キング・クリムゾン 『USA』

King Crimson / USA (2004 Digital Remaster, original released 1975)

KingCrimson_USA.jpg
01.Walk On...No Pussyfooting
02.Larks' Tongues in Aspic Part2
03.Lament
04.Exiles
05.Asbury Park (improvisation)
06.Easy Money
07.21st Century Schizoid Man
08.Fracture (previously unreleased)
09.Starless (previously unreleased)


『アースバウンド』に続くキング・クリムゾン二枚目のライヴ・アルバムで、オリジナルのリリースは1975年。これを、音楽好きの友人の家でLPからカセットテープにダビングしてもらって聴いていた。フリップ&イーノ『No Pussyfooting』からの曲が流れ、次に「ラークス・タングズ…パート2」、「ラメント」そして「イグザイルズ」と続き、後半は即興演奏の「アズベリー・パーク」、途中でフェイド・アウトしてしまう「イージー・マネー」、最後に「スキツォイド・マン」という内容だった。

LPレコードという時間的制約がある以上仕方がないとはいえ、「イージー・マネー」の中途半端さは不満が残る。詳細はわからないが、当時クリムゾンはすでに解散しており、クリムゾンでもう少し稼ぎたいEGの主導で『USA』の制作が進められたのではないかと想像する。当然フリップも関わったと思うが、さほど情熱をかけて作られたとは思えないし、CDの時代に入ってからもなぜか『USA』はCD化されることはなかったと思う。

そんなわけで、クリムゾンのアルバムの中では印象の薄い『USA』である。だが、「ラークス・タングズ・クリムゾン」(仮称)のライヴの様子を伝える唯一の音源だったわけで、なんだかんだいいながらもそれを聴くしかなかった。その後、ラークス・タングズ・クリムゾンのアメリカ公演の集大成ともいえる『グレート・ディシーヴァー』ボックスセットの発売によって、『USA』の存在価値も失われたかのように思えた。

ところが、2002年になって限定盤『USA』が出て、続いて2004年に発売された紙ジャケット仕様の『USA』をついふらふらと買い求めてしまった。カセットテープをどこかへ紛失してしまい、もう何年も聴いていなかったからだろうか、もう一度『USA』を聴いてみたくなったのだ。なにしろ元のLPには含まれていなかった「スターレス」と「フラクチュア」も収録しているようである。

(1)はブライアン・イーノとの共作一枚目『No pussyfooting』からの曲で、テープによる再生音が流されたものと思われる。(2)はライヴでは最後に使われることが多い曲だが、『USA』ではいきなり冒頭で使われている。ただし、『USA』の曲順は後で編集されたような雰囲気があり、ライヴの実況そのままではない可能性が高い。ヴァイオリンのソロはエディ・ジョブソンによって後からスタジオでオーバーダブされたもので、なるほどデヴィッド・クロスより押しの強いフレーズになっている。

エディ・ジョブソンの起用がフリップの発案なのかは不明。だが『USA』がEGの主導で制作されたとするなら、当時ロキシー・ミュージック(EG所属)に参加していたエディ・ジョブソンの起用を決めたのもEG側かもしれぬ。後に『レッド』で残った三人にジョブソンを加えた形でクリムゾンの再結成を考えたようだがフリップが早々に離脱、残った三人はアラン・ホールズワースを迎えてUKを結成した。UKでの活躍などを見ていると、ジョブソンがクリムゾンに正式加入しても何ら不思議はないと思うのは私だけだろうか。

主にカセットテープを聴いていたので、とにかく音が新鮮に感じる。(5)はスネアのロールから始まり、ウェットンのベース、フリップのギターが絡んで進んでいくが、クロスはメロトロンを演奏している。確かに、この即興はウェットンとブルフォードが引っ張っているといっても過言ではなく、クロスは引き立て役に回っているようにも聞こえる。ウェットンとブルフォードがバンドのサウンドをラウドネス指向にしすぎたこと、それがクロス脱退の要因の一つだったそうであるが、なるほどそう言われてみるとウェットンのベースは騒々しく思えてくる。

(6)は元のLPレコードでは後半部分がカットされていたので、ここでは完全版が聴けるのかと期待したがそのままだったのでいささかがっかりである。(7)のヴァイオリン・ソロもエディ・ジョブソンによるもの。(8)は『スターレス・アンド…』に収録されているものと同じかと思ったが、それはコンセルトヘボウでライヴ録音されたもので、『USA』の音源はアズベリー・パークでのライヴ録音であると付属の資料にある。確かに聴いてみるとコンセルトヘボウのパフォーマンスのほうがスピード感があり、先にアルバムに収録されたことだけのことはある、と納得できる。

(9)はブートレグでもお馴染みの音源で、ヴァイオリンによるテーマ部分のメロディは『レッド』収録のそれとは少し違っているし、ウェットンもいきなり歌詞を間違えているのは笑ってしまうけど、クリムゾンは作った曲をライヴで磨いて録音するというか、ライヴが命のバンドであるのがよくわかる感じがする。最後の二曲の追加はうれしいけれど、やはりなんだか付け足した感じがしないでもなく、実況にかなり近い形の『USA完全エディション』の発売を夢見ている。


≪ 『レッド』へ  『ディシプリン』へ ≫


【付記】
● 『USA』という題名からわかるように、ものすごい数のアメリカ・ツアーの音源をピックアップして編集したものが本来の意味でしょうから、『USA完全エディション』はやはり無理があるのかもしれません。その役割はたぶん『グレート・ディシーヴァー』が担っている、ということなのでしょうね。


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No title

キングクリムゾン、懐かしい!
スキツォイドマン!聞きたくなりました。
しかし、問題もあります。山積みのLPの中から
彼らのLPを見つけても、聞くすべはありません(笑)

Re: しょうちゃんさん

しょうちゃんさん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> しかし、問題もあります。山積みのLPの中から
> 彼らのLPを見つけても、聞くすべはありません(笑)

レコードプレーヤーも必要ですし、フォノイコライザー付のアンプも。
実は乙山もレコードプレーヤーを所有しておりません。
音源のほとんどがCDというありさまでして。
たまにレコードの音を聞きたいなあと思いますね。
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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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