レスター・ヤング 『ジャズ・ジャイアンツ'56』

Lester Young / Jazz Giants '56 (1956)

LesterYoung_JazzGiants56.jpg
01.I Guess I'll Have to Change My Plan (09:31)
02.I Didn't Know What Time It Was (10:02)
03.Gigantic Blues (06:51)
04.This Year's Kisses (06:45)
05.You Can Depend on Me (09:06)



ウェブログでお付合い頂いている方の所でレスター・ヤングの二枚のアルバムを見て、久しぶりにレスターを聴きたくなって取り出したのが『Jazz Giants '56』。所有しているのは輸入盤で、ジャケットのデザインが旧来のものと違っている。暗い場所(スタジオ?)でレスターがテナーサックスを吹いており、後ろにも誰かが写っているのがたぶんオリジナルで、もう一つはレスターがサックスを上に抱え上げて吹いているお得意のポーズのそれである。

いま手元にあるのはそれらと違っていて、レスターがサックスを持ったところを左側から写したもので、デザイン的には三番目だと思う。しかし三枚とも音源は同じなのでどれを購入しても心配することはない。アルバムタイトルからわかるように、これはレスター・ヤング1956年のセッションだが、ご存知のように同年『プレズ&テディ』も録音しており、そのメンバーはほとんど同じである。

レスター・ヤング(ts)、ロイ・エルドリッジ(tp)、ヴィク・ディケンソン(tb)、テディ・ウィルソン(p)、フレディー・グリーン(g)、ジーン・ラミー(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)という顔ぶれで、気心の知れた古いスウィング仲間が集まり、肩の力を抜いてセッションした、という感じの仕上がりになっている。

(1)はテディ・ウィルソンのエレガントなピアノから入ってレスターのソロが始まるスロー・テンポの曲。トロンボーンがソロを受け継ぎ、ピアノ、トランペットと各プレーヤーが一通りソロを見せる。ジョー・ジョーンズはブラッシュ・プレイ、フレディ・グリーンのギターは相変わらずかすかに聞こえるか聞こえないかである。

(2)でミディアム・テンポになってサックス→トランペット→トロンボーン→ピアノとソロが展開した後、もう一度レスターに戻ってくる。ピアノソロのとき、ドラムはほとんど動きを止めているので、ベースとギターがわりとよく聞こえてきます。おっ、フレディ・グリーン、本当に弾いてるじゃないか! とわかるんですね。

(3)はレスター作のアップ・テンポのブルース。レスターはフリースタイルに近いアップ・テンポのブルースを好んで演奏しますね。トランペットがミュートを外して全開になり、ドラムとのやりとりが白熱、まるでビ・バップかと思わせる一瞬。これだけ聞けばモダン・ジャズじゃないか、と思ってしまうほどである。レスターもかなり速いテンポなのにがんばっている。

(4)で再びスロー・テンポに戻り、レスターの歌うようなサックスを堪能できる。やはりこういう曲調のレスターは最高ですね。トロンボーンもスロー・テンポに向いた楽器で、ちょっと眠たそうな(失礼)ソロでばっちり決めてくれている。この曲も最後にレスターに戻ってきてもう一度レスター節で締められる。

(5)はトランペットのミュートのソロから始まるミディアム・テンポの曲。トロンボーンは相変わらず眠たそうに聴こえる(失礼)が雰囲気たっぷりで受け継ぎ、ピアノソロに渡す。初めにも書いたけど、テディ・ウィルソンのピアノはなんてエレガントなのだろう。他のピアノ奏者とそう違うわけではないはずだが、どこかエレガントなのだ。最後にレスターのソロがすべてを包むような感じで締めくくる。

通して聴いてみて思うのはやはり(3)の力が大きいなあ、ということだろう。(3)の盛り上がりはレスターが作っているのではなく、トランペットのヴィク・ディケンソンとドラムのジョー・ジョーンズなんだけど、これがなければ今ひとつ締まりのない印象になってしまったかもしれない。いい仕事をしているなあ、とつくづく感心する。

1956年といえば、チャーリー・パーカーもすでに亡くなっており(1955年没)、たしかソニー・ロリンズが『サキソフォン・コロッサス』を出した頃。1958年にはあの『サムシン・エルス』が出て、そして1959年にはレスターが亡くなってしまう。『ジャズ・ジャイアンツ'56』と『プレズ&テディ』はトラディショナル・スウィングジャズとモダンジャズの境界線あたりで活躍した晩年のレスターの傑作だと思う。


≪ 『レスター・ヤング:ケン・バーンズ・ジャズ』へ


【付記】
● 久しぶりに聴いたレスター・ヤングですが、いいですね。笑われるかもしれませんが、乙山はレスターのCDを17枚くらい持っています。一時、レスターに夢中になって、手に入るものはとにかく聴いてみよう、と収集したのです。


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CD17枚も

只野乙山 さん

 こんばんは
 レスター・ヤングだけでCD17枚も、すごいですね。
 凝り性の只野乙山 さんの姿勢が想像できます。
 youtubeでさっそく聴きました。確かにまったりして週末の夜聴くには最適ですね。

Re: CD17枚も ; mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとございます。
いやいや、別の記事には「18枚」と書いてあるのです!
だからたぶん、18枚が正しいのでしょう。

たしかに乙山は凝り性、なのかなあ、と思う節があります。
飽きっぽいところもあるんですけどね。
今年はなんとかスピーカーを物にして、できればアンプも一台くらいは、
とか思っているのですが、なかなか捗りません。

No title

こんばんは。
レスター・ヤング。聴いてみました。^^
名前は無論知っていたけれど、ジャズに関心がなかった私。
この年になってようやくここ数年でその良さがわかりかけているところです。
若いうちに知っておけばよかった、と残念ですねえ…
同時代で聞けたでしょうに。
もっとも1956年というと、さすがの私も(笑)まだ9歳。
ジャズのわかる年ではなかったでしょうが、回りにもう少しジャズへの理解者が
いれば自然に耳に入っていたはず。
でも、我が家は、島倉千代子や、村田秀雄や春日八郎組でした。^^
小学3年生くらいの私は、その人たちよりもっと古いいわゆる戦時歌謡なんかが
好きでした。『異国の丘』とか『麦と兵隊』とか『かえり船』とか。
意外でしょう。哀調を帯びたメロディが好きだったんです。
でも、その頃から既に、子供であっても、戦争=兵隊さんの死=家族の悲しみ、
という図式で捉えていた気がします。

ジャズは知りたいと思っても間口が広すぎて、その前で茫然としてしまいます。
でも、このアルバム聴いて、いいなあと思うんですから、知って行けばきっと
好きになると思うんですけれど。^^


Re: 彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
レスター・ヤングのサキソフォンは聴く人にすっと入ってきて、
心をとらえるような所があるんだと思います。

歌心がある、とでも言えばいいのでしょうか、
レスターは歌詞を知らないものを演奏するのを嫌ったそうです。
スタン・ゲッツやアート・ペッパーといったサキソフォン奏者も、
レスターと似たような感じがします。

考えてみると、1956年といえば戦後10年ちょっとでしょう?
まだ戦争のことが現実のものとして地続きだったのではないかと想像します。
さすがに戦時歌謡がラジオで流れたかどうかわかりませんが、
それらを口ずさむ人もたくさんいたのではないかと思います。

乙山がジャズ喫茶に行くようになったのは1980年代で、
もうジャズ喫茶のブームは終わっていた頃なんですが、
それでも何か残り火のようなものを感じました。

ジャズが間口が広すぎる、というのは同感でして、
乙山など、まだまだ知らないジャズ奏者のほうが多いんですよ。
色々勉強させてもらっている感じですね。

No title

乙山さんがジャズ喫茶へ行ってらっしゃたのは1980年代ですか?
ちょうどあの頃は、ウィントン・マルサリスなんか出てきた頃ですね。
私は、あの頃少しジャズから遠ざかっていました。

私がジャズ喫茶によく行っていたのは、70年代で高校時代です。
ちょうどチックコリア、キースジャレットが全盛の頃ですね。
でも、ちょうどジャズを聴き始めたころで、チックコリア、キースジャレット
なんかはあまり興味がなくて、ソニースティットとかのハードバップを聴いていました。
その頃は、レスターヤングの名前は知っていましたが、聴いたことはなかったです。

ハードバップも聴きすぎると飽きますね。
たまに聴くぐらいちょうどいいように思います。
最近は、レスターとかアートテイタムとかの古いスイングにはまっています。
ただ、ビルエバンスは古いスイングではないですが、いつも聴いています。

※すいません、レスターヤングとあまり関係ない話で。

Re: バランス屋さん

バランス屋さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> 乙山さんがジャズ喫茶へ行ってらっしゃたのは1980年代ですか?

そうですね、1980年代ですから、すでにジャズの熱は冷めてしまってから、
ジャズを聴き始めたようなものですね。なのでほとんどが「後追い」なんです。
1960年代のロックもそうなってしまいます。

キース・ジャレットやチック・コリア、1970年代のオーディオ熱とともに、
雑誌でよく取り上げられていたんじゃないでしょうか。
ソニー・スティットはまだ聴いていないのですが、楽しみにしています。

アート・テイタムは何枚か持っています。
アート・テイタムを聴くと、セロニアス・モンクを思い出すのですが、
実は反対で、モンクがテイタムに影響を受けたのですが、
モンクのほうを先に聴いてしまったのでそうなるんですね。

ビル・エヴァンスもレスターも、どちらも大好きです。
バランス屋さんの専門的なウェブログに、
コメント差し上げられなくて申し訳なく思っております。

No title

おはようございます。乙山さん。コメントありがとうございます。

ソニー・スティットは、日本では結構人気があります。
同じソニーでもロリンズほど知名度はないですね。
でも、日本のサックス奏者の間では、ソニー・スティットはお手本にされるくらいの人らしいです。

ただ、この人は気の毒な人で、アルトサックスを吹くとチャーリーパーカーにそっくりで
パーカー存命中はテナーサックスばっかり吹いていました。
スティットのアルト確かにパーカーにそっくりです。しかし、よく聴くと違います。
聴き比べるとよく分かります。

キース・ジャレット、ジャズ入門者?の私には難しすぎましたね。
ハードバップのように、スイングするわけでもないですからね。
どちらかというと、クラッシクに近いです。

>バランス屋さんの専門的なウェブログに、
コメント差し上げられなくて申し訳なく思っております。

私のやっていることは、同業者に人にもマニアックすぎるとよく言われます。
ですから、まったく専門外の人にはよくわからないですから気にしないで下さいまし。

No title

追伸

ソニー・スティットのアルトサックスのバラードはいいですよ。
一説によると、スティットのバラードはコルトレーンのバラードにも影響を与えているそうです。

Re: バランス屋さん

バランス屋さん、再コメントありがとうございます。
なるほど、関係者の方もマニアックだと思うほどですね。
そのように仰っていただいて安心(?)しました。

専門性に揺らぎが生じますが、たまには日常的なことも書いてみてはいかがですか?
「整体院に猫がやってきた!」とか「整体院の昼食」とか……
それこそ、ジャズのことをお書きになってもいいのではないかと思います。

ソニー・スティット、ますます聴いてみたくなりました。
最晩年、体調が優れぬのを押して日本公演を続けたそうですね。
そしてアメリカに帰国後すぐに亡くなったと聞いております。
なんか日本に縁のある人だったんですね。
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