『恋をしましょう』

『恋をしましょう』(1960年、アメリカ映画、119分)

LetsMakeLove.jpg
原題:Let's Make Love
監督:ジョージ・キューカー
出演:マリリン・モンロー、イヴ・モンタン、トニー・ランドールほか


マリリン・モンローの最後から二番目の主演映画『恋をしましょう』(1960)を見た。億万長者のジャン=マルク・クレマン(イヴ・モンタン)は、会社の広報担当コフマン(トニー・ランドール)からあるミュージカルが上演されるらしいという情報を聞く。なんでもプレイボーイとして有名なクレマン氏をコケにするようなものだという。

コフマンは「一度リハーサルを見に行ったらどうでしょう」と提案、クレマンは彼を連れて町の小さな劇場に赴く。クレマンは主演女優アマンダ(マリリン・モンロー)に一目惚れするが、クレマン役のオーディションも同時に行われており、彼は「クレマンにそっくりだ」ということでスタッフに目を付けられる。どうしてもアマンダに近付きたいクレマンは、周囲の反対を押し切ってクレマン役を演じることにした。

とまあ、億万長者があの手この手を駆使して舞台女優を口説き落とす話なんですね。だけどアマンダの登場場面に度肝を抜かれたなあ。彼女は黒のブラとショーツにセーターだけといういでたちで、思わず「マリリン、なんちゅう格好を……」とつぶやきそうになってしまったくらいである。男たちに囲まれて踊り、最後はセーターを脱いで放り投げ、それを受け取ったのがクレマンというわけだ。

アマンダは登場するなり「My Heart Belongs to Daddy」を歌うのだが、これがまた印象に残る。そんなに上手というわけでもない低めアルトなのに、なぜか惹きこむ魅力がある。そういえばソフィー・ミルマンのデヴューアルバムに同曲が選ばれていたが、きっとマリリン・モンローを意識していたにちがいない。シリアスな『欲望という名の電車』より本作のほうがマリリンには合っているように思う。

イヴ・モンタンはじつに渋い顔だ。アラン・ドロンとかアル・パチーノのような美男子ではないと思うが、演劇の素人ぽい感じをうまく演じていたように感じた。イヴ・モンタンといえばコメディのイメージは少ないような気がして、なんだかぎごちないふうにも見えるのだがあれもやはり演技のうちだったんだろうか。本作でも歌を披露してくれるが、素人という設定なのかそんなにたくさん歌うわけではない。

億万長者が女の子に一目惚れし、あの手この手で何とか口説くというアイディアは面白いと思う。だけど見ている方は感情移入しにくいんじゃないかなあ。ジョークを金で買うとか、劇団の筆頭出資者になって好きなようにするなど、フェアじゃないんですね。アマンダも最後のほうまで劇団の主演男優の味方をするし、気持ちも彼の方を向いているはずなのに、いきなりクレマンになびく流れはいささか無理があるような気がする。

ふつうだったら、クレマンは敵役として二人の邪魔をする役回りで、どんな試練や困難があっても貧しい二人が愛を貫く、というような筋になるのだが、そこを反転したのが本作の面白いところであり、危ないところでもあるのだろう。豪華なキャスティングと面白いアイディアで引っ張っていく『恋をしましょう』なんだけど、どこか主題のぼやけた感じがしないでもない。


【付記】
● お金に物を言わせて世界最高のジョーク、歌、ダンスの先生について頑張るクレマンですが、歌の先生はビング・クロスビー本人が、ダンスの先生にはジーン・ケリー本人が登場していますね。さりげなくエルヴィス・プレスリー本人も登場しています。


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No title

こんばんは♪

この映画は見ていませんが、フランスを代表する大歌手で大俳優のイブ・モンタンと、
アメリカの大女優マリリン・モンローが恋に落ちた問題の映画ですね。
当時マリリン・モンローは3番目の夫、かの大劇作家アーサー・ミラーとの結婚生活に疲れていた。
イブ・モンタンの方は、フランス社会党支持の同志でこれも有名な大女優シモーヌ・シニョレと長年連れ添っていたのですが、マリリンへの恋に夢中になってしまった。
シモーヌ・シニョレはそれを知って自殺未遂を図ります。
モンタンは、マリリンへの恋をあきらめ、シニョレの元に帰ります。

イブ・モンタンは、かのエデイット・ピアフに見出され、その若き愛人であったこともありますし、モンローも知る人ぞ知る恋多き女。というよりは、男性のこころを捉えて離さない魅力のある女性だったのでしょうね。ただ色気で売っていただけではなかったと思います。
シモーヌ・シニョレの厳しい顔が私は好きで。^^
そのシニョレを自殺未遂に追い込むほどの、モンタンの真剣な恋だったのではなかったでしょうか。
まあ、なにしろ大人同士の恋の鮮やかさというか深さというか…
そういう色艶がモンタンのシャンソンにはおのずとにじみ出ていますね。

ちなみに私、このシモーヌ・シニョレとか、おもざしがシニョレに似ているロミー・シュナイダーとか、この記事の前の映画記事で取り上げられましたシャーリー・マックレーンとかがとても好きです。^^

Re: 彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
まだご覧になっていないのなら、ぜひ、とは言えぬところがありましてね。
記事にも書いたように、なんだかなあ、と言いたくなるんですね。

乙山はそんなにたくさんイヴ・モンタンを見たわけではないのですが、
何とも言えぬ渋みがありまして、そんな「大俳優」を、それこそ、
こんなことさせていいの? と言いたくなるような場面があるんですね。

マリリン・モンローだって、そんなに見ているわけではないのですが、
もうね、ちょっと他にはないものすごい存在感というか、
それこそオーラ(アウラ)っていうんでしょうか、そういうものを感じました。

ジョー・ディマジオと連れ立って日本に来たとき、
決して来てはならないといわれていたのに球場に姿を見せたマリリンに、
観客がどよめいて、ディマジオはたいへん不機嫌になったという逸話があるようですね。

ディマジオの気持ち、なんとなくわかる気がします。
だけどそれくらいすごい存在感がある人なんでしょうね。
その後離婚したけれど、ディマジオはその後もマリリンを支えていたそうです。

イヴ・モンタンも、ものすごく気持ちが揺らいだんじゃないかと想像します。
ネットで見ていると、マリリンとモンタン、そしてシモーヌ・シニョレが一緒に写っている画像があります。
なんだか楽しそうにも見えるのですが、本人たちはどんな心情だったのでしょうね。

いままで、ちゃんとマリリン・モンローを見てこなかったので、
もう少し彼女の映画を見てみようと思っています。
シャーリー・マクレーンも素敵ですねえ!

No title

只野乙山さん、こんばんは。

そう言えば、映画は好きですし、マリリンモンローの生涯も色々と興味ありますが、マリリンモンローの映画は見てないかもです。
これからおすすめの映画があったら教えて下さいね。

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
あまりにも有名な人って、かえって見ていないことってありますよね。
マリリン・モンローはまさにそういう人の代表的なものだと思います。

一度ご覧になってくださいな。とにかくすごい存在感がある人ですね。
男性からすると、とにかく「シンボル」ですからね。
女性が見ても「億万長者と結婚するには」なんていう、夢がちゃんとあるわけでして、
当時の需要とかニーズにきっちり応えていた映画が多いと思います。

No title

 イヴ・モンタンとはまたなつかしい! たしかに渋い顔で、
今どきのイケメンにはない貫禄がありますね。ジャン・ギャバ
ンは渋すぎるから、都会的でちょうどいい感じでしょうか。

 ところで "make love" というのは現在では使いにくい表現
ですね。1960年の映画というから、半世紀以上経過しているわ
けですけれど、言葉の意味合いが変化する好例といえましょう。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
イヴ・モンタンという人、見れば見るほど「渋い」なあ、という感じです。
仰るようにジャン・ギャバンも何とも渋い顔の人ですね。

もう、むかし見たかもしれないが、はっきり覚えていない映画ばっかりですよ。
そういうのをね、思い出してはきっちり見ようと、少しずつ……
言葉は本当に「生き物」なんでしょうね。
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只野乙山

Author:只野乙山

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