竹鶴ピュアモルト



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】



TaketuruPureMalt_01.jpg
比較的早い時間に仕事が引けて、ちょっと一杯やりたいなという気分のときに立ち飲みがあると便利である。いま住んでいる町にも何軒かの立ち飲みがあるので利用することがあるが、そのうちの一軒で壁に「竹鶴プレミアムハイボール」と宣伝しているのが目に付いた。これは店の人が手書きしたものではなく、メーカーの販売戦略として綺麗な写真入りの広告である。

そうか、やはり「ひげのニッカのハイボール」では「うちのハイボールは、角だから」に勝てないのだろうな、とぼんやり思った。それにしても〈竹鶴ピュアモルト〉で炭酸割りってのはどうなんだろうな、と思って立ち飲みの帰りに駅前のスーパーマーケットに寄った。もちろん〈竹鶴ピュアモルト〉を買うためである。

〈竹鶴ピュアモルト〉は比較的最近(2014年現在)販売された、熟成年数無記載のブレンデッド・モルト・ウィスキーで、余市蒸留所と宮城峡蒸留所のモルト原酒を使用しているから、当節流行の「シングルモルト」を名乗ることはできない。以前から〈竹鶴ピュアモルト12年〉として販売していたのだが、それは終売となって代わりに登場したのが「12年」をとった〈竹鶴ピュアモルト〉というわけだ。

早速オーバー・アイスで(氷に注いで)飲んでみる。ううむ、うまいんだがそれを一言で表すのは難しい。なんともつかみどころのない感じである。この感じ、このつかみどころのなさは、間違っていると思うが〈ザ・ブレンド・オブ・ニッカ〉に似ている。もちろん、味そのものが似ていると言いたいのではなく「傾向」が似ていると言いたいので念の為。フルボトルを買って飲んでみたが、予想と違っていたのでいまだに記事にできないウィスキー。いつかまた飲んで納得できたら記事にしようと思っている。

私(乙山)の味覚など全く当てにならぬが、どことなく両者は似ているように思う。だが飲んだけどよくわからん、では話にならぬのでなんとか言葉にしてみよう。香りは有機溶剤系をまず感じ、カラメル香とバニラ香、そしてバナナの香り。口に含んでみると、モルティさを感じるが、ピート香は微弱でほとんどわからぬくらい。その代わりさわやかな木質香とほのかな酸味もあり、どこか果実を思わせるフィニッシュ。

TaketuruPureMalt_02.jpg記憶に残っている〈竹鶴ピュアモルト12年〉とは明らかに異なるブレンドで、重厚さが後退しているけれどさわやかな軽みと飲みやすさがあり、ストレートでも味わえるのではないかと思う。ただ、飲みやすくなった分だけ何かが突出していることはなく、従来のように「あっ、これは余市が云々」とか「これは宮城峡を云々」などと、わかりやすいウィスキーらしさが後退しているように感じた。

では、待ってました(?)ということで炭酸割りにしてみた。ほのかな酸味が心地よく、若いアルコールがなりをひそめる。ウィスキーのソーダ割りというより、別の何かを飲んでいるような気になってくるのが面白い。しかしグラスを傾けているうちに、やはりこれはウィスキーなんだな、というのが後からわかる感じ。ソフィスティケイテッド・ウィスキーってことなんだろうか。飲みやすさを追求すると、こういう味になるってことだろう。

この、あまりの変わりように「これが〈竹鶴〉か……」と思う人も少なからず存在するのではないかと想像する。だけど、「ワシはいちばん売れているやつを飲むんじゃ」とハイニッカを毎晩飲んでいたニッカの創業者にして寿屋の工場長だった、竹鶴政孝氏である。「竹鶴プレミアムハイボール」で〈竹鶴ピュアモルト〉が売れたら、故・竹鶴政孝氏も喜ぶんじゃないかと思う。いちばん売れるかどうかはわからないけど、人気のウィスキーが自分の名前、というのは素敵なことじゃないだろうか。

ハイボール戦争なんて巷では言うけれど、そういう「戦争」が起こること自体がウィスキー業界にとっては幸福なことではないか。若い世代のウィスキー離れは、私ごときの想像をはるかに超えた所まで行ってしまっているのではないかと思う。だから〈竹鶴プレミアムハイボール〉は本気の本気、社運をかけた入魂のプロジェクト(?)なのかもしれぬ。「竹鶴プレミアムハイボール」だったら、「うちのハイボールは、角だから」より別格の高級感があるような感じである。


≪ シングルモルト白州へ  サントリーリザーヴへ ≫


【付記】
● 良いものを作っても売れない時代、というか、そういうものがあること自体を知らない世代になったということでしょう。では、以前はどうだったかというと、テレビ宣伝がウィスキーの飲み方を教えてくれた、あるいは、そういうものがどこか素敵なことなんだと刷り込まれたのかもしれません。今は、国によってはアルコールの宣伝が禁止されているところもあるとか。最近ではウィスキー離れどころか、なんとテレビ離れという現象が起こっているというではありませんか。


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竹鶴

乙山殿今回はまた 強敵ですねっ!
わたくしもこれまで何杯も立ち飲みで
呑んでいますが、謎多きウイスキーですね〜。
竹鶴12年のコスパが素晴らし過ぎたので
呑む側のわたくしの感覚の方がどうか
してるのは確かなのですか、それを
差し引いても仰る通り「掴み所が無い」
不思議なカンジです。
「もっと呑み込んで謎を解いてごらんっ」て、
もしかしたら ニッカの罠かもしれません。
とりあえずウイスキーの美味しい秋に乾杯です!


No title

今回はノンエイジの竹鶴ですね。
仰有るように私も少しクセのない方に振ってあることに戸惑いまして、まだリピートをしていない状況です。
私はもう少し個性を尖らせていた方が皆納得出来たんじゃないかと思いましたね。

ですが昔からある名前を使って新しいウィスキーを造るというのは、いろいろな課題が沢山あって難しい事なのだと思います。

角瓶ハイボールのお蔭でウィスキー人口が増えたのは結構なことですが、それが為に原酒不足で終売になる酒がでるのも困ったものだと。

Re: 竹鶴 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
これは不思議なウィスキーですね。
旨いんだけど、ウィスキーなんだけど、
なんか、ふつうの感じと違うんですよね。

乙山は「つかみどころがない」と思いましたが、
そう感じている方がいるとわかって安心しました。
なんでこういうブレンドにしたのかなあ、
そう思うのですが、これは「ザ・ブレンド・オブ・ニッカ」でも感じたことです。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
今回はいささか驚かされました。
あまりの変わりように戸惑うのですが、
ブレンダーのほうですべてわかってやっていることでしょうからね。

竹鶴ピュアモルトのエントリーとしてラインナップに並んでいるんですが、
上級酒を想像させるにふさわしい仕上がりとは違う気がします。
やはり「竹鶴プレミアムハイボール」のためのブレンドでしょう。

〈竹鶴ピュアモルト12年〉のファンとしては残念ですが、
収益が出なければ経営も成り立たないわけですからね。
その御蔭で他のラインナップが残っていると思って、
オールド・ニッカを飲むことにします。

No title

私は相も変わらずクリアブレンドですが・・・竹鶴さんには一応仁義を貫いていますよ。時々浮気するときは・・・まあ、イギリス物ですか・・・それも1000円までの・・・
10月からは竹鶴さんの連ドラが始まりますね。ちょいと楽しみにしています。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
立ち飲み屋で「竹鶴プレミアムハイボール」なんてやってましてね。
特製グラスもあって、それで作った竹鶴ハイボールは確かになんだかうまそうです。

竹鶴氏と、リタ夫人の話がテレビドラマになるんですか!
それによって竹鶴政孝とニッカがもっと広く知られるといいですね。

No title

ノンエイジが出て間もないころに飲んでみましたが、年数の短い原酒(10年前後か?)を使ったことによる若さが出た気がします。

ただ、12年物でもスコッチのブレンデッドと変わらない値段で出し、17年でも一葉さんでおつりがくる値段で買えるとなると、竹鶴ピュアモルトはバーゲンプライスだと思います。
その点が、職人気質で金勘定、価値の算出が下手なニッカらしいなぁと思います。

Re: RERAさん

RERAさん、コメントありがとうございます。
原酒の若さはあったと思いますが、さほどではなく、
それよりなにか「つかみどころのなさ」を感じました。
仰るように、ニッカは良心的ですよね。

竹鶴大好き

これうまいですよね。説明できませんが。


竹鶴17が世界一賞を取った時、買ってきました。フルボトルがうんと値上がりしたんで、コンビニにのこった値上がり前の150㏄瓶をかき集めました。で、期待たっぷりに飲んだところ…口に合いません。まるで薬品臭…苦手です。アタシ的にはノーエージが好き。

後から思うと、17年はFrom the Barrel ににてますね。

生協で安売りしてたんで、また買ってきました。超音波熟成器あてて、12年に化けるか試してみます。

Re: 竹鶴大好き;gkrsnamaさん

gkrsnamaさん、コメントありがとうございます。
竹鶴ピュアモルト、普通にうまいのですが、
それを言葉にしようとすると難しいのです。
記事にも書きましたが、つかみ所がない感じです。
ハイニッカを飲んだ後でやると、高級感がわかるのではないでしょうか。

>超音波熟成器あてて、12年に化けるか試してみます。

なぬっ? それって本物というか、そういうものがあるなんて……
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