ジン・フィズ



〈遊歩者 只野乙山〉 派生企画
【家でカクテル、何か欠けてる?】



GinFizz.jpg
今回も、ジンと割り材だけでできるカクテルとしてジン・フィズを作ってみた。ジン・フィズは1888年にニューオリンズでヘンリー・ラモスという人物が作ったとされる、たいへん古い歴史を持つカクテル。日本では1960年代に流行したらしく、1970年代でも喫茶店で「ヴァイオレット・フィズ」とメニューにあるのを見たことがある。

今ではバーで頼む人もほとんどいないと思われる古典的カクテルだけど、私(乙山)はジン・フィズが好きで、一度行きつけのバーで頼んだところ、砂糖を抜いた思いきりドライタイプのジン・フィズが出てきてびっくりしたことがある。それはそれでなかなかうまかったけれど、私見ではジン・フィズはある程度甘みがないとだめじゃないかと思う。

フィズとはカクテルのスタイルの名前で、スピリッツやリキュール類にレモン果汁などと砂糖を加え、炭酸水で割ったものをいう。ジン・フィズをはじめとして「なんとかフィズ」というのはたくさん存在し、『サヴォイ・カクテルブック』*には27種類ものレシピが掲載されている。実際にフィズという飲み物がいかほど人気が高かったか、という事情がうかがえて興味深い。

『サヴォイ・カクテルブック』によると「レモン果汁(1/2個分)、パウダー・シュガー(テーブルスプーン1/2)、ジン(グラス1)。よくシェークし、ミディアム・サイズ・グラスに注ぎ、ソーダ水で満たす」とある。レモン半個をスクィーザーで絞ると、だいたい30ml前後になるので、15mlほどだろうか。テーブルスプーン1=15mlなので、だいたい7mlくらいか。それにしても『サヴォイ…』は単位がわかりにくい。

そこでカクテル虎の巻**を参照すると、「ドライ・ジン(45ml)、レモン・ジュース(20ml)、シュガー・シロップ(10ml)をシェーク、グラスに注ぎソーダで満たし、レモン、チェリーを飾る」とある。シュガー・シロップはないのでフロスト・シュガー2tspで代用、生レモン果汁は15mlにした。シェイカーに入れてバースプーンで混ぜるとほとんど溶けてしまうので、シェイクはそんなにしっかりする必要はないと思う。

ここでは10オンス・タンブラーを使用した。フィズとほぼ同じ処方のスタイルに「コリンズ」があり、これはロング・タンブラー(コリンズ・グラス、ゾンビー・グラスとも)を使用して、割り材を多少多めにするのがコリンズ・スタイル。ぞんざいに作ると、フィズとコリンズの区別がつかなくなってしまうので、どうしても10オンス・タンブラーを使う必要があるというわけだ。

だけどねえ、ウィスキーのダブルの分量(60ml)をシェイクしているわけだから、それを10オンス・タンブラーに入れたらもう一杯いっぱいですよ。半分溶けた氷でびっしりのグラスだったら、ソーダを注ぐ余地がない! もし虎の巻のレシピだったら、70mlをシェイクすることになるわけで、さらに余裕はなくなって厳しくなるだろう。もう12オンス・タンブラーを使ってごまかしてしまいたくなりますね。

フィズとはソーダのはじける様子の擬音らしいから、ソーダがしっかりきいてないとフィズにならぬわけで、このあたりの按配がじつに難しく、完璧なフィズを作るのは相当難しいといえる。氷を比較的少なめにして、ソーダをできるだけたくさん注ぐことができるよう配慮し、かつグラス一杯まで満たすこともないよう気を付けると同時に、ステアする際も炭酸が飛ばないようにしないといけない。最後にレモン・スライスとマラスキーノ・チェリーを飾って完成とする。

さてジン・フィズができましたよ。その味は「レモン・スカッシュにアルコール類を混ぜたようなもの」と言えばわかっていただけるだろうか? そもそも、いまどきレモン・スカッシュなんて喫茶店のメニューにあるかどうかわからないくらいの時代、フィズが昔のものとして顧みられなくなったのも仕方がないことなのかもしれない。だが私は、この古めかしい飲み物をこよなく愛している。


*『サヴォイ・カクテルブック』(ハリー・クラドック/ピーター・ドレーリ/サヴォイ・ホテル、日暮雅通訳、パーソナルメディア、2002年)
**『カクテル完全バイブル』(渡邉一也監修、ナツメ社、2012年)

【付記】
● ジン・フィズというかフィズ・スタイルを完璧に作るのは難しいと痛感しました。だけどカクテルの練習としてはたいへん良い素材だと思います。シェイクあり、ステアあり、氷とソーダの配分の考慮と、ハードルは高いですが、うまくできるようになればかなりの腕前かもしれません。


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No title

ジン・フィズを始めて知ったのは
学生時代に読んだ星新一の「ボッコちゃん」で
接客ロボットの「ジンフィズのむわ。」の「ジンフィズ」では
無かっただろうか?正確にはその存在を知っただけですが。

実際には正式なジンフィズをのんだことは無いかも・・・。
バーでは「ドライマティーニ」のほうが注文したとき
カッコイイと思うのは私だけだろうか?(笑)

Re: しょうちゃんさん

しょうちゃんさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ジン・フィズはやはり1960~70年代の雰囲気がありますね。
作ってみるとなかなかおいしい飲み物で、
人気があったのがよくわかる気がします。

ジン・フィズとマティーニなら、後者の方が格好良さそうですね。

初めて書き込みます。

確かジンフィズは、書道でいう所の「永」と同じく、バーテンダーの技術の全てがあるとかないとか。マンガ知識ですが。

ジンでつけた梅酒をソーダで割ると、梅酒フィズでいいのだろうか……?

飲んだことない・・・かも

こんにちは。
ジン・トニック、ジン・リッキー、ギムレットあたりは
レシピも単純なのでよく作りますが、ジン・フィズは作ったことないです。
というかフィズ系って「女子供の飲み物」(←子供は違うだろ)のイメージがあって、
そもそも飲んだことすらないかもしれない・・・という意外と硬派な木曽のあばら屋なのでありました。

Re: やさかさん

やさかさん、初めまして。コメントありがとうございます。
ジン・フィズはビルドで作りますが、シェイクの一手間がかかるカクテルです。
古くてありふれていますが、作業は多いんですね。

> ジンでつけた梅酒をソーダで割ると、梅酒フィズでいいのだろうか……?

それは「梅酒のソーダ・ハイボール」だと思います。

Re: 飲んだことない・・・かも ; 木曽のあばら屋さん

木曽さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ジン・フィズはちょいと面倒なのですが、シェイカーをお持ちならすぐにできますよ。
なるほど、フィズはちょっと甘いですから男が飲むには……となりますね。

ちょっとフィズを弁護しておきますと、タフな男でも甘いカクテルを飲むのです。
ご存知と思いますが、『カサブランカ』でリックとエルザ、サムの三人が、
ピアノを囲んで飲んだのがシャンパン・カクテルでして、
これは角砂糖にビターズを垂らし、発泡ワインで満たしたものです。

カクテルグラスに角砂糖一つですから、かなり甘いものだと思いますよ。
記事にも書きましたように、フィズはレモン・スカッシュ+アルコールですね。

No title

ジンフィズですか・・・気に入って、こればっかり飲んでいたことがありましたなあ。
もちろん、缶入りの「もどき」ですが・・・
そういえば、若いころこのジンフィズに限らず、なんとかフィズってのか流行ってましたよね。今思えば、よくもまああんなものを飲んでいたものだなあ・・・なんてのもいくつかありましたが、ジンフィズは今でもいいですね・・・というより、ジンがいいのかも?

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうそう、昔「フィズ」がありましたね。
フィズにはいろいろありますが、リキュールを使ったフィズは、
わりと甘くてアルコール度数が低くなりがちなんですね。

なので、仰るようにジンを使ったジン・フィズ、
これがいいのだと思います。ジン・フィズはジンを45mlばっちり使いますからね。
他のフィズも、また飲んでみようと思っています。

No title

Ginを使ったカクテルはGinの数が多すぎて懐が深いですよね。
BarでGin違いでジントニック3杯とかやったりすると面白いですよ。
酔っぱらいますが・・・笑

Re: KazNさん

KazNさん、コメントありがとうございます。
ジンはいろいろ種類があって面白いですね!
違うジンでジン&トニックを三杯……通ですなあ。
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只野乙山

Author:只野乙山

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