サントリースペシャルリザーヴ



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】



SuntrySpecialReserve.jpg
サントリーオールドはわりと飲んだ記憶があるのに、どういうわけかリザーヴを飲んだ記憶はあまりない。おそらくこれは、単純に価格差が原因になっていたのではないかと思う。今では比較的安くなった両者だが、私(乙山)が飲み始めた頃はオールドが2800円、リザーヴは3200円ほどしていたのではないか。角瓶は1980円、ローヤルは4000円を超えていた、そんな時代である。

そもそもオールドが「憧れのウィスキー」で、ローヤルはもっぱら贈答用だったような時代、リザーヴはやはり高級酒で、ちょっと高級なスナックやラウンジで流通していたのではないかと思う。上司や先輩に連れて行ってもらった店で口にするくらいで、自分で買った記憶はないような気がする。今から思うとほんの少しの価格差だけど、その当時はおそらく手が出なかったのではないだろうか。

調べてみると、リザーヴは1969年の発売で、ちょうど1970年の大阪万博に合わせて造られたようである。世界の人に出しても恥ずかしくない日本のウィスキーを、という意気込みで登場したリザーヴは大阪万博でも好評だったという。スコッチを意識して造られたオールドに対して、リザーヴは絹のような滑らかさとまろやかさを求めたところが受け入れられたのではないかと想像する。

某日、駅前のスーパーマーケットのウィスキー売り場でリザーヴを見かけたとき、そういえばリザーヴをちゃんと飲んだことがなかったな、と思った。見るとフルボトルで2000円である。いろんな酒屋に行くたび、リザーヴの小さなボトルがあるといいなあ、と探しているのだがなかなか見つからず、いつか飲もうと思いながら時が過ぎて行ってしまった。ひょっとすると、今日がその時ではないのか。

ところが、2000円だったらジョニー・ウォーカーの黒ラベルがもう少しで買えるじゃないか、などと思ってしまった。いかんいかん、と首を振って雑念を振り払い、リザーヴをつかんで買い物籠に入れた。角瓶と炭酸水を買い物籠に入れている男とは別の、何かひとかどの人物ででもあるかのような奇妙な錯覚に一瞬襲われたが、レジに並ぶたるんだ行列の中においてそれはすぐに薄れていった。

早速開栓してみると、ふっと昔のウィスキーらしき香りがした。あっ、これは、と一瞬思う。オーバー・アイスで(氷に注いで)飲んでみると、えっ、と思わずにいられなかった。あまりリザーヴを飲んだ記憶はないけれど、それでも明らかに違う、何か全く別物を飲んでいるような気になった。滑らかで飲みやすい感じは継承されているけれど、あの「リザーヴ」ではないなあ、と思ったのである。

気になってサントリーのサイトを見ると、「味わいの決め手となるキーモルトには白州モルトを採用しました」とある。白州蒸留所が設立されたのが1973年、リザーヴが登場したのは1969年だから、元々のリザーヴは山崎蒸留所のモルト原酒が使われているはずで、私がリザーヴを飲んだのは1980年代の半ばから終わり頃。詳細と事実は不明だが、おそらくその頃はまだ元々のリザーヴだったのではないかと推測する。

なので現在の〈スペシャルリザーヴ〉は元の〈リザーヴ〉と違っていて当然なのだ。幸い(?)元のリザーヴをたくさん飲んで、味をしっかり記憶しているわけではなかったので、以前のイメージが壊れてしまった、というオールドに感じたときのような喪失感を味わったわけではない。なるほど、開封した瞬間に感じたあの香りは、やはり白州モルトによるものだったわけである。

白州モルトは〈シングルモルト白州〉を飲んだときに「硬派」な感じがして好感を持っている。へぇ、何だかいまどきねえ、とか思いながら新しいリザーヴで杯を重ねてしまったのである。いささか甘ったるい感じが多いサントリーの現在のラインナップの中で、リザーヴはそんなに甘ったるさを感じさせぬ不思議な立ち位置にあるように思った。面白いではないか、これは悪くない、とその晩は思ったのである。

次の日、リザーヴを水割り(ウィスキー:水=1:1)にしてみた。すると、甘さが前面に出てきて氷だけで飲んでいるのより、さらに飲みやすくなる。うむ、これはおそらく、水割りで飲むのを前提にしたブレンドなのかもしれないな、などと勝手に想像した。リザーヴは個人消費より、飲食店で流通している量のほうが多いんじゃないだろうか。あの種の店での飲み方はもっぱら、たいへん薄い水割りになっている。たぶんそこに照準を合わせたんじゃなかろうか、などとこれも勝手な推測である。

ウィスキーは空気に触れると(一度開封するとボトルの中でも)少しずつ変質していくが、中にはその変わり方が大きいものがある。たとえばバーボンの中には、グラスに注いでしばらく置いておくと、少しだけ白濁するものもある。私の勘違いかもしれないが、〈スペシャルリザーヴ〉は比較的変質が大きいタイプではないかと思う。具体的には白州モルトらしいフレッシュな木質香と好ましい硬さが薄らぎ、カラメル香とバニラ香が支配的になる、ということである。


≪ 竹鶴ピュアモルトへ  マルス〈ツインアルプス〉へ ≫


【付記】
● 飲み始めのリザーヴは白州モルトらしさを感じますが、時間が経つにつれてそれは失われていき、なにかつかみどころのないウィスキーになってしまうような感じがしました。少し時間の経ったスペシャルリザーヴと、竹鶴ピュアモルトは「傾向」(味にあらず、念の為)がたいへん似ているのです。もちろんこれは「あてにならぬ乙山の戯言」ですので笑って無視して下さい。くれぐれも噛みつき無用でお願いします。


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No title

リザーブは、私がサントリーを飲まなくなる以前、何度か飲んだ記憶が・・・

ただおっしゃるように、当時はお値段がお値段でしたし、それに輪をかけて私の懐が乏しくて・・・ほんの数度だけ。多分誰かのおごりだったと記憶するのですが・・・

なんとなく高級な・・・そんな印象だけが(おごってもらったお店のイメージからくるのかも?)残っています。

興味深いですなぁ〜。

わたくしも
近いうちに このリザーヴを
ジックリ味わってみたいですねぇ!
大変興味深いウイスキーです。
自分なりの謎解きをしながら
飲み進めるのは秋の夜長にはピッタリ
なので、ツマミにも拘りたく
なりますねぇ〜。
今現在は酒断ちダイエット中なので
来週から完全復活してやるつもりで
ございます。m(._.)m

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
本当、リザーヴは自分で買って飲んだことはありません。
あれは、どこかの店で、だれかに飲ませてもらったものでした。

今でもボトル2000円といえば、ちょっとしたものでして、
ふだん1000円前後のものを飲んでいる者からすれば、
やはり「高級」な感じがしますね。

記事にも書きましたが、もう少し出せばジョニ黒とかシーバスが買えますし、
リピートはあるかどうか、大変微妙なところです。

Re: 興味深いですなぁ〜。 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
リザーヴは、以前とは全く違う中身になりましたので、
なんだかなあ、という感じもします。

リザーヴに限らず、オールドも角瓶も、今や中身が違うのですから、
いまさら嘆いても仕方ないことなんですけどね。
時代が、完全に変わってしまったんですね。

新しいリザーヴ、そんなに悪くないんですけど、
白州モルトの味わいが、比較的早く失われてしまうのが残念です。
だけど残れば、シングルモルト白州との違いは何なのだ、となりますものね。
不思議な感じがするリザーヴでした。

> 今現在は酒断ちダイエット中なので

どうかお身体お大事になさってください。

No title

おお、今回はリザーヴですね。
実は先日買おうか買うまいかスーパーで長考に入りました。
結局は最近流行りの角瓶に興味があって、そっちを買ってしまいましたけど。

記事を拝見して白州の風味があるのは良いなあと思ったのですが、そんなに早く風味が変わってしまうのであれば微妙ですね。
日本人の味覚に合わせて…とあまり個性を立たせない酒が主流となっているんでしょうねぇ。

角瓶を水割りで飲んでいて、私も色々と感じるところがありました。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
昔、御馳走になったウィスキーで、自分で買ったことはないんです。
これのミニボトルをずいぶん探したんですが、どこにもありません。

乙山の勘違いの可能性は大きいのですが、フルボトルを買ってお飲みになると、
はっきりわかるのではないかと思うんですね。
だからこれ、180mlくらいの小さなボトルがあると本当にいいんです。
買ったら風味の変わらぬうちに飲み切る、そういうことです。

白州モルトはもっと評価されるべき

リザーブは結構モデルチェンジを繰り返しているので、結構ブレが多いのかと思います。
しかし、白秋モルトをベースにしている今のブレンドは好感が持てます。
王道である山崎モルト系の銘柄とは異なる、スペイサイド風のブレンドは結構好きです。

ちなみにニッカが「ザ・ニッカ12年」を出して、衝動で買って飲みました。
ストレートはきついですが、ロックやトゥワイスアップで花が咲いています。

私の地元札幌でも、「マッサン」が始まったことで熱気渦巻いています。

Re: 白州モルトはもっと評価されるべき ; RERAさん

RERAさん、コメントありがとうございます。
仰るように白州モルトはいいものだと思います。
〈ザ・ニッカ12年〉は面白そうですね。

No title

乙山さん、お久しぶりです。

リザーブは自分が20代のころにレギュラーボトルのほかに
シェリー樽仕上げのボトルが合ったのを覚えております。
当時の個人的な感想では、レギュラー品のほうが自分の好みに
あっていたと覚えております。
メーカーからも水割りにしたリザーブの缶が出ており、明らかに
ハイボールではなく水割りを意識してブレンドされてるようですね。
久々に現行のリザーブを飲みましたが、やはり昔のブレンドとは
違うようにも感じましたが、白州系ベースのウイスキーが好きなことも
あって、それはそれで良いんじゃないかなあと思った次第です。

Re: nandemonaさん

> 乙山さん、お久しぶりです。
>
nandemonaさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。
そうそう、以前リザーヴのシェリー樽というのがありましたね。
仰るように、リザーヴは水割りの缶入りがあるのを見たことがあるような気がします。

記事でも書きましたが、リザーヴは個人消費より、店の流通が多いのでしょう。
店とは、まあスナックやラウンジのような所で、
そういう店ではかなり薄めの水割りで飲むことが多いのです。

なにしろ、女の子相手に長時間飲み続けるわけですから、
濃いものを飲むと倒れてしまうんですね。
水割りを意識したブレンド、と考えてよいと思いますが、
炭酸で割っても面白いと思います。
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只野乙山

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