ギムレット



〈遊歩者 只野乙山〉 派生企画
【家でカクテル、何か欠けてる?】



Gimlet.jpg
ウィスキーの記事をたくさん書いているからウィスキー好きには違いないのだけど、バーではむしろカクテルばかり頼んでいる。例えば一杯目のジン&トニック、これはカクテルですね。次にスコッチ・ソーダを飲んだ。これはカクテルなのか? 正解は、カクテル。カクテルとは、アルコール飲料類を別のアルコール飲料または清涼飲料類などと混ぜた「混合アルコール飲料全般」を指す。なのでスコッチ・ソーダは紛れもないカクテルだし、日本の酎ハイもカクテル以外の何物でもない。

ちなみに、どうしてもそんな感じはしないんだけど、ウィスキーの水割りもカクテルなのである。つまり、アルコール飲料をそのまま、あるいは氷に注いで飲む以外は、ことごとくカクテルを飲んでいることになるわけだ。で、最後にマティーニを頼んだとすると、その日はすべてカクテルを飲んだことになる。混ぜ物なんて、という人は案外多く、そういう方を硬派とするなら、私(乙山)などは軟派以外の何者でもない、ということになってしまうなあ。

これはどうしてなのか自分でもよくわからないのだが、たぶん「せっかくバーに来たんだからカクテルを飲もうじゃないか」ということなんだろうと思う。そんなふうにして神戸は北野坂のとあるバーで、ドライ・マンハッタンを飲みながら、ふと家でカクテルを作ってみようかな、と思ったのである。もちろん、バーと同じようにおいしく出来ないのは百も承知。家で形だけ真似をして、味もできるだけバーの味に近づくよう努力(! この男からこの言葉が!)するというのはどうだろう。

というわけで、題して「家でカクテル、何か欠けてる?」という派生企画を立ち上げることにした。じつはカクテルを作る最低限の道具は家にある。遠い昔、パブ(オーセンティック・バーよりくだけた感じの酒場。イギリスのそれとはかなり違う)で働いていた経験があり、駆け出しの頃は家でよく練習したもので、その名残がいまに残っている。実際、ステアとシェイクは、ある程度練習しないとモノにならないんですね。

最初のカクテルとして選んだのはギムレット。これは、ジンと生ライム果汁と砂糖をシェイクして作る、じつにシンプルなカクテルで、ジン&トニックにライムを入れて常飲している人だったらシェイカーさえあればできるのだが、バーツールのセットなどより、ナランハあたりの通販で個別に買うのをお勧めする。大阪なら道具屋筋、東京ならかっぱ橋に行けばある。今はネットでカクテルのレシピが見られるので便利だが、カクテル虎の巻*も用意してもう本気である。

虎の巻によると「ドライ・ジン(45ml)、ライム・ジュース(15ml)、シュガー・シロップ(1tsp)をシェークし、カクテルグラスに注ぐ」とある。一方、カクテルの古典的名著『サヴォイ・カクテルブック』**には「プリマス・ジン1/2、ローズ・ライム・ジュース・コーディアル1/2。よくステアし、ミディアム・サイズ・グラスに注ぐ。好みで氷を入れてもよい」とある。ずいぶん作り方が違うけど、日本では前者が主流になっていると思う。

後者ではローズのコーディアル・ライムが必要だが、これは現在(2015年)日本に輸入されておらず、入手が難しい。添加物の一部が法的に引っかかるようで、正式には輸入することができず、個人が土産に購入した物なら国内持ち込み可というような情報をネットのどこかで見たことがある。どうしてもサヴォイ・ホテル風にしたいのなら、明治屋のMyライムかサントリーのカクテルライムを使うしかないだろう。だけどレシピを見るかぎり、かなり甘めのギムレットになると想像する。

というわけで、虎の巻レシピを採用した。ジンはビーフィーターを使ったが、好みのジンを使えばいいと思う。シュガー・シロップがないのでフロスト・シュガー1tspとした。これは「ヨーグルト用の砂糖」として販売されているもので、非常に溶けやすく、シェイカーに入れた材料をバースプーンでかき回しているうちにほぼすべて溶けてくれる。だから必死になってシェイクする必要はなく、主目的は撹拌と混合より、冷却である。さくっとシェイクする。

さて、ギムレットができましたよ。お手本にしたバーの味には及ばないけれど、家だったらこれでいいのではないかと思う。製氷皿で作った氷だから溶けやすく、少し味が薄目になっているような気がする。飲みながら、『長いお別れ』の中でテリー・レノックスがマーロウに語った「本物のギムレットを知らないんだね」というセリフを思い出す。あれは、『サヴォイ・カクテルブック』を踏まえた(あるいは英サヴォイ・ホテルでギムレットを飲んだ)うえでの発言で、酔っ払いの駄法螺ではなかったわけだ。


*『カクテル完全バイブル』(渡邉一也監修、ナツメ社、2012年)
**『サヴォイ・カクテルブック』(ハリー・クラドック/ピーター・ドレーリ/サヴォイ・ホテル、日暮雅通訳、パーソナルメディア、2002年)

【付記】
● 意外や意外、乙山は混ぜもの好きかもしれません。というか、家ではかなりの頻度でウィスキー・ソーダ・ハイボールを飲んでいます。もちろん、良いウィスキーをそのまま、あるいは氷に注いで飲むのも大好きなんですが、1000円台のウィスキーのソーダ割りとか濃い目の水割りにするとか、そんなのを好んでいます。その時、間にカクテルが入ると飽きが来なくていいですね。


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No title

最近、ウィスキーもいいではないかと焼酎並みの価格のやつを買ってきました。
ブラックニッカクリアです。
読んでみると、ピートを使用せずとな。
なんと、これがマッサンが三級酒だと言って拒んでいた酒かと。
まあ、しかし、それなりではある。
若い時は、このサイズ。二日でなくなったが、今は、四日持ちます。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
テレビがないので人気ドラマを見ていません。
ハイニッカ、ブラックニッカ、スーパーニッカと、復刻版が出ていますね。

> 若い時は、このサイズ。二日でなくなったが、今は、四日持ちます。

四日でも、ちと早いような気がしますけど……
お忙しいようですが御身体お大事になさってくださいね。

No title

私も初めて行ったバーでは最初カクテルを頼みます。
たいていの場合はジントニックを頼んだりするんですが、メニューにオリジナルカクテルを押して書いてあるような時に、試しにそれを飲んだりもするんですけどね。

ジントニックもそうですが、ギムレットは作る人によって全く味が異なる酒ですよね。
行く場所場所によって多彩なギムレットがあるのは面白いですよね。

私も自宅でカクテルと行きたいのですが…。
場所と予算が思うようになれません。

『ギムレットにはまだ早い』ですかね。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
本当、ついカクテルを頼んでしまうんですよね。
それこそウィスキーのストレートだったら、家でも飲めるじゃないか、と。

カクテルにはバーテンダーの趣味や意向が反映していますので、
同じレシピでも微妙に違いが生まれるようで、そこが「面白い」のだと思います。
同じ回路を使って作ったのに、音が違って聞こえる真空管アンプと似ています。

> 私も自宅でカクテルと行きたいのですが…。
> 場所と予算が思うようになれません。

これは難しい問題ですね。カクテルを作ろうとすると、ボトルが増えますし、
乙山は勝手にできるからいいものの、
ボトルや変な道具の増加は家族の不評を買いそうですしね。

カクテルはバーで飲むのが正解だと思うんです。

自己流楽しいです

こんにちは。
私も時々家でカクテル作って家族に迷惑がられています。
「シェイカーがうるさい!」
「へっぴり腰で振る姿がみっともない!」
「いつの間にか増える酒瓶が邪魔!」
言われながらもめげずに頑張って・・・・・・酔っぱらってます。
材料はだいたいスーパーで買えますから安上がりなので良いのですが、
ついつい飲みすぎてしまうのが困りものです。

Re: 自己流楽しいです ; 木曽のあばら屋さん

木曽さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
おお、そうですか、ご自宅でカクテルを!
やりますなあ!

シェイクすると、けっこう音がするんですよね。
氷の詰め方にもよりますが、みっちり詰めればいいというものでもないので、
こればかりは難しいところです。

ホームページを伺うに、木曽さんは優しい美男子と想像しています。
美男子が振るカクテル、おいしそうじゃありませんか。
お嬢様方や奥様の反応には愛情を感じましたよ。

No title

素敵ですね!
只野乙山さん、こんばんは。
ご無沙汰してます。

若かりし頃、とりあえず全種類飲んでみたい、なんてあれこれカクテルを注文した頃を思い出しました。
かえるままはコーヒー好きの甘党なのでカルアミルクが好きで、自分で作る唯一のカクテルかもしれません。(牛乳を混ぜるだけなので)

この企画面白いですね!
トムクルーズの映画「カクテル」様に神業シェイクしてる只野乙山さんを想像してしまいました。

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
とくにカクテルと意識しなくても、カクテルを飲んでいることが多いですね。
あの小さなカクテルグラスで飲むのだけがカクテルではありません。

そうですか、カルーア・ミルクがお好きなんですね。
とても飲みやすいので、カルーア・ミルクが好きな女性も多いと思います。
カカオ・フィズなんてのもあるんですよ。

> トムクルーズの映画「カクテル」様に神業シェイクしてる只野乙山さんを想像してしまいました。

『カクテル』は楽しかったですね! もう一度見たくなりました。
あれは、フレア・バーテンディングといいまして、ジャグリングを取り入れた、
日本のバーではほとんどない演出なんです。
パーティーとか披露宴向きの、見て楽しくなるバーテンディングですよね。

以前とある有名ホテルにてフロア全体に響き渡る音で、
シェイクしていたバーテンダーを見かけました。
それはそれで、何か意図があったことかもしれませんが、
乙山はあまり好きになれませんでした。

『カクテル』とは正反対の、どんくさい(通じますか?)所作の乙山です。

プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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