ウシュクベー・リザーヴ(ブレンデッド)

Usquaebach_01.jpg
名前だけは知っているけれど飲んだことのないウィスキーを、これからは意識的に飲んでいく心づもりである。多少お金はかかるかもしれないが、そのウィスキーの味を知っているという事実が重要で、その経験は必ずや後に私(乙山)を支えてくれることになると信じている。ロハで情報を得ることができないのは世界共通のルールだけど、ウィスキーは楽しませてくれるという見返りがあるだけありがたい。

今回は〈ウシュクベー・リザーヴ〉を飲んでみた。物の本*によると、「ウシュクベー」とはゲール語で「生命の水」を意味し、ウィスキーの語源であるという。ご存知の方も多いと思うが、ウィスキーの名前としてこれほどそのものずばりを言い表したものは他にないかもしれない。微妙に高いウィスキーは己の庶民的金銭感覚からすると「飲まなくてもいいか」とすぐさま保留されてしまうのだが、今はその時ではない。飲むべきなのだ。

ウシュクベーは、元々はシングルモルトで瓶詰されていたのだが、ブレンデッド・モルトになり、現在ではグレーンとのブレンデッド・スコッチになっているという。それでもウシュクベー・リザーヴはモルト60%という高い配分になっていて、上級のストーン・フラゴンでは80%を超えるという。創業者一族の手からはすでに離れていて、他社がブランドを買い取って販売を続けている。何しろアメリカ大統領の公式晩餐会にも選ばれた銘柄なのだ。

ただ、キーモルトが何であるかとか、そういった情報は一切不明で、虎の巻(物の本)にも記載がない。それゆえ、ネット上では「ウシュクベーに使われているモルトは云々」という推測がいろいろ出ているようだ。そうやってあれこれ論議して盛り上がるのもウシュクベーの楽しみの一つと言えるだろう。ボトルは緑の曇りガラスになっていて、裏ラベルにはスコットランドの詩人ロバート・バーンズの詩の一節「ウシュクベーさえあれば、悪魔なんてへっちゃらさ!」がある。

Usquaebach_02.jpgまずはストレートで飲んでみる。なにかドライフルーツを思わせる香りとモルトの香り、口に含んでみると意外に強めのアルコールを感じ、次いで香草を思わせる控えめなモルトの甘さが来る。ピート香やスモーキーさはあるか、ないかわからぬほどで、ヴァニラ系やカラメル系の華やかな甘さはない。塩気(潮気)も感じず、全体としては軽めのスコッチという印象。フィニッシュの余韻は短めだが、綺麗な引き際だと思う。

良い感じですねえ。うっとりするようなリッチさやエステリーさはないが、複雑な味わいで、舌に転がして探り出したくなる謎のブレンド、と思える。加水しても全体のバランスは崩れず、アルコールの当たりが弱くなってモルトの甘みを堪能することができる。氷に注いで飲むと、香草を思わせる味わいが前に出て好ましい。甘さが全開、というわけではなくて、名状しがたい何かが隠れていて、このウィスキーを複雑な味わいにしているように感じる。

8オンス・タンブラーに氷を入れて、1:1水割りも試してみた。ストレートやオーバー・アイス(オン・ザ・ロックス)で感じた複雑さが引いて、素直なモルトの甘みが前に出てくる。これは非常に飲みやすくお勧めではあるけれど、ウシュクベーの謎めいた部分が見えなくなるような気がしないでもない。いや、だけど旨いですねえ! これはこれで、いいじゃないかと言いたくなる。

それでは、ということで、ソーダ・ハイボールで(おいおい)いってみますか。ここでは、10オンス・タンブラーに30mlのウシュクベー・リザーヴを入れ、ソーダで8分目まで満たしたものを飲んでいる。おっ、これ、なかなかいけますね! というか、ばっちり合ってるんじゃなかろうか? スコッチの中にはソーダ割りにしないほうが良いものもあるけれど、これはソーダとの相性がいいように感じた。

* 土屋守『ブレンデッドウィスキー大全』(改訂版、小学館、2014年)

【付記】
● ウシュクベー・リザーヴ、本当に不思議な一本でした。開栓直後、飲んでみると、何かゴムを思わせる不思議な感じがしたのですが、空気に触れて変質するにつれて違和感は薄れ、いい感じになっていきます。これ何だろう……と味わうたびに探り出したくなる不思議なブレンドで、わかりやすいリッチさで勝負するわけではないんです。かなり通好みの一本だと見ました。


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No title

 ウィスキーはもっぱら飲むだけで、詳しく調べたことがな
かったので、どれどれと OED を引いてみますと、「whisky
はwiskybae(など)の略。ゲール語の uisgebeatha(= water
of life)より」てなことが書いてありました。いやはや勉
強になりますね。

 なお同書には独立した項目として usquebaugh (この綴り
だとアスクウィボーと発音)が収録されています。綴りはい
ろいろで、発音もさまざまなのでしょう。例文のひとつには
"Morning drinkers of usquebae." というのがあって、こ
れは1840年の用例ですから、たぶんこの単語は現代でも通用
するのでしょう。

 ウィスキーの語源だけで新書が一冊できるかもしれません
が、そんな面倒なことは学者にお任せし、ありがたく生命の
水をいただいて長生きすることにしましょうか。モーニング・
ドリンカーというのも悪くはありませんね(笑)。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
OEDには恐れ入りますね。本当にいろんなことが書いてある。
紙だとそれの Learners という小型版があったはずなんですが、
引っ越しの時に紛失してしまったのか、本棚に見当たりません。

今でもあると思うんですが、「電子ブック」なるものでOEDを持っていました。
これはCD-ROMの形式でPCにセットして使います。
一時、ヴァーチャルCDというのを導入して、
OEDや広辞苑、大辞林などをすべてPCにインストールしていました。

新しいノート型PCになってからすべてなくなりましたので、
紙のOEDも欲しくなってきましたよ。
「命の水」はなかなかおいしくて、あっという間に量が……

No title

ウシュクベ、情報が少ないので大変参考になりました。
有名な蒸留所のシングルモルトに比べ、
ちょっとマイナーなブレンデッドって面白そうなもの多いですよね。
このウシュクベもそうですが、チェイヴェックとか、
ベイリー・ニコル・ジャーヴィー、ロバート・バーンズとか。
値段もまあまあ安めなのもありがたいですしw


OEDについて

 ぼくが使っているのも CD-ROM版です。紙のほうはおやめ
になったほうがいいと思います。百科事典と同じボリューム
ですから、引くのが大変。腕をくじいてしまうかも(笑)。

 縮刷版もありますけど、これまた拡大鏡なくしては読めな
いという代物です。価格の点からも CD-ROM のほうが有利だ
と思います(3万円くらいでした。Windows 8.1 でも動作し
ます。ただしインストールが面倒で、ぼくの手元にあるもの
はなぜか認証に手こずります。あたりが悪かったのかもしれ
ません)。

 無人島に持っていく一冊としては OED も有力候補ですね。
あ、それとウィスキーを一生分も忘れずに。

Re: 葉桜悟郎さん

葉桜悟郎さん、コメントありがとうございます。
ブレンデッド・スコッチも、ほんの一部だけが日本では有名で、
知られざるブレンデッド・スコッチもあるのだと思います。
列挙なさっているのは、良いものだと思います。
入手できれば、「遊歩者 只野乙山」でも取り上げます。

Re: OEDについて; 薄氷堂さん

薄氷堂さん、再コメントありがとうございます。
そうですね、やはり「物理OED」は重たいですよね。
CD-ROM版で正解だったと思います。

だけど、なんか使いにくいんですよね。
うまく読み込めなかったことも何度かあって、
なんでこんなに使いにくいんだ、と毒づいてしまったことも。

そうそう、Windows8あたりから「管理者」と「一般ユーザー」の峻別が厳しくなり、
かつての方法では使えなくなったフリーソフトもあるんです。
どうしても作成ファイルを、ソフト自体と同じ階層(ディレクトリ)に保存できず、
個人ユーザーのディレクトリに保存せざるを得ず、困ることもあります。

アプリケーション本体を「\C:\ProgramFile」ではなく、
「\ユーザー\ドキュメント」とか「\ユーザー\ダウンロード」などに、
保存しないといけないんですよ。
「ONE DRIVE」って、ただの「共有ファイル」ですよね?
なんだかなあ、と思うんですね。

No title

今回もレアなボトルを入手されたのですね。
この酒も普通の酒販店にはなかなか置いてないものなので、面白く記事を拝見させてもらいました。
私も常々命の水である『ウスケボー』の恩恵にあずかっているものなので、一度飲んでみなくてはと思いました。

噂ではタムナヴーリンとかブルイックラディあたりのブレンドではないかと言われてますね。
ブルイックラディは一時の閉鎖からあまり古いものは出回ってませんが、今度6年程度のものを買ってみようかと思っております。

そして最近忙しくて自分のブログも更新出来ていない有様なのですが、もう少し仕事が片付いたら記事を上げて皆様の所へもお伺い出来ると思います。
何せ年度末はやることが多いものですから…。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
これからは少し高めでも色々飲んでみようと思っています。
お金はかかりますが、個人的に必要なことなんですね。

ウシュクベー・リザーヴはたいへん面白い味わいでした。
使われている原酒が何か、わからないところがいいのかもしれません。
今ある程度公開している業者もありますが、本来は秘密の物ですからね。

ブレンデッド・スコッチだけでも100本以上あるわけですし、
シングルモルトを入れると、もう大変なことになるでしょう。
全部を飲むのはまず無理でしょうね。

お忙しいと思いますがどうぞ御身体お大事になさってください。
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