キング・クリムゾン 『ラークス・タングズ・イン・アスピック』

King Crimson / Lark's Tongues In Aspic (1973)

KingCrimson_LarksTongues.jpg
1. Lark's tongues in Aspic (part 1)
2. Book of Saturday
3. Exiles
4. Easy money
5. Talking drum
6. Lark's tongues in Aspic (part 2)



キング・クリムゾン『ラークス・タングズ・イン・アスピック』(1973、邦題は『太陽と戦慄』)を初めて聴いたのは1980年代初頭ごろだったと覚えている。当時まだCDは開発されておらず、音楽好きの友人がLPレコードで買ったそれを二人して聴いた。太陽の中に月が重なった、なんだか東洋風の神秘的なジャケットで、これがどれだけすごいのかなあ、と期待半分、不安半分の気持ちでスピーカーから出てくる音を待った。

いちばん初めに聴いたクリムゾンは『レッド』(1974)で、その重金属的で破壊的なサウンドに完全にノックアウトされてしまったのだ。ハード・ロックといえばディープ・パープルやレッド・ツェッペリンもあったし、ヘヴィ・メタルというジャンルさえあったけれど、これはいわゆるへヴィ・メタル・ロックよりへヴィーだ、と心底心酔してしまったのである。

前作『アイランズ』(1971)で事実上崩壊してしまったクリムゾンだが、フリップは新しいメンバーを参集した。その顔触れはロバート・フリップ(g, mellotron)、ジョン・ウェットン(vo, b)、ビル・ブルフォード(ds)、デヴィッド・クロス(vln, mellotron)、そしてジェイミー・ミューア(ds, perc)の5人。

ジョン・ウェットンはフリップの旧友で、『アイランズ』の頃からクリムゾン加入の打診を続けてきたようである。ビル・ブルフォードはイエスのドラマーで、ステージでクリムゾンを見たブルフォードは、いつかクリムゾンでプレイしたいと願っていたという。この二人はわかるとしても、後の二人の加入の経緯は謎に包まれている。

さて(1)はいったい何の楽器かわからぬパーカッションから始まり、刻むようなヴァイオリンの出だしに、爆撃機か何かを思わせるエレクトリック・ギターのロングトーンが重なってくるあたりで背中がぞくっとなった。邦題の「戦慄」というのはこのあたりからきているのかもしれない。やがてメンバー全体で重金属的なサウンドを出した後、フリップの早弾きフレーズにパーカッションが絡んでいくスピーディな展開に驚く。

途中でブレイクに入り、ヴァイオリンのどこか東洋的なソロに雲雀がさえずるような効果音が入ってくる。これは以前ではわからなかった部分だが、いまはYouTubeなどでジェイミー・ミューアが何か笛のようなものを使って出していると確認できる。実際、彼は例の「鳥の羽のような服」を着て、ステージを所狭しと縦横無尽に動き回り、あたりにあるものをなんでも使ってのパフォーマンスを見せてくれる。

(2)はくぐもったようなフリップのギターと、クロスのヴァイオリン、そしてウェットンのヴォーカルが主体の静かな曲。(3)はライヴでもお馴染みのヴォーカル曲。フリップがギターソロをとっているときはクロスがメロトロンを弾き、クロスがヴァイオリンを弾いているときはフリップがメロトロンの前に座るという、この時期のスタイルが確立された曲だ。

(4)もライヴでよく演奏された曲。ヴォーカルのパートが終わった後はかなり自由に即興演奏が繰り広げられている。(5)ではアフリカで住民が遠距離の通信に用いたという「トーキング・ドラム」から題名が付けられているようで、聴いてみるとなるほど、ラテン・パーカッションのような音が入っているが、おそらくこれもジェイミー・ミューアの演奏だと思われる。単純なコードの繰り返しをベースに、各メンバーの即興演奏が繰り広げられ、クライマックスに達した瞬間、すぐさま(6)が始まる。

おそらくギブソンのレスポールにディストーションを効かせたと思われる、重金属的なギターのイントロに、ベースとドラムが絡んでいく様はまるで歯車が回転を始めたような雰囲気がある。このインストゥルメンタル曲はフリップのお気に入り(?)のようで、1980年代の「ディシプリン・クリムゾン」でも演奏されている。

個人的には「ラークス・タングズ…パート1」が好きなのだが、残された音源から判断するに、この曲はジェイミー・ミューア脱退後はあまりライヴで演奏されなかったようだ。本作を初めて聴いたとき、ロックというジャンルを超えた「音楽」のメッセージ性あるいは啓示とでもいうべき何かに、強い衝撃を受けたことを思い出す。


≪『アースバウンド』へ  『スターレス・アンド…』へ ≫


【付記】
● 2013年現在、フリップは大手音楽レーベルを相手に法廷で争う傍ら、「40周年記念盤」の編集に力を注いでいるようで、キング・クリムゾンの活動は事実上、中断しているようです。とはいってもしっかり練習はしているらしいので、いつかまた、フリップがあの真面目くさった仏頂面でギターを構えるのを見られる日が来るのかもしれませんね。

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No title

学生時代を思い出しました。
「キングクリムゾン」を最初に
聴いたときは鮮烈でした。

訳の分からない音や
聞いたことの無いギターの音色に
何度も聴きなおしてました。

探せばLPがあるかと・・・。

Re: しょうちゃんさん

しょうちゃんさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
本当に、かなり変わったサウンドでしたので、
乙山はわりとのめり込んでしまったのです。

何度も聴かないとわからなかったのかもしれませんが、
音源がそれしかないので、同じものを何度も聴くしかなかった、
それが学生時代でしたね。

No title

只野乙山 さん

 こんばんは

<ロックというジャンルを超えた

まさにそのとおりですね。かといってジャズの範疇にも入らない。第二期のクリムゾンにふさわしい楽曲なのでしょうね。youtubeを探りましたが、個人的にはグレッグ・レイクが在籍していた初期の作品の方が好きです。

Re: mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> 個人的にはグレッグ・レイクが在籍していた初期の作品の方が好きです。

クリムゾンのファンの少なからぬ人がそう思うみたいですね。
イギリスのライヴでも「今のは面白くない」とか「前のをやれ」という声があったそうです。

反対に、この時期のクリムゾンがいちばん好き、という人もいるようで、
そういう人たちは「ディシプリン・クリムゾン」を認めたくないのです。

最新の情報では、2014年の秋ごろからクリムゾンの活動が始まるらしいのです。
メンバーを見ていると、どうやら過去の曲もやりそうな雰囲気です。

No title

乙山さん、こんばんは。

ご無沙汰でした。大根の煮たんがおいしそうだったので早速、こんにゃくとか色々とおでんの材料をチャイニーズ・マーケットで仕入れてきました。明日は半年ぶりのおでんです。いつもヒントを頂きですね。

さて King Crimson は、あまり聴かなかったグループですがあの時代には一応通り過ぎました。サーフしておりましたら、ちょうどキング クリムゾンのトリビュート盤のリヴューが乗っていたのでリンクしますね。今の時代に彼らのトリビュート盤を出すなんて少し以外でしたので。内容は聴いていないので分かりませんが、なんとなく気になりました。

http://narymusic2010.blog90.fc2.com/blog-entry-2888.html

Re: まん丸クミさん

まん丸クミさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そちらには大根(japanese white radish?)は売っているのでしょうか?
日本ではあって当たり前の野菜ですが、外国ではどうなのかな、と思います。

さてクリムゾン。今さらという感じがしますけど、このアルバムはすごいです。
聴けばすごいんですけど、よくこんな反商業主義的な音楽を出したなあ、と思います。
反商業的でありながら、最後の部分はきっちり抑えているのがクリムゾンでしょう。

たんに変な音楽、というのなら、もっと他にもありますからね。
完全に変な方向へ行ってしまわずに、
ロック的、つまりどこかポピュラリティを残した音楽、
それがクリムゾンなのかな、と思っています。

No title

新たに活動を再開したらしいです
キングクリムゾンの復活ってもう何回目なんでしょうか?
嬉しいニュースですがもはや驚きもありませんね(笑)
http://www.dgmlive.com/news.htm?entry=4335
この「太陽と戦慄」もそうですが、キングクリムゾンのアルバムはフルで聴くに限ると思います
意図的なのか分かりませんが、ムーンチャイルド後半の後宮殿、トーキングドラムの後にパート2、プロヴィデンスの後スターレス。
このバンドの味である「静と動」はアルバム構成に最大に表れているのでないでしょうか
「太陽と戦慄」に関しても1と2を合わせて演奏するよりトーキングドラムと2を演奏するのが圧倒的に主流のようですし

Re: 無記名

コメントありがとうございます。
仰るように2014年秋くらいから活動を再開するようですね。
顔ぶれを見ると、どうもかなり古い曲をやりたがっているような気がします。

フリップの活動の集大成として、過去の曲をやる可能性はありそうです。
ヴォーカルと、フルート奏者は揃ったわけですし。
例の「スキツォイド・バンド」をフリップも見たのでしょう。
これは使えるな、と確信してキング・クリムゾン・プロジェクトで様子を見たのでしょうかね。
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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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