すっかり様変わりした阿倍野周辺を歩く

JRTennouji_Stn.jpg
10月某休日、川西のレンタルメディア店で会員カードの更新を済ませてしまった時点でまだ正午前だった。天気も良好、気温もさほど高くなくまことに散歩日和である。このまま帰ってウィスキーを飲んで昼寝するのも悪くないが、なんだかもったいないような気がしないでもない。そんなわけで池田に帰ったら月極めの駐輪場に自転車を停め、そのまま阪急池田駅から梅田行きの特急電車に乗り込んでしまった。

〈あべのハルカス〉という複合型商業施設ができたという。別にそれ自体に興味はわかなかったが、変わり果てた阿倍野をこの目で見ておこうと思ったのである。どうせあべのハルカスは外観を見て終わりになるだろう。つい最近できたという〈グランフロント大阪〉もまだ見ていない。どうせ大きな箱にちまちました店がひしめいているだけだろう。あべのハルカスだってそうに決まっている。

Ex_AbenoGinzaStreet.jpgなどと相変わらずのひねくれ根性が出てしまったが、本気である。グランフロント大阪もあべのハルカスも、まあ気が向いたら見てやってもいい、くらいな気分なのだ。私(乙山)はあまりに人出が多い所へ行くとそれだけでもうぐったりしてしまうのだ。あくまで今回は阿倍野という街がどう変わり果てたのか、それを確認するためだけに阿倍野に行った。

さて写真一枚目は阿倍野橋の交差点からJR天王寺駅を撮影したもの。この駅舎は相変わらずだけど、天王寺都ホテルはこの建物から撤退して別の場所に移転している。「近商ストア」というしょぼくれた商業エリアもあったけれど、いまは天王寺MIOの一部として機能しているにすぎない。ふり返るとあべのハルカスがそびえたっている。これは元の近鉄百貨店の位置に巨大な高層建築物を立てた模様で、その中に近鉄百貨店もあるようだ。

Sentoh_Abenobashi.jpg予告通りあべのハルカスには何の用もないので、素通りして阿倍野の町のほうへ行ってみよう。見ると阿倍野筋を南に向かって右手(つまり西側)にあった商店街が一切消え去って、巨大な商業施設になっていた(写真二枚目)。阿倍野銀座と呼ばれる小道(アポロビルの裏通り)を入ると立ち飲み屋がひしめき、何とも猥雑な感じがしていたのだが、それらが一掃されている。

阿倍野筋の西側エリアは、昭和の雰囲気を色濃く残したえも言えぬ空間だった。パチンコ店の道を入っていくと〈阿倍野みんみん〉があり、その奥には知る人ぞ知る洋食店〈グリル マルヨシ〉があった。路地と路地を結ぶような非計画的に自然発展した生活空間は、現代思想の言葉を借りて「リゾーム」と言えば聞こえがいいかもしれないが、実際は火災発生の際には消防車が侵入できぬ「カオス」といったほうが正しいだろう。とにかく猥雑さが濃厚だったエリアが、明るくて清潔な空間に変わっていた。

Abeno_Ponte.jpgそういえばこのあたりに〈四分休符〉というジャズ喫茶&バーがあったんじゃないか、とふと思い出し、それらしい場所を歩いてみたけれど〈四分休符〉は見当たらなかった。もしかしたら商業施設の一角に入っているのではないかと、店舗案内の掲示を見たけれどそれを見つけることができなかった。何とも残念である。今日の目的の一つは、〈四分休符〉に入ってコーヒーを飲むことだったのに。

元の阿倍野銀座周辺を歩いていると、できたばかりの商業施設の一階部分に銭湯がある(写真三枚目)ではないか。おそらく立ち退きの交渉で新しい商業施設の一角に加わることに落ち着いたのだろうと想像するけれど、これだけマンション群が立ち並ぶ場所に銭湯があったとして、いったい誰が利用するんだろう、などと思ってしまう。だが案外、地域を考えると利用者は多いのかもしれぬ。本当の意味での「大阪らしさ」がこのあたりに出ていると言える。

Shinkaisuji_MarchantStreet.jpg〈あべのポンテ〉という商業施設(写真四枚目)を通り抜けた所から先のエリアは、未だ開発の手が伸びていないところだが、私の予想ではこのエリアが開発されることはおそらくないと思う。この場所(写真五枚目)から左側に少し行ったところに何があるか、ご存知の方も多いことだろう。ここではT新地という伏字を用いることとし、それがいったい何なのかについては割愛させていただく。

その後、阿倍野筋へと戻り、東側のエリアを阿倍野筋沿いに歩いてみる。多くの店が入れ替わっているように思えたが、中には昔のままの店があったりするので懐かしい。おっ、喫茶〈スワン〉がありますね。この店は何度か利用した記憶がある。二階席まである、今でも珍しい大型の喫茶店(写真六枚目)。よほど利用しようかと思ったくらいだが、先を急がねばならぬ。

TeaRoomSwan.jpg以前この近くには〈ユーゴー書店〉があったのだが、今はなくなってしまった。ちなみに対面には〈旭屋書店〉もあって、この二書店のおかげで梅田まで行かずとも阿倍野でそこそこ書物を入手することができたものだ。今この近辺に住んでいる人は、書物をどうやって入手しているのだろう? あっ、そうかAmazonでしたね。

東側から対面の西側を見ると、見事に商店街が消失しているのがわかる。阿倍野斎場(南霊園)あたりまで歩くと、〈あべのベルタ〉がある。これは阿倍野再開発の先鞭を切った商業施設で1980年代の半ばにできているが、あまりに早すぎたためか、1990年代にはもう「廃墟」の様相を呈していた。近隣住民の方には申し訳ないが、周りから見ているとそんな感がぬぐえなかった。

AbenoHarukasFromSouthernSide.jpgふり返ってあべのハルカスを見ると、いかにそれだけが突出して巨大かがわかる。比較的低層の建築物が軒を並べていて、JR天王寺駅とか元の近鉄百貨店阿倍野店あたりがいちばん高い建築物だった。片田舎とでもいうべき地方都市の典型的な姿がかつての阿倍野にはあった、と言える。しかし今回歩いてみて、不思議とそれらがなくなったからと言って寂しい感じにはならなかった。阿倍野も、変わるべき時に来ていたのかもしれぬ、などと思いながらあべのハルカスを見るだけで後にした。


【付記】
● ネットの情報によると、ジャズ喫茶&バー〈四分休符〉は大阪市住吉区粉浜に移転し、現在でも営業なさっているということです。洋食店〈グリル マルヨシ〉は近隣の商業施設内に移転、現在も営業を続けているようです。

ホテルエコー・オーサカはすでに2001年になくなっており、アポロビルの建物はまだ健在でした。ですが中身はかなり変わっており、昔の感覚で行くと驚かれるのではないかと思います。


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No title

長居東に一年
北加賀屋にニ年、暮らしました。
阿倍野はその頃、時々お邪魔しました。
しかし、20代、仕事ばっかりで、町歩きもあまりしなかった時代です。
長居東にはなじみの店もあって
時々無性に行きたくなります。

No title

阿倍野界隈はあの猥雑さが良かったんですけどね・・・すっかりきれいになっちゃって・・・
四分休符、引っ越しちゃったんですね。大阪市住吉区粉浜って、どんなところなんだろうな?あの店、あのごちゃごちゃした通りの先に合ってその存在感を示していたように思えるから・・・引っ越した先の雰囲気が気になりますね。

まあ「大阪市住吉区粉浜」なんて地名を聞くとまず私に縁のなさそうな地名ですから、もう行く事もないでしょうけれど・・・

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
長居東といえば、長居公園の南側のエリアですね。
長居公園が散歩にはうってつけでして、
我孫子に住んでいた友人のことを思い出します。

北加賀屋は住之江区ですね。
昔所用で週一回は北加賀屋を訪れましたよ。
南大阪はどこか長閑な感じがあっていいですね。

馴染みの店といえば、天王寺に住んでいた頃、
定食屋と居酒屋が隣り合わせにあって、
どちらもおじいさんがなさっていました。
この度、天王寺も足をのばしましたがいずれの店もなくなっていたのが残念です。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
阿倍野筋の西側エリアは本当に猥雑でしたね。
あの雰囲気も確かに良かったのですが、本当に万一火災でもあったら、
消防車が入っていけない領域でもありました。
基本的に木造建築が多かったのではないかと。

〈四分休符〉は今回の散策の目的でもあったのですが、
移転することになって残念でした。
なんで住吉区粉浜なんでしょうね。
ひょっとしたら、訪ねてみるかもしれません。

No title

こんにちは、乙山さん、おひさしぶりでございます。
じつはわたしも四分休符を探したんですよ。古い雑誌でみた住所
でしたからねえ。結局雨の中を肩を落として帰ってきました。
東京都内などももうあまりJAZZを聴かせる店がなくなってるようです。
淋しいかぎりですが、

自家焙煎のカフェなどは逆に増えているようです。しかし、音のいい
店はとなるとなかなかなく、それに選曲のいい店となるとさらになく、
似たような指向の店が増えれば増えるほどこちらのチャンスが
広がるというわけです。好きなスピーカーを鳴らし切ることのできる
物件、焦らず頑張りますよ。
乙さん、フルレンジの進行具合、また書いてね。
それでは、いつか、四分休符で! 笑

HOBO

Re: HOBOさん

HOBOさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
久しぶりに天王寺や阿倍野に行ってみたのですが、
そのあまりの変わりように驚きました。
あれは街の破壊、文化の破壊かもしれません。

〈四分休符〉は存在だけは知っていて、
その店前を通ったこともあるほどなんですが、
一度も利用したことがないんです。
今回こそ、と思って行ったのですが、街自体が変わっていたのです。

仰るように音楽にこだわり、コーヒーにこだわる店が、
ほとんどないのかもしれません。音楽だけだったり、コーヒーだけだったりで。
まるでラーメンとチャーハンのセットみたいな感じですが、
両者が見事に満足できるレベルの店は滅多にないでしょう。

フルレンジの進行具合は、遅めです!
グリルクロスをどうするか、あの「スリット」をどうするか、
それでさんざん悩んでいます。それはとりあえずパスしておいて、
箱だけ作れば話は早いんですけどね。

素敵な眼鏡をかけた、体格のいい好男子がいて、
表にオレンジのワーゲン・ビートルが停まっていたとしたら、
その時こそ、声をかけてみましょうかね?

HOBOさんでしょう?

No title

地名がなんとなく、美しい響きが多いのがいいですね。
歴史を感じますし、和風なイメージです。

今回の写真はとても都会的で、気後れしそうな雰囲気ですが、
いつも只野乙山さんが紹介される大阪は、とても古き良き親しみやすい大阪ばかりでした。
それだけ大阪は、大きい都市ということでしょうね。

わずかに残る、古き良き大阪の町を、探し歩く只野乙山さんの記事は、とても大きな意義があると思います。

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
この再開発に何の目的があるのかわかりませんが、
火災が起きても消防車が入れない状態だけは回避できたようです。

その結果、全国どこにでもあるような商業施設ができたのです。
よく巨大商業施設ができることがありますが、
どれもなんだか似た感じですよね。テナント料が高すぎて、
結局数年後には廃墟のようにならないとも限りません。

そうならぬことを祈るしかありませんが、もしあの中に
大阪らしさがあるとすれば、できたばかりの商業施設に銭湯があることでしょうか。
ああいうところに「大阪らしさ」を感じますね。
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只野乙山

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