南海高野線堺東駅周辺を歩く(5) 中華料理 ふあんてん

本当に涼しくなってきた。街に出ると、気の早い人はもうマフラーを巻いていたり、コートを着たりしているのが散見されるが、私(乙山)はまだ背抜きのジャケットで歩き回っている。真夏だったらできるだけ近場で昼食を済ませ、すぐさま避暑と休憩(仮眠)をかねてネットカフェに直行するのだが、ここまで涼しくなってきたらその必要もない。ちょっと散歩でもしようかな、なんてな気分にもなろうというものだ。
所用で南海高野線堺東駅周辺に来ている。駅周辺や堺東銀座商店街はほとんど歩き尽してしまった感じだ。西のどん詰まりは阪神高速15号堺線で、そこから向こうに行ったことがなく、いったいどんなふうになっているんだろう、と気になっていた。そこで某日、天気が良くてそれほど暑くないのを機に、阪神高速の向こう側へ渡ってみることにした。歩道橋の一つを渡って、さて降り立ってみると……
いくつもの神社仏閣が集まっている「寺町」だった。大阪市内の上町台地にも大きな寺町があるが、この周辺もちょっと歩けば仏教寺院や神社が目に付くほどの密集ぶりである。そしてこれも大阪市内と同じだが、寺町には付き物である例の「ホテル」もいくつか存在する。寺町は閑静なので文教地区になっていることも多く、そうすると学校のすぐそばに例の「ホテル」が存在するという奇観を目にするのだが、ここもどうやらそんな雰囲気が濃厚である。
なぜ寺町には例の「ホテル」が付き物になっているのか? この謎を解明することはできないが、自分なりの仮説を立てている。たぶん江戸時代では、目的なしの物見遊山や旅行はほとんどすることがなく、遠出にはそれなりの理由が必要だったのではないか。だから治療を兼ねて温泉へ行く、とか、お伊勢参りに行く、というのが「旅行」だった。それで温泉地とか寺町には娯楽施設(つまり遊郭)が隣接してたくさん存在したのではなかろうか。例の「ホテル」は遊郭の名残であるという説もある。
そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、広い道路まで来てしまった。よく見ると、おや、路面電車があるではないか。これは阪堺電軌阪堺線であろう。南海本線の堺駅は海沿いにあり、ちょうどこの路面電車を境にして、西側を「堺駅周辺」とし、東側を「堺東周辺」としてよさそうである。だからいま歩いている所は、堺東駅周辺の最西端付近、ということになる。ちょっと迷いそうになるけれど、堺と堺東は歩いて面白い街だなあと思ったのである。
のんびり歩いてはいるけれど、なんだか腹が減ってきた。昼食をとらねばならぬ。路面電車を見たところでUターンし、周辺をぶらぶら、しかし少し急ぎながら歩く。すると「堺山之口商店街」に行き当たった。ちょっと元気がないけれど、老舗チェーン店〈力餅食堂〉とか洋食屋さんもある商店街。そこを東に向けて抜けたところに、中華料理店と思われる大きな、しかし風変わりな看板が目に留まった。はっきり「ふあんてん」とあるではないか。
まさか「不安店」と堂々と言いたいのではなかろう。ひょっとすると、意表を突いて「fountain」といいたいのか? いや、それはちょっと深読みしすぎのような気がする。なんだか、いろいろと想像をさせられる看板ではあるが、おそらくこれは、「飯店=はんてん」を中国風に読んだ感じに近い音(おん)を当てたのではないかと想像している。すると、「飯店=めし屋」となって、ぐっと庶民的な、町の中華料理屋さん、という感じがするではないか。
というわけで入ってみた。テーブル席と円卓があって、ごく普通の中華料理店という感じだが、メニューに漢字が並んでいるところをみると、古い世代の大陸系中華料理店なのだろう。おそらく華僑ネットワーク(仮称)に属しているんじゃなかろうか。もうかなり日本に馴染んではいるけれど、独特の雰囲気があるのでそれとわかる。いつものように「ラーメンと半チャーハンのセット」を頼む。麺+ご飯はそろそろ止めにしたほうがいいとわかっているのだが、こっちは腹が減っているのだ。
さて料理が来ましたよ。余計な脂が浮いていない「しょうゆラーメン」ですね。焼き豚、モヤシ、メンマ、葱と「いつものラーメン」という感じがしてうれしい。スープも澄んでいてきれいだ。飲んでみると、ほんの少し塩気が強いかなあ、という気がしないでもない。チャーハンからはラードのいい匂いが漂ってくる。これぞ中華のチャーハン、という感じである。今日はチャーハンに何にも乗っていないけど、つぼ漬けのような漬物が付いてくることもある(他日、利用したのです)。
本来チャーハンに添え物は不要であると思う。ラードで仕上げたチャーハンはこってりしているので、あえて添え物を付けるならやはりあの細切りにした紅ショウガが一番合ってるんじゃないかと思う。しっかり味が付いてこってりしているチャーハンに、つぼ漬けのようなタイプは全然合ってないんだけど、たぶん説明してもわかってもらえないだろうな。谷町九丁目の大陸系中華料理店でも中華定食に日本の漬物を添えていたけど、あれも不必要なものだと思う。
抜群にうまい、というわけではないけれど、わりといい線をいっているんじゃないかと思う。ラーメンとチャーハンのセットで、両方ともうまい店はめったにないのが現実で、たいてい「どちらかがいい」か「どっちもだめ」のパターンが多い。それを思うと、〈ふあんてん〉のセットはよくできていて、また食べてもいいかなと思える味わいだ。なので上にも書いたけど、後日、また〈ふあんてん〉で同じセットを食べてしまったんである。
所用で南海高野線堺東駅周辺に来ている。駅周辺や堺東銀座商店街はほとんど歩き尽してしまった感じだ。西のどん詰まりは阪神高速15号堺線で、そこから向こうに行ったことがなく、いったいどんなふうになっているんだろう、と気になっていた。そこで某日、天気が良くてそれほど暑くないのを機に、阪神高速の向こう側へ渡ってみることにした。歩道橋の一つを渡って、さて降り立ってみると……
いくつもの神社仏閣が集まっている「寺町」だった。大阪市内の上町台地にも大きな寺町があるが、この周辺もちょっと歩けば仏教寺院や神社が目に付くほどの密集ぶりである。そしてこれも大阪市内と同じだが、寺町には付き物である例の「ホテル」もいくつか存在する。寺町は閑静なので文教地区になっていることも多く、そうすると学校のすぐそばに例の「ホテル」が存在するという奇観を目にするのだが、ここもどうやらそんな雰囲気が濃厚である。
なぜ寺町には例の「ホテル」が付き物になっているのか? この謎を解明することはできないが、自分なりの仮説を立てている。たぶん江戸時代では、目的なしの物見遊山や旅行はほとんどすることがなく、遠出にはそれなりの理由が必要だったのではないか。だから治療を兼ねて温泉へ行く、とか、お伊勢参りに行く、というのが「旅行」だった。それで温泉地とか寺町には娯楽施設(つまり遊郭)が隣接してたくさん存在したのではなかろうか。例の「ホテル」は遊郭の名残であるという説もある。
そんなことを考えながらぼんやり歩いていると、広い道路まで来てしまった。よく見ると、おや、路面電車があるではないか。これは阪堺電軌阪堺線であろう。南海本線の堺駅は海沿いにあり、ちょうどこの路面電車を境にして、西側を「堺駅周辺」とし、東側を「堺東周辺」としてよさそうである。だからいま歩いている所は、堺東駅周辺の最西端付近、ということになる。ちょっと迷いそうになるけれど、堺と堺東は歩いて面白い街だなあと思ったのである。
のんびり歩いてはいるけれど、なんだか腹が減ってきた。昼食をとらねばならぬ。路面電車を見たところでUターンし、周辺をぶらぶら、しかし少し急ぎながら歩く。すると「堺山之口商店街」に行き当たった。ちょっと元気がないけれど、老舗チェーン店〈力餅食堂〉とか洋食屋さんもある商店街。そこを東に向けて抜けたところに、中華料理店と思われる大きな、しかし風変わりな看板が目に留まった。はっきり「ふあんてん」とあるではないか。
まさか「不安店」と堂々と言いたいのではなかろう。ひょっとすると、意表を突いて「fountain」といいたいのか? いや、それはちょっと深読みしすぎのような気がする。なんだか、いろいろと想像をさせられる看板ではあるが、おそらくこれは、「飯店=はんてん」を中国風に読んだ感じに近い音(おん)を当てたのではないかと想像している。すると、「飯店=めし屋」となって、ぐっと庶民的な、町の中華料理屋さん、という感じがするではないか。
というわけで入ってみた。テーブル席と円卓があって、ごく普通の中華料理店という感じだが、メニューに漢字が並んでいるところをみると、古い世代の大陸系中華料理店なのだろう。おそらく華僑ネットワーク(仮称)に属しているんじゃなかろうか。もうかなり日本に馴染んではいるけれど、独特の雰囲気があるのでそれとわかる。いつものように「ラーメンと半チャーハンのセット」を頼む。麺+ご飯はそろそろ止めにしたほうがいいとわかっているのだが、こっちは腹が減っているのだ。

本来チャーハンに添え物は不要であると思う。ラードで仕上げたチャーハンはこってりしているので、あえて添え物を付けるならやはりあの細切りにした紅ショウガが一番合ってるんじゃないかと思う。しっかり味が付いてこってりしているチャーハンに、つぼ漬けのようなタイプは全然合ってないんだけど、たぶん説明してもわかってもらえないだろうな。谷町九丁目の大陸系中華料理店でも中華定食に日本の漬物を添えていたけど、あれも不必要なものだと思う。
抜群にうまい、というわけではないけれど、わりといい線をいっているんじゃないかと思う。ラーメンとチャーハンのセットで、両方ともうまい店はめったにないのが現実で、たいてい「どちらかがいい」か「どっちもだめ」のパターンが多い。それを思うと、〈ふあんてん〉のセットはよくできていて、また食べてもいいかなと思える味わいだ。なので上にも書いたけど、後日、また〈ふあんてん〉で同じセットを食べてしまったんである。
【付記】
● 毎日このような「ご飯+麺」を食べているわけではありませんので念の為。だいたい週に一回、こうして「ご飯+麺」を食べるくらいの感じです。それにしても堺東(と堺)は面白い町ですね。路面電車まで、と決めて歩き回っているのですが、そのうち時間があるときを利用して、路面電車を越えて堺の町を歩いてみるつもりです。もちろん、帰りは南海本線堺駅から難波行の電車に乗るわけです。
● 毎日このような「ご飯+麺」を食べているわけではありませんので念の為。だいたい週に一回、こうして「ご飯+麺」を食べるくらいの感じです。それにしても堺東(と堺)は面白い町ですね。路面電車まで、と決めて歩き回っているのですが、そのうち時間があるときを利用して、路面電車を越えて堺の町を歩いてみるつもりです。もちろん、帰りは南海本線堺駅から難波行の電車に乗るわけです。


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^^
ご飯+麺~
1週間に1回ぐらいなら。
問題ないペースでしょうか?^^
というか・・・最近。
このような「贅沢」をしていないので。
羨ましい限りです。
ああ。欲求に負けそう・・w^^)/
1週間に1回ぐらいなら。
問題ないペースでしょうか?^^
というか・・・最近。
このような「贅沢」をしていないので。
羨ましい限りです。
ああ。欲求に負けそう・・w^^)/
Re: ^^ ; waravinoさん
waravinoさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
以前、そちらで食事内容を紹介なさっているのを見て、
驚いてしまったのを覚えています。
乙山の昼食も米100gを炊いて、味噌汁とふりかけだけが多く、
朝はバナナとヨーグルトとコーンフレークだ、
そんでもって夜は炭水化物ぬき、というと、
「えっ、それだけ? なんか病人食みたい」とか言われるんですよ。
で、たまにこうやって、麺+ご飯となるわけです。
この日は異様に労働時間が長いんですよね。
ある程度食べておかないと、後で腹が鳴ったりするんです。
以前、そちらで食事内容を紹介なさっているのを見て、
驚いてしまったのを覚えています。
乙山の昼食も米100gを炊いて、味噌汁とふりかけだけが多く、
朝はバナナとヨーグルトとコーンフレークだ、
そんでもって夜は炭水化物ぬき、というと、
「えっ、それだけ? なんか病人食みたい」とか言われるんですよ。
で、たまにこうやって、麺+ご飯となるわけです。
この日は異様に労働時間が長いんですよね。
ある程度食べておかないと、後で腹が鳴ったりするんです。
No title
只野乙山さん、こんにちは。
そういわれてみると、大阪の神社仏閣は全くと言っていいほど知りません・・・
大阪と言うと、華やかな場所ばかりが目立ってますね。
只野乙山さんがご紹介されるところは、穴場と言うか地元の方が行く安くて美味しくて観光客などあまりいない場所と言う感じがて、見てて楽しいです。
チャーハンを食べるとそのお店の腕が分かりますよね。
お米を食べておきたい気持ちもありますよね。
ラーメンの澄んだ色が、関西らしいです。
美味しそう~~(^O^)
そういわれてみると、大阪の神社仏閣は全くと言っていいほど知りません・・・
大阪と言うと、華やかな場所ばかりが目立ってますね。
只野乙山さんがご紹介されるところは、穴場と言うか地元の方が行く安くて美味しくて観光客などあまりいない場所と言う感じがて、見てて楽しいです。
チャーハンを食べるとそのお店の腕が分かりますよね。
お米を食べておきたい気持ちもありますよね。
ラーメンの澄んだ色が、関西らしいです。
美味しそう~~(^O^)
Re: かえるママ21さん
かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
乙山は「行列ができる店」の行列を見ただけでパスします。
だいたいお腹が減っているのに、それを我慢して行列などできません。
ラーメンも新しいタイプのものは好きではありません。
あえて、昔からある薄汚れた(失礼)店を選ぶこともありまして、
別に「穴場」というほどのものではないと思いますよ。
ラーメンとチャーハン。どちらもありふれた料理ですが、
セットを頼んで「どちらもおいしい」という店は、本当に滅多にありません。
あれば、それこそ「お宝」ですよね。
乙山は「行列ができる店」の行列を見ただけでパスします。
だいたいお腹が減っているのに、それを我慢して行列などできません。
ラーメンも新しいタイプのものは好きではありません。
あえて、昔からある薄汚れた(失礼)店を選ぶこともありまして、
別に「穴場」というほどのものではないと思いますよ。
ラーメンとチャーハン。どちらもありふれた料理ですが、
セットを頼んで「どちらもおいしい」という店は、本当に滅多にありません。
あれば、それこそ「お宝」ですよね。