『華麗なるギャッツビー』

『華麗なるギャッツビー』(1974年、アメリカ映画、144分)

TheGreatGatsby_01.jpg原題:The Great Gatsby
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
監督:ジャック・クレイトン
脚本:フランシス・フォード・コッポラ
出演:ロバート・レッドフォード、ミア・ファロー、サム・ウォーターストン、ブルース・ダーン、カレン・ブラック、スコット・ウィルソンほか


『華麗なるギャッツビー』を見たのはたぶん1980年代後半で、レンタルでVHSを借りて見たように覚えている。とにかく、アメリカのアッパークラスを描いただけあって男女ともども衣装が見事で、特に男性たちの衣装に強く惹かれた。男性ワードローブがあのラルフ・ローレンによるものだと知ったのはずいぶん後になってからである。

映画はジェイ・ギャッツビー(ロバート・レッドフォード)の隣人であるニック(サム・ウォーターストン)が、ニューヨーク郊外のロング・アイランドのウェスト・エッグ(架空の地)にあるギャッツビー邸で、すべてが終わった後にたたずむ姿から始まり、やがてニックの回想形式で彼とギャッツビーの出会いが描かれる。

ウェスト・エッグのギャッツビー邸では夜な夜なパーティーが開かれ、上流階級の名士たちが集ってダンスと酒、美食にふけるのだった。パーティーのホストであるはずのギャッツビーは、集まった人々の顔ぶれを見ると自室に引っ込んでしまう。どうやって金を儲けているのか謎に満ちたギャッツビーには様々なうわさが飛び交っていた。

ニックはギャッツビーの正式な招待を受けて客人となりパーティーに参加、ギャッツビーと知り合うが、ギャッツビーはイースト・エッグに住む既婚の女性、デイジーにどうしても会いたがっていると知る。第一次大戦当時、軍人だったギャッツビーと裕福な家の娘デイジー(ミア・ファロー)は恋に落ちたが、戦争が終わった後のギャッツビーは一文無しで、そこに富豪のトム・ブキャナン(ブルース・ダーン)が現れて、デイジーはギャッツビーを待てずにトムと結婚してしまう。

ニックの家でギャッツビーと再会したデイジーは、誘われるままニックとともにギャッツビー邸に赴くが、そこでギャッツビーがシャツをばらまく有名な場面になる。すべて英国製なんだ、シーズンごとに届けてくれる、とギャッツビーがシャツをばらまいて部屋がシャツだらけになるが、デイジーは、こんな美しいシャツを見たのは生まれて初めて、とシャツに頬ずりして涙を流す。

自分への愛がまだデイジーに残っているのを確かめたギャッツビーは、トムと別れて自分と暮らすようデイジーを説得、彼女もそうする気になっていくのだが、果たしてギャッツビーとデイジーは愛を取り戻すことができるのか? とまあ、そんな感じで映画は進んでいくのだが、やはり男性陣の華麗な服装に気を取られてしまうなあ。

TheGreatGatsby_02.jpgデイジーと再会するギャッツビーの気合の入れようはただごとではない。オフホワイトかアイヴォリーと思われる3ピースをびしっと決めているが、ウェストコートはダブルブレステッドで、足元はホワイトバックス、淡いブルーのシャツはピンカラーで、ネクタイは無地の茶系でこれがまた効いている。庭で半ば寝ころびながらクリケット・セーターを脱いで肩からかけ、袖を前で軽く結ぶスタイルがまたいいですね。

これの以前からそんなふうにしていたものかもしれないが、まだ確認はできておらず、たぶん『ギャッツビー』がいちばん初めなのかもしれない(要確認)。日本の某芸能人が始めたようにまちがって思い込んでいる人たちが少なからず存在しているようだが、そのせいでどうしても肩からコットン・セーターをかけて袖を前で結ぶのができなくなってしまったのが何とも恥ずかしい。

シャツもロンドン・ストライプのクレリック・シャツとか、ラウンド・カラーなどありとあらゆるタイプが出てくるが、ボタンダウン・シャツはほとんど見かけることがなかった。あれは、ポロ競技の際にシャツの襟がはためくのを留めたのが始まりで、本来スポーティなものであり、ドレス・コードが求められる際には外すべき、ということなんだろうと想像する。

年代的にはすでにブルックス・ブラザーズは存在しているはずで、だれかがボタンダウン・シャツを着ていてもおかしくないはずなのだが、ラルフ・ローレンとしては英国スタイルを踏襲したデザインで通したかったのかもしれない。みなでニューヨークに繰り出すぞ、というときにはスペクテイター・シューズ(白と黒または白と茶色のコンビネーテッド・フル・ブローグ)を合わせていますが、もう格好良すぎてしびれてしまいそうである。

1920年代後半の再現ということで、全編クーラーなしで通したようで、俳優陣はみな汗をかいていますね。女優たちは涼しそうにしているけれど、男優は長袖シャツにウェストコートとジャケットなので、暑くてたまらなかったんじゃなかろうか。そのうえ、撮影のライトが当たるわけでしょう。とか、本筋そっちのけ(完全にそうなるわけじゃないんですが)でつい細部に目が行ってしまう映画である。


【付記】
● またまた枝葉末節に流れてしまうのですが、ギャッツビー邸にはゼンマイ式のアコースティック電蓄が置いてあって、ピアノ型にデザインされています。ラッパが見当たらないのですが、クレデンザのような仕様だったら、下部にホーンがあるはずです。あれは本当に存在した製品なのか、それとも映画用にこしらえたものなのか、ちょっと気になってしまいました。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

こっちの方が良さそう

おはようございます。
ギャッツビーはフィッツジェラルドの原作も読みましたし、この映画も昔見た記憶があるのですが、シャツのシーンとか全然覚えてませんでした。今でもその片鱗はあるのでしょうが、最も英国=高級品の時代だったのでしょうか。
実は最近CSで、バズ・ラーマン+ディカプリオの21世紀版を見たのですが、余りのケバケバしさ(インド映画的か)に、途中で断念してしまいました。
こっちを見直したいです。

Re: こっちの方が良さそう ; yuccalinaさん

yuccalinaさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
『ギャッツビー』は新潮文庫から出ていましたね、しっかり映画の一場面が表紙に……
まだ本棚にあるかもしれませんが、村上春樹訳も読んでみたいです。

まあ、1920年代ではやはり英国製が一番、という感じではないでしょうか。
1950年代のマリリン・モンロー出演の映画でも、パリにあこがれて、買い物三昧ですからね。

新しいリメイクがあるのを知っていますが、どうも見る気にはなれません。
リメイクって、だいたいダメなことが多いですよね。

懐かしい

どこか肩の力が抜けた感じの文章が好きでブログを読ませていただいています。たまたまこのギャツビーの講談社文庫版の翻訳を私の大叔父がやっていまして懐かしく思いコメントさせていただきました。通っていた小学校の図書館にその本が置かれていた時は、恥ずかしいような誇らしいような気持ちになったのを覚えています。まだ純真だった40年前。みんな゛うしているのかな〜。
これからもブログ楽しみにしています。

Re: 懐かしい ; ひげナマズさん

ひげナマズさん、コメントありがとうございます。
なるほど、大叔父様が講談社文庫版『ギャッツビー』を翻訳を……
乙山は新潮文庫版しか知りませんので、たいへん興味を持ちました。
村上春樹訳の『ザ・グレート・ギャッツビー』も読んでみたいと思うんです。

今後ともよろしくお願いいたします。

はじめまして。
考えてみれば、レッドフォードもあの頃がキャリアの絶頂期だったのではないでしょうか。
当時は映画雑誌のファッション特集の常連でもありました。
ニットの肩掛けでは「冒険者たち」のアラン・ドロンが印象に残っています。ヒロインの故郷に向う船上でのシーン。なんでもない白いシャツ、黒のパンツ、同色のニットを肩に掛けて、ウェリントンタイプのサングラス。さりげなく格好良かったなぁ。

Re: たんころりんさん

たんころりんさん、初めまして。コメントありがとうございます。
例えば『スクリーン』などを毎号読んでいたわけではないので、詳細はわかりませんが、
ロバート・レッドフォードやポール・ニューマン、そしてスティーブ・マックィーンなど、
一枚の写真から「真似してみたい」と思えるような感じでしたね。

『冒険者たち』の情報、ありがとうございます。
ニットの肩掛け、やっぱりあったんですよね。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/11 (6)

2017/10 (9)

2017/09 (9)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)