『ロリータ』

『ロリータ』 (1962年、イギリス/アメリカ映画、152分)

Cubulick_Lolita.jpg
原題:Lolita
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ウラジミール・ナボコフ
出演:ジェームズ・メイソン、スー・リオン、シェリー・ウィンタース、ピーター・セラーズほか


映画は大学教授ハンバート(ジェームズ・メイソン)がキルティ(ピーター・セラーズ)の邸宅を訪れる場面から始まる。邸宅は荒れ果て、キルティは日中から酒浸りになっており、キルティはハンバートを歓迎する姿勢を見せるものの、ハンバートは険しい表情を変えない。卓球でもして遊ぼう、とキルティはサーヴするが、ハンバートは拳銃を手にして今にも発砲しそうな状態である。ここから、場面はハンバートの回想に移る。

アメリカにやって来たハンバートは、夏を田舎町で過ごすために下宿を探していた。ヘイズ夫人の家を案内してもらっていると、庭でビキニ姿の少女ドローレス・ヘイズ(愛称ロリータ)が日光浴をしていた。ロリータの美しさと若さにすっかり魅了されたハンバートは、二つ返事でヘイズ夫人の家に泊まることに決めた。だが戦争で夫を失ったヘイズ夫人は、ハンバートに心を惹かれていた。

町で開催される舞踏会にロリータも出席することになり、彼女が若い男と変なことになりはしないかと気が気でないハンバートは、もう少しここに残りたいと主張するが、監督役はいるから大丈夫、と帰宅を勧められる。家でハンバートと二人きりになったヘイズ夫人はディナーをとりつつハンバートをダンスに誘う。ぎごちない動きで踊るハンバートだったが、積極的に詰め寄るヘイズ夫人にほだされる形で結婚することに。

だが実は、ヘイズ夫人との結婚はロリータのそばにいたいがための口実だった。ある日、ヘイズ夫人がハンバートの部屋に置かれた日記に目を通すと、そこにはロリータへの思いが切々と書き連ねられていた。ハンバートの本心を知ったヘイズ夫人は逆上して家を飛び出すが、そこへ通りかかった車にはねられ、不慮の事故死をとげる。私を施設に入れないで、と懇願するロリータを、ずっと君のそばにいる、と抱きしめるハンバート。だが、彼女の部屋にはなぜかキルティの写真があった。

ナボコフの原作では12歳の少女となっているが、映画ではもう少し引き上げられて15歳くらいではないかと思う。予想に反して性的な描写は一切なく、暗示とほのめかしによってあえかなエロティシズムを感じさせるが、これはキューブリック監督の意図というより、当時のハリウッドの規制が厳しかったためにそういう作風になったのだという。映画の冒頭に出てくるロリータの足は、ベッドに座ったロリータの足にハンバートがペディキュアを施す場面で、このあたりが限度なのだろう。

少女の「小悪魔的な魅力」も相当抑えられており、最高潮はハンバートとロリータが出会うあの場面である。だけど、アメリカのロウワー・ミドルクラスの家庭で、15歳くらいの少女が庭で日光浴なんてするもんだろうか、と思ってしまった。北欧あたりだったら自宅の庭で日光浴とかあっても不思議じゃないような気がするが……まあ、セントラル・パークなんかでも日光浴をするというから、家で日光浴もするんでしょうね。

他の映画と違って「キューブリックらしさ」がいくぶん控えめになっているように思えた。これはいかんでしょう、という場面が一切ないからかもしれない。本当の主題は「少女の小悪魔的魅力に翻弄される初老男性」なんだろうけど、そっちは抑制されて「ハンバートの没落」を主に描いた映画になっている。なので重厚な文芸大作映画といってよく、圧巻はロリータのセリフ「ごめんなさい、なんだか騙したみたいだけど……だけど人生ってそんなものよ」だろう。


【付記】
● きわどい場面もありませんし、とくに成人指定の映画というわけでもないのですが、やはりこれは家族団らん用の映画ではないでしょう。それ用にはジブリとディズニー限定でいくのが無難です。


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非公開コメント

No title

小悪魔おねーちゃんに
翻弄される初老のしょうちゃんです(笑)

それ用にはジブリとディズニー限定には
笑いました。

でも、テディ?でしたっけ家族で見られない映画
ありましたよね。
ジブリでもディズニーでもないかもですが・・・

Re: しょうちゃんさん

しょうちゃんさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
夜のお店は小悪魔たちでいっぱいかもしれませんね。

ほとんど知りませんが、『テッド』はダメなぬいぐるみと、
ダメな人間の話のようですね。
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