ブライアン・イーノ 『ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ』

Brian Eno / Here Come the Warm Jets (1974)

Eno_HereComeTheWarmJets.jpg
1.Needles in the Camel's Eye
2.Paw Paw Negro Blowtorch
3.Baby's on Fire
4.Cindy Tells Me
5.Driving Me Backwards
6.On Some Faraway Beach
7.Blank Frank
8.Dead Finks Don't Talk
9.Some of Them Are Old
10.Here Come the Warm Jets


現在ではダニエル・ラノワと並んでプロデューサーとして知られるブライアン・イーノだが、1970年代は髪を伸ばしてバイセクシャル的な雰囲気を前面に出し、ロキシー・ミュージックでキーボード(シンセサイザー)やマルチトラック・テープ機などを操作する人だった。その頃のイーノを見たわけではなく、1980年代になってから音楽好きの友人に教えてもらったのである。

詳しいことは知らないが、CD付属の資料によるとイーノは美術学校で学びながら音楽活動をしていたようで、作詞と効果音を担当していた、とある。彼自身、鍵盤楽器やギターを演奏するけれど基本的には「非音楽家」として音楽にかかわるというのがイーノの持ち味なのだろう。だからふつうのロック/ポップのサウンドとは違う独特のテイストが本作にも感じられて何かそれが新鮮だった。

録音に参加したメンバーはロキシー・ミュージックからフィル・マンザネラ(g)、アンディ・マッケイ(sax)、キング・クリムゾンからロバート・フリップ(g)とジョン・ウェットン(b)。『801ライヴ』でも参加したビル・マコーミック(b)のほか、クリス・スペディング(g)、サイモン・キング(ds, perc)。

イーノは美術学校で知り合ったアンディ・マッケイの紹介でロキシー・ミュージックに参加し、ブライアン・フェリーに追い出された(?)ようで、フェリー以外のロキシーの面々とは交友があるのだろう。キング・クリムゾンは解散してフリップ&イーノとして活動、ロキシー・ミュージックも活動休止の時期だったことでこのようなメンバーが集まったのだろうと想像する。

(1)はふつうのロックのノリではないがなぜか新鮮さがある。マンザネラのギター・ソロの後でいったんストップをかけるのはクリムゾンの「スキツォイド・マン」みたいだ。ただしテンションがまったく違うのは言うまでもない。(2)ではふつうそんな歌い方はしないよな、といいたくなるイーノの変なヴォーカルで思わず噴き出しそうになる。これを人がいるところで聴いていたら変人扱いされること請け合いである。

(3)は(1:26)から(4:26)まで続くロバート・フリップのかなり長いソロが入っている。キング・クリムゾンを離れたフリップはなかなか面白い演奏をするのが意外な感じである。ジョン・ウェットンも(3)でベースを弾いているようだ。(4)はミディアム・テンポの親しみやすい感じの曲。フィル・マンザネラとの共作のようで、マンザネラのねばりつくようなギター・ソロが聴ける。

(5)はいかにもイーノらしい作風で、ふつうのロック・ミュージシャンだったらまずやらないだろうな、という曲。イーノの変なヴォーカルがここでも大活躍(?)している。この曲も人前で聴くのは要注意、確実に変人扱いされると思う。(6)は題名からしてどこか夢見るような曲。バックに入るコーラスや音を弱めてエコー(リバーヴ?)を聞かせたドラムなど、全体の音作りが後の「アンビエント」につながるように思える一曲だ。

ゆったりと流れる川のような(6)から一転して(7)はフリップとイーノの共作で、イーノ流ファンク(?)とでもいうべき不思議なリズムである。たぶんこれが本作の中で最も動きの激しい曲ではないかと思う。(00:53)あたりから始まるフリップのソロは『アイランズ』における「Sailor's Tale」のような激しさを見せる。イーノのヴォーカルも呪術的なあやしさに満ちみちている。

(8)はこれこそイーノ、とでもいうべき作品だろう。静かな曲なのだが背後で「Oh! No! Oh! No!……」と変なヴォーカルが炸裂、これも人前で聴いていると変人扱いまちがいなしの一級品である。この「Oh! No!」はトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが例のぶかぶかのジャケットを着て首を前後に動かしながらやるとぴったりくるんじゃないかといつも思ってしまうのは私だけだろうか。

(9)は後の『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス』の後半に入っていてもおかしくない感じの静かな曲。途中スライド・ギターのようなものが入るが、ひょっとするとスティール・ギターかもしれない。それらが入ってもハワイアンやウエスタンにならぬのがイーノ。(10)はアルバム・タイトル曲だが全編リフレインで、後半にぼけた感じのヴォーカルが入ってくる。

今日改めて聴いてみても古臭さを感じさせないところが不思議である。非音楽家としてのアプローチがユニークだったことに加えて、イーノのセンスが全編にわたって発揮されていることが要因だと思うが、そうしたイーノの立ち位置をよく理解して制作に参加したミュージシャンたちの働きも大きいと思う。なれど人前で聴くには要注意の楽曲が数曲入っているので、自室あるいは外でならiPodか他の音楽プレーヤーで聴くのがお勧めである。


≪ 『アナザー・グリーン・ワールド』へ  ≫


【付記】
● 久しぶりにイーノを聴いてみましたがやはり面白いですね。歌詞はイーノが書いたものですが、意味はわかりにくいものが多く、海外でも「こう聞こえた」と何通りものヴァージョンがあるようです。1970年代の終わり頃、音楽雑誌でイーノの歌詞の翻訳したものが特集であったりして、それは楽しかったものでした。


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No title

こんにちは。
このアルバム、「Taking Tigere Mountain」「Anothre Green World」と共に、Enoのアルバムではよく聴く方です。
私はパンク世代だからかもしれませんが、変なヴォーカルと思ったことが一度もなかったので、乙山さんの感想は逆に新鮮でした~。
元々Enoって、BauhausがThird Uncleをカヴァーしてたので聴いたのが最初です。

ポップなイーノ

こんにちは。
私がイーノを知ったのは、"Plateaux of Mirror" "Music for Airport"
などのアンビエント作品からだったので、
"Here Comes the Warm Jets" "Taking Tiger Mountain"
といったポップな初期作を聴いたのはずっと後のことでした。
ハチャメチャで刺激的で多彩で楽しいですね。
私もいま聴いても古くないと思います。
70年代に超斬新だったプログレにも、いま聴くとノスタルジックな作品が散見される中、
イーノの凄さ(ぶっ飛びぶり?)は際立ってますね。
時代はまだイーノに追いついていないのでは?
それでイーノか!? (←結局これが言いたかった)

Re: yuccalinaさん

yuccalinaさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
イーノが変なヴォーカルというのはかなり流通しているロック/ポップと比べて、
ということなので、そのようにご理解くださいね。

ユーロ・ロックはほとんど知られていないようですが、
かなり「変」と感じるものももたくさんあるでしょうね。
「Third Uncle」もカヴァーするような曲かなあ、とか思ってしまいますが……

Re: ポップなイーノ ; 木曽のあばら屋さん

木曽のあばら屋さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですね、記憶があいまいなんですが、乙山もたぶん、
『プラトー・オブ・ミラー』を最初に聴いたかもしれません。
それから『グリーン・ワールド』と『ビフォア・アンド…』を聴き、
『ウォーム・ジェッツ』と『タイガー・マウンテン』はその後だったかと。

仰るように、乙山もイーノの「ぶっ飛びぶり」に笑ってしまいます。
だけどイーノは本当に良いセンスをしているなあと感心します。
だから今でも彼にプロデュースしてほしいという人が後を絶たないようです。
それでイーノです。
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只野乙山

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