燗酒を飲む(3) 紀土(キッド)純米酒

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今年の冬は燗酒に親しんだ。それまでほとんどと言っていいくらい燗酒を飲まなかったが、どういうわけか「燗をやってみよう」と思い立ち、実行してみた。もちろん、燗専用の酒器などはないので、徳利に日本酒を注ぎ入れ、それを湯煎するだけである。あまり熱すぎず、かといってぬるすぎる燗もつまらぬもので、自分にとってほどほどの温度を手探りで探し、楽しんできた。

今回は川西にある酒店でもとめた和歌山の酒〈紀土純米酒〉である。なるほど和歌山は紀州だから「紀」で、その土地や風土の意味を込めた「土」なんだな、と納得し、それを〈きど〉と読んで(呼んで)いた。つまり酒屋さんでも「〈きど〉をください」と言っていたわけだが、お店の人は小声で「ああ、〈きっど〉ですね……」と言っていた。

ああそうか、地元ではそれを〈きっど〉と言うんだな、こういう地元だけで流通する言い方ってけっこうあるんだよな、などと勝手に思い込んでいた。ところがどっこい、一升瓶の裏ラベルには〈紀土 -KID-〉と書いてあるではないか。平仮名ならぬ片仮名で書いた〈キッド〉こそが正式名称だったわけで、今度はちゃんと発音しようと思う。

早速燗でやってみました。これはなかなかいける酒だなあ。香りをしっかり感じるし、旨みと酸味が程よく味わえる、非常にバランスのとれた仕上がりになっているように思った。ラベルには「原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)、精米歩合:麹米50%(山田錦)・掛米60%、使用酵母:協会7号酵母、アルコール度数:15度以上16度未満」とある。日本酒度やアミノ酸度などの表示はないけれど、それで困るとか助かるなどということはない。

純米酒でありながら、値段は一升瓶=1980円というなんとも良心的価格ではないか。うむ、これはふだんのお付き合いにはぴったりの値段だな、と思う。ふだんの酒としてよく〈呉春〉や〈香住鶴〉の普通酒を飲むことがあるけれど、これもだいたい同じくらいの値段である。〈紀土純米酒〉は、それらに比べるとはっきりと香りが立っているように思うが、これが料理の邪魔にならない、いい具合に仕上げられている。

川西に所用があるたびに、帰りに日本酒を買うようになってしまった。なにしろ川西にはいい酒店がけっこうあるので、ついつい池田で買うより川西で、ということになってしまうのだろう。また川西にはレンタル店〈蔦屋〉もあり、CDやDVDのレンタルをするにも便利なのだ。もちろん池田にも蔦屋はあるけれど、川西のほうが規模が大きいので、どうもそちらの方に足が向いてしまう。

考えてみると、川西にはレンタル店〈蔦屋〉のほかにも紀伊国屋書店もあるし、阪急百貨店もある。だから川西に住んでいるとよほど特別な用事でもない限り、池田に行くことなどないのではないかと思う。げんにこうして、池田に住んでいる人間が自転車を走らせて川西に買い物に来ているわけである。池田にあって川西にないもの、それはもう銭湯と立ち飲み屋くらいなものではないか、などと思いながら〈紀土〉を背負って自転車を走らせる。


【付記】
● 和歌山の酒〈紀土〉(キッド)はなかなかのものでした。だけど新しい酒を見つけるのはそう簡単に参りません。種類豊富な酒店そのものが、街から消滅しようとしているわけで、これからはウィスキーにしろ日本酒にしろ、もっぱら通販で買い求めるのが主流になってくるかもしれません。


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秋田の酒 〈ながまれ〉

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池田に住んで思うのは「いい酒屋さんがないなあ」ということだ。もちろんこれはいい酒屋さんを探せていないということに尽きるのだが、中華料理店と酒店、蕎麦屋を探すことにかけてはちょっと自信がある(というかそれしか見ていない?)のだ。西宮/宝塚に住んでいたときも本当にいい酒店を二軒ほど知っていたし、川西でも三軒のいい酒店を探しだした。なのに池田は……どうしてだろう。これは自分でも謎というほかない。

池田でまず第一に挙げるべき酒店は駅付近のステーションNにある〈にいみ酒店〉ではないかと思う。店自体はそんなに大きくないというか、もうはっきり言って小さな店構えだけど、隣には池田の酒飲みなら誰でも知っている立ち飲み屋〈備前屋〉がある。なにしろ小さな店だから店頭には酒がそんなに並んでいないけれど、〈備前屋〉で出している酒なら販売してくれるのではないかと思う。

次は池田駅高架下の商業施設ブランマルシェにある酒販売コーナーだろうか。これは酒店というより「酒販売コーナー」とでも言うしかないような雰囲気だが、ここで〈呉春〉、〈緑一〉、〈秋鹿〉と大阪の酒が買えるし、〈百楽門〉という奈良の酒も買うことができる。それらはみないい酒だと思うので、わりと利用している。だけど困るのは、何か他の酒を飲みたいなあ、というときだろうか。日本酒はこれ一本、と決めて飲むことのできない男なのだ。

つい最近も、なんだかね、みたいな感じで切れてしまった酒をどうしようか、と駅前のスーパーマーケットの裏通りをゆっくり自転車で走っていた。このまま進めば某酒の量販店というコース。ああ町の酒屋さんには相すまぬことであるよなあ、などと思うのであるが洋酒はもう某酒の量販店でしか買えない体質になってしまったんである。

おまけに、そこには銀河高原ビールも少々安い値段で置いてある。駅前のスーパーマーケットではいつの間にか銀河高原ビールの取り扱いをやめたようで、これには本当に残念だ。銀河高原ビールは少し高いけれど、この稀少なビールが日本から消滅してほしくないと本気で願っているゆえ、何の足しにもならぬかもしれないが愛飲している。

日が沈むのが早く、もう暗くなってしまった道をのんびりと進むうちに、ふと何か商店のような風情の軒先があったのではないか、しかもそこには酒瓶のようなものがあったのではないかと後戻りすると、昭和の雰囲気を濃厚に残した、時代に取り残されたような一軒の酒屋があった。

店主が一人で店番をしているようだけど、その人がもう「人物」とでも言うのがふさわしいような感じである。風貌はシアトル・マリナーズで活躍している野球の鈴木選手がかなり齢を重ねた、とでも言えばいいのだろうか。細身の体はそのままで、意志の強そうな強い光を持った目をしている。話せば朴訥なようでいてじつは強い主張をしっかり持っているのがそれとなくうかがわれる、なんとも手ごわそうな雰囲気の人に思えた。

これは普通酒ですが、なかなかいけるんですよ、と勧めてくださったのが〈ながまれ〉という秋田の酒。このあたりで秋田の酒を見かけることはほとんどないので、それにします、と購入を決めたが金額を聞いて驚いた。一升瓶=1400円である。何かの間違いではないか、と思ったがそれを口にできず、〈ながまれ〉をリュックサックに入れて自宅まで運んだ。

それが「えっ」と驚くような味だったら奇跡のような出来事だと言えるが、この世の中でそうそう奇跡は起きるものではありません。やはりお値段なりの味、ということでしょうか。だけど、なるほど酒店のご主人が言う通り、けっこういけるんですね。燗もなかなかいいけれど、これはひょっとしたら冷やのほうがいいかもしれない。やはり燗は、冷やでは見えなかったところまで全部さらけ出してしまうところがあるように思う。

〈ながまれ〉は秋田の八重寿(やえす)名醸株式会社が出しているようで、ネットで調べてみるとどういうわけか同社の製品群の中に〈ながまれ〉が入っていないようである。ラベルに書いてある文言を転記しておくと「原材料名:米(国産)、米こうじ(国産)、醸造アルコール、糖類、酸味料」とある。

酒米名が明記しておらず、添加物もかなり多そうで、ふつうだったらまず手に取らないのではないかと思うのだが、そのわりにはなぜかけっこう飲める酒である。これはもちろん、人によることは言うまでもありません。ちなみに「〈ながまれ〉とは、家の中などで、足を伸ばしてゆっくりお休みなさいを意味する秋田の方言です」とラベルに書いてありました。


【付記】
● 池田にもこういう興味深い酒店があったんですね。名前を失念してしまいましたが、なにしろ「酒店 池田」で検索をかけても地図に載っていないくらいなんです。焼酎の品揃えが面白く、夏は絶対ここに来るぞ、などと思ったのでした。


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燗酒を飲む(2) 百楽門本醸造

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いよいよ近畿地方も本格的な冬が到来した、という感じである。朝、ベランダに出ると吐く息が白い。そうそう、冬はこうでなくちゃ、と思う。30年以上前だと、地方によっては外の水道管が凍結して使い物にならなくなった、などという話があったくらいで、今は比較的暖冬気味なのかもしれない。

現在(12月20日頃)の室内温度はだいたい17~18度くらいである。断熱シートを使っているおかげか、まだそれほど暖房装置を使いまくっているわけではない。ベランダに出ると他の部屋の人がエアコンを稼働しているのか、室外機の稼働音が聞こえてくる。夜、外気が10度を下回ってくる中を「寒っ」などとつぶやきながら帰って来ると、部屋に入れば暖房なしの状態でもほんのり暖かく感じるほどで、これは本当にありがたい。

風呂に使って体を温め、風呂上りにあたたかい料理で燗酒(その前にまず缶ビールを一本飲むんだけど)をちびちびやっていると、暖房をしなくても済むくらいである。もちろん、多少厚着をしているわけですが、燗酒を飲むと骨の髄から温まってくるのがうれしい。そんなわけで、いまはもっぱら燗酒を飲んでいる。

今回の酒は〈百楽門本醸造〉である。これは奈良の酒で、御所市の葛城酒造という蔵元が出している。駅の高架下の商業施設にある酒販売コーナーで入手した。以前、これの純米酒がとても個性的な味で気に入ってしまい、冷蔵庫で冷やしてそればかり飲んでいたような気がする。ネットで〈百楽門〉をあれこれ見ていると、「百楽門を知るなら、まずこの1本から」などと書いてあるではないか。

しかも〈百楽門本醸造〉は一升瓶=1750~1890円くらいで、私が買ったのは1950円くらいだったと思うが、とにかく一升瓶が2000円を切るのはうれしいことだ。一升瓶=3000円くらいが私(乙山)の買える上限で、それはお正月とか特別な時に限られる。ふだんなら本当、一升瓶=2000円くらいが基準になっているわけです。

さて今回は〈百楽門本醸造〉をぬる燗にした。燗専用の器具がないため、徳利をどぶんと湯に浸けて湯煎をする。正確に温度を測るための「酒燗計」なるものも世の中には存在しているようだけど、面倒くさいのでその都度飲みながら「勘」で「燗」を仕上げます。その時にタイマーで計っておけば、次回からだいたいどれくらいの時間でぬる燗になるか、わかるわけで、専用器具などなくても燗酒を楽しむことはできる。

さるウェブログでは冷やとぬる燗、熱燗を丁寧に飲み比べてレポートしていらっしゃる方もいて、つくづく感心してしまう。私は酒は好きだがそれほど量を飲めないので、二合以上飲むことはできない。冷や→ぬる燗→熱燗と酒がどう変わるか、というのは本当はしっかり検証するべきなんだろうけど、そんなことをやっていてはぶっ倒れてしまいます。

やはりぬる燗は旨いなあ。冷やでは隠れていた部分が、少し熱を加えることによって動きだす、という感じだろうか。冷やとはまた違った顔を見せてくれるとでも言えばいいのだろうか。ちなみに〈百楽門本醸造〉は「原料米:備前雄町ほか、精米歩合:60%、アルコール度数:15.7度、日本酒度:+5、酸度:1.4、アミノ酸度:1.3」とあるようだ。〈百楽門本醸造〉は一本一本新聞紙で丁寧にくるまれていて、大事にされているんだなあという感じが伝わってくるとてもよい酒だと思う。


【付記】
● 写真に写っているのが池田の陶磁器店で買い求めた一合徳利と猪口です。乙山の好みでは備前焼とか佐渡の無名異焼など雰囲気がいちばんで、次に何も色付けのしていない青磁か白磁ですね。大阪は中之島にある東洋陶磁博物館で見た、朝鮮古代の青磁の器の見事さと言ったらもうえも言えぬものでした。釉薬はあまり使っていないのが好き、というわけですが、今回の藍色(紺色?)の器もそれはそれでいい雰囲気で、楽しくお酒を飲ませてもらっています。


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燗酒を飲む(1) 黒松貴仙寿純米酒

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長らく冷蔵庫で冷やした日本酒を愛飲していた。季節を問わず、たとえ厳寒期であっても冷蔵庫できりっと冷やした純米酒なんぞを飲むのが好きだった。だが、今年はちょっと事情が違う。できるだけ暖房を控えた温度低めの室内で飲むわけだから、燗酒にしてみようかな、と思い至った。だが長年燗酒をしたことがなかったし、たまにすることがあっても電子レンジで温めるという横着ぶり。燗酒をする器材がないのです。

いまは諸般の事情で電子レンジがないので、湯煎方式で燗をするしかない。よく使っている硝子製の徳利があるけれど、つい最近扱いをまちがって注ぎ口が欠けてしまった。これはもう、徳利を買わないといけないわけであるが、近所に瀬戸物屋さん(陶磁器店)はほとんど見かけないし、スーパーマーケットや生協の食器売り場もいま一つの品揃え。よく利用する100円均一店にもこれといった徳利が置いてないことがわかった。

アルミニウムや銅製の酒たんぽ(ちろり)を使ってやるのがいいように思うが、そもそも気の利いた徳利さえ見つけられない環境に酒たんぽとかちろりがあるはずもなく、大阪は難波の道具屋筋に買いに行かないといけないのかなあ、などと思っていた。道具屋筋は大好きなので楽しい買い物になるとは思うが、いかんせんそこまで行く交通費が往復1000円近くかかってしまう。それではネット通販とあまり変わりがないどころか、ネット通販のほうが安いかもしれぬ。

さてどうしたもんだろう、などと考えながら休日、近所の市場に足を運んでみた。駅前にある池田中央市場という昔ながらの「公設市場」のような懐かしい市場で、ここの金物屋さんで何度か買い物をしたことがある。金物屋さんとはいうけれど、ガラス器や陶磁器も置いていたのではないかと思う。見るとやっぱり、陶磁器がいくつかあって、スーパーマーケットよりはるかに面白そうな品物が並んでいるではないか。その中に「酒燗用」という可愛らしい器(写真の青い器)を見つけたのですかさず購入。600円である。ただし一点もので、猪口は付いていない。

その足(というか自転車)で、ついでに栄町(さかえまち)商店街に向かった。商店街は少し元気がないのが残念だが、商店街を抜けて能勢街道沿いの池田本町通りに陶磁器店があるのを思い出したのだ。もしかしたら、何か面白い徳利とか猪口があるかもしれないではないか。小さな店構えの陶磁器店は開いているようである。早速中に入ってみた。

年配のご主人と奥様がひっそりと経営なさっているようで、肩に背負ったリュックサックが店内の食器類に当たらぬよう肩から下ろして物色する。食器類は100円均一店で揃えることが多いので、感覚がずれてしまっているのかもしれないが、瀬戸物というのは高いものだなあ、と正直思った。業者の方は何を抜かすかこのあんぽんたん、すっとこどっこいめが、と思うかも知れぬが、庶民感覚というのはそういうもの。

だけどこれならいいかも、という徳利と猪口を見つけることができました。何焼きかは不明だが、深い藍色というか紺色で揃いの一合徳利と猪口。一合徳利というのがなかなかないんですね。一人で飲むことが多いから、二合徳利では少々大き過ぎるのだ。徳利が2000円、猪口が800円でしめて2800円。これは安いのか、高いのか、私にはわからない。ご主人はとてもいい人で、200円まけてくれましたよ。2800円でふつうに支払いをした後でね、よかったら珈琲でも飲んでくださいと、そっと200円を渡してくれたんです。

さて燗酒に合う酒は、となると、これもいろいろあるようだけど、今回は〈黒松貴仙寿純米酒〉にしてみた。奈良の蔵元で、純米酒ながら2000円を切るいい酒だと思う。たしか以前記事にもしている(黒松貴仙寿純米酒の記事へ≫)。アルミ製の小さな鍋に酒燗用器を入れて火にかける。温度計はないから取り出しては飲んで、具合を確かめながらぬる燗に仕上げる。室温18度くらいで、湯気がほんの少し立つ程度につけた燗酒を飲む。うむ、これはなかなかいけるではないか、とか言いながらいそいそと一合徳利に貴仙寿を注いで二合目の燗酒の用意をする。


【付記】
● ぬる燗は意外と早く冷めてくるので、つい飲むテンポが速くなりがちに。だけど調子に乗ってぐいぐいやるとぶっ倒れてしまうので乙山の場合、やはり二合で止めておかないとなりません。よくやる常夜鍋ふうの「我が家の鍋」と合わせて燗酒を飲んでいれば、室温18度でも何とか大丈夫。ちなみに12月10日を過ぎたころから、室温は17度台になりました。風邪をひいては元も子もありませんから、ついにガスヒーターを点火しました。


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池田酒〈呉春〉普通酒

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朝の散歩で近所を歩いていると、「お酒の配達いたします」という看板を目にしてどうも気になっていた。後日その店まで出向いて行って話を聞くと、私(乙山)が住んでいる所なら配達可能だそうである。その日はお店の電話番号を記した紙をもらって帰り、数日後の休日、この後はずっと家にいるだろうということでお酒の配達をお願いした。〈呉春〉の普通酒一升瓶=1900円という嬉しいお値段、しかも配達料を取るなどということもしない非常に良心的なお店である。

個性の強い日本酒は飲んでも面白く、ウェブログの記事にも書きやすい。なのでつい、飲んだことのない酒をいろいろ試してみているが、個性の強い酒ばかり飲んで料理と合わせていると、それはそれでおいしいのになぜか「なんかちがうなあ」という気がしてきて、ごく普通の酒を飲みたくなることがある。これを「酒の寄り戻し現象」と勝手に称してこれまた勝手に納得しているのだが、酒の寄り戻し現象の際、まずに念頭に浮かぶ「普通の酒」が〈呉春〉とか〈香住鶴〉の普通酒なのである。

だが〈呉春〉とか〈香住鶴〉の普通酒の、どこがどう旨いのだ、と言われると少し困ってしまう。いずれもなんというか「おとなしい酒」とでも言うべきもので、これが呉春の、あれが香住鶴の特徴だ、などと声を大にして叫ぶような酒ではないのである。もしそれがなんの酒かまったくわからない状態で出されたとしたら、飲んでみて呉春だ、香住鶴だ、と言い当てることが難しいのではないかと思う。

それではいったい、それら普通酒の魅力はどこにあるのだろうか? 一つ言えるのは、それらを飲むと、他の酒の味がよくわかるということではないだろうか。たとえば最近、〈緑一特別本醸造原酒〉を飲んだ直後に、同じ蔵元の〈緑一本醸造〉を飲むと、なんだかぱっとしない感じがしたのだが、間に〈呉春〉を挟むと〈緑一本醸造〉が持つ酵母の香りがふわりと漂ってくるのである。そうか、こんな味だったのか、と改めて〈緑一本醸造〉のよさがわかった次第である。

日本酒のデータから何を読み取るかは人それぞれで、味わう前からデータを見ただけでその酒のだいたいの味の傾向がわかる達人もいるのではないか。いちおうわかる範囲で〈呉春普通酒〉のデータを挙げておくと、「原料米:五百万石、精米歩合:68%、酵母:協会7号、日本酒度:±0、酸度:1.3、アミノ酸度:1.2、アルコール度数:15~16%」とあるようだ。なにしろ蔵元のホームページがないため、販売業者のそれを参照するしかないのである。

以前〈呉春〉のことを記事に書いた(〈呉春〉の記事へ≫)ときにもふれたが、〈呉春〉は日本酒度が±0の酒。これは非常に珍しいのではないだろうか。いつも日本酒度がプラス方向に振れている酒を主に飲みつけていると、次第に辛口が標準というか、それを基準にして味を判断するようになる。それをもう一度リセットしてくれるのが私にとって〈呉春〉なのだと思う。そういえば〈香住鶴〉の普通酒も日本酒度は+2~2.5くらいで、そんなに辛口ではなかったように思う。

さて久しぶりに〈呉春〉の普通酒を飲む。うん、やっぱりこの味だな、なんておとなしいんだろうと思う。家で飲んでもおいしいけれど、池田の小料理屋なんかで呉春の普通酒を冷やしてくれていたら嬉しくなってつい頼んでしまうこともある。するとどういうわけか家とはまた違った感じでおいしく感じる。これはつくづく不思議に思う。酒の味は味覚によるものだとわかってはいるけれど、それだけではない様々な要素によってその時々の「味」が作られるというわけなんだろうか。


【付記】
● 朝、野菜(レタスと胡瓜)のサンドイッチを作って食べていますが、この時のパンは6枚切りを2枚重ねておりました。そんなにいうほど食べすぎではない(?)と思うのですが、このたび8枚切りに変更してみました。4日間も常温保存できませんので、半分を冷凍し、解凍した生パンを3日目に食べてみると、なかなかいけるではありませんか。
これは、常温(または冷蔵)で保存したパンの3日目よりおいしかったのです。なんだそんなこと、あたりまえじゃないかと思う方もいらっしゃると思うのですが、乙山にとってはなんだか嬉しい発見でした。


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只野乙山

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⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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