シングルモルト余市(旧ボトル)



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】



Yoichi_01.jpg
正月用のウィスキーとして〈シングルモルト余市〉の熟成年数無記載を飲もうと決めていた。これは以前にも飲んだことがあるもので、本来はもっと早く記事になっていてもおかしくないはずなのだが、いちばん初めに飲もうとした際、どういうわけかビニール袋に入れた余市を倒してしまい、同時に瓶が割れて、約半分を床に飲ませてしまったのだ。

床は喜んだかどうかわからないが、まさか這いつくばって床を吸う(なめる)わけにもいかず、しばらく茫然とした後、おもむろに雑巾で床を拭いた。いま手元にある余市の瓶を見ると、どうしても割れそうに思えない。ウィスキーを飲んでずいぶん長いけれど、瓶を割ったのは後にも先にもこの一度だけである。

〈シングルモルト余市500ml〉が出たのは2007年頃だったのではないだろうか。よく利用していた西宮の酒店の方に「最近ピュアモルトを見ませんねえ」というと、「その代わりこういうものが出たんですよ」と教えてくれたのがシングルモルト余市だった。店の人の話では、そんなにいいものとは思えない、というような雰囲気だったのではないか。

なので新しく出たシングルモルト余市を買わずに、昔からある〈G&G〉なんかを買って帰ったように覚えているが、その後しばらく、シングルモルト余市のことは忘れていた、というか考えないようにしていたのである。それから数年、西宮から引っ越すことになったとき、ふと「余市を飲んでみようか」と思い立って購入、それを割ってしまったわけなんです。

久しぶりに飲む余市。まずはストレートで口に含んでみるが、これはストレートでもじゅうぶん楽しめるのではないかと感じた。コクのあるボディにの後に軽めのピート香が来て口の中に広がり、バニラを思わせる華やかな甘さが残るフィニッシュ。加水するとボディが後退して華やかな甘い香りが前面に出るので、飲みやすさでは加水したほうがいいかもしれない。

Yoichi_02.jpgオーバー・アイス(いわゆるオン・ザ・ロック)で飲むのもいいですね。少しピート香は控えめかもしれないが、コクのあるボディはえも言えぬもので、1000円クラスのスコッチをはるかに凌駕している。というか、この味わいは1000円スコッチではありえないものだと断言できる。炭酸割りにしてもへこたれないので、ソーダ割りでも楽しめるはずだ。

熟成年数無記載のウィスキーを「ノンエイジ」というのが流通しているが、これは「未熟」という意味だろうと思う。だけど飲んだ感じでは相当練れているようだ。とくに〈ブラックニッカ・クリアブレンド〉を飲んだ後に余市を飲むとそれが痛感できる。詳細は不明だが、ノンエイジといえど8~9年は熟成させているんじゃないだろうか。

考えてみると余市の実勢価格は500ml=1400~1600円で、これを700mlのフルボトルに換算すると約1.4倍だから、もし余市が700mlのフルボトルに入れて売られているとすると、約2000円相当になる。うまくて当たり前である。もうちょっと出せば、ブレンデッドの12年物スコッチが買える値段なんだから。これを人呼んで「ニッカ・マジック」という(うそうそ)。

1980年代にピュアモルトが販売された時も、500ml入りなのに、それを他社の700mlフルボトルと同じように錯覚して「安い」と思ったものだった。じつは当時も今も、ピュアモルトは相当高級なウィスキーな(だった)わけなんだけど、そうとは気付かずに「安いのになんでこんなに旨いんだ」などと思っていたんだから苦笑せずにはいられない。

※原酒不足のため、現在(2015年)シングルモルト余市の中身と値段は変わっています。


≪ サントリーホワイトへ  ブラックニッカ・クリアブレンドへ ≫


【付記】
● じっくり飲んでみて、エントリーの余市は、じつは高級酒なんだということをつくづく感じた次第です。それでいて、トゥワイス・アップもよし、オーバー・アイスもよし、炭酸割りもおいしいというオールラウンダー、それが余市ノンエイジ。乙山はたいへんいい酒だと思います。

ふつうにソーダ割りにするなら、ここまで香りもコクもボディもなくてもいいかな、とか思うわけでして、だからこそ、普段飲みのウィスキーに〈ブラックニッカ・スペシャル〉とか〈G&G〉があるのかな、ということです。あ、だけどブラックニッカ・クリアブレンド、これも炭酸割りにはいいですね。フルボトルが700円くらいで買えることがあり、その価格帯ではおそらく最高品質じゃないかと思います。


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Re: 鍵コメントさん

了解しました。ご多幸をお祈りいたします。

No title

いやあ・・・奇遇ですな。
私もこの正月用のウイスキーは「余市」でした。
もっとも、2日ほどで飲みきってしまったので、今はもういつもの「ブラックニッカ・クリアブレンド」ですが・・・
こいつはこいつで結構いい・・・
678円でした。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
おおそれはそれは! 余市はおいしいですね。

> もっとも、2日ほどで飲みきってしまった

なぬっ、余市500mlを二日で……それ、ペース速すぎませんか?
一日250mlということは、ショット(30ml)換算すると約8杯。
なんぼなんでも、そりゃ強すぎです。

乙山も近ごろブラックニッカ・クリアブレンドを飲みました。
ソーダ割りにするにはちょうどいいんです。
で、その後で余市を飲むと、これまたうまいんですね。
だけどクリアブレンド600円台はおそろしや……最強最高の品質ですよ。

No title

余市というのは、洋風のエキゾチックな蒸留所が有名ですね。
スコットランドの風景を模しているそうです。
うちの父は、ウイスキーはニッカしか飲みませんでした。
ビールは「札幌が一番美味い」と言っていました。
小樽生まれの父のノスタルジーだったんですね。
僕もウイスキーはすぐなくなっちゃうクチです。

初めて余市無印。

いやぁ〜
余市無印盛り上がってますねぇ!

わたくしも今日早速買って
飲んでみますねぇ!

また追ってご報告しますね。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> 余市というのは、洋風のエキゾチックな蒸留所が有名ですね。
> スコットランドの風景を模しているそうです。

これはね、竹鶴政孝氏の奥さんが英国人で、
彼女のことを思いやった竹鶴氏の心の表れなのかな、
と想像したりすることもあります。

御父様の心意気もすごいと思います。
余市蒸留所のことも、サッポロビールのことも。
俺はこれしか飲まないんだ、という心意気に乾杯!

だけど、ウィスキーはちょっとだけにしましょうね。
あっ、自分もか!

No title

只野乙山 さんへ

 何度も繰り返しますが、私下戸でお酒の良しあしが全くわかりません。
 でも、ニッカや「余市」をほめられると北海道人としてとても嬉しいです。
 で、挑戦したくなります。ウイスキーに。

Re: 初めて余市無印。 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
余市の無印、というか熟成年数無記載は、想像以上にいい出来でした。
ふだん飲みには「ちょっともったいない」ウィスキーじゃないかと思います。

1400~1600円前後で販売されていますが、
記事にも書きましたように、もしフルボトルだったら2000円クラスの酒。
うまくないわけがないじゃありませんか!
それが余市500mlなんですね。

Re: mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

>  で、挑戦したくなります。ウイスキーに。

そうですね、ですがやはり、無理にお飲みになることはないんじゃないか、と思います。
乙山でも、ある種の発酵食品(他の方の大好物だったりします)は苦手で、
というか、臭いをかぐだけで頭痛を誘発し、ひどい場合には軽度の吐き気を催します。

好き嫌いの問題を通り越した、体質の問題だと思います。
聞くところによると、日本人の数%の方は、アルコールを受け付けぬ「体質」だとか。
なので、ここはそっとスルーなさってくださいね。

No title

ノンエイジの余市はなかなかのモノですよね。
ちゃんとニッカ独特の個性を感じるし、樽由来の芳香もよく判りますよね。

ただ私も思ったのですが、加水すると味の厚みを感じられなくなってしまうのが難点で、ストレートかトワイスアップ以下の加水の方が合っている様な気がします。
ロックでも良いんですけどね。

ピュアモルトと飲み比べるとピュアモルトというのが高級ウィスキーだと判ります。

ボトルの大きさでダマされることは確かにあります。
フロム・ザ・バレルなんかは本来、超高級な範疇に入るんでしょうけど。

No title

500mlだと安く感じるものと高く感じるものとありますが
これは安くお得感ありますね。
シングルモルト買ったことが無いので、最初の1本として候補に覚えておきたいと思います。

Re: RSさん

RSさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですね、余市ノンエイジは、所によっては1400円くらいで買えるでしょう。
それを思えば、お得感があります。メーカー小売価格は1600円ですからね。

いろんなシングルモルトがありますが、余市は良い意味で「中庸」です。
スコッチでは果実酒を思わせる「スペイサイド」がありますし、
なんじゃこりゃ、の「アイラ」もあります。

日本のシングルモルト→スペイサイドのそれ→アイラのそれ、がお勧めです。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
今回じっくり飲んでみて、余市ノンエイジはいい酒だと思ったのです。
この味わいは、どうみても1000円スコッチを凌駕しています。

昔、某酒店で聞いた「そんなにいいものとは思えない」というのも、
おそらくピュアモルトと比べて、ということなのかな、と今では思っています。
虚心に飲んでみると、余市ノンエイジは本当になかなかのものでした。

これは「ふだん飲み」にはできませんねえ!
だけど、いい酒を少し、という上品な飲み方にはいいかも。
上には上があるのですし、手の打ちどころとしては絶妙です。

No title

私も最近飲みました! 皆さんニッカファンで嬉しい次第です。

20歳代の頃、ひとり旅のついでに余市蒸留所に寄ったことがあります。
その頃は、味も分からずに、ただ酔っ払っただけでした。

昨年8月、30数年ぶりに再訪しじっくり味わってきました。
そこで10年物のシングルカスクとやらを購入しましたが・・
いまだにもったいなくて飲めません(笑い)

余市蒸留所・・ニッカファンなら必訪ですよね。

Re: otokiさん

otokiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
乙山も若いころ、北海道に旅行したことがあり、
フェリーで小樽に到着した後、すぐに札幌に行ってしまったのです。

かえりにもう一度、小樽に戻ってきたとき、ゆっくり小樽見物をしましたが、
その時は近くにニッカの蒸留所があるのさえ知らなかったのです。
なんということでしょう!

今度北海道に行くことがあったら、必ず余市蒸留所に行こうと思います。

余市無印 体験記

びっくりしたなぁ〜、
一言で 硬派、
イメージは スクウェア!
わたくしみたいなウイスキーを
ナメてる甘ちゃんには顔面往復
ビンタモン でした。
ビリリっと
効いたピート香、舌触り、喉越し、
余市無印此処に在りという印象です。

後、2日程 置いてボトルの中身の香りが
開いてくる頃を見計らってまた
再び レビューしたいです。
開封後数日置いてから味わうテクは
BN. リッチブレンドで試してから
スゴくウイスキーの楽しみが広がったので
期待しています。

ではまた…。



Re: 余市無印 体験記 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
初めての余市、ばっちりだったようですね。
酒店の方に話を伺うと、つい偏見を持ってしまいます。

やはり自分で味わってみるのがいちばん、そんなふうに感じました。
これはもし700ml入りだったら2000円クラスのウィスキーなので、
そりゃ、うまくて当然でしょう。

これが1980年代だったら、500ml=2500円以上したはずで、
余市はまあ、そんな酒だということでしょうね。
空気に触れると、少し味が変わってきますね。
それはそれで楽しみではあります。

余市無印 体験記 ❷

一週間に渡り余市無印を
吟味してまいりました。

ストレートで呑んでいきなり
往復ビンタを喰らい、
ロック〜トゥワイスアップで
ピート香に挨拶をかまされ
甘くメロウな余韻に
このウイスキーは 寝かせ作戦で
ジックリと吟味したくなりました。

待つこと数日、
ストレート〜ロックで
チェイサーを絡ませながら
デミソース煮込みハンバーグ、
甘めのだし巻き、缶詰のマスタードと
秋刀魚煮込み、全ての料理に素晴らしい
相性でウマイではありませんかぁ〜。

最初開封時に感じた塩っぱさも改めて
こうなるべくしてそうなんだと
余市無印の懐の深さに平伏した次第です。
ホワイトホースFO. で苦手と感じた
ピート香なんぞは語るに論外で、
竹鶴12年のルーツでもある余市蒸留所で
産まれるこの荒削りで繊細な余市無印に
「ネイキッドモルト」と
名付けたい位ブレンデッドウイスキーの
源なんだと思い知らされました。
新年早々えらいのにわたくし、行儀付けて
頂きました。

ウイスキー恐るべしっ。

Re: 余市無印 体験記 ❷ ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! 再コメントありがとうございます。
いやどうも、かなりインパクトがあったご様子と察します。
たしかに、エントリー余市は只者ではござんせんよ。

なるほど1400~1600円で販売されていますが、
それは500mlなればのことでありまして、
もしこれを普通のフルボトル=700~750mlとすれば、
2000円相当になるのがエントリー余市なのです。

そりゃ、うまくて当たり前ですわなあ!
改めて味わってみて、ピート香は控えめかなあ、
そんなふうに思ったんです。喩えて言うと、
アイラモルトよりは、スペイサイドに傾いているのかな、と。

だけど、たぶん、そういうカテゴリーには入らぬ「日本」のウィスキー。
なんだ、余市ノンエイジか、と仰る方も多いでしょうが、
乙山にとっては普段にはもったいないウィスキーです。

だけどソーダ割りにしてもうまいんですよ。
一度、ソーダ割りもお試しあれ!
いい酒を! 乾杯!
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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