『あなただけ今晩は』

『あなただけ今晩は』(1963年、アメリカ映画、147分)

IrmaLaDouce.jpg
原題:Irma la Douce
監督:ビリー・ワイルダー
音楽:アンドレ・プレヴィン
出演:ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、ルー・ジャコビほか


『アパートの鍵貸します』(1960)と同スタッフ、同キャストで撮影された『あなただけ今晩は』を見た。舞台はパリの中央市場、娼婦街カサノバ通り、警官は賄賂を受け取って見て見ぬふりをしていた。そこへ、仕事熱心な警官のネスター・パトゥー(ジャック・レモン)が赴任してきた。売春を見逃すことのできぬネスターは娼婦たちが仕事場にしているカサノバ・ホテルに踏み込んで娼婦たちを連行するが、客の一人に上司がいたことで、クビになってしまう。

酒場の喧嘩でネスターは子犬を連れた娼婦イルマ(シャーリー・マクレーン)のヒモを殴り飛ばし、それがきっかけでイルマはネスターに惚れ込み、いつの間にやらイルマのヒモになってしまった。だが警官時代の制服は今でも持っており、根が正直なネスターはイルマが客を取ることで苦しむようになる。そこで酒場の店主ムスターシュ(ルー・ジャコビ)と共謀して英国貴族のX卿に扮することにした。

ムスターシュから金を借り、それを代金としてイルマに渡すのだが、イルマはネスターに金を渡すのだから、結局ムスターシュに金が返ってくるという寸法だった。上客がついた、と大喜びするイルマ、それを見聞きしていたヒモたちは、ネスターを会長にすると言い出す。新会長のお祝いだ、とムスターシュの店ではシャンパンが抜かれ、娼婦たちが飲めや踊れやの大騒ぎ。だが、シャンパン代は新会長が払うことになっているのを知らぬネスターは、ムスターシュに金を返せなくなってしまう。

とうとうネスターは深夜から朝にかけて市場で働くことに。イルマが眠っている間にそっと抜け出したネスターは、市場で食材を運んだりしてくたくたになって早朝に帰宅する。イルマがどこかへ行きましょうよ、と言っても、また今度にしてくれ、と眠り込んでしまうネスター。ある朝、ネスターがいないことに気付いたイルマは、帰ってきたネスターと言い合いになる。意地を張ったネスターは、他にも女がいるんだ、とありもしないことをつい言ってしまい、イルマを激怒させてしまう。

とまあ、そんな感じで進んでいくのだが、シャーリー・マクレーンがこういう役をやるんだなあ、と感心してしまった。どちらかというと清楚なイメージがあったので、意外な感じがしたけれど、さほど似合ってないとは感じなかった。だけど、ぴったりはまっているようにも思えなかったのも事実。こういう役は、例えばマリリン・モンローなんかだとズバリはまるんじゃないかと思う。

娼婦の役といっても、そこはビリー・ワイルダーだけあって抑制が効いており、露出はほとんどなかったんじゃなかろうか。小顔でメイクは控えめにしたほうが、シャーリー・マクレーンらしい感じがすると思うんだけど、役が役だけに仕方のないことだろう。なんかねえ、イルマの顔を見ているとかなり無理している感じがするんですね。どうしても『アパートの鍵貸します』の彼女の顔を思い出してしまうのだ。

ジャック・レモンはさすがですね。警官の制服も似合っているし、ボーター・ハットを被ったヒモ役もなかなか格好良い。かと思えば、市場で働く労働者に扮しても全く違和感がないのが不思議なところで、本当に何でもできる俳優とでも言えばいいのだろうか。抜群の美男子ではないのだが、何とも味のある顔をしていて、本作も見ているとイルマよりネスターに感情移入していることが多かったように思う。

デジタル・リマスター版かどうかわからないが、思ったより画面が綺麗だった。カラー映像だから、ひょっとしたら退色しているかもしれないと予想していたのだが、夢見るようなゴージャスな画面ではないか。イルマのお気に入りの緑色の服もよく映えていた。まさか、緑色の服のためにカラー映画にしたってわけじゃないと思うけど……


【付記】
● 『アパートの鍵貸します』のように胸一杯になるというわけではないのですが、『アパート』で抱擁すらなかった二人が、『あなただけ』ではもう、行くところまで行くってわけなんですね。同スタッフと同キャストという珍しい二本の映画、どちらも甲乙つけがたいのですが、『あなただけ』にいささか緩んだものを感じてしまいました。


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こんばんは

いつもながら只野乙山さんならではの映画のチョイスがシブいですね。

こちらは歴史的にも興味深いものがありますね。
中世ヨーロッパの娼婦の社会的地位は低くはなかったそうで、職業として法律でも保護されていた?とか?一般女性と見分けがつくように「緑色のドレス」が娼婦の象徴だったと。
それらを、こちらの映画でも表現されてる様子で、とても面白いと思いました。
シャーリーマクレーンだからこそ、表現したかったことかもしれませんね。
なかなか深い映画の様で、是非とも見てみたいと思いました。
^^

Re: こんばんは ; かえるママ21さん

かえるママさん、今晩は! コメントありがとうございます。
おお、そうですか、娼婦が緑色のドレスを……気付いていませんでした。
キリスト教文化圏では厳しいでしょうね、とくにアメリカを舞台にするわけには……

すごく興味を持ちました、そのあたりを調べてみたくなりましたね。
だけどこれは微妙な問題ですよね。寛容な社会のほうがいいように思えますが、
体裁を考えると、そうも言ってはいられないところもあるんですよね。

ところでDVD版の本作、映像が綺麗でしたよ!
なんかね、もう夢見るようなゴージャスな感じなんです。
1970年代の映画で退色したものを見るのはきついですが、
しっかりデジタル処理した映像はすごい。さすがハリウッドという感じでした。
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