ヘルスニットのヘンリーネックシャツ

HealthKnit_HenryNeckShirts.jpg
ヘンリーネックシャツといえばTシャツにボタンが付いたようなもので、近頃はそれを着ている人も増えて市民権(?)を得ているようであるが、一昔前はおじさん御用達の、今様の言葉でいえば「ださい」アイテムの筆頭に挙げられるものであったはずである。だからまちがってもそれを夏のアウターとして用いることなど、あってはならなかったのではないか。

そのネガティヴな印象あるいはイメージはいったいどこから来たのだろうか? おそらくいくつかの漫画などを通してではないかと思うが、その筆頭として私(乙山)は漫画『明日のジョー』に登場する丹下段平を挙げたい。ご存知のように丹下段平は少年院にいた矢吹丈にボクシングを教えた人物で、後にジョーのセコンドを務める重要人物なのだが、そのいでたちが「ヘンリーネックシャツに腹巻き」というものだった。

これにジャケットを羽織ることもあるのだが、丹下段平は年中ヘンリーネックシャツに腹巻き、帽子にステッキというスタイルを通していた。むろん当時は「ヘンリーネックシャツ」などという洒落た呼び方が「あのシャツ」に対してなされることはなかったと思うが、『明日のジョー』はたいへん人気の漫画で後にアニメーションにもなり、ライバルの力石徹が亡くなった後の続編も制作され、御覧になった方も多いと思う。

もうひとりの重要人物として、漫画『天才バカボン』に登場する「バカボンのパパ」を挙げたい。この人の仕事は確か植木職人だった(?)ように覚えているが、上述の丹下段平同様、年中ヘンリーネックシャツに腹巻きというスタイルで、レストランに入ってもレバニラ炒めを注文するような人だった。『天才バカボン』もアニメーション化されてかなり長い間テレビ放映され、あのスタイルを印象付ける契機になったのだと思う。

この二人以外でも、たとえば漫画『ど根性ガエル』に登場する寿司屋の「梅さん」も、たしかヘンリーネックシャツに腹巻きというスタイルだった。さらにテレビドラマでも向田邦子原作『寺内貫太郎一家』に登場する、小林亜星扮する寺内貫太郎がまさにあのスタイルであったし、忘れてはならぬのが映画『男はつらいよ』の「フーテンの寅さん」こと車寅次郎で、彼も「ヘンリーネックシャツに腹巻きスタイル」の第一級のサンプルとして挙げられるだろう。

これらはすべて漫画やアニメーション、テレビドラマや映画の中であって、どういうわけか私は、実際に「ヘンリーネックシャツに腹巻き」というスタイルをしている人を見かけたことはない、と思う。1960年代後半から現在まで、できる限りの記憶を引き出そうと努めても、あのスタイルをしていた人を想起できない。だから、というわけではないが、あのスタイルは漫画とテレビなどのメディア(媒体)を通じて人々の中に印象付けられ、定着していったのではないかと考えている。

ところが、ヘンリーネックシャツに対するネガティヴな印象が180度転回したのは、映画『炎のランナー』(1981)を見たときだった。舞台はケンブリッジ大学、陸上部の部室だろうか、学生たちが着換えをする場面でブレザー・コートを脱ぎ、ネクタイを解いてシャツを脱いだ時、下に着ていたのがなんとあのヘンリーネックシャツだったのだ。それは体操服としても用いられ、ヘンリーネックシャツを着て走る姿がまた、なんとまぶしく見えたことであろう。

そんなわけで「『炎のランナー』のようなヘンリーネックシャツ」に長年憧れていたのだが、なかなかネガティヴな印象が拭い去れず、どうも手が出ないでいた。ところがウェブページを見ていると、かなりそれに近いと思われる物を見つけた。知っている人はとうに知っている、ヘルスニットのヘンリーネックシャツである。アメリカのブランドなので英国トラディショナル・スタイルとは違うかもしれないが、まあいいではないか。

ついふらふらと購入ボタンを押してしまったのだから仕方がない。どうして5月になるとあれこれ服を買いたくなるのか、これはもう自分でもわけがわからないのだ。さて届いた商品をいそいそと取り出して早速着てみると……あっ、意外とタイトにできていますね。サイズはMで発注したのだが、ユニクロでMを選んで着ている男、メタボリック症候群非該当者の男でも、Mでタイトに感じる。

だからこれ、身長170㎝以上の人ならよほど痩身でもない限り、LまたはXLを選ぶべきでしょうね。170㎝未満の人でも、肉付きが良いと自覚のある人ならLを選んだほうがいいと思う。とくに肩周りとか腕のあたりがタイトに感じるが、真夏のアウターとしてではなく、写真のように洗いざらしのオックスフォード・シャツとかマドラスチェックのシャツのインナーとして重ね着するつもりで、なんとか着られるという感じなので返品(交換)する必要はなかった。

ちなみに、袖のところにどういうわけかひも状の物が残っているけれど、これは切ってしまった。これもデザインのうちだ、と残して着ている人もいるかもしれないのでそこは好きずきに。品質タグも裾ぎりぎりの所についているのでこれも即座にカット。これもデザインのうち……かなあ。ブランド表示タグとか品質タグをいつまでも残している人がいるけれど、それは私の趣味ではない。もちろん、場所にもよりますけどね。


【付記】
● 本当に思ったよりタイトでした。体のラインがはっきり出ますので肉付きの良い人にはあまりお勧めできないように思いました。アメリカ発のブランドですが、製造はアメリカではなく、Made In Chinaという表示がありました。

着こなしのポイントは、とくに真夏のアウターとして用いる場合、丹下段平や車寅次郎、バカボンのパパのように見えぬようにしたいものです。乙山はホワイトとナチュラルの2色を選びましたが、アウターにする場合、もっとはっきりした色を選ぶのがベターかもしれません。そうそう、実際に「ヘンリーネックシャツに腹巻き」をしている人を見た、という方はぜひその旨コメント欄にてお知らせください。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

むむっ!

乙山さん、こんにちは、なにわのHOBOです。
きょう帰ることにしました。梅雨いりに対応できる心構えが
ありませんからねえ。夜はさっぱりした印象のいい大阪でしたよ。笑
さてヘンリーネックのTシャツはHOBO大好物ですねえ。あんまりかっちり
作られていないもののほうがラシクていいと思っています。最近はとくに
細身のディテールのものが多いようで、チャンピオンのスウェットなどもずいぶん
細身になりました。乙さんのおっしゃるとおり、おっさんになるのはサイズ選びと
体系にあると考えています。このての作品を大きく着てしまうとまさしく
おっさん腹巻にまっしぐら。Tシャツは自信というか、潔さというか、ぼくは
前のボタンのところがひしゃげるぐらい小さいサイズをボタンをとめずに着ます。
優等生っぽく着ちゃうとまずいように思っています。ポロシャツもそうですよね。
どちらにしても引き締まったボディでなければバカボンパパ、トラ次郎。
ストレートのジーンズやチノあたりにぴたっとしたヘンリーTなんかで勝負できるのは
かなり上級者か僕のような勘違い親父なんだろうなあ。
稲荷のマッシュというミリタリーショップのちかくにある、<かつや>のカツカレーは
最高でした!あの<かつや>ではありません。笑
いつもありがとう、乙山さん。こんどお茶でもしましょう、ぴちぴちのヘンリーTで!

なにわのHOBO

Re: むむっ! ; HOBOさん

HOBOさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ヘンリーネックシャツは永い間、着たい気持ちにならなかった服ですが、
なんか最近、どういうわけかそれを着てみようという気になったのです。

ヘルスニットのヘンリーって、前からあんなにタイトだったんですかね?
なにぶん、オリジナルに近いものを着たことがないので、
「あ、ちがうな」とかわからないのが情けないです。

オリジナルを知っている人は、たぶん違いもわかるんでしょう。
これ、中国製でしてね、近頃多くのメーカーがやたら細身になっていて、
それを中国で作ることも多いんじゃないかと。
ヘルスニットもその流れで、似たような型というかシルエットになっているのかも。

> ストレートのジーンズやチノあたりにぴたっとしたヘンリーTなんかで勝負できるのは
> かなり上級者か僕のような勘違い親父なんだろうなあ。

いや本当、仰る通りでしてね、ヘンリーTとボトムスだけで勝負できるのは
かなりの上級者でしょうね。乙山は初めからインナーとして着るつもりですよ。
アウターにするなら、ブラウンとかネイビーのような、はっきりした色を、
選んでしまいそうです。HOBOさんは、なにか確信めいたものがあって、
それを着ても大丈夫、という気持ちがあるからOKでしょう。

なぬっ、カツカレー?
カロリーが……だけどおいしそうだなあ!
昼になら、食べてもよさそうですね。

No title

記事を拝見しました。

写真だとなかなか良いシャツではありませんか。
夏らしくて良い着こなしだと思います。
私も白のヘンリーネックシャツとネイビーのシャツを夏の定番にしています。

丹下段平やバカボンパパや寅さんスタイルに成るか否かは、素材による要素が強いのではと考えます。
例えばコットンだとおしゃれですが、これがクレープ生地なんかだとマンマですよね。

それとボタンの数というか開いている度合いによっても印象が異なってきます。
一番下まで全開するものや、シャツの丈の真ん中位まで開くものは一寸違うかなと。

実は子供の頃に岸壁で釣りをしていたときに、クレープ生地のボタン付きシャツにステテコという上下を着た、手の甲に花札の絵が描いてある、見た目は怖いけど優しいおじさんが釣りの仕方を教えてくれました。
多分腹巻きもしていたような気がします。

シャツのカラーをハサミで切って

乙山さんこんにちは。
ヘンリーネックと言うか、厳密にはスタンドカラ―になるかな?私はあの首回りには、カッコ良いイメージしかありません。「大草原の小さな家」で男性は皆、コットンの襟無しシャツを着てましたし、中学生だった70年代後半に、バスターというアイドルバンドがストライプの襟無しシャツを着ていて、私も欲しくなりました。当時は普通に売ってなかったので、手持ちのコットンシャツの襟をハサミで切ったことがあります。あしたのジョーも寅さんも、全く眼中になかったのでしょうね。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> 実は子供の頃に岸壁で釣りをしていたときに、クレープ生地のボタン付きシャツにステテコという上下を着た、手の甲に花札の絵が描いてある、見た目は怖いけど優しいおじさんが釣りの仕方を教えてくれました。
> 多分腹巻きもしていたような気がします。

ああ、ヘンリーネックシャツに腹巻きというスタイルの人は存在していたのですね!
とくに「あのヘンリー、腹巻き、ステテコ」というのは、一昔前のおじいさん、おじさんなら、
部屋着としてはあったのではないかと思います。地域にもよりますが、場合によっては、
1980年頃まで「ズロースを着たおばさん」とともに、「あのヘンリー、腹巻き、ステテコ」の
おじさんが存在したのでしょう。

さすがに人が集まる駅周辺とか、そういう場所では見かけなかったのかもしれませんが、
部屋着とか下着のままで路地を歩いてご近所まで、という人達はいたでしょう。
銭湯へ行くときもおそらくそうじゃないかと思うんですね。
ズロースおばさんも、腹巻きにステテコのおじさんも、もうめったに見かけませんね。

Re: シャツのカラーをハサミで切って

yuccalinaさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
なるほど「大草原の小さな家」ですね、あれは仰るようにスタンドカラーシャツでして、
乙山が記事でいうのは「ボタン付きのTシャツ」なので別物なんです。

今は少年漫画を読む女子も少なくないようですが、
昔はもっと男子と女子の「住み分け」のようなものがはっきりあったのかもしれません。
yccalinaさんが『明日のジョー』が眼中になかったというのもわかる気がします。

「バカボンのパパ」と「寅さん」ですぐイメージして下さるものとばかり思っていましたが、
どうもうまく伝わらなかったようですね。

同じ仲間と

ヘンリーネックとスタンドカラ―の違いには、大分後になって気が付きました。中学生当時の私にとっては、同じフォルムで仲間だと見ていたんだと思います。あと、丹下段平やバカボンで思い浮かばなかったのは、女性用の肌着にあの形が無いからだと思います。また、女性用のアウターでヘンリーネックやスタンドカラ―が出回るのは、かなり後だったので、私は男物のXSのヘンリーネックシャツとか、着ていたことがありました。実のところ私は「あしたのジョー」も「天才バカボン」も、見てましたが、女子が来てもオジサンにはならないので、結びつかなかったのかもしれませんね。

Re: 同じ仲間と ; yuccalinaさん

yuccalinaさん、再コメントありがとうございます。
なるほど、バカボンのパパとか寅さんが来ていたあのシャツ、
男子にとってはけっこうインパクトがあって印象に残るのでしょうが、
女子はそうでもないということなんでしょう。

>女子が来てもオジサンにはならないので、結びつかなかったのかもしれませんね。

そうそう、それに尽きるかもしれませんね!
乙山がいちばん興味があるのは、どれだけの人が実際にあのスタイルをしていたか、
ということなんです。腹巻きにステテコ、そしてあのシャツを室内着として用いた人、
それならわりといそうじゃありませんか。乙山は父親を早くに亡くしておりますので、
格好のサンプル(?)に出会っていないわけでしてね。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/10 (6)

2017/09 (9)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)