本坊マルス 〈岩井トラディション〉



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】



IwaiTradition_01.jpg
大阪日本橋に電子部品を買いに行く際、難波の高島屋を通るのを常にしている。高島屋の前を通り過ぎることもあれば、中に入って酒売り場などを覗いていくこともある。そんなふうにして某日、電池式プリアンプに使う電子部品を買うため、高島屋の酒売り場を「通過」するつもりだったのだが、ふと見ると、ずっと探していた〈岩井トラディション〉が並べて置いてあるではないか。

一瞬、その場で買ってしまおうかと思ったが、そうするとウィスキーの瓶をずっと持ち歩くという破目になるので、帰り際に買うことにして通り過ぎた。日本橋5丁目東側の、電子部品店が集まっているあたりで買い物を済ませると、予定通り高島屋に寄って〈岩井トラディション〉を買い求めた。750ml=約2000円。これは現在(2014年11月)のサントリーオールドより高く、だいたいリザーヴと同等の値段である。

ご存知の方も多いと思うが、〈岩井トラディション〉は本坊酒造のマルスウィスキーが製造・販売しているもので、信州マルス蒸留所の生みの親、岩井喜一郎氏へ尊敬と感謝の念を込めて誕生した。岩井喜一郎は摂津酒造で連続蒸留装置を考案、高校の後輩である竹鶴政孝は岩井を頼って摂津酒造に入社した。当時、常務であった岩井がウィスキー造りを学ぶために竹鶴をスコットランドに派遣した。

その後、本坊酒造顧問に就任した岩井は「竹鶴ノート」をもとに山梨にウィスキー蒸留工場を設立、本格的なウィスキー造りを始めて今日に至っている。竹鶴政孝氏は寿屋(現サントリー)の初代工場長を務め、その後ニッカウヰスキーを立ち上げたことから、「日本のウィスキーの父」とも称される人であるが、その竹鶴にも先輩がいたことはあまり知られていないのではなかろうか。

IwaiTradition_02.jpgさて休日の昼間、ボトルとオールドファッションド・グラスに注いだ〈岩井トラディション〉の撮影後に試飲した。グラスに注いで撮影したのを飲んだのだが、まず感じたのは程よいピート香で、以前飲んだ同社の〈ツインアルプス〉にも通じている。これは、現在流通している日本のウィスキーの中では極めて強いピートといえるもので、ふだん「華やかな甘さ」が主体のウィスキーばかり飲んでいる人にはただ「煙くさい」としか感じられないかもしれぬ。

この煙臭さについては好みが分かれるところだと思うが、日本でウィスキー造りが始まった頃、手本にしたスコットランドのウィスキーにとても近しいもので、当時のウィスキーの感じを今に伝える味わいではないかと思う。熟成が感じられる練られたモルト、とまではいかないけれど、そこそこ熟成はさせているのではないかと思われるコクもあると思う。

程よいピートとモルトのコクの二本柱の後に、ほのかに感じられるのがバニラ香とカラメル香で、これは〈ツインアルプス〉よりかなり強めに感じた。〈ツインアルプス〉に似た傾向ではあるけれど、さらに複雑な味わいを持っているのが〈岩井トラディション〉だと思う。流通している絶対量が少ないゆえに、値段が高くならざるを得ないのだと想像する。同価格帯の大手ウィスキー製造業者の出来具合からすると、いささか厳しい感じもするだけに、頑張ってほしいなあと思う。


【付記】
● 個人的には好みのタイプのウィスキーで、また買ってもいいかなと思うのですが、「知る人ぞ知る、お宝ウィスキー」というほどではないような気がします。フルボトルで2000円なら、やっぱり43度にしないとねえ、とか思ってしまうわけです。しかし一方では、もはや値段の問題ではない、こういうウィスキーが存在すること自体がすごいことなのだ、とも思うのです。


≪ シングルモルト宮城狭へ  ザ・ブレンド・オブ・ニッカへ ≫


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No title

なかなかいい感じですね・・・
2000円とは私の場合のウイスキー関連の予算をオーバーしてしまいますが、ちょいと試してみたいような気もします。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうそう、これね、なかなかいい感じなんですよ。
仰るように予算を考えると、いささか苦しい部分もありますね。

ですが、おそらくこれは、地ビールが割高になっているのと同じ伝でしょう。
絶対数が少ないので、そういう設定にするしかない、と思うんです。
「飲みやすさ」など、若い世代をターゲットにしたのではない、
良い意味での頑なさのようなものを、この一本に感じました。

No title

おお、やはり岩井トラディションですね。
仰有る様に日本でウィスキーを造り始めた時の事を、何かしら感じさせるトラッドな酒ですよね。
確かに値段は2000円内外で「お安い」とも言えませんが、小細工のないストレート勝負できているのは好感が持てますよね。

マルスは他の酒も真面目に造っているなという印象があって、隣町のスーパーに『ツインアルプス』を置いてあるのを発見しましたので、また買ってきて試してみようかと思います。

甘く派手な酒ばかりでなく、こんな酒が存在するのは確かに凄いことですよね。
煙臭い酒を受け入れる土壌が出来てきたという事でもあるかと。少なくともそんな酒を飲む奴が日本にもいるという事でしょうから。

私もその1人なんですけどね。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
マルス信州蒸留所のウィスキーは、昔ウィスキーはこうだった、
というのを、よく現代に伝えているように思いました。

絶対量が少ないことに加えて、シングルカスクを出し過ぎたようですね。
詳しいことはわかりませんが、〈アンバー〉終売もそのあたりに関係があるかと。
本当に納得できる「この1本」というのを出して、
それを守り続けてほしいというのが正直なところです。

とてもいい線をいっているのに、いま一つ、という感じ。
なんだか歯がゆい気もするんですね。
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