『アルジャーノンに花束を』

『アルジャーノンに花束を』(1968年、アメリカ)

FlowersForAlgernon.jpg
原題:Charly
原作:ダニエル・キイス "Flowers for Algernon"
監督:ラルフ・ネルソン
出演:クリフ・ロバートソン、クレア・ブルームほか


ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』という小説を読んだことがあり、映画のほうも昔見た記憶があるのだが、今回改めて映画を見た。1968年の『チャーリー』というアメリカ映画だが、2000年にはカナダ、2006年にはフランスでリメイクが作られている。日本でも2002年にテレビドラマが放送されたようである。

映画はジャケットにトラウザーズ、ネクタイを締めた大人のチャーリー・ゴードン(クリフ・ロバートソン)が公園で子供たちに交じって遊具で遊ぶ場面から始まる。チャーリーは発達遅滞で、アリス・キニアン先生(クレア・ブルーム)が教える夜間学校に通って読み書きを習っているが、自分の名前も書けないのだった。

チャーリーはパン屋で働いているが、仕事はもっぱら掃除でろくな仕事はさせてもらえない。同僚たちはチャーリーにプレゼントがあるからロッカーを見てみろ、という。チャーリーがロッカーを開けるとパンのドウがあふれ出し、同僚たちはそれを見て笑い転げるが、チャーリーはドウにまみれて嬉しそうにしている。

アリスはチャーリーをニーマー&ストラウス医院に連れていく。そこでは新しい脳の手術法によって知能の向上を図ることができるという。ニーマー教授やストラウス教授はネズミによる実験に成功しており、人間の被験者を探していた。手術によって知能が向上したネズミのアルジャーノンが走り、チャーリーは鉛筆でたどるという形で迷路の競争をし、彼はネズミに負けてしまう。

自分はネズミに負けてしまうのか、とがっかりしたチャーリーはそれでも「あたまがよくなりたい」という思いを持っていた。アリスに手術を受けたい気持ちを伝え、彼女は被験者第一号としてチャーリーを推薦した。アリスが術後のケアや報告もしてくれるから条件はとてもよい、とチャーリーは手術を受けることになった。

手術後、チャーリーはアルジャーノンと再び競争をするがまたしても負けてしまう。彼は自分の頭が少しも良くなっていないことに腹を立てるが、日増しに彼の知能は向上し、やがて先生のアリスを追い抜いてしまうほどになった。パン屋でも難しいパン焼き機の操作を一度で覚えるのを見て、同僚たちは驚きを隠せなかった。しかしチャーリーはパン屋を解雇されてしまう。

頭が良くなると仕事も親友も失ってしまうのか、とチャーリーは落胆するが、それまで見えていなかったことを次第に理解するようになる。また知能が向上するとともに、それまで抑えられていた部分も開花するようになり、チャーリーはアリスに性的興味を抱くようになる。彼はアリスに婚約者がいることを知りながらも強引に彼女に迫り、頬をぶたれて我に返る。

途中までそんな感じなのだが、本作は1960年代後半の作品だけあって、やはり映像はそんなによくない。DVDで借りたのだが、たぶんまだブルーレイ・ディスクによるデジタル・リマスター版は出ていないのだろう。女性たちを見ると、髪型といいファッションといい、1960年代を感じさせるものがある。男性服は細部が少し変わる程度で、現在(2014年)とほとんど変化がないことがわかる。

主演のクリフ・ロバートソンは熱演している。表情を作る際も、おそらく入念な観察の末のことだと思うし、字を書くときも大文字と小文字が混じり、一部反転文字を書いたりしている。全然気付かなかったけど、クリフ・ロバートソンという人は『スパイダーマン』シリーズでベンおじさんの役をしている人のようである。

一方、アリス役のクレア・ブルームという人はあのチャップリンの『ライムライト』でヒロイン役をやっている人のようであるが、これも調べてみるまで気付かなかったことを正直に書いておこう。婚約者がいて、チャーリーを最初は拒むんだけど、チャーリーの知能が向上するにつれ、次第に彼を認めて受け入れるようになっていくんですね。

チャーリーはネズミのアルジャーノンと暮らしているが、アルジャーノンの異変を見たチャーリーは自分にも同じことが起こると確信する。なんとかその異変を食い止める手段はないかと模索するが手段は見つからない。題名の『アルジャーノンに花束を』というのは原作の小説の中でチャーリーが最後に残した言葉で、この部分は映画には出てこない。哀しさとあたたかさが複合した、なんだか複雑な気持ちが残る映画である。


【付記】
● レンタルメディア店で『アルジャーノンに花束を』という題名を見て手にとりましたが、調べてみると日本公開当時の邦題は『まごころを君に』だったようです。なんじゃそりゃ、という感じがしましたが、いったいだれの真心を、だれに示すんでしょうね。

原作者のダニエル・キイス氏が先日亡くなったことを知りました。謹んで御冥福をお祈りいたします。


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No title

この映画は遠く記憶にあるような・・・・・・
しかし、もう霞の彼方なので再度観てもよさげな感じですね。
切なくなりそうだな。

No title

私はフジテレビでドラマ化されたものを見たことがあります。

私の子供の頃同級生に同様の発達遅滞の男がおりまして、私が当時イジメに参加しなかった事から、何時も彼の楯に使われていた時期がありました。
内心は子供ながら穏やかならざる事が多く、かといって放り出す訳にも行かず泣きたくなることも多かった様に覚えています。

そんな事からドラマを見ても胸を締め付けられるような所があって、エンディングに妙な切なさを感じていたのですが、映画版のものはもっと切なくなるような話なんですね。

同様の話で「チャンス」という映画は好きで、何度もレンタル屋で借りて見ていました。
まあでもこの頃のアメリカ映画というのは今と違って、必ずパッピーエンドではないのですね。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
1960年代のカラー映画は、なぜかさらに古い白黒映画より、
古い感じがしてしまうのが不思議ですね。
記事にも書きましたが、何か複雑な気持ちが残ります。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
記事にも書きましたが、リメイクの多い原作(映画)だと思います。
日本のドラマは残念ながらうっかりしていて見落としてしまいました。

子ども(も大人も)残酷なところがありますね。
いささか「変わった」ところがあると、すぐに嗅ぎ出して、
というかそういうことには本当に驚くほど鼻が利いて、
「あいつって……」と噂が広がるのは光速より早いくらいです。

これは、人間の性(さが)なのでしょう。
この映画では、パン屋の人たちがもう露骨でした。
そのあたりも含めて、複雑な気持ちになってしまう映画でした。
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只野乙山

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