アン・リチャーズ 『アン、マン!』

Ann Richards / Ann, Man (1961)

AnnRichards_AnnMan.jpg
1. Yes Sir That's My Baby
2. An Occasional Man
3. There's Lull In My Life
4. The Maquerade Is Over
5. You Go To My Head
6. Is You Is Or Is You Ain't My Baby
7. And That's All
8. Bewitched
9. Evil Gal Blues
10. Love Is A Word For The Blues
11. How Do I Look In Blue
12. I Couldn't Sleep A Wink Last Night


夏は冷房装置を使わない話は何度も書いたが、それではどうしているかというと、ベランダ網戸と玄関網戸にて全開状態にして空気を通すことによってしのいでいる。ということは、外の騒音はすべて筒抜けになってしまうわけだが、ここのところが重要で、そういう状態であってもさほど苦痛を感じないほど静かな環境を選んだ。幹線道路が部屋のすぐ近くにある生活を十数年送ってきた経験がそうさせたのだと思う。

そうはいってもセミの大合唱だけは避けようがなく、セミが鳴いている間は音楽など聴く気になれない。真夏に音楽を聴こうとするなら窓をぴったりと閉めて冷房装置を効かせ、ある程度大きめの音でセミの合唱に負けぬようにしないといけない。7月と8月はそんな具合に昼間に音楽を聴くのはあきらめないといけないが、夜になるとセミも休息するのかしんと静まり返るときがある。そんなひと時だけ、ごく小音量で音楽を聴くのだ。

さて今回はアン・リチャーズの『アン、マン!』(1961)を聴いた。以前からアン・リチャーズを知っていたわけではない。ワーナーミュージック・ジャパンの企画物「JAZZ BEST COLLECTION 1000」でアトランティック・レーベルの過去の音源を再販しているようなので、それに乗じてまとめ買いをした中の一つである。CDが売れぬ時代、こういう機会に買っておかないと、すぐ廃盤になってしまうことがあるので要注意である。

アン・リチャーズはスタン・ケントン楽団でデビューした後、ケントンに見染められて結婚、その後はたまにナイトクラブに出演したりするくらいでほとんど歌手として活躍することがなかった。1961年、ケントンとの破局後もライヴ・アルバムを一枚残しているだけで、彼女が残した音源はたいへん少なく、1982年に46歳という若さで亡くなっている。

録音はビッグバンドをバックにしたものではなく、コンボスタイルで行っている。メンバーはアン・リチャーズ(vo)、ジャック・シェルドン(tp)、バーニー・ケッセル(g)、レッド・カレンダー(b)、ラリー・バンカー(ds)。(3、4、5、8、11)はバーニー・ケッセルのギターのみでアン・リチャーズが歌っている。どういうわけでピアノレスなのかわからないが、バーニー・ケッセルのギターが大活躍している。

アン・リチャーズのヴォーカルは高めアルトで、歌い方もキュート・ヴォイスからポップ歌手のような軽いノリ、そして根性の入った低めの唸りまで様々にこなせる相当の実力派のように思える。ソプラノ領域に入ったフェイク・ヴォイスも震えるようなヴィヴラートがかかって可愛らしい。(9)はブルース曲で、アンは黒人歌手を意識したような迫力で熱唱。ケントンと別れた後ならではの選曲ということなのだろうか。

聴いているといい歌を歌う人だなあ、とつくづく感心する。ヘレン・メリルのようなか細さ、ブロッサム・ディアリーのような可愛らしさ、そしてポップ歌手のような軽さと明るさを自在に歌い分ける器用な人だが、魂はブルースなのではないかと思う。相当な実力派シンガーなのに、残されたアルバムが少ないのが本当に残念だ。


【付記】
● アン・リチャーズのCDは『アン、マン!』しか持っていませんが、他のものも欲しくなりましたが本当に少なくて、HMVやAmazonでも2枚ほどしか見つかりませんでした。


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No title


こんばんは!
初めて聞いた方だったので、視聴してみましたが、なかなかよろしいですね。
ジャズはあまり詳しくなく、女性ジャズボーカルはコケティッシュな感じが苦手で、あまり真剣に聞いておりませんが、エラ・フィッツジェラルドは好きで、その他にもアン・リチャーズと同じスタン・ケルトン楽団では、クリス・コナーがいいなと思っております。

Re: 996さん

996さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
乙山も長らく「女性ヴォーカルなんて」と思っておりました。
いつの間にかそれが大好きになってしまったのです。
仰るようにケントン・ガールズといえばクリス・コナーですよね。
何枚かありますのでそのうちクリス・コナーも記事になるかもしれません。

No title

只野乙山さんは、閑静な住宅街にお住まいなのですね。
蝉の声、夏の暑い日には、とてもうるさく感じられますよね。
こちらは、すっかり秋の気配ですが、乙山さんのところは、残暑は厳しいでしょうか?
秋の夜にジャズは合いますね。
もうすぐ、十五夜ですね。十五夜に、ジャズというのもなかなかおしゃれな気がします。
バルコニーから、美しい月を眺めながら、耳から心地よいジャズを聴きながら....お酒は何が合いますかしら?

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
どんなに立派な音響装置を持っていたとしても、
騒音が絶えず聞こえてくるようでは興醒めですし、
思い切って大きな音で鳴らせるようでなくては立派な装置を持つ意味がない。

そのあたりのバランスが難しいのです。
実は、静かな環境、そして比較的大きな音で鳴らせる環境を、
確保するのがいちばん難しいのでして、
それができぬゆえに、人はいろいろと工夫するのではないでしょうか。

十三夜とか十五夜は、月がいちばん美しく見えるとき。
それも旧暦のそれでなくてはいけません。
毎年違うわけですから、旧暦カレンダーでチェックしないとね。

お酒は……酒好きなら何でもいい(!)のですが、
家族の笑顔があれば、たぶんそれは、お酒以上に良いものでしょうね。
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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