「おどん」を食う

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島根県松江の名物に「おどん」なるものがある、というのをウェブ上のどこかで見たことがある。確かおでんとうどんを合わせたもの、というか、おでんにうどんを入れたもののようである。そこでネットで「おどん」を検索したところ、松江商工会議所青年部のHPに「おどんとは」というちゃんとした定義があった。

それによると「おでん+うどん=おどん。飛魚(あご)出汁のおでんにうどんを入れたのがおどん。あっさりした出汁のおでんとうどんの相性は抜群です。お好みで、柚子胡椒を付けて食べてみてください」とある。同HPにはおどんの画像もあって、土鍋におでんとうどんを合わせてあるものや、うどん用の器におでんとうどんを合わせて盛り付けてある場合もある。

なるほど、本物のおどんは飛魚出汁でなければならないが、乙山流インチキおどんであるならば、粉末昆布と削り節の出汁であってもかまわないだろう。早速、粉末昆布と削り節で一番出汁、二番出汁をとり、それらを合わせてボウルなどに移しておく。おでんの種は昨日の夜に買っておいた。もちろん、うどんも忘れずに。あ、今日は休日なんですね。で、昼間からおでんを煮込んでおいて、夜に食べようという心算である。

おでんの種はいろいろあると楽しいけれど、一人で食べる場合は絞り込んだほうがいい。厚揚げ、大根、ちくわは外せない。後、三角のこんにゃくより結びこんにゃくのほうが好きなのでこれも入れる。それと、おでんのおでんたる最大のポイントは、何かコクのある肉類を入れることではないかと思う。昔の大阪おでん(関東煮/関東炊き、読みは「かんと(う)だき」)には必ずクジラのコロ(脂身)なんかが入っていて、これがまた濃厚な味わいを生み出していたように覚えている。

今それを再現するのは無理なので、スジ肉などが使われることが多いが、今回は鶏の手羽先を用意した。これを煮込むと、じつに濃厚な味わいのおでん出汁になるのだ。冷めると、出汁全体がゼリーのように固まるくらいコラーゲン(?)もたっぷり。スジ肉も、煮汁が冷めるとしっかり固まるのはご存知の通り。手羽先は、ほろりと肉が取れておでん種としてもなかなかいけると思うが、手で持って食べないといけないところだけは難点であろう。

出汁をとるのと同時に大根の下茹でもしておこう。米のとぎ汁があるとベストだが、いつも上新粉を使っている。今回は卵も入れてみたが、卵は気室の所(卵の丸みが緩やかな方)に小さな穴をあけておき、鍋に水50~100mlを入れ、蓋をしてバーナーを点火する。中火で6分ほど経ったら火を止め、蓋をしたまま3~4分放置する。時間が来れば水にとって粗熱を取り、スプーンの裏側で卵の殻を叩いて割れ目を入れ、ボウルに水を張った中で卵の殻をむくようにすると、きれいに剥けると思う。

鍋に食材を並べ、出汁を張り、塩・みりん・淡口醤油で味付けをする。中火で煮始め、煮たってきたら弱火にし、しばらく煮込んだら保温調理器に移して放置する。煮込み始める際に「灰汁とりシート」などを併用すると澄んだ出汁で仕上げることができる。数時間放置したら保温調理器から取り出し、室温で冷ますが、この段階で味がしみ込んでいく。一度冷めたおでんを、食べる直前にあたためて食卓に出す。

ここまでは普通のおでんですよね。まず、普通のおでんを食べながらビールやら酒やらを飲むわけで、少し鍋に余裕ができたとき、あるいは写真のように土鍋に移し替えて、うどんを投入すればいいだろう。汁が濁るのが嫌な人は投入する前にうどんを水で洗っておくといい。弱火でコトコト、5~6分でいいんじゃないだろうか。柚子胡椒は、なすり付けて食べるのもいいが、小鉢に出汁を少し取り、そこに溶かし込んで食べるのが好きである。うむっ、本当だ、うどんとおでんの相性はたいへん良い。これ、またやってみたくなりますね。


【付記】
● 後日、おでん出汁に鶏肉、白菜、水菜、豆腐、えのき茸などを入れて「おでん鍋」を作ってみたところ、全く違和感なく食べることができました。おでん出汁が濃厚なだけあって野菜がうまいのがたまらないですね。鶏の水炊きで白菜がなぜあれほどおいしく感じるのかというと、やはり鶏肉の力なのだと思います。


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エコノミー焼き

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大阪といえば、焼肉、お好み焼き、タコ焼きのイメージがあるのではないかと思っている。大阪人はみんなそれらが大好物、と思う人も多いのではないだろうか。ところが私(乙山)は大阪市生まれなのに、それらが大好物というわけではない。そもそも「好き」というのはそれを食べないとどうにも我慢ができなくて、いつしかむさぼるように食ってしまった、というようなものではなかろうか。

なんと、もうかれこれ10年以上、自分から進んで焼き肉店とかお好み焼き屋に入っていないのだ。それで身体が何ともないのだから、たぶん身体がそれらを欲していないのだと思う。かと言って、だれかに連れて行かれたら入店すると思うし、焼肉もお好み焼きもおいしく楽しむことができるはずだから、嫌いではないのだ。まったくもって不思議なことだが、こんな大阪人もいるのである。

そんな大阪人失格間違いなしの男だが、お好み焼き屋のメニューで好きなものがある。それは「ねぎ焼き」で、ねぎ焼きを食うのであればお好み焼き屋に行ってもいいかな、と思うほどである。自宅で焼けばいいのに、と思うかもしれないが、家には中華鍋しかなくて実行できなかった。中華鍋はたいていのことができるけど、さすがにお好み焼きとかねぎ焼きは苦手だと思う。

ところが最近、マーブル加工のフライパンを購入したことを思い出し、駅前のスーパーマーケットの食料品売り場で葱、キャベツ(なんか随分高いんですけど)を買い物籠に入れた。お好み焼きといえば豚バラの薄切りが定番だが、豚の挽肉でも構わない。具材は豚ひき肉と葱、キャベツ、紅生姜だけというシンプルなものにした。ここに人参の千切りを入れるのも好きだ。

かんじんのお好み焼き粉も忘れないようにしよう。さすがに大阪だけあって「お好み焼き粉」が売っているけれど、ふつうの小麦粉でも全く問題はないと思う。作り方を見ると、お好み焼き粉100gに水120g、卵1個を混ぜる、とある。これでじゅうぶんできるはずだが、ただの水では面白くないので、今回は粉末昆布と削り節で出汁をとり、混ぜることにした。ちなみに後日、ただの水だけで作ってみたが、味の違いは天と地ほどの差はなく、無視してもいいんじゃないかと思っている。

だから順番としては何より先に出汁をとることでしょうね。一番出汁と二番出汁を合わせたものをボウルなどに移して冷ましておく。泡立て器で混ぜよ、とあるけれど箸を四本くらい持って適当に混ぜた。多少ダマが残っていても気にする必要は一切ない。一人分の材料として葱は1/2束、キャベツは1/8個くらいだろうか。豚挽肉は100gくらいで、前もってフライパンで炒め、みりんと醤油で下味をつけておき、これも混ぜる前に冷ましておく必要がある。

キャベツはせん切りにするが、芯のところもスライスして針状に切ればすべて食べることができる。できるだけ生ごみは出さぬようにしている。葱は半束使ったけれど、一束全部使ったほうが良かったかもしれない。何しろ気分は「ねぎ焼き」なのだから。フライパンに油を引き、弱火で焦げていないかチェックしながら3~4分くらい焼き、ちょうど良いきつね色に仕上がっていれば裏返し、蓋をして3~4分ほど焼く。

さて、乙山流ねぎ焼ができましたよ。豚挽肉を使い、高級食材は一切使っていないゆえに舌代はすこぶる安く、じつに経済的なのでこれを「エコノミー焼き」と命名しておこうではないか。こいつをね、しょうゆをちょっと塗って食べるわけです。このしょうゆ味ってのが大好きでしてね……ていうか、もう完全に大阪人(関西人)失格だよね。せっかく出汁をとって作った甲斐があって、出汁のきいた味わい深いものに仕上がっており、葱の風味と紅生姜も良く合っている。いや、これまたビールが進みますなあ。


【付記】
●ドイツ語で経済は "Ökonomie" ですが、この「オー・ウムラウト」は唇を「お」の形にして「え」と発音します。ちょうど「お」と「え」が混じったような音で、聞きようによっては「オコノミ―」と聞こえぬこともなく、「経済焼き」はまさに「オ(エ)コノミー焼き」だったわけです。偶然の一致なのですが、面白いものですね。


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雷こんにゃく

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無性にこんにゃくが喰いたくなることがある。仮にそれを「突発性こんにゃく渇望症候群」とでも名付けておくが、とにかくこんにゃくが喰いたくてたまらない。そんなバカな、と人は思うだろうが、私(乙山)はすき焼き風煮にも糸こんにゃくが入ってないと気が済まぬ人間である。駅前のスーパーマーケットに板こんにゃくが89円で販売していたので、つい二つもつかんで買い物かごに入れてしまった。

よく「ピリ辛こんにゃく」を作って食べている。ゴマ油で豆板醤を炒め、薄切りにしたこんにゃくを投入してさらに炒め、酒・醤油・みりんで味を付ける簡単料理である。今回もそれにしようかなと思ったが、よく似た料理に「雷こんにゃく」というものがある。上述のピリ辛こんにゃくのように豆板醤は使わぬ代わりに、唐辛子を炒めて辛みを出すもので、好みで一味(七味)唐辛子を加えることもある。

今回は「雷こんにゃく」にしてみよう。しかも乙山流横着の極みということで、できるだけ手軽にできるよう工夫する。ピリ辛こんにゃくも雷こんにゃくも、少し汁を残した状態で仕上げ、それを器にとって冷ます段階で味が染みていく。だったら、初めから味を染み込ませたこんにゃくを、炒めて仕上げればいいではないか? このやり方だと、炒め終わったらすぐ食べられるという利点がある。

料理に取り掛かる。まずこんにゃくの表面に軽く切れ目を入れる。こんにゃくをまな板の上に置いたら斜め45度に軽く細かく切れ目を入れ、今度は方向を変えて初めの切れ目に90度交差するように包丁を入れる。思ったよりこんにゃくは切れてしまうので、軽く入れるのがポイント。だけど、別に切れ目を入れなくたっていいんじゃないかとも思う。おでんのこんにゃくに切れ目は入っていないものが多いけど、だからと言って味が染みていないわけではないでしょう?

こんにゃくの大きさは好みでいいと思うが、今回は短辺を四等分してこんにゃくを細長い棒状にし、それを揃えて四角のこんにゃくを切り出していく。指でちぎったほうが旨いという人もいるだろうし、大きくごろっとしたのが好き、という人もあるだろう。好みに応じて、いろんな形の雷こんにゃくがあっていいと思う。全部切ってしまったら、数分間ゆがいておこう。

ゆであがったこんにゃくを笊(穴あきボウルとかストレーナー)にとり、まだ熱いうちに保存容器に移し、そこに市販のめんつゆ(そばつゆ)を注ぎ入れ、そのまま放置する。味の染みる目安はだいたい3時間くらいだろうか。私など、半日くらいそのまま放ったらかしにすることもあるが大丈夫である。時間がない場合は1時間くらい漬け込んだものを炒めて、その後煮汁を入れて煮切ってしまえばよい。

じゅうぶん味がしみ込んだこんにゃくを再び笊などにとって水気をきりがてら、しばらく放置しておく。これも、面倒くさい場合はそのまま料理に取り掛かって構わない。フライパンなどにゴマ油を入れ、唐辛子一本を輪切りにしたものを炒め、こんにゃくも炒める。辛いのが好きな人は、初めから唐辛子を投入して、辛みをゴマ油に移してしまうのがお勧め。辛いのが苦手な人は、こんにゃくを炒める途中で唐辛子を入れるようにするとよい。

中火でのんびり、こんにゃくの表面に多少焦げ目がついてもかまわない、くらいの感じで炒める。好みにもよると思うが、ある程度炒めこんだ方がいいかもしれない。かなりピリッと来るのが好きなので、ここでさらに追加の一味唐辛子を投入して出来上がり。味はじゅうぶん付いていると思うが、味見をして薄いようなら、酒・醤油・みりんで味を濃くする。または、めんつゆを追加して炒め煮にするといいのではないかと思う。

好みにもよるが、初めに唐辛子の輪切りを炒め、最後に一味唐辛子を投入した場合、かなり辛くなる。なので最初の唐辛子の輪切りだけか、最後の一味唐辛子だけか、どちらかに絞ったほうがいいのではないかと思う。いやホント、冗談抜きで辛いですよ。いわゆる「激辛」が好きな人は大丈夫だろうけど、あまり辛すぎるのも困りもの。最後にしょうゆとみりんを加えて、「照り」を付けるようにすると味が決まると思う(写真はそれをしていません)。

今回は黒っぽいこんにゃくを選んだので、それが引き立つように白っぽい器に盛ってみた。食べてみると、ううむ、なかなかピリッとくるではないか! だけど味はじゅうぶん染み込んだこんにゃく、なかなかいけますよ。ビールにも、日本酒にもぴったり合うんじゃなかろうか。汁気は全くないけれど、保存容器に入れて冷蔵庫で3~4日は持ちます。風呂上がり、とりあえずビールで一杯、というときや、もう一品何か欲しい時など重宝しますね。


【付記】
● 一人で板こんにゃく2枚もどうするんだ、という声が聞こえてきそうですが、けっこう消化してしまえるものです。こんにゃく好きの家族(?)なら、あっという間になくなってしまうかも。


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2014年最初のおでん

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先日、涼しいどころではなく、寒く感じるまで温度が下がった日があった。こうなると、鍋物など何かあったかい食べ物が恋しくなってくる。鍋は乙山流(?)横着鍋で、鶏肉、水菜(白菜)、えのき茸、木綿豆腐、くずきりだけを使い、それを出汁もとらずに「ヒガシマルうどんスープ」で煮込むという横着の極みである。味が付いている汁を小鉢に取り、それに柚子胡椒、柑橘類の汁、七味唐辛子を入れて食べる。

残った出汁はふつうなら雑炊にするところだけど、夜に炭水化物をとるのはできるだけ控えている。翌日、朝か昼に雑炊をすることになるのだが、これも炊いたご飯が冷凍保存してある場合だけで、雑炊のために米を炊くことはない。すると、どうしても鍋の出汁が残ってしまうことになるのだが、捨ててしまうのはもったいない。これをおでんに使ったらどうだろう、と考えた。本当は、きっちり出汁を取ったほうがうまいに決まっているのだが、面倒(おいおい)ではないか。

というわけで今年最初のおでんと相成った。おでん種も、本当はあれこれとあったほうが楽しいのだが、保温調理器を使う関係上、そんなにたくさん入れるわけにはいかない。保温調理器を買う時にいちばん小さいタイプを選んでしまったせいなんだけど、こればかりは仕方がない。だから自分がおでんを注文するときに頼むものは何だろう、と思い出して種を選んで絞り込んでみよう。

まず、厚揚げ。これを外すわけにはいかない。そして大根。出汁が染みた大根はやはりうまいもので、これこそおでんの楽しみではないか。次にこんにゃく。たいてい三角になった分厚いものが出されるけれど、個人的には「結びこんにゃく」のタイプが好きである。それからちくわ。おでんに練り物は付き物だろうけど、自分としてはちくわだけでじゅうぶんである。そして、何か肉類を、これはすじ肉でも鶏肉でもいい。

今回は手羽先を使った。おでん種としての手羽先は、なかなかいけると思っている。鶏が嫌いな人はダメかもしれないが、おでんでじっくり煮込むと、皮のところや軟骨のところがするっと外れてまことに気持ちがいい。まあだけど、手羽先そのものより、「手羽中」のほうが食べやすくていいかもしれない。すじを煮込んだ後のおでん出汁は冷えると固まるが、手羽先でも冷えるとぷるんぷるんになるのである。

そして、できれば入れておきたいのが「青菜」。ここでは「しろ菜」というものを選んだ。おそらく小松菜と青梗菜を掛け合わせたものと想像するが、小松菜の苦みが少なく、青梗菜の中国野菜らしさが少ない、和食に合いそうな野菜で気に入っている。場合によっては手に入らぬこともあるが、あれば必ず手にしている。これは、一緒に煮込むのではなく、食べる直前に別の鍋におでん出汁を取って、さっと煮て合わせる。そうしないと、青さが失われてしまう。

今回、種を絞ったのであれこれ入っていないけど、おでんはやはりうまいねえ。ビールは最初の一杯だけにして、あとはお酒の冷やでいこうじゃないか。燗酒はまだちょっと早いかな、という感じである。とあるウェブログで、おでんにうどんをいれた「おどん」が旨い、とあって、ものすごく実行してみたい気持ちになったけど、ここは我慢をしなければならぬ。夜に炭水化物はできるだけ控え……いや、禁物なのである。


【付記】
● 夜に炭水化物は絶対だめだ、というわけではないと思うのですが、やはり自分なりのルールを作らねばなりません。だったら昼に「麺+ご飯」をやめたらどうだ、という声が聞こえてきそうだが、それはあまりにも図星過ぎて……


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乙山流すき焼き風煮

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生徒学生時代は遠足によく行ったけれど、集団行動が苦手な私(乙山)は遠足にあまり良い思い出がない。高校生になると、体調の不良を訴えて(というか偽って)自主的に遠足を辞退することもあるほどの隠れ不良だった。そんな私だが、今でも心に残っている遠足がある。それは小学校6年生のとき、担任の先生が学級の生徒たちを連れて、日曜日にどこかの河原で自炊をするという非公式の「遠足」だ。

自炊といっても飯盒で米を炊き、おかずは先生の言によると「すき焼き風ごっちゃ煮」だった。どこで調達したのか大きな鍋に牛肉や白菜などを入れ、味付けは砂糖と醤油で行ったのではないかと思う。飯盒で炊いたご飯に「すき焼き風ごっちゃ煮」はとてもおいしかったのである。たぶん秋のよく晴れた日だったと記憶しているが、その後、川に飛び込んだりする者もあったのではないか。

「すき焼き風ごっちゃ煮」とは要するに、すき焼き風の煮物、ということだろう。これは全国各地に家庭料理として存在するのではないかと思われる。ネットで「すき焼き風煮」というレシピさえあるくらいだから、だれでも一度は食べたことのある料理じゃなかろうか。例によって仕事帰りに駅前のスーパーマーケットで牛肉の細切れを見かけたとき、ふとすき焼き風の煮物が食べたくなったのである。

すき焼き風煮を作る材料の根源は牛肉であるが、それ以外には何を入れるといいだろう。近頃の私は、できるだけ具材を減らして簡素なものに仕上げるようにしている。たんに横着なだけかもしれないが、これだけは必要であると思われる素材を選ぶとしたら、第二番目は「糸こんにゃく」ではないか。えっ、そんなバカな、と思われる方もいらっしゃると思うが、乙山流すき焼き風煮において、糸こんにゃくなしはあり得ないのである。

三番目は「白葱」である。柔らかく煮えた白葱はもはや甘いほどで、しかも牛肉の臭み消しにも役立つ。この三本柱で乙山流すき焼き風煮は成立するのだが、ここに木綿豆腐を加えることにした。甘辛い汁が染みた木綿豆腐はうまいに決まっているではないか。しかしこれは駅前のスーパーマーケットではなく、コープこうべの「木綿豆腐」でなくてはならぬ。牛肉と葱、糸こんにゃくだけを買ってミニコープに赴いた。

下拵えをする。糸こんにゃくはゆがいて笊(穴あきボウル)にとっておき、木綿豆腐は重石をかけて水気を抜いておく。これで下ごしらえは終了で、中華鍋に油を入れ、牛肉を炒める。ある程度火が通ったら糸こんにゃくを入れてさらに炒め、味付けに移る。砂糖を切らしているのでみりんと酒を入れて煮込み、しばらくしてから濃口醤油を投入する。ここは、濃口醤油でなくては雰囲気が出ない。

白葱は青い部分もすべて入れ、同時に豆腐も入れる。豆腐を入れたらできるだけ形が崩れぬよう気を付けてかき混ぜ、ある程度煮込んだら火をとめて放置する。白葱は余熱で勝手に火が通るものだし、木綿豆腐はそのままでも食べられるものだから、そんなに長時間煮込む必要は全くない。煮込んでも味は染み込まぬもので、火を止めて冷めていく段階で味が染み込んでいく。

出来上がりをそのまま食べたい、という場合は白葱に火が通って柔らかくなるまで弱火でことこと煮詰めればいいと思う。ほとんど汁気がないので、火を強めるとすぐ煮詰まってしまうのでご注意を。木綿豆腐もあまり煮込み過ぎると「す」が立ってしまうので面白くない。くれぐれも煮込み過ぎに注意が必要である。食べる前から作っておいて、火を止めてしばらく放置しておき、直前にもう一度軽く火を通して温めるくらいがいいのではないかと思う。

酒のあてとして作ったのでそんなに甘辛くなっていないし、色ももう少し付いていたほうが雰囲気が出るのではないかと思う。醤油の甘辛煮は、しっかりと醤油の色が付いていないと話にならないという人もいるのではないか。実際、確かにあの醤油の色は郷愁をそそる何かがあるような気がする。あんまり色は濃くないけれど、牛肉と糸こんにゃく、白葱、そして豆腐、これだけでじゅうぶん、「すき焼き」の感じがするように思う。


【付記】
● 牛肉の細切れが手に入ると、必然的に「肉じゃが」か「すき焼き風煮」になってしまいます。もう少し工夫をせんといかんなあ、とは思うのですが、つい……根っからの横着者とは乙山のことです。


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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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