阪急十三駅周辺を歩く(2) 十三トリス

JusoTorys_FrontView.jpg
7月某日、かねてから行ってみたいと思っていた〈十三トリス〉へ初めて行ってみた。サントリー社が寿屋だった頃から50年以上営業しているたいへん古いバーで、名前だけは知っていた。つい最近初めて〈トリス エキストラ〉を飲んで、以外に混ぜ物が少ない(というか、ない)まともな味だったこともあり、一度は行っておきたいバーである十三トリスに行くしかないな、と思ったのである。

阪急十三駅の西改札口を出てすぐ右手に飲食店街があり、その一角にひっそりとたたずむように十三トリスは存在している。大衆酒場とか立ち飲み屋、焼き肉屋の迫力に圧倒されながら狭い路地のような道を進んで辿りつく。午後6時過ぎである。ドアを開けると、マスターが一人でカウンターの向こうに立っている。あの有名な「十三トリスのおばあちゃん」の息子さんだと思うが、名物おばあちゃんは数年前に亡くなっている。

PremiumMaltsHalfAndHalf.jpg客は私(乙山)一人だけ。横にずらっと広がるカウンター席のほぼ真ん中に座る。カウンターの端には真鍮製と思われるバーが備え付けてあって、もし酔っ払ってふらっとした時にはこれをぐっと握ればいい(?)のかもしれない。連日30℃を超える暑さである、まずはプレミアムモルツのハーフ&ハーフ(写真2枚目)を注文し、らっきょうをつまみにした。

もう一品は「名物」と書いてある「イカ焼き」である。多少時間がかかりますよ、とマスターが言うので、ああいいですよ、と答えておいた。こちらはそんなに腹が減っているわけではなく、ゆっくり待つ気分である。あっさり飲みほしたビールの次は、と目の前に並んだ酒のボトル群に目をやれば、なんとトリスのオールドボトルがあるではないか。

TorysOldBottleHiBall.jpgつまり現行品のトリス・エキストラになる前の長年続いたボトルで、これぞおそらく往年のトリスの味だろうということで炭酸割りで注文した。生ビール用に加えて、ソーダ用のディスペンサー(サーバー)がある所がいかにも、という雰囲気だ。そうだった、もともとトリスバーというのは、トリスのハイボール販売店なんだから、ソーダ・ディスペンサーがあっても不思議ではないのだろう。

写真3枚目がトリス(オールドボトル)のハイボール。「もうこれ自体売ってないから一杯だけでお願いします」とマスター。レモンスライスが入っていますね。飲んでみると、現行のトリス・エキストラよりちょっとうまいように思えた。どう違うのか、といわれると答えに窮してしまうほど微妙な違いではあるが、やはり昔のトリスのほうが旨いと思う。十三トリスに来てよかった、と思う瞬間である。

JusoTorys_Ikayaki.jpgそうこうしているうちにイカ焼き(写真4枚目)が来ましたよ。熱く焼いた鉄板を木のトレイに載せて供されるが、一面鰹節がかかっている。この下に焼いたイカと卵、葱が隠れており、ソース味で仕上がっている。まあイカ焼きですね、卵が3個と奢っているけれどこれで780円はちょっと微妙。話の種として、注文してみたまでのことである。

SuntryRed_HighBall.jpgトリスのハイボールを飲んでしまうと、次は〈レッド〉のハイボールにした。マスターはトリスの飲み比べをしてほしそうにしていたけれど、〈エキストラ〉の味は予習済みである。ここは、きちんと飲んだことのないレッドとホワイトにしなければ。一人飲みのアルコール量としてはほぼ限度ではなかろうか。だれかと話をしながらだと、オールドかリザーヴあたりまで辿りつけたかもしれない。

さていよいよ〈ホワイト〉。7時前に出勤してきた大学生くらいと思われる若い方も「いらっしゃいませ」と挨拶、こちらも静かに頭を垂れ、ホワイトを注文。「ウィスキーと水を1:1で割ったものを氷に注いでください」と頼んだ。彼はハイボールと同じグラスを手にしていたが、すかさずマスターが「ロックグラスにね、ホワイト50(ml)で水40(ml)くらいね。でないと、水割りになっちゃうからね」と進言。

SuntryWhite_WithWaterOverIce.jpgこういう所がうれしいですね。氷が解けた分まで計算して、サーヴして客が口に含んだ瞬間の出来具合を考えているのだろう。ホワイトはじつに端正な味わいで、記憶の中にあるホワイトとはちょっと違っていた。それだけ自分が、大人になったということなんだろうか。うむ、なかなかいいウィスキーじゃないか、これだったらフルボトルで買うのも悪くないな、とか思いながらホワイトを飲みほし、じつにいい気分で十三トリスを出た。

**現在、十三トリスは火災により焼失しています。**


【付記】
● ビール→トリス→レッド→ホワイトと来てここでダウン。といっても本当にダウンしたわけじゃないんですけど、それくらいで止めておかないと、というわけです。7時過ぎの阪急電車は通勤客がいっぱいで、最後に乗り込むようにしてすかさずドアのほうを向いて小刻みに呼吸しましたよ。これが9時や10時頃だと、電車内のアルコール濃度が高くなっているんですね。


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No title

「十三トリス」知りませんでした。
いつか、行って見たいですね^^
乙山さんほどには
のめないので、上客にはなれません(切腹!)

No title

おお、トリスバーに行かれたのですね。
私も噂でこの店の事を聞いた事があります。
懐かしい感じがして、なかなか良い雰囲気じゃないですか。
瓶に入ってるのは大根の酢漬けですか?
ちょっと気になります。

私も少しずつサントリーの酒を見直しているところです。
そうですかホワイトもなかなかの様ですね…。

私はいまハイニッカを飲んで、昔の事を色々想像しています。

Re: しょうちゃんさん

しょうちゃんさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
十三トリスというのはかつて一世を風靡した「トリスバー」の最後でしょう。
乙山もそれほど飲めませんよ、乙山は「酒好き」であって、
「酒飲み」とは違うと言いたいくらいでしてね。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
じつを言うと、もっと寂れた感じがするバーを予想していたのですが、
そうでもなかった、という感じですかね。

瓶に入っているのは、そうですね、
たぶん大根ですかねえ? あまり気にしなかったのですが、
いま改めて写真を見ると、どうも大根のスライスを酢漬けにしたもののようです。

時間が早いので人があまりいなかったというのはあるのですが、
バーというのは早い時間に行くのに限る、と勝手に思っています。
とにかく静かですし、雰囲気もいい。
ゆったりした時間を過ごせましたよ。

No title

貴殿の様に
粋でツウな外飲みを
リアリルにつづる このときめきに
嬉しくてわたくしの笑顔がとまませんっ!

サイコーっ! o(^▽^)o 。


No title

>ビール→トリス→レッド→ホワイト

おそらくはベストの順番でしょうね。これらのウイスキーは私がサントリーのものを飲まなくなる以前にはいつもお世話になっていたものなので、なんとなくそんなふうに感じます。

そう言えば昔、梅田の商店街の入り口あたりにトリスバーってありませんでした。

Re: 四の字固めさん

四の字固めさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
関西(大阪)の酒好きとしてはぜひとも押さえておきたいバー、十三トリス。
噂に違わず、何とも家庭的な雰囲気のバーでした。
敷居も低く居心地もいいのですが、バーなんですね。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
今日の感覚からすると、今回飲んだものはふつう外で飲むものではないのですが、
トリスバーですからね。それにトリスのオールドボトルがあったのです。
これはもう飲むしかありません。
梅田の商店街、あそこは今でも飲食店がひしめいていますので、
かつてトリスバーがあったとしても不思議ではありません。

No title

本当に乙山先生、ウィスキー飲み語らすと渋いですね。
僕は新聞記者時代
駅の売店で一番安いトリスの小瓶をかって出張に行った記憶ぐらいしかありません。

十三は過去何度かたむろしています。
このネオン、十三を感じます。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
というか、大丈夫ですか?
そちらを拝見してもコメントを入れず、そっとしていたのですが……

> 十三は過去何度かたむろしています。
> このネオン、十三を感じます。

十三は何か郷愁を誘うようなところがあってしばしば行くのです。
通勤の途中ですから降りればいいだけのことなんですけど、
定期券ではなく、ICカードを使っている身なので、たまにしか行けません。
定期券だと、どこで降りようが、心おきなく、なんですけどね。

昭和のかおり

こんばんは

下戸の私でも一度はカウンターに座ってみたいなあ。
一面昭和のかおりが漂っていますね。
「十三トリス」という店名もいいですね。

No title

 おお、いいお店ではありませんか。

> でないと、水割りになっちゃうからね。

 泣かせるセリフです。渋いですねえ(笑)。水割りを悪いとは
いいませんけど、薄めすぎちゃいけません。女こどもの飲み物
になってしまいますから(ちょっと失礼ないい方かな。ごめん
なさい)。

 ついでにとりとめのないことを書きますと、ホワイトは学生
時代によく飲んだ覚えがあります。当時一本800円だったか850
円だったような記憶があります。

 レッドといえば、ロシア船の船長を思い出します。ポケット
瓶のおまけより一回り大きい程度の小ぶりなグラスにトクトク
と注いで、くいっと飲み干します。もう一杯注いで、また一気
に飲み干します。これを延々と続けるのがロシア流。それが実
にイキなんですよ。男の飲み方だなあと思いました。

 ぼくはヴォトカのほうがうまいんじゃないかと思うんですけ
ど、なぜかロシア人はサントリー・レッドが好きなんですねえ
(いまはどうか知りませんけど)。いたく感心したものです。

 ……というわけで、つい昔のことを思い出してしまいました。

Re: 昭和のかおり ; mikitaka08さん

mikitaka08さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
バーといえば、基本的に酒を飲むところですが、気の利いたバーテンダーなら
非アルコールドリンクでも快く出してくれると思います。
バーテンダーはちょっとした料理も上手いし、
コーヒーを入れるのだって上手いことが多いものですよ。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
十三トリスのマスター、なかなかいい味を出している「人物」ですね!
少ししか話していませんが、あなた本当に大阪の人ですか、
といいたくなるくらい大阪弁を使わない(と思う)人ですよ。

乙山はホワイトをしっかり飲んだ記憶はなくて、
何度か飲んで「硬めの酒だな」と感じたように覚えております。
宣伝も大原麗子のような情に訴える(?)タイプではなくて、
ずいぶん都会的な感じだったのではないでしょうか。
ジャズやリズム&ブルース系のミュージシャンを多用していましたね。
今度フルボトルで買って、しっかり味わってみようと思います。

レッドのほうは何度かコーラで割って飲んだことがあります。
何か割り物で、割って飲んだ方がいいような印象があって、
もっぱらコーラ割りでしたね。ソーダ割りは、駆け出しには高級すぎるのです。

ロシア人の船長の飲み方、すごいですねえ。
だけど考えてみると、イギリスとフランス、西欧を除いたほとんどの地域はウォッカ。
東欧と北欧は軒並みそうじゃないかと思います。
北欧の小説の中なんですけど、やはり飲み方は、ストレートを延々と……

No title

珍しい外呑み記事ですね!
トリスバー話には聞いたことがあります。
気取りなく入れそうないいバーですね。
レッドやホワイトもいいなぁ。とにかくバーは高すぎて…

1人だとペースが早くなりますよね。

Re: RSさん

RSさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ぶっちゃけた話をします。
そうなんですよ。乙山は基本的に家で飲みますから、
外飲みの記事はたいへん少なくなってしまいます。
それは原価を知ってしまっていること、
そして料理の出来具合にもよることが大きいと思います。

ある程度自分で出来るようになると、なんでわざわざ、となってしまいます。
これは、外(店)と同じようにできる、ということではありませんが、
なんといいますか、底が見えてしまうのです。
それでは興醒め、としか言いようがありません。

> とにかくバーは高すぎて…

ですよねえ。お金の話はあまりしたくありませんが、今回は3000円を超えました。
これ、1000円前後の酒が買えなくて、なんて言っている人間がすることではありませんね。
たかがトリスバー(失礼)でね。だってもう、3000円払うのなら、ボトル3本買えますよ。
旧体質のバーは、そのあたりの金銭感覚を理解できなくて、
未だに昔ながらの経営方法でやっている節(?)があります。

断言しますが、そんな「バー」に行く必要はないと思います。
今回は「話の種」なのです。たいへん露骨ですが、
ウェブログの話の種を、お金で買ったのですよ。
もちろん、それなりに楽しませてはもらいましたが、常用するかどうか、
それはたいへん微妙なところです。

ただね、いいバーテンダーがいる店だと、仕事の後の「ちょっと一杯」も格別で、
しかもそれが「ハッピーアワー」とか言って、割引だったりすることも。
そういうとき、ちょっと飲んだりしますよ。

「開店直後のバーほどいいものはない」
これは至言です。
乾杯! そして、いい酒を!
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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