キング・クリムゾン 『ディシプリン』

King Crimson / Discipline (30th Anniversary Edition, original released 1981)

KingCrimson_Discipline01.jpg
1. Elephant Talk
2. Frame by Frame
3. Matte Kudasai
4. Indiscipline
5. The Hun Ginjeet
6. The Sheltering Sky
7. Discipline
8. Matte Kudasai (alternative version)


1970年代の終わり頃、音楽好きの友人にキング・クリムゾンを教わった。その異質なサウンドにのめりこんでしまった私(乙山)は、友人に頼み込んでクリムゾンのLPをカセットテープにダビングしてもらい、何度も聴いていた。もうすでに終わったものとばかり思っていたクリムゾンが、1981年に再結成したというのに衝撃を受け、FMラジオで渋谷陽一が特集していたのをきっちり「エアチェック」して新しいクリムゾンを聴いたのを覚えている。

ところが、出てきたサウンドが従来とあまりにかけ離れているように感じて「えっ」と思ってしまったのである。なんていうか、拍子抜け、あるいは期待外れ、だろうか。『スターレス・アンド…』と『レッド』があまりにもシリアスだったこともあり、どこかでそれらを継承したものを期待していたのかもしれない。音楽好きの友人も驚きながら、少し複雑な表情をしていた。

メンバーはロバート・フリップ(g)、エイドリアン・ブリュー(vo, g)、トニー・レヴィン(b, stick)そしてビル・ブルフォード(ds)の四人。ブリューとレヴィンはアメリカ人なので、ああそうか、クリムゾンはもう「イギリス」のバンドではなくなったんだな、と思った。もともと、クリムゾンはメンバーが変わることが多いから、こだわりはないんだけど……ブルフォードが参加しているのが妙に嬉しかった。

(1)はレヴィンによるチャップマン・スティックという楽器を使ったイントロの後、ブリューのヴォーカルが入るのだが、歌詞というよりは単語を並べただけという感じがする。しかもAから始まってB、C、Dと続き、最後にElephant talk、その後に象の鳴き声のギターによる模写、って思わず「嘘でしょ?」と言いたくなるぶっ飛びぶりである。これはジョークだ、というか悪夢だ、とか思いながらも笑ってしまう。これは笑うための曲ですよね、ちがうのかなあ?

(2)はフリップとブリューによる速弾きに度肝を抜かれる。どうやって弾いているんだろうと思ったが、ライヴ映像を見ると、左手が盛んに動いている。なんか複雑なコードなんだろうなあ。歌いながらあれを弾くのは大変だろうと思う。(3)はブリューのヴォーカルが大活躍するスローテンポの曲で、カモメの鳴き声のような音もブリューのスライド・ギターによるもの。ボトルネックをフレットの上方から(多くは下方からだが)当てているのを映像で確認した。

(4)はテンションの高いブルフォードのドラミングが光る曲で、ヴォーカルは歌うというより「語る」感じ。CDやLPで聴いているとあまりぱっとしない感じがするけれど、ライヴではなんだか格好いいのが不思議である。(5)はお祭りソングという感じで、とにかく「明るく、楽しい」雰囲気でノリのいい曲。エイドリアン・ブリューのキャラクター全開で、ステージでも楽しそうに笑顔で飛び跳ねて演奏する姿が思い浮かぶ。

(6)はブルフォードがドラムセットを離れ、左手に木魚(?)のようなものを持ち、右手で丸い先のついた棒で叩くリズムの繰り返しの上に、フリップのギター、ブリューの変なサウンドが繰り広げられた後、最後はブルフォードのリズムで終わる。(7)はギターのリフレインを全面的に押し出したインストゥルメンタル曲。リーグ・オブ・ジェントルメンで演奏した「ヘプタパラパシノク」をさらに進化・発展させたような印象で、淡々と進む中にもきらりと光るものを感じる佳曲に思う。

元々この四人でスタートした時、ディシプリンという名前でライヴを行ったそうだ。その後アルバムを出す際にEGとの交渉でキング・クリムゾンに名前を変えたと聞いている。そんな経緯もあって、この時期のクリムゾンを認めたがらない人も少なくないようだ。不満の多くはシリアスで重厚だったクリムゾンが「軽く、明るく、ポップ」になってしまったことに向けられているのではないかと想像する。「ラークス・タングズ…パート2」は、そんなふうに笑ってやるもんじゃないんだ、という気持ちもわからぬではない。

ポップ、エスニック、変拍子、リフレインのいい意味での折衷主義。変拍子のリフレインは少しずつずれていくようで、どこかで巻き戻しをしないといけないのだが、ブルフォードのドラミングが絶妙なのか、本来ロックには向かないような素材が、見事に「ロック」になっているように思えた。ここが非常に重要な点で、ロックになっているということは、それなりにポピュラリティーを有しているということだ。ディシプリン・クリムゾンはあまり人気がないようだけど、個人的にはこの時期のクリムゾンはそんなに嫌いではなく、わりと好んで聴いている。


【付記】
● フリップとしては過去を引きずりたくなかったのでしょうね。何かこう、新しいことをやりたかった、そんな心情や意図が『ディシプリン』には表れているように思えます。もう一つ言えることは、ディシプリン・クリムゾンのライヴ映像はぜひご覧になったほうがいい、ということです。フリップも変な髪形と趣味の悪い服装をやめ、英国紳士然としていますし、エイドリアン・ブリューをはじめ他のメンバーも楽しそうです。やはりクリムゾンはライヴ・バンドなんだなあと改めて思いました。


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