アート・ペッパー 『ジ・アート・オブ・ペッパー』

Art Pepper / The Art of Peper(1957)

TheArtOfPepper.jpg
01. Holiday Flight
02. Too Close for Comfort
03. Long Ago (And Far Away)
04. Begin the Beguine
05. I Can't Believe That You're in Love With Me
06. Webb City
07. Summertime
88. Fascinating Rhythm
09. Body and Soul
10. Without a Song
11. Breeze and I
12. Surf Ride


アート・ペッパーはひょっとしたら(というかたぶん)チャーリー・パーカーより好きなアルト・サックス奏者かもしれない。チャーリー・パーカーの演奏は速過ぎるし何を吹いているかよくわからぬのは己の修行不足であるけれど、別に修行などしなくてもすっと耳に心に入ってくるようなジャズが好きである。ジャズ・ヴォーカルが好き、というのもそんな理由からなのかもしれない。

そういうタイプのジャズ奏者としてレスター・ヤングやルイ・アームストロング、スタン・ゲッツやマイルス・デイヴィスらがいると思うが、アート・ペッパーもそういうジャズ奏者の一人ではないかと思う。とにかく「聴けばわかる」のである。私(乙山)が本当に音楽的にわかっているかどうかはおおいに怪しいのだが、音楽的になどわかってなくともよい。感覚的に良ければ、それでいい(おいおい)のである。

今回聴いたのは『ジ・アート・オブ・ペッパー』(1957)で、「オメガ・セッション」とも呼ばれている盤。詳細はわからぬが、もともとLPレコードの形ではなく、オープンリール・テープの形で販売されたという珍しいものだそうだ。オリジナルのそれを聴こうとすれば、オープンリール型のテープ・デッキを用意しないといけない。昔、カセットデッキで音楽を聴いていた頃、いつかは欲しいなあと思っていたオープン型テープデッキである。

もっとも、LPレコードとしても幾つかの盤が発売されていたようだが、演奏時間の制約上、選曲してプレスするしかなかったものと想像する。CD時代になってようやく全貌が明らかになったということだが、昔からのファンでない私は2006年発売のCDを入手した。ジャケットはオレンジ色だが、黄色のジャケットもあるようで、その違いの意味するところは不明である。

録音メンバーはアート・ペッパー(as)、カール・パーキンス(p)、ベン・タッカー(b)、チャック・フローレス(ds)のカルテット編成。(1)はペッパーの初リーダー作『サーフ・ライド』でも吹き込まれたミディアム・テンポの曲。テナーを思わせるような音域から快調に飛ばすペッパーの後をパーキンスのピアノソロが受け継ぎ、終盤ではペッパーとフローレスの4小節交換のやりとりの後、エンディングに。

(2)はブロードウェイのミュージカルでヒットした曲で、サミー・デイヴィス・Jrの歌がYouTubeで聴ける。元歌が相当に洗練されたもので、ペッパーがどう料理するのかが聴きどころだが、都会的で洗練された路線を狙っていたスタン・ケントン楽団出身のペッパーにとっては馴染みやすいというか、むしろお得意の曲なのだろう、のびのびと元歌を壊すことなく、歌いあげるように演奏する。

(3)はアップテンポでかなりビ・バップよりに仕上がっている。後半ではペッパー、パーキンス、フローレスの三者が自由闊達に4小節交換を楽しんでいる。(4)はコール・ポーター作のよく知られた曲で、いろんなミュージシャンがカヴァーしており、クリスティ原作の映画『地中海殺人事件』(1982)の挿入曲として使われている。出だしはなんだかよくわからないが、ペッパーのアルトが主題を吹くとたん「ああ、これか」となるはずだ。

(5)はタッカーのランニング・ベースとペッパーのアルトだけで始まり、(0:40)あたりからフローレスのブラッシュ・プレイが入り、ピアノは(1:10)を過ぎたころに入るという趣向が洒落ている。(6)はバド・パウエル作の曲だが、この曲だけ他と違ってハイハットがやたらうるさい。録音あるいはミックスダウンのときにミスしたのか、あるいは意図的なものなのか不明。

(7)はビリー・ホリデイやジャニス・ジョプリン、ジョン・コルトレーン、新しくはノラ・ジョーンズらのカヴァーで知られるジョージ・ガーシュイン作の曲。1920年代のアメリカにおける黒人の過酷な生活を歌った内容で、ペッパーのプレイもどこか抑え気味ではあるけれど、そこに込められた情感が伝わってくるようだ。(8)もガーシュインの曲で、ミディアム・テンポを少し上げたくらいの軽快なノリにペッパーとパーキンスのやりとりが楽しい。

(9)はコールマン・ホーキンスも取り上げてヒットしたバラッドで、「身も心も」というほどの意味だろうか。ゆったりと情感を盛り上げていくペッパーのアルトはときにソプラノサックスかクラリネットを思わせるところへ来たか、と思えば低音部へひらりと舞い降りてくる瞬間が心地よい。パーキンスのエレガントなピアノソロが受け継ぎ、短いパッセージのベースソロへ渡し、もう一度ペッパーで閉じる。(10)はミディアム・テンポでミュージカルのヒット曲。ところどころに遊びが感じられるのも楽しい。

(11)はラテン曲が原曲らしいのだが、ここでは「サンバ」とか「ボサノヴァ」という感じにはなっておらず、ピアノとドラム、そしてベースのリズムの取り方がなんとなくそれっぽい感じ、という雰囲気。(12)はペッパー作の曲で、同タイトルの初リーダー・アルバムにも収録されているペッパーの「お気に入り」なのだろう。CD付属の解説によると「ブルース」だということだが、テンポが速いのでそうだとは一聴してわからぬくらいである。


【付記】
● 本アルバムはブロードウェイでヒットした曲をたくさん取り上げて親しみやすい構成になっているうえに、ペッパーも原曲の感じをこわさぬように演奏していることもあってたいへん「わかりやすい」のですが、そのぶん少しだけ「かったるい」感じがしないでもなく、それは「ビギン・ザ・ビギン」などに表れているように感じるのは乙山だけでしょうか。


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