シングルトン・オブ・ダフタウン12年 シングルモルト(スペイサイド)

SingletonOfDofftown.jpg
今回はボトルの形状がユニークなシングルモルト〈シングルトン・オブ・ダフタウン12年〉を飲んでみた。ウェブ地図で製造元のダフタウン蒸留所を見ると、直接その名前を見出すことはできず、"United Distillers & Vintners" とあり、住所は Keith, Banffshire AB55 4BR で物の本*に記載されているダフタウン蒸留所と一致する。詳細は不明だが、現在の所有者はディアジオ社となっているそうだ。

ダフタウン蒸留所はスペイサイド地区、ダラン川とフィディック川の合流地点付近にあり、このあたりにはグレンフィディック蒸留所やバルヴィニー蒸留所などいくつかの蒸留所が密集している。ダフタウンの原酒はそのほとんど(98%)がブレンド用になるそうで、シングルモルトとしてシングルトンを販売したのも比較的近年のようだ。こういう、昔はなかったモルトは多いのではなかろうか。

そもそも、「シングルトン」のシングルモルトが発売されたのが1980年代後半のようで、当時はオスロスク(オスロイスク)蒸留所からシングルトンが出ていた。その後吸収や合併が進み、シングルトンのブランドを売却、現在のダフタウン蒸留所によるシングルトンに至っている。ウェブ上ではオスロスク蒸留所時代のシングルトンのオールドボトルが取引されているのを見かけた。

小さなグラスに注いでみると、かなり濃い目の琥珀色。ドライフルーツを思わせる香り。有機溶剤にバナナが混ざったような香りがするが、スモーキーさはほとんど感知できない。口に含むとまずモルトの甘みを感じるが、すぐにやってくるのがスパイシーさである。このスパイシーさは意外と強めで、かなり強く尾を引く。最後に残るのはモルトの甘みで、どこか香草を思わせるものがある。

スモーキーやピーティさはほとんど感じられない。口に含んでいると、わずかにオイリーさも感じられるが、ナッツを思わせる濃厚さまでには至らない。フィニッシュはそんなに長くないが、スパイシーさが後を引いた後にオイリーさが来て、最後にはモルトの甘みが締めくくってくれる感じだ。ヴァニラやカラメル系の甘みは全くないといっていいが、最後の最後でふっとナッツ類の感じが漂ってくるように思えた。

ボトルのラベルに書いてあるようにリッチでスムースなんだけど、これは日本人が感じる「リッチでスムース」という味わいとは少し違うのではないかと思う。モルトの甘みとスパイシーさがこのウィスキーの核で、両者のバランスは適度に保たれているように感じた。日本のウィスキーにはスパイシーさがほとんどないので、モルトの甘みとスパイシーさで組み立てられたシングルトンは、日本人にとってわかりにくいかも。これといった特徴がいささかつかみにくい味わいだと感じた。

つまり「12年物なんだから、どれだけいい味がするんだろう」という期待に応えきれるかどうか、微妙なところではないかと想像する。若干の加水では味わいのバランスは崩れない。モルトの甘みが前面に出て、スパイシーさは少し後退する。トゥワイス・アップ(ウィスキー:水=1:1)までもっていくと、かなり飲みやすくなる。ひょっとすると、スモーキーさが現れてくるのでは、と期待したがそれはなかった。

氷に注いで飲むと、ハーヴ香を含んだモルトの甘みが前に出てくる。スパイシーさは少し後退し、ストレートより飲みやすくなるうえに、オイリーさとナッツ類を思わせる味わいがよくわかってたいへん好ましい。ただ、うっとりするようなエステリーさには届かないし、わかりやすいヴァニラやカラメル系の華やかな甘さはなく、まさにブレンドに向いた味わいであるように感じた。

1:1水割りではどうなのか。ここでは、30mlのシングルトン12年に同量の水を加え、オールドファッションド・グラスに入れた氷に注いで飲んでいる。冷却された分だけ、甘さが凝縮して感じるのだろうか、トゥワイス・アップと希釈量は同じなのに、こちらの方がおいしく感じるのが不思議だ。ただし水割りはこのあたりが限界で、これ以上薄めると味がわからなくなってしまう。

ある程度予想はできるのだが、ソーダ・ハイボールに仕立ててみた。やはり、こういうモルトの甘みで勝負するタイプは、ソーダ割りにするとあまり面白くない。酸味が前に出て、モルトの甘みが後退し、スパイシーさやオイリーさはかき消されてしまうのである。ただ、ひどくて飲めたものではない、というわけではなく、飲み物としてはそんなに悪くないが強くお勧めできない。

*土屋守『シングルモルトウィスキー大全』(小学館、2009年)

【付記】
● これは強くお勧めしにくい一本かもしれません。決して悪くないのですが、日本のウィスキーの「華やかな甘さ」を旨さの基準にしている人は、たぶん面白く感じないだろうと予想します。モルトの甘さとスパイシーな辛さとのバランスは良いのですが、見方を変えると何かが突出しているわけではない、すべてが控えめな特徴をつかみにくいモルト、とも言えるわけです。もちろん、話の種としてシングルトンを知ったことは乙山にとって良い経験でありました。


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/04 (7)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)