『ミュージック・イン・マイ・ハート』

『ミュージック・イン・マイ・ハート』 (1940年、アメリカ映画、70分)

MusicInMyHeart.jpg
原題:Music In My Heart
監督:ジョセフ・サントリー
出演:トニー・マーティン、リタ・ヘイワースほか


『ショーシャンクの空に』の中でリタ・ヘイワースが出てきて、彼女が1940年代における人気女優であったのを知り、どうしても見たいと思っていた。リタ・ヘイワースの出演リストを調べ、最も良さそうな一本を、とか思っていたのだが、レンタルメディア店で手にした『ミュージック・イン・マイ・ハート』にリタ・ヘイワースの名前があったので、何も考えずに他のものと一緒に手に持ちレジに直行した。5本=1000円だけど、せいぜい見られるのは3本くらいなのだ。

ミュージカルに出演するのを待つ代役のボブ(トニー・マーティン)は、何とかして出演しようとするのだが、なかなか出番が回ってこない。そんな彼に運悪く退去命令が出た。移民受け入れには制限があり、ボブが夜に出向する船に乗ってアメリカを去らねばならないと知った主演男優は、風邪をこじらせた、とボブに花を持たせてやる。歌い終わったボブは大きな拍手を背にすぐさまタクシーに乗り込み、第7桟橋に向かう。

ところが、タクシーはもう一台のタクシーと接触、もう一台に乗っていた若い女性パトリシア(リタ・ヘイワース)は、急いでいるの、結婚式があるから、とボブの乗っていたタクシーに乗ろうとするが、行先が偶然同じだったことから二人は同乗して港へ向かった。しかし、二人が港へ着いた頃、すでに船は出航しており、パトリシアを待つ大富豪は憤慨して結婚を破棄してしまうつもりだった。

残された二人は仕方なく、パトリシアの親類の住む家に向かった。そこでは選挙の立候補者主催の盛大なパーティーが開かれており、柱に上ったサルが下りてこようとしないので困っていた。パトリシアのおじは歌を歌ってサルをなだめようとするがうまくいかず、そこでボブが得意の歌でサルを回収するのに成功し、ボブはパトリシアのおじや妹に気に入られた。姉が高齢の富豪と結婚するのに反対していた妹は、ボブとパトリシアが一緒になってくれたら、と気を利かせる。

会った時からお互いに好意を持っていた二人は次第に近づいていき、ついに互いの気持ちを確かめあって婚約することになった。おじや妹は大喜びで、祝いの宴が開かれたが、大富豪はまだパトリシアをあきらめきれず、何とかパトリシアを取り戻そうとしていた。不法滞在で新聞に顔が載ってしまったボブに大富豪の執事が気付くが、大富豪は密告などしてはならん、と紳士を通す。

何とかいいところを見せたい執事は、大富豪が株主である新聞社に行って「不法滞在者、結婚する」という見出しで記事を作らせ、妻や子どもたちと写った男の顔をボブにすり替えた写真入りの新聞を偽造した。それを目にしたパトリシアは、早とちりして大富豪に連絡を取り、彼の邸宅で夕食をとる約束を交わす。偽造新聞のことを知らぬボブは、パトリシアの心変わりにショックを受ける。

とまあ、これは恋愛喜劇ですね。リタ・ヘイワースってどんな女優なんだ、と期待して見たのだが、本作ではいたって普通の女性として描かれており、歌もダンスもほとんどなし。ボブと婚約した時の家族パーティーで一瞬、彼女はダンスを披露するけれど、それだけなんです。だからこれは、リタ・ヘイワースが大ヒットする前の作品で、彼女の悪女ぶりを見たい場合は『ギルダ』(1946)を見ないといけない、ということだ。

本作はあくまでトニー・マーティンのテナー・ヴォイスを前面に押し出した映画、ということなんだろう。ジャズ、というよりはポピュラー音楽という感じの曲で、歌い方もマイクなしのベル・カント唱法である(おそらく後録音)。この時代はどんな音楽が主流だったか、というのがよくわかるいいサンプル映画でもあるといえる。1930年代の映画は音も悪い状態のものが多いが、本作は1940年にしてはかなりいい音じゃないかと思う。コロンビア映画、とあるのでおそらくはRCA陣営による録音かと想像する。


【付記】
●『ミュージック・イン・マイ・ハート』は 絶対見るべき傑作、という感じではありません。というか、ウィキペディアにも載らぬような映画が、21世紀の日本において見られるというほうが不思議な感じがします。絵に描いたようなハッピー・エンドに思わず笑ってしまいますが、こういう映画もたまにはいいんじゃないかと思いました。


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晴れて今宵は

こんにちは。
私もリタ・ヘイワースの映画はたいして観てませんが、
フレッド・アステアと共演した「晴れて今宵は You Were Never Lovelier(1942)」
という映画のDVDを持っています。
"Shorty George"というナンバーでは、ダンスの神様アステアに一歩も引かない見事なタップを見せています。

https://www.youtube.com/watch?v=WUhhKELUxB0

Re: 晴れて今宵は ; 木曽のあばら屋さん

木曽さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> https://www.youtube.com/watch?v=WUhhKELUxB0

早速見ましたよ!
いや本当、仰るようにアステアに引けを取らぬくらい巧いですねえ!
だけど乙山、まだまだ修行が足りぬのか、
ああっ、そんなにくるくる回っちゃダメでしょう、
とか、そんなに足を高く蹴り上げちゃ……
なんてな所に目が行ってしまいました。

リタ・ヘイワース、他のも見たくなりました。
だけど『ギルダ』はなぜかレンタルメディア店になかったんですよね。
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只野乙山

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