キング・クリムゾン 『レッド』

King Crimson / Red (1974)

KingCrimson_Red_01.jpg
1.Red
2.Fallen Angel
3.One More Red Nightmare
4.Providence
5.Starless


自分にとってキング・クリムゾン入門はこの『レッド』によってだった。まだCDが出る前で1980年頃だったろうか、音楽好きの友人の家でLPレコードで聴かせてもらった。とにかくその破壊的かつ重金属的なサウンドに圧倒されてしまったのである。1970年代のギター・ヒーローに憧れながらもブルースやジャズに興味を持ち、パンクにはちょっと距離を置いていたロック小僧は、その異質なサウンドの虜になってしまったわけですね。

アメリカ・ツアーから帰るとデヴィッド・クロスが脱退、残されたフリップ、ウェットン、ブルフォードが『レッド』のジャケットの表写真に見える。『レッド』はこの三人に加え、かつてクリムゾンでプレイしたイアン・マクドナルド(kbd, as)、メル・コリンズ(ss)、そしてマーク・チャリグ(cornet、「アイランズ」のコーダのホーン・ソロ)やロビン・ミラー(oboe、『リザード』の「ボレロ」や『アイランズ』の「カモメの歌」など)らがゲスト参加している。

(1)は三人だけで録音されたと思われるへヴィなインストゥルメンタル曲。ギターのパートは重厚さを出すためユニゾンでマルチ・トラックのオーバー・ダビングがなされている。人気曲だが、ヘヴィ・ロック・アンサンブルともいえるものでソロ・パートなど遊びがないのが特徴。1981年以降のライヴ映像を見ると、フリップは本当につまらなさそうにこの曲を演奏しているのがわかる。ブルフォードのドラミングは素晴らしく、これだけでも聴いている価値がある。

(2)は(1)のヘヴィネスから一転して静かなヴォーカル曲になる。フリップのアコースティック・ギターの伴奏が魅力的で、ロビン・ミラーのオーボエによるオブリガートも美しい。(1:40)からフリップによるアルペジオをベースにマーク・チャリグのコルネット・ソロが入る。(5:05)から展開部に入りロック調になるが、そこでも主旋律とその3度下や上ををなぞるギターの掛け合いが美しい。

(3)はメイン・リフからヴォーカル・パート、そしてフリップのアルペジオをベースにしたアドリブ・パートから構成されている。メイン・リフではへヴィなフリップのギターとウェットンのベースが炸裂し、それに掛け合うブルフォードの魅力が全開状態で、何度聴いても勝手に手が動いてしまいそうになるのには苦笑するしかない。(2:06)あたりからアルペジオがベースのアドリブ・パートに入り、イアン・マクドナルドがアルトサックスを吹いているのが感動的だ。曲は飛行機が墜落したかのように途中で寸断する形で終わっている。

(4)はアメリカ・ツアーのライヴ録音で、ロード・アイランド州プロヴィデンスにおける即興演奏であるが、最初聴いたときはてっきりスコアのある「現代音楽」だと思っていたほどである。デヴィッド・クロスによる不安な出だしから約5分間その調子が続くが、(4:42)からブルフォードお得意のバスドラムとリムショットによるリズムが入ってくる。これは他の曲でもしばしば彼が見せる不思議なリズムパターンである。

KingCrimson_Red_02.jpgそして(5:04)からは音量を上げたウェットンのベースとロング・トーンのフリップのギターが絡み合い、ブルフォードのドラミングも熱が入る。最後にもう一度、デヴィッド・クロスの不安なヴァイオリンに戻ってくる。最後はテープを早回ししたような感じで締めくくられるが、おそらくこれはLPレコードという時間的制約によるもので、後の『グレート・ディシーヴァー』ではこの後も演奏が続いていることが確認できる。

冒頭の「レッド」が危険な状態(レッド・ゾーン)に入ったことを象徴しているとすれば、(5)の「スターレス」は一つの終末を象徴していると言えるかもしれない。出だしの荘厳なまでのメロトロンにフリップのくぐもったようなエレクトリック・ギターが絡むが、このパートはライヴではクロスが弾いていたもの。ライヴ盤を聴くと、ここのメロディも若干変わっているのをご存知かと思う。

ヴォーカル・パートに入ると、メル・コリンズのソプラノサックスによるオブリガートがウェットンのヴォーカルに寄り添い、それは3ヴァースまでたっぷり続く。ヴォーカル・パートの後はアドリヴ・パートが続き、フリップとウェットンの掛け合いの後、かなりアップテンポになるが、そこで煌めくようなサキソフォーンを吹いているのがイアン・マクドナルド。ひょっとすると『宮殿』の「スキツォイド・マン」のめるくめくようなサックス・パートより早いかもしれないほどだ。

マクドナルドによるアルトサックスのソロ後、一瞬ブレイクする形でブルフォードのハイハットに支えられ、サキソフォーンによるメインテーマが鳴り響くが、どうもそれは二本のサックスであるように聴こえてならない。メル・コリンズとイアン・マクドナルドが二人で吹いているとしたら……だがこれは想像の域を超えない。サキソフォーンによるテーマの後は各奏者が過熱した頂点でもう一度、メロトロンを伴ったメイン・テーマがすべてを包み込み、重厚な残響が続いて曲は終わる。


≪ 『スターレス・アンド…』へ  『USA』へ ≫


【付記】
● 今回の聴取はクリムゾンのCD中もっとも「音が悪い」と思われる、EGによる1980年代リリース物で行いました。巷では『レッド 40周年記念盤』や『ロード・トゥ・レッド』などの音の良いディスクも流通しているようですが、音の悪いEG盤でも、『レッド』の素晴らしさは味わえたように思えます。現物を見ると1988年に購入しているようで、なんと3200円していますね。そんな時代だったわけです。これ、当時のサントリー・リザーヴとほぼ同じ値段ですね。


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