サントリーホワイト



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】



SuntryWhite.jpg
引っ越ししてから約2年と半年、歯医者に行っていなかった。定期健診に行かねばならぬ、とは常々思っていたのだが、なにしろ距離が遠い。かといって、こちら(池田)でいい歯科医を見つけることもままならず、そのままになってしまっていた。ある日、何気なく食事をしていると、貝を食べたわけでもないのに何か固いものを噛んだらしい妙な音がした。

おかしいなあ、と食後に歯を調べていると、どうも歯が欠けたらしいのだ。それくらいなら一部をドリルで削って樹脂を充填するくらいで済むだろう、と西宮にある以前通っていた歯科医院を訪れた。見た瞬間、歯科医(せんせい)は「こりゃ抜かんとあかんわ」と一言。親知らずがもう限界らしいのだ。X線写真を撮った後、即座に引き抜かれてしまった。

どうも歯科医の話では、次回からもしばらく通院、治療をしないといけないようだ。そんなわけで今回は上顎の反対側の親知らずの抜歯である。抜歯後、しばらくは飲食禁止、アルコール類もとってはならぬという。だが現在12時半である。なんでこんな時間に抜歯をしてしまったんだろう、と己に毒づきながら歩く。

そうだ、ここからしばらく歩いたところになかなかいい酒店があったじゃないか、と思い出し、そこまで歩いてみることにした。西宮の一里山というところにある〈ショップいちりやま〉である。そこはニッカの品揃えが豊富で、輸入ウィスキーもかなりたくさんあったはず。たぶん近隣では一番の「町の酒屋さん」ではないかと記憶している。

自転車でしか行ったことのない所をとぼとぼ歩いていると、かなり距離があるように感じる。ローカルな話題で申し訳ないが、阪急仁川駅から野球で有名な報徳学園まで歩いて行くのとだいたい同じ、と思えばわかってもらえる(地域の人だけね)と思う。仁川学院のグラウンド沿いの道の分岐点をそのまま直進すればいい。

と思ったが、どういうわけか〈ショップいちりやま〉が見当たらないではないか。もうほとんど報徳学園の所まで来てしまったが、小さな看板に「酒屋いちりやま」とあるではないか。看板に従って行きつくところまで行けば奥まった所にミニコープ一里山があるが、その二階部分がどうやら現在の〈ショップいちりやま〉らしい。

以前はかなり広い店舗だったのに、現在はそれの約1/10くらいの規模になっている。間違いではなかろうかと思って店の人に、ここって以前向こうのほうにあった酒屋さんですよね、と尋ねると、よく見つけてくださいましたね、と言った。たくさんあったニッカも、今では少なくなっている。ブラックニッカ・スペシャルはおろか、G&Gさえ置いていない。

そのまま出るのも申し訳ないと思いながら棚を見ていると、サントリーホワイトのボトルがあるではないか。これだな、これしかないな(ていうかウェブログの話の種になるな)と思いながらホワイトをつかんだ。ホワイトをしっかり飲んだ記憶がなく、最近飲んだのは〈十三トリス〉で最後の締めの一杯としてだった。

とってつけたような甘さ一色に塗りつぶされてしまったサントリー低価格ウィスキー群だが、ホワイトだけには一縷の望みを託していた。ラベルに1923とあるように、このサントリーホワイトこそ、国産ウィスキー第1号なのである。当時は寿屋「白札」として発売されたものの、「煙臭い」と不評だった。しばらく販売を停止していたが、1960年代に社長が初代の鳥井信治郎から佐治敬三に代わった頃に「ホワイト」として復活した経緯がある。

サントリーレッドと後期のオールドの宣伝が「女の愛嬌と情」で男心に訴える戦略だったとすれば、角瓶とローヤルは「男の浪漫」をストレートにぶつける感じだったと覚えている。それらに比べてホワイトは、ロン・カーターとかレイ・チャールズら黒人ミュージシャンを起用して「洒脱な都会の夜」みたいな雰囲気を狙ったのではなかったろうか。微妙な立ち位置である。

さて飲んでみると、ん? という感じである。思いの外ピート香は抑え目で、おとなしい味。例の妙な甘さも抑えられているのがせめてもの救いといったところか。あれっ、こんな味だったかなあ? もう少し尖った味がしたような気もするんだけど気のせいだろうか。いかんせんしっかり飲んだわけではないので「以前のホワイトの味」がどうだったのかはっきりしないのがもどかしい。

だけどかすかに記憶に残るホワイトの味は、もう少し違っていたんじゃなかろうか。消費者には一切知らせずにボトルの中身を少しずつ変更するというのはあり得ることだ。私(乙山)の味覚などあてにならないが、もう黄色の〈角瓶〉の味は確実に変わっていると思う。だって「角ハイボール」とやらであれだけ売れているんだもの、どこにそれだけの原酒が……と例の「疑惑」に似たようなことがここでも起こっているのかもしれない。

まあしかし、この日サントリーホワイトは977円で棚に並んでいたけれど、値引きしてくれたので879円で買うことができた。店の人も「これだって昔は一級酒だったんですよ」と懐かしそうに言っていた。なるほど深みはないんだけど、妙な甘さが控えられている結果、自分にとっては飲みやすい、なかなかいいウィスキーのように思えた。これが879円なら、文句は言えない。だってトリスより……


≪ サントリーオールドへ  余市500mlへ ≫


【付記】
● 確証はありませんが、おそらくホワイトも少し中身の変更をしている可能性があります。もう少しピート香を効かせた、尖った味に仕上げてほしいなあと思うのです。なにしろオリジナルの「白札」は煙臭くって不評だったわけですから。その時の工場長が、かの竹鶴政孝だったというのも、皆さんご存知のことと思います。


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No title

サントリーホワイトといえば、私がまだサントリーのウイスキーは飲まないと決める以前、こんなコマーシャルがあって
http://youtu.be/Fvigu-xrIzw
一生懸命ぶっかき氷を作ったものでした。タオルで冷蔵庫の氷くるんで、トンカチでトントン・・・それをコップにぎっちり詰め込んで、ウイスキーをトクトクトク・・・
暑気払いにはこれが最高でしたねえ・・・・

No title

少しの間バタバタしておりまして、お伺いするのが遅くなりました。

以前ホワイトの復刻版というのが造られていたようで、飲んだ方の印象に依れば「それほど強いピート香を感じる事もなく、今のものと比べても穏やなものだった」と言われております。
それから考えると「白札」も巷間言われるような尖った味ではなかった様な感じですね。

とはいえ復刻版があったという事は、今のものの味が変わっているという事の証明でもあります。
乙山先生の舌の記憶が正確である証拠かも知れませんね。

ローヤルなんかも「昔はこんな味じゃないだろう」と思わせるものがあったりします。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとございます。
ホワイトの宣伝、吉田拓郎の歌ですね。
ぶっかき氷、今でいえばクラッシュト・アイスだと思いますが、
たしかに作るのはちょっと面倒ですね。

クラッシュト・アイスにウィスキーを注ぐやり方、
やってみるといけるんですよね!
氷がとけるのが早くなる分、飲みやすいですし、
夏に似合うやり方ではないかと思います。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
昔といいましても、たかだか1980年代のことですからね。
それでも「なんか違うなあ」という感じはぬぐえませんでした。

「白札」は「煙臭くて不評」だったそうですが、
仰るようにそれほどピート香が強かったのではないか、そんな気がしてきました。
想像するに、とにかく「新しいものに対する反応」が、
良くない方向に振れてしまっただけ、ではないでしょうか。

昔とは違うとしても、ホワイトは低価格帯ウィスキーの中では良いほうです。
〈角瓶〉の味が変わってしまった今、乙山の中では一番です。
店にもよりますが、記事の店は879円です。
こんな店がもし近くにあったら、また手に取ってしまうかもしれません。

No title

こんばんは

 器と銘柄は同じなのに中身の味が違う。
 下戸の私にはわからないのですが、そんなことがあるのですね。
 私のほんのささやかな夢は退職後寝台車に乗って旅をし、ウイスキーをよく外 国映画にでてくるシルバーの入れ物にいれ、ちびちびとウイスキーを舐め、車 窓を眺める。ことだったのですが、ちょっと興ざめですね。
 といっても私にはウイスキーの味がわからないのですが。

Re: mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
それとは知らせず、中身を変えること、これはあり得ることですね。
ワインの場合、出来は「神のみぞ知る」ですので、
それこそ「**年のは云々」となるのでしょう。

蒸留酒、それもある程度熟成させたものは、ワインほどではないにせよ、
出来、不出来はあることでしょう。
それを「ならして」瓶詰め、出荷しているのだと思います。

サントリーの低価格帯ウィスキーの話はそれとは違って、
もう「作り替え」のレベルだと思って下ればいいでしょう。
**で蒸留し、**の樽で**年寝かせた幾つかの原酒を、
**の割合でブレンドする、という「レシピ」があったのでしょうが、
それとは違うものになっている「可能性」があるのです。

お好きなウィスキーを見つけてくださいね。
それを、金属製のフラスクに入れて、散歩の合間にちびっと飲むのです。
杖の持ち手の部分に仕込んでいる方もあるそうですよ。

No title

初めまして・・ウイスキー好きの還暦前のオッサンです。
いつも拝見しながら、ご同輩の意見に感動しております。

「ホワイト」の記事には、学生時代を思い出しました。
そして、その時代から飲んでいない自分に気がついた次第であります。

どこかに置いてあるんですね!
今度、酒屋めぐりで探そうと意気込んでいます(笑)




Re: otokiさん

otokiさん、初めまして! コメントありがとうございます。
いや、そんなにたいしたことは書いていないはずでしで、
ただたんに、ウィスキーが好きなだけ、という感じです。

サントリーのホワイトは、同社の中でまだ「まとも」(失礼)な感じがします。
ですが、普通にはあんまり売ってないんですよね。
見かけるのは、某安売り店で大量PETボトル入りのそれです。

ホワイトのボトル、まだとってあるんです。
ひょっとして、大量PETボトルで買ったものを、
移し替えて飲んでやろうか、なんて考えているんですね。

寿屋の底力。

今日ある縁で何十年振りかに
ホワイトを飲みました。
それもストレート&チェイサーで…、
わたくしだけですけど正直、
感動しました。ふ
まとめ方が、最高に素晴らしい!
ブレンデッドウイスキーですっ!
リザーブとオールドをスルー出来る程の
コストパフォーマンスに、心から
ありがとうっ!と、感謝の気持ちを
携わる方々にお伝えしたいです。
恐るべしっ!
寿屋の白札。



Re: 寿屋の底力。 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
サントリーホワイト、乙山もきちんと飲んだことがなかったのですが、
近頃はホワイトをよく飲んでいますよ。

甘ったるいところが抑えられているのがいいですね。
氷に注いで飲んでもいいし、割りものにしてもいけるという、
なかなか融通のきくやつなんですね。

フルボトルをどこかで買って、あとはPETボトルの大きなやつを買って、
移し替えて飲んでおりました。いい感じですよ。
2.7リットル=3700円程度ですから、お得な感じですね。

乙山もまたそのうちホワイトのお世話になるでしょう!
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