駅前のスーパーマーケットで買い物をしていたら、豚バラ肉の塊が半額になっているのを目にした。うむ、これで豚の角煮をやるのも悪くないなという思いが頭をよぎったが、ちょいと面倒である。これと、野菜を適当に煮込んで「ごった煮」のようなものができないだろうか、とすぐ横着路線に走る。

野菜なら何でもいいのであるが、豚バラ肉と煮込むわけだから何か根菜類のほうがいいような気がしてゴボウ、人参、里芋の水煮を買い物籠に入れた。それと、こんにゃくを忘れてはいけない。私(乙山)はなぜかこんにゃくが好きなのである。今回は板こんにゃくではなく、なぜか糸こんにゃくが食べたい気がして、それも買い物籠に入れた。

閉店間際の買い物をした後で「豚バラ肉と野菜のごった煮」を拵えるわけにはいかぬ。その日は別の食べ物で済ませ、料理(と言えるんだろうか?)は次の日にすることにした。すべての住人が窓を閉め切って冷房装置を効かせているわけではない。夜の遅い時間に料理の匂いをまき散らすのも考えものである。これでも一応、近隣のことを少しは考えている、集合住宅における模範的(違うか)住人のつもりである。

さて翌日。ゴボウは洗ってあるものを買ってきたので、もうそのまま斜め切りにして水にさらしておく。人参も乱切りにし、それらを軽く下ゆでしておいた。別に野菜の下ゆではしなくてもかまわないと思う。豚バラ肉は食べやすい大きさに切って、そのまま鍋に入れてしまう。それらの作業をしながら、粉末昆布と削り節で出汁をとっておく。

出汁は昆布と削り節でとらなくても粉末出汁の素があるので料理自体はできるのだが、出汁をとったら一味違うものになるというのは実際にやってみた方はご存知だと思う。鍋の底に豚バラ肉を敷き、その上からゴボウ、里芋、人参、糸こんにゃくを入れ、最後に出汁を注ぎ入れて火を入れる。最初にみりんを入れてしばらく煮込み、最後に淡口醤油を入れて火を止め、保温調理器に鍋を移して放置する。

保温調理は一時間ほどでいいのではないかと思う。保温調理器がなければ、100円均一店で売っているニットキャップを二重にして蓋をした鍋をくるんでおけばいい。それもなければ、適当に加熱した後、蓋をして放置しておくだけでもいいと思う。その後、鍋を保温調理器から取り出して室温で少しずつ冷ましていくのだが、この段階で味が染みていく。

煮込むときに「アク取りシート」なるものを使っているが、これは便利である。冷めた鍋をそのまま冷蔵庫に放り込んで保存すると、翌日完全に冷え切って豚バラ肉から出た脂が凝固してアク取りシートに吸着している。これをそのまま取り去って捨てると、余計な(?)脂も処分できる。もちろん、その脂はおいしいものなので、年齢によっては捨てずに食べるのもいいと思う。なにしろわざわざラーメンに……

さて食べるときは、冷蔵庫に保存した鍋を火にかけて、温まったら器に盛り付けるだけである。味付けは淡口醤油とみりんだけであるが、なかなかおいしい。豚バラ肉がとろとろになどなってなくてもいいのである。ふつうにそのまま煮込んでも柔らかく、うまいものだ。このままでご飯のおかずにもなると思うけど、ご飯が進むような「おかず」にするなら、もう少し甘辛く仕上げたほうがいいのではないだろうか。


【付記】
● なんでこの暑いときに煮物なんだ、という声が聞こえてきそうですが、暑いからこそ煮物でもあるわけです。生野菜のサラダに比べると、なんとも優しい味わいというか滋味深く、消化にもよさそうに思えます。「菜っ葉の炊いたん」もいいのですが、根菜の煮物はやはりいいものですね。


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インチキ土佐酢でタコ酢

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タコといえば、むかし家族で淡路島へ海水浴に行った時のことを思い出す。どういうわけか、タコが浜に打ち上げられた、あるいはだれかが釣ったのかはっきりしないが、とにかくタコが陸上でのたくっている姿を見て興奮した。たしか4~5歳のころだったと思うけど、あの頃はまだ国産のタコが市場に出回っていたのではないだろうか。

近頃は国産のタコなんて高嶺の花で、モロッコだかモーリタニアだかどこか遠洋でとれたものが流通しているようである。例によって閉店間際の遅い時間、駅前のスーパーマーケットでタコがたくさん並んでいるのを見て、足が一本だけパックされたものを買ってきた。これで、タコ酢をやろうという心算である。

居酒屋ではタコぶつ(タコのぶつ切り?)と称した一品があって、文字通りぶつ切りにしたタコをわさび醤油で食べる。これはなかなかおいしいものだが、タコ酢にして食べるのも好きである。この場合、酢と砂糖で甘酢にするのもいいが、二杯酢か三杯酢、あるいは土佐酢で合わせるほうが好きである。

男性はだいたい酢の物が苦手だと思うが、それは酢と砂糖による甘酢のせいではないかと思っている。土佐酢にすると、タコと胡瓜とわかめの酢の物も酒のあてになる。なので酢の物苦手を自称する方は土佐酢を使ってみることをお勧めする。土佐酢はミツカンのものが簡単に手に入るので、レシピを見て土佐酢を作らんと奮闘する必要もない。

じつは横着を承知でミツカンの土佐酢を愛用しているのである。その日もタコをそぎ切りにしたところに土佐酢をぶっかけて終了、となるはずであった。ところがどうしたことだろう、必殺の土佐酢を切らしているようなのである。困ったことになったなあ、と冷蔵庫を点検すると、白だし醤油と麺つゆを見つけた。

家には酢とみりんは常備してある。これらと白だし醤油、麺つゆで土佐酢のようなものを合成できないだろうか? 早速実行してみた。白だし醤油と酢をベースにして、甘みはみりんで補う。最後にほんの少し、麺つゆを入れてかき回し、味見してみると、うむっ、土佐酢にかなり近いインチキ土佐酢ができたではないか。

えっ、分量の配合ですって? そんなもの、覚えてやしませんよ。料理に覚えのある人なら、ご自分で適当にできると思う。レシピ通りにやりたい、という気持ちもわからぬではないが、味を決めるのはあくまで自分自身。いつも使っている分量と、レシピの分量を比べれば、どういう加減をすればいいかわかるはず。

タコはぶつ切りでもそぎ切りでもいいが、タコ酢にする場合、そぎ切りをお勧めする。写真ではタコの表面にギザギザを入れて格好をつけているが、こういうことをする必要は一切ないのは言うまでもない。これは池田のある料理屋で板前さんがタコ酢を出してくれた時のことを思い出して適当に真似をしてみただけで、実物はもう少し細かい切れ目が入っていたように思う。

タコをそぎ切りにできたら器に盛り付け、インチキ土佐酢をぶっかけて出来上がり。器はいつも使っている100円均一店で買ったオーバル型のボウルでもいいが、せっかく青海波の紋様の器があるのでそちらにした。海の雰囲気があっていい感じだ。これは阪急宝塚線の庄内駅付近にある瀬戸物屋で買い求めたもの。近隣では一番の瀬戸物屋でお気に入りである。

食べてみると、ううむ、うまいっ! インチキ土佐酢、なかなかやるじゃないか。本当は二杯酢に出汁を合わせた(必要なら追い鰹をかけた)のが土佐酢で、やろうと思えばできぬでもないが、白だし醤油と麺つゆ、酢とみりんがある方にはこのインチキ土佐酢をお勧めします(おいおい)。さっとできるし、お味のほうもなかなかいけるのであります。


【付記】
● これでしばらくミツカンの土佐酢がないからと慌てることもなくなりました。ミツカンの土佐酢を買ったときもたぶん、あれら調味料は家にあったはずなので、どうしてそのとき思いつかなかったのか不思議でなりません。


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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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