『ゲッタウェイ』

『ゲッタウェイ』(1972年、アメリカ映画、122分)

TheGetaway.jpg
原題:The Getaway
監督:サム・ペキンパー
音楽:クインシー・ジョーンズ、トゥーツ・シールマンス(ハーモニカ・ソロ)
出演:スティーブ・マックィーン、アリ・マッグロー、ベン・ジョンソン、サリー・ストラザース、アル・レッティエリほか


『ブリット』(1968)に続いて『ゲッタウェイ』(1972)を見た。刑務所で仮釈放の不許可が決まったドク・マッコイ(スティーブ・マックィーン)は、布織り機の作業に戻る。面会に来た妻キャロル(アリ・マッグロー)に犯罪組織の元締めベニヨン(ベン・ジョンソン)と取引するように頼み、ほどなくしてドクの仮釈放が許可され出獄するが、すぐさまベニヨンに会えという指令を受ける。

こうして出獄した直後に夫婦して銀行強盗に手を染めてしまう二人だが、周到に計画を練り、仲間二人を加えた四人で計画を実行する。何とか現金は手に入れたものの、逃走中に仲間の一人ルディ(アル・レッテイエリ)は警備員を射殺するヘマをしでかした男を射殺した。集合場所に集まったものの、ルディはすぐドクを撃とうとするが、一瞬早くドクの銃がルディを倒した。

金を渡すためにドクとキャロルはベニヨンに会う。事の成り行きに疑問を抱いていたドクとベニヨンの話はこじれ、二人が銃を構えたとき、キャロルが銃を持ってドクの背後に現れた。話ができていたってわけか、と万事休すのドク。だがキャロルはベニヨンを撃った。こうして、ドクとキャロルは犯罪組織に追われることになるが、逃走中に警察にも足が付き、さらに死んだはずのルディも生きていて、題名そのものの大逃亡劇になってしまう。

とにかく逃げろ、の映画なんだけど、これはドクとキャロルの愛を描いたものでもある。刑務所の中にいるときもキャロルとの映像がほんの一瞬フラッシュバックで何度も入ってくる。そして刑務所から出た後、まず散歩でもしようや、という場面ではなんと予見の形で水に飛び込んで戯れる二人の姿が映し出されるが、これは本作の中で最も美しい場面であろう。

さらにベニヨンに面会に行くときのキャロルの服も、どうしてあんなに胸が開いているんだと不思議に思うが、これも後にわかることでその瞬間はほのめかしと暗示になっている。途中の駅で現金の入った鞄を盗まれ、犯人を追ってなかなか帰ってこないドクを待つキャロルの姿も美しい。二人でずっと逃げ続ける映画だから二人を撮ったショットが多いのも当然だが、映像だけで語らせるサム・ペキンパーの手腕に感心する。

そしてマックィーンの映画にはおなじみのリアリティの追求も本作でなされている。マックィーン自身、刑務所に赴いて見学と実習を経験したそうだし、実際の受刑者が出演しているという。マックィーンが海兵隊の出身だけあって銃火器の扱いは手慣れたもの。ショットガンからハンドガンまで撃ちまくりといっていいほどで、いずれも見ていて不自然なところが一切感じられなかった。

当初はベニヨン一味とルディにだけに追われていた二人だが、小物の窃盗犯に現金が入った鞄を盗まれるところで足が付いてしまう。そこでは子役が使われているのだが、使い方もうまいですね。どちらかというと笑いが少ないマックィーンの映画でも、あの場面は笑えると思う。笑いといえば、手負いのルディの手当てをした後、エル・パソまでルディを送っていくのに巻き込まれてしまう医者夫婦も悲惨なものである。

テレビとラジオ、そして新聞でドクとキャロルのことが報道され、写真も映し出されることで、どこへ行っても心休まる暇もなく、ハンバーガー店のテイクアウトさえ途中で放り出して車を出す始末で、ついにはゴミ収集車に紛れてゴミ処理場に放り出されてしまう二人。この心理的な圧迫感と緊張の連続に見飽きることがないのも見事な運びで、しかもそれらは次第に高まっていくのだからたまらない。ルディと医者夫婦以外はほとんど無駄がなく、息つく暇もないほどだ。

多くの映画では、すべてを回想形式にしてナレーションを入れるという手法がよく使われるが、『ゲッタウェイ』では時系列がほぼ順序通りに進んでいくうえにナレーションなしなので、映像で勝負するしかないんでしょうね。本当に細部まで作りこまれているのに感心するけれど、子どものときに見たのではわからなかったと思う。何度か見るうちに、前には気付かなかった部分が見えてくるという楽しさもある映画ではないだろうか。


【付記】
● 音楽はあのクインシー・ジョーンズが担当したとありますが、なかなかジャズっぽい雰囲気が出ています。ただ音楽が抜群に良いというほどではなかったように思います。何度もハーモニカのソロが使われるのですが、寂しげな曲調が逃亡者たちに似合います。この単音フレーズはもしかしたら、と思っていると、エンディングのクレジットで「トゥーツ・シールマンス」と出たのです。


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No title

乙山先生の映画評論は60年代のモノが多いですが
これは今、好んで御覧になられているのでしょうか。

特にこの時代のモノが好きとか
この時代のモノが見れる環境にあるとか
過去に見たことがあるとか
とっても興味があります。
僕なんかは休みの日はネットカフェの配信ですから
B級も多く、そのセレクトに苦労しています。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
自宅の引っ越しや新ウェブログ開設、大変だったろうと想像します。

とくに好みはないのですが、1930~50年代の映画は好きです。
その頃の映画をしっかり見たわけではないので、
どうしても見ておきたいと思うのですが、追いつきそうにありません。

それに、1960年代以降の映画だって、ちゃんと見たわけじゃないんです。
見るべきものがたくさんありすぎて、困ってしまうくらいですね。
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