『ブリット』

『ブリット』(1968年、アメリカ映画、113分)

Bullitt.jpg
原題:Bullitt
監督:ピーター・イェーツ
音楽:ラロ・シフリン
出演:スティーブ・マックィーン、ジャクリーン・ビセット、ロバート・ヴォーンほか


ハンフリー・ボガートやブルース・リーが自分にとってヒーローだったけど、もう一人挙げろと言われたら、スティーブ・マックィーンと言ってしまうかもしれない。いつぞやテレビで『大脱走』とか『タワーリング・インフェルノ』を見たとき、なんて格好良いんだろうと思ったものだ。決して美男子というわけではないマックィーンなのだが、なぜか惹かれてしまったんである。

むかし見たかもしれないがもうはっきり覚えていない映画はたくさんあって、もう一度ちゃんと見ておこうというわけで、マックィーン主演の『ブリット』をレンタルメディア店で借りてきた。サンフランシスコ市警のフランク・ブリット警部補(スティーブ・マックィーン)は、チャルマース上院議員(ロバート・ヴォーン)から裁判の証人となる予定のロスという男の保護を命じられるところから話が始まる。

ロスはマフィアの組員で、組織の金を横領したため殺し屋から狙われていた。ブリットは部下のデルゲッティやスタントンとともに、とあるホテルの一室で交代しながらロスの保護にあたった。夜、スタントンが張り付いているとき、二人の男がロスに面会したいとやって来た。待たせておけ、とブリットは言ったが、なぜかロスはドアのチェーンを外していた。

二人の男は殺し屋で、入ってくるなりスタントンを撃ち、次にロスも撃って逃走した。スタントンは重体、ロスは危篤状態で病院に運ばれた。医療スタッフは懸命に努力したが、ロスは息を引き取ってしまう。ブリットはどうしても犯人を捕まえたいと医者に頼み込み、ロスがまだ生きているかのように見せかけ、犯人をおびき出そうという作戦に出るのだった。

とまあ、途中までこんな感じなのだが、いま見ると、なんでプロの殺し屋が一回ですべて終わらせてしまわないんだ、とツッコミを入れたくなってしまう。それがあるからこそ、殺し屋が病院に忍び込んでくる場面で緊張が高まり、後の見せ場のカー・チェイスにつながるわけで、筋としてはそうするしかなかったんだろうけど……しかも殺し屋はスタントン刑事に顔を見られているんですよ。

軽いどんでん返しがあるのだが、全体としては謎とかトリックが複雑というわけではない。やはり、この映画は坂があるサンフランシスコの町で繰り広げられるカー・チェイスと、最後の空港での追跡の場面のアクションで見せるのだろう。レーサーとしての実力を持つマックィーンならではのスタントなしの実演だという。ドライバーの視点から映されるところは迫力満点なんだけど、坂の所では上下の視点移動が激しくて車酔いになってしまいそうだ。

マックィーンのスタイルも見所で、濃いブルーのタートルネックに茶色の三つボタン段返りヘリンボーン・ジャケットを羽織り、細いシルエットのグレー・トラウザーズの足元はチャッカー・ブーツとかデザート・ブーツに似た形で厚いソールの茶色のスウェードの靴を合わせている。自室で恋人のキャシー(ジャクリーン・ビセット)を残して外出の支度をする場面で、例のタートルネックにホルスターを装着してジャケットを羽織る姿が格好いい。

マックィーンにネクタイが似合わぬわけではないのだが、どうしてあんなにタートルネックが格好良く見えるのか不思議でならない。あれを、たんに真似してみてもうまくいかないのは経験で知っている。逆に、チャルワース上院議員役のロバート・ヴォーンはネクタイにスーツ姿がじつに似合っていて対照的だ。別に悪役ではないのだけれど、ブリットを捜査から外そうとしたり、何かと邪魔をしようとしたりする演技が見事に主役を引き立てている。

マックィーンはどちらかというとタフガイのイメージがあるが、意外にも殴り合いの場面は一切ない。病院内で殺し屋を追跡するときも、銃も持たずに素手で追いかけて行って大丈夫なんだろうか、とこっちが心配してしまうほどだ。で、殺し屋とブリットは接触することなく、あっけなく殺し屋は逃げていくんだけど、決着はカー・チェイスで付けるわけです。

また、ポスターとかDVDのパッケージには銃を構えたマックィーンが使われており、"ダーティ" ハリー・キャラハンばりの銃撃戦が展開するのかと思いきや、さにあらず。意外や意外、ブリットが発砲するのは最後の場面だけである。このあたりは意識的にそうしたのかもしれないが、抑制が効いているように思う。これは恋人とのベッドシーンについても言えるだろう。

独り者の警官の私生活、ということでブリットが仕事帰りに近隣の店でTVディナーを六個もまとめ買いするところや、朝の食事がシリアルにミルクをかけたものとかコーヒーだけとかいうところなど、細部にわたってリアリティーを追及している。メイキング映像によると、病院の場面は本物の医者が演じているという。そのわりにはなんでプロの殺し屋が……とか、なんでショットガンを構えているすぐ横に車を付けるんだ、とか思ってしまった。


【付記】
● 多少のツッコミどころはあるけれど、ものすごくまじめに作られた映画なんだというのが伝わってきました。やはりマックィーンの魅力で引っ張っていく映画ということでしょう。カー・チェイスの場面のハンドルさばきは本物で、ドリフトが少なめで走りがきれいです。


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