『袋小路』

『袋小路』(1966年、イギリス映画、112分)

CulDeSac_01.jpg
原題:Cul-de-sac
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ドナルド・プレザンス、フランソワーズ・ドルレアック、ライオネル・スタンダー他


映画の舞台はイギリス東部のリンディスファーン島で、この島は干潮時には本土とつながる道ができるが、満潮時には水没して行き来ができなくなる。その道を、一台の車がゆっくりと進んでいく場面から始まる。運転席には腹を撃たれて重傷を負った男・アルバートがいて、もう一人の男・リチャード(ライオネル・スタンダー)も腕を撃たれており、リチャードが車を押している。

彼らは強盗に失敗して逃亡中なのだ。車が動かなくなると、リチャードは電話線をたどって古城にたどり着く。そこでは全財産を使って古城を買い取り、若い妻・テレサ(フランソワーズ・ドルレアック)と理想の生活を送ろうとする中年男のジョージ(ドナルド・プレザンス)が住んでいた。ちょうど来客中で、凧揚げをしているジョージと客たちだが、テレサは隣人の若い男性と肌を合わせていて、浮気の現場をリチャードは目撃してしまう。

やがて夜になり、寝巻がない、とジョージは言うのだがテレサは探そうともしない。ベッドの下にあるんじゃないの、というので探してみるとテレサのネグリジェが出てきた。テレサはふざけてそれをジョージに着せ、さらに悪乗りしてジョージに口紅を塗ってアイラインを描き、女装させて笑い転げる。リチャードは家に忍び込み、電話をかけてボスと連絡を取ろうとする。物音に気付いた二人はついにリチャードに出くわすが、間抜けにも女装のままだった。

拳銃を持っているリチャードに二人はなす術もなく、アルバートのいる車を押すように強要されるが、もう車は半分水没しており、アルバートも死にそうになっている。ようやく彼を家に運び込んで横たわらせると、電話で連絡がつき、仲間をそちらに向かわせることになった。直後、リチャードは電話線を切断し、古城は外界と完全に隔絶されてしまう。

とまあ、そんな感じで話は進んでいくのだが、拳銃を持った強盗犯に家を乗っ取られてしまうという緊迫した設定になっているはずなのに、どこか間抜けな感じがして笑えてしまう。強盗犯たちも相当な間抜けなのだが、それに輪をかけた大間抜けなのがジョージなのである。正義のヒーローのように立ち向かうこともできず、ただ言いなりになっているジョージに、テレサは不満そうにするが自分でもどうしようもない。

CulDeSac_02.jpgテレサを演じているのはフランソワーズ・ドルレアックで、カトリーヌ・ドヌーヴの実姉なんだけど、映画の中ではよくわからない女なんですね。アルバートが死んだのでリチャードが穴を掘っていると、それを手伝ったり、リチャードにウオッカを飲ませてやったり、なんて普通するだろうか? 寝るときは素っ裸だし、泳いでくるわ、とこれまた素っ裸で海に向かうし……果ては眠っているリチャードの足の指に紙をはさみ、火をつけて「自転車っていうのよ」って、いったい……

リチャードはひたすら仲間が来るのを待つのだが、待てど暮らせど仲間が現れる様子はない。だれかが古城に車でやって来るのを確認して狂喜するリチャードだが、ジョージの来客だった。リチャードの存在は不自然なので、彼は庭師兼召使として住み込んでいることにした。さあ、飲み物を持ってきて、料理を出して、とリチャードをこき使うテレサ。私がやろう、と妙に召使に優しいジョージ、そして渋々ながらも客にサーヴするリチャードの姿がまた笑えてくる。

緊迫した関係のはずなのに、間抜けな出来事があちこちに散りばめられていてどこか笑えてしまうのに不思議な感じがするのだが、おそらくポランスキーの意図したところではないかと思う。話が進むにつれてジョージのエキセントリックさが肥大していき、テレサのわけのわからなさも相変わらずで、犯罪者のリチャードがいちばんまともな人間に見えてくるのが変な感じである。

何しろリチャードは、テレサの浮気の現場を目撃しているにもかからわず、ジョージにそれを話そうとしない「良い奴」なのである。またジョージがアルバートの眼鏡を踏んでしまうと「死者に対する敬意がない」と叱り飛ばすのだ。リチャードがやっていること自体が相当ひどいことなんだけど、それに対して夫婦が力を合わせて立ち向かうということが起らないのも変な感じだ。この奇妙さ、人間関係の微妙な変化、緊迫と弛緩の繰り返しから生まれるブラックな笑いこそ、この映画の魅力なのかもしれない。


【付記】
● リンディスファーン島というロケーション地もうまいこと選んだなあ、と思いました。『反撥』でドヌーヴは全く脱がなかったのに対して、『袋小路』でのドルレアックはわりと脱いでいましたね。フルヌードを背後から撮ったショットが何度もありますし、濃い色のワンピースを着て背中のジッパーを上げようとする場面はほとんど意味がないのだけど、たぶんベストショットだろうと思ったのでキャプチャーしておきました。


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