ボズ・スキャッグス 『ミドル・マン』

Boz Scaggs / Middle Man (1980)

BozScaggs_MiddleMan.jpg
01.Jojo
02.Breakdown Dead Ahead
03.Simone
04.You Can Have Me Anytime
05.Middle Man
06.Do Like You Do in New York
07.Angel You
08.Isn't It Time
09.You Got Some Imagination


見た瞬間、「うげっ」となる人もいるであろうデザインのアルバム・ジャケットはボズ・スキャッグスの『ミドル・マン』(1980)。1976年の『シルク・ディグリーズ』もたいがいにせえよ、といいたくなるデザインだったが、これも相当だなあ。ボズの口から出ているのはエクトプラズム(死語?)ではありません。

1980年代前半、ロックバンドの真似事をしていたこともあって、その頃のロック少年たちはたいていパンクに走るか、1970年代のギター・ヒーローのソロのコピーをやりたがる者が多かったように覚えている。少々背伸びをしてジャズを聴いたり、ブルースが好きだったのだけれどそういう曲がコピーというか練習曲として採用されるはずもなく、ましてやボズ・スキャッグスなんて聴いているなど論外だった。

だが虚心に聴けば『シルク・ディグリーズ』も『ミドル・マン』も相当いい楽曲が揃っているのがわかると思う。アダルト志向のロックなんて聞いたら耳が腐る、というバンドのメンバーに気取られぬようこっそり聴いていた。たしかに若者の心の叫びを代弁するというのはロック音楽の重要な機能の一つと思うが、大人がロックをしたっていいだろうし、その際スローなブギであっても構わぬのではないか。

録音には『シルク・ディグリーズ』時のメンバー(彼らは1978年にTOTOとして活動を開始している)が多く参加している。ボズ・スキャッグス(g, vo)、デヴィッド・ペイチ(key, org)、ジェフ・ポーカロ(drs)、デヴィッド・ハンゲイト(b)、スティーヴ・ルカサー(g)、デヴィッド・フォスター(syn, key)、カルロス・サンタナ(g)などの顔ぶれが見える。

結局、TOTOとデヴィッド・フォスターが組んで作りだされたサウンド、ということで1980年代のそれを思わせるかもしれないが、シンセサイザー的ないかにも、という1980年代サウンドではなく、わりとアコースティックに感じられるように思う。とにかく職人技、とでもいいたくなる洗練されたサウンドである。

(1)はファンキーなノリの、ロックというよりダンス曲といったほうがいいかもしれない。ファンカデリックにせよパーラメントにせよ、とにかくファンクというのは驚くほど洗練されているものなので、ファンク=JBだけではない。一昔前の「ディスコ」で流れていてもおかしくないような曲調で、ボズのフェイク・ヴォイス(ファルセット)が全開という感じですね。

(2)は「リド・シャッフル」をを思わせるアップ・テンポのシャッフル・ブギで、本来ボズはこういうのが好きなのだと思う。スティーヴ・ルカサーのギターがいい仕事をしているが、おいおいソロなんかTOTOそのままじゃないか、もうちょっとひねってほしいなあ、などと思ってしまうのは私だけだろうか。

(4)は印象に残るスロー・バラードで、ボズの名曲「ウイ・アー・オール・アローン」と肩を並べるほどではないかと思う。1980年代後半の来日公演の際、大阪城ホールで本物のボズを見る機会に恵まれたが、その時この曲は歌われなかった。「泣き」が入ったギターソロはカルロス・サンタナとクレジットにある。

(5)はアルバムの表題曲で、「Middle Man」というタイトルを見ると「中年男」と連想してしまうかもしれないが、歌詞を見ると、彼と彼女の真ん中にいて、彼女のために何かしようとする男、というような感じである。アルバム全部の中で、iPodに移して聴いてみたくなるのは(1)と(4)くらいかな。

全体を通して聴いてみて印象に残るのはスティーヴ・ルカサーのギターが光っていることと、デヴィッド・フォスターのアレンジメントの巧みさだろうか。泥臭さが微塵も感じられない西海岸(L.A.)名うてのスタジオ・ミュージシャンたちに支えられてボズが歌うんだけど、今日改めて聴いてみると思った以上にTOTOのカラーを強く感じるように思えた。


≪ 『シルク・ディグリーズ』へ


【付記】
● どれだけTOTOのカラーが支配的になろうとも、ボズ本人はあまり意に介していないところがあって、その後もTOTOのメンバーとの交流を大切にしているようです。『シルク・ディグリーズ』もそうですが、『ミドル・マン』もジャケットだけで判断してほしくない一枚です。

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No title

あ!なんという!
これ、持ってます。
「網タイツ」が懐かしいです。
どの曲も今でも歌えると思います。

ボズ。

ボズ様は 若い頃に
4曲目の You Can ……なんぞは
映画「なんとなくクリスタル」の
サントラに入っていて良く聴きました。

その後、「ボズ&デュアンオールマン」を
馴染みのロックバーで耳にしていたと
思いますが、いかんせんわたくしが
音楽ネタを乙山殿に語り始めると
話しの要領が悪く 軽く 千年を超えて
しまうのでご遠慮しております…。

それにしても
ボズ様は超大御所となにげにサラリと
演っておられますなぁ〜、
思い出しついでですが
時々不意に
日本の オリジナルラブ を聴くと
ボズ様を何故か思いだしてしまいます。

No title

いやぁ懐かしいアルバムジャケットですね。
実は高校の時ボズ・スキャッグスにはまっておりまして、このアルバムはしっかり持っておりました。
これと『シルク・ディグリーズ』も持っております。

高校時代はみな派手な曲を聴く人間が多くて、私と友人の2人だけで盛り上がっておりました。
大学でもこれを聴いていたら「渋いのを聞くんだな」と感心されましたね。

しかし大阪で公演をご覧になったとは実に羨ましい。
余りの羨ましさにウィスキーを飲みながら『You Can Have Me Anytime』を口ずさんでおります。

因みに『We're All Alone』は私のカラオケのおはこなのです。

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
1980年発売のアルバムですからね、って、なんだか新しげに語ったいますが、
今からすれば「かなり昔」なんですよね。

中には昔を感じさせないものがありまして、
それが残っていく「スタンダード」なんだなあ、と思うのです。
乙山だったら記事にも書いたように(1)とか(4)かなあ。

Re: ボズ。 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
『なんとなく、クリスタル』とか、
『風の歌を聴け』の映画版を、見てみたいなあ、と思っています。

ボズ&デュアン・オールマンはいいですね!
ボズのルーツというか、本来どういう音楽を志向していたのか、
それがわかると思うのです。

ボズが、R&B路線から、ファンクとかソウルへ行ったことは、
結果としてOKでしょう。その後も、ジャズ方面へ向かったことも。
とにかく、ボズはかなり器用で優秀な「シンガー」です。

かなり広いジャンルを、それなりのレベルでこなせる、
そうとうに「できる」人だと思っています。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
1970~80年頃というのは、色々な音楽があったと思うんです。
ある者は「終わったな」と思い、ある者は「次の時代が来たぞ」と。

シンセサイザーの登場も大きかったのは事実でしょうし、
ちょうど日本全体でも、大きな移り変わりの時期を迎えていたのかもしれません。
そんな時期で『ミドル・マン』は受け取り方が分かれたでしょうね。

「渋いな」だったら、まだ受けがいいほうですよ。
パンクの残り火と、1970年代ロックの申し子たちにとっては、
瞬間、「黙殺」でしたね。

No title

只野乙山 さん

 こんばんは
 これはレコードで持っています。ジャケットは裏面の方がいいですね。
 大阪公演に行かれたそうですが凄いです。当時の日本のプロモーターは金持ちでしたから大 物ミュージシャンをたくさん招いたのでしょうね。

Re: mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

>  これはレコードで持っています。ジャケットは裏面の方がいいですね。

ジャケットの裏面は例の網タイツの主ですね!
このデザインは、どうも『シルク・ディグリーズ』も担当した人たちのようです。

大阪公演は、大阪城ホールでしたね。運よくチケットが回ってきたのです。
アリーナ席ではなく、ちょっと上のほうから眺めている感じで、
そっちのほうがよかったような気がします。

アリーナ席の客は「リド・シャッフル」で立ちあがって踊り、
「ウイ・アー・オール・アローン」になると全員座っておとなしく聞く、
というマナーの良い優等生のような客たちでしたよ。
ボズのファンは、その当時でもガキは少なかった、と思います。

No title

 ボズにTOTO、ほんと懐かしいですねぇ。

Re: ますたさん

ますたさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ボズはまだまだ現役ですよ! ジャズアルバムを出したり、
ロックの『メンフィス』というのも出したみたいです。
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