6463シングル0.5Wアンプ (完成編)

6464_InnerConstraction.jpg
6463シングルアンプもいよいよ佳境に入った。本体ケース(シャシー)の加工と塗装が終わったら、後は機構部品を取り付けて配線すれば終了、のはずであるがこれがなかなか困難を極めた。というのも、側面部に電源部の入力と、信号の入出力端子、音量調整や切り替えスイッチなどたくさん詰め込み過ぎたのが災いし、配線にはおおいに難儀した。写真一枚目はアンプの内部構造を写したもので、みっともないが本当に作ったので念の為。

平ラグを使ったアンプユニットや電源ユニットはあらかじめ組んでおいた。そうでないと、最終的にどれくらいのスペースが必要か、把握しようがないからである。大きめのケースだったら機構部品をすべて取り付けてから配線してもいいのだが、今回は可変抵抗器や切り替えスイッチなど、ほとんどの部品に配線してから取り付ける方法をとった。

アンプユニットや電源ユニットの配線(パターン)は何度やっても間違いそうになる(というか実際、間違ってしまった)ので要注意である。たとえば、整流直後の入力キャパシターのマイナス側は、次のキャパシターと共有するべきではなく、すぐに電源の0Vに単独で戻したほうがいいと頭ではわかっていたのに、省スペースに気をとられ、4個のキャパシターのマイナスを共有して嬉しがっていたのだから話にならない。

たった二段の三極管シングルアンプなのに、なんでこんなに時間がかかるんだろう。自分でも不思議に思うくらいである。そうかといって無理をして先を急いではならない。仕事もあることだし、一日の作業はほんの少しだけど、たとえ一歩だけでいいから前に進めよう、というつもりで作業を重ねていくしかないだろう。そんな感じで少しずつ進めていった。

ところで、はんだ付けをしていると「手がもう一本あったらなあ」と思うこともあるのではないかと思う。そういう場合、たとえばソケットに配線をからげた後、ぴんと伸ばした状態でマスキングテープを使ってケースの端にとめてしまうという方法をよく用いている。多少面倒くさいが、マスキングテープは何度も使えるので毎回はんだ付けをするたびにテープを切る必要はない。

6463single_FrontView_01.jpgすべて配線が終わったら8Ωのスピーカー端子に8Ωのセメント抵抗をつなぎ、電源スイッチを入れるが、この段階では負帰還回路を外しておく。スイッチ投入後、煙が出たりなど異常がないことを確かめると回路計(デジタル式)で各ポイントの電圧を測定する。今回は初段と出力段のカソード抵抗をシリーズにしてできるだけ理想値に近付けるなど工夫をしたので、ほぼ満足いく測定結果(設計値との誤差3%以内)を得ることができた。

補足しておくと、たとえば整流管を使った整流直後の出力電圧がどれくらいになるか前もって知るのは難しい。多くの作例を見て概算するか、整流管の特性図から数値をつかんでおくなど、いくつかの方法があるが、今回は作例から約1.1倍と踏んで設計した。実際にACレンジでトランスを測ってみると、3Vほど多めに出ていた。これは容量より少なめだから起こることだが、ついでにヒーター電圧やAC100Vが実際にはどれくらいなのか、測定してみることをお勧めする。

測定の結果、電源トランスの電流容量の67%使用時における、この整流管の直流出力電圧は1.09倍だった。トランスから多めに出たぶん、整流管が少なめで相殺されていたわけで、偶然の結果、設計値と実効値が近似していたにすぎない。電源トランスは容量限界で使用した場合、指定の電圧が出るように設計されているので、容量を少なめにすると、たいてい多めの出力電圧になるのが普通である。かといって、限界付近で使うとものすごい熱を発するのはご存知の通り。

続いてテスト用スピーカーをつないで音出しに移る。小型アンプなので卓上に置いてPC音源(YouTube)とかiTunesライブラリにあるMP3音源を使っての横着な試聴である。音量つまみを最小に絞っておき、恐る恐る音を出してみる。おっ、小さいながらも何か聞こえてくるので少し音量を上げてみてもひどいノイズはなさそうである。無帰還のまましばらく音を聞いてみると、なんだか元気のいい新鮮な音に感じる。ここまで来て大丈夫なら、負帰還回路をつないでもいいだろう。

一発で決まるというのはじつに気持ちのいいものである。安心してテスト用スピーカーからアンソニー・ギャロのマイクロサテライトに変更してリスニングを続ける。ビル・エヴァンス「マイ・フーリッシュ・ハート」と「ワルツ・フォー・デビイ」、ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』、J・S・バッハの「二つのバイオリンのための協奏曲」、モーツァルト交響曲第40番、第一楽章、そしてヴォーカルにはエリン・ボードやソフィ・ミルマンなどを聴いてみた。

さすがに「迫力ある低音」はOPTのコア・ボリュームに限界があることに加え、小型スピーカーを併用していることもあって多くを望むことはできない。低音再生を最重要視する向きはこのような小型アンプと小型スピーカーの組み合わせでは満足できぬかもしれない。またクラシックの交響曲もいささか苦しいかなと思わぬでもない。ピアノやギターのソロ演奏、ヴォーカルはなかなかいい感じで再生してくれる。

後日、もう30年近く使い続けているヤマハの小型スピーカーにつなぎ、音源はCDで鳴らしてみた。ボズ・スキャッグス『スピーク・ロウ』を聴いてみたが、ちゃんと低音が聴こえてくるではないか。春日のトランスの実力を知るには、やはりそこそこのスピーカーにつないでみないといけないのだろう。ふだんの聴取レベルはかなり低い出力なんだなと再認識した。音楽を軽く流すのなら、もうこれでじゅうぶんではないかとも思う。もし高能率のスピーカーだったら、と想像するだけで楽しくなる。

6463single_FrontView_02.jpg6463シングルアンプを作る際、いちばん気がかりなのがハムノイズだった。本来はコンピューター回路用の電子管で、ハムやマイクロフォニーがいったいどれくらいなのか未知数だったからである。実際にアンプを作って聴いてみると残留ノイズはまったく気にならないレベルで安心した。それでも個体差はあるかもしれないし、10dB近い負帰還がかかっているせいでマスクされているのかもしれない。

たかだか0.5W程度のシングルアンプではあるけれど、個人宅において比較的小さめの音量でひっそりと音楽を楽しむという用途であればじゅうぶん実用的であると思う。聞き流す感じで音楽を楽しむ人は、高能率スピーカーとの併用でメインシステムにもなりうる(?)可能性があるのではないか。6463の作例がほとんどないので心配したけれど、ハムやマイクロフォニーに悩まされることも今のところない。ヒーターの規格が6.3V/0.6Aなので心配した発熱もそれほどではなく(7月下旬で)、真夏でも稼働できるレベルだと思う。

とにかく、6463がパワーアンプの初段にも使えるのがわかっただけでも収穫だったし、予想以上にいい音で鳴ってくれて楽しませてくれたのはうれしいことだった。6463に人気がないのは、おそらくピン配列が特殊なため、他の球に差し替えて遊ぶことができぬのが原因ではないかと想像する。個人的にはとても気に入ってしまって、このアンプを作ってよかったと思っている。そして春日のいちばん小さなトランスは楽しい、というのは本当だった。


≪ 6463シングル製作編へ  後面開放型SP箱 構想・設計編へ ≫


【付記】
● 熟達者やベテランの先輩諸氏のように、きちんと測定をしてアンプの本当の状態を知っておくのが最上であるのは言うまでもありません。ですが寡作にして安い「遊び」を標榜する者(乙山)にとって、測定器の類は分不相応に高価なもので、おいそれと入手するわけにはいきません。いずれそのうち、ということで。

春日無線変圧器のいちばん小さなシングル用トランスは乙山の予想をはるかに超えたものでした。ヤマハの小型スピーカーにつないで聴いていると、低音もわりと聞こえてきて嬉しくなってきます。これ以上の低音を求めるなら……そういう時こそ、トーン・コントロールというものがあるではありませんか。64643シングルアンプを、高能率のいいスピーカーと併用するのが楽しみになってきたのです。D130用の後面開放箱を作る意欲が湧いてきました。


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No title

こんにちは、

やはり、こういうことをやり遂げることのできる乙さんはいいと思うな。
僕なんかはなにもできないから稼いで好きなものを買うしかない。
こういうことを経験していきつくところは深みがちがうんでしょうね。
できあがったアンプ、プチではあるけれどかなりセクシーでいい感じじゃ
ないですか!

最近はすこし体調の悪い自分ではありますが,
店で鳴らそうとしている銀箱にはフィックストエッジの604を入れる
ことにし、今、ユニットを探してもらっています。

しかし、いくら名器を並べても、手作りのそのアンプがうらやましく
思えてしまうのは不思議ですねえ。結局、見えてくる世界観というのは、
大きさだけではありません。立派なアンプだと思います。

hobo

Re: HOBOさん

HOBOさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
いやあ、今回は小型にしたばっかりに、おまけに色々詰め込んだばかりに、
配線に苦労しましたよ! 出来上がってみるとうれしいものですね。

お店にハーツフィールドと銀箱、タンノイがあるなんていいですね!
604のフィクスト・エッジは初期型でしょうから、
そんなにたくさんは出回っていないでしょうね。
だけど、探せばどこかにあるんじゃないでしょうか。

このアンプはささやかな自己満足のためだけにあるもので、
公の場に引っ張り出すと良くないような気がしますね。
お店だったら、やっぱりいいスピーカーとアンプがないとねえ!

とか言いながら、もし乙山が店をやったら、拙作のアンプを鳴らすかも。
できるだけ高能率のスピーカーを用意して、
「えっ? これが鳴らしてるんですか?」なんて、
驚く人の顔を見てほくそ笑むなんて楽しそうですよ。

近頃HOBOさんに動きがないようでしたので少し心配でした。
乙山もですが、どうぞお体お大事に。
この夏に、D130用の箱を何とかするつもりです!
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只野乙山

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