ニッカ 〈モルトクラブ〉



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】


MaltClub_01.jpg
ニッカウヰスキーのラインナップはあらかた飲んだつもりになっていたけれど、忘れていたというかたぶん意識的に避けていたものがあるのでそれを今回飲んでみた。〈モルトクラブ〉である。これと〈オールモルト〉というのがあるけれど、モルトクラブはどうもオールモルトの弟分のようなものらしい。

モルトクラブもオールモルトも、どちらもモルト100%だという。とすれば、ピュアモルトとどう違うのか、という疑問もわいてこようというものだ。なのでニッカウヰスキーのホームページに行くと、ちゃんと説明しているようなので、どれどれ、と見てみると、二条大麦の麦芽を原料としていて、それを宮城峡蒸留所のカフェ式蒸留機で製造するようである。

宮城峡蒸留所のカフェ式蒸留器は、ふだんグレーン・ウィスキーの製造に使われているようであるが、グレーン・ウィスキーの製造だけで年中稼働しているわけではないのだろう。どういう日程で行われているかわからないが、このカフェ式蒸留機で蒸留したモルト原酒が、モルトクラブやオールモルトに使われているのだそうだ。

さていつものようにウィスキー:水=1:1で飲んでみる。モルトの香りはあるのだが、スモーキーさやピート香がほとんど感じられない。華やかで甘いバニラ香も抑えられていて、これを日本酒で喩えると「淡麗」とでもいうべきものだろうか。とてもスムーズで飲みやすいんだけど、ある意味ウィスキーらしさがあまりしない感じがした。

ピュアモルトをはじめとしたニッカの商品群は、ストレートかトゥワイス・アップ、または氷に注いで味わうのが合っていると思うけど、モルトクラブはそういう飲み方より、水やソーダで割って飲む方がいいのではないか。というより、口の中に入れていろんな味を探ってみたり、何度も口に含みたくなるような魅惑は最初から狙っていないのではないか。

MaltClub_02.jpgひょっとしてこれは……うむ、私(乙山)のあてにならぬ考えでは、当初からこれは食中酒を目指してチューニング(?)されているのではないか。濃いめの水割り、たとえばウィスキー:水=1:1で割ったものを氷に注いで飲むと、アルコール度数は約半分の20%になるけれど、これは焼酎を氷に注いで飲むのとほぼ同じ感覚である。

実際そうやって飲んでみると、なんとまあスムーズで飲みやすいんだろう。ウィスキーらしさはほとんど感じられないけれど、長期熟成された焼酎にきわめて近いテイストを持っており、焼酎をさらに洗練させたような仕上がりである。煙臭さやバニラ香がほとんどしないけれど、その分料理の邪魔にならず、料理と一緒に飲んでも大丈夫である。おそらく当初からそれを狙っているのだろう。

スコッチの**を1000円とすると、これに**円とつけてしまうかもしれない、などとよくやって遊んでいるが、モルトクラブはその意味がない、というか初めからスコッチと争うつもりはないのであって、これの仮想敵はずばり焼酎なのではないかと思う。だからこのモルトクラブを、ニッカの他のラインナップと比べて「ウィスキーらしくない」云々と評するのも的外れであろう。

夏場はビールを飲んだ後、日本酒を飲まずに焼酎を氷に注いで飲むことがあるけれど、モルトクラブもそんなふうに「料理と一緒に」飲んでみるのがいいかもしれない。その際、ウィスキー:水=1:1くらいの、濃いめの水割りをお勧めします。「本物のウィスキー」をひたすら求めてきたニッカだが、これは「食卓にウィスキー」という、新しいウィスキーの在り方を提案したとても大胆かつ斬新な試みだと言えるのではないかと思う。


≪ピュアモルト〈ブラック〉へ  サッポロウィスキー〈40°および43°へ〉≫


【付記】
● 本当にスムーズで飲みやすいモルトクラブですが、これをスタンドアローン(単独)で飲むとなるといささか物足りぬ感じもしないではありません。仕事帰りのまず一杯として、この時期はナッツとかプロセスチーズをつまみながらスコッチのソーダ割りなんかを楽しんでいますが、その代わりにするには……とか思うんですけど、食中酒にしてみるのもできず、とりあえずまあいいか、という感じで飲んでいます。

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No title


初めてコメントさせていただきます。
ウィスキー名を検索すると乙山さんのページがよくヒットして、銘柄も卑近なものが多く、いつも参考にさせて頂いております。
バッハ、グールド、カザルス、イーノ、スタカンと私の好物がたくさん(笑)コメントせずにはいられず・・・

これからも楽しみにしております。

No title

モルトクラブは私も飲んだことがありますね・・・でも、かなり以前なので記憶があいまいで・・・

う~~ん、どうだったかなあ・・・

>「食卓にウィスキー」

宴会なんかに行ったら、昔はすぐにウイスキーを飲み始めるような上司がたくさんいましたが、最近周りを見回すとみんな焼酎のお湯割りを飲んでいたりして・・・

Re: 996さん

996さん、初めまして! コメントありがとうございます。
ほうほう、ウィスキー名の検索で拙ウェブログの名前が!
なんだかありがたいことですね。

スタカンって「スタイル・カウンシル」のことでしょう?
だけどスタカンを見ると、どうしてもスカタンに見えて仕方ありません。
「ひつまぶし」が「ひまつぶし」に見えるのと同じ理屈でしょうね。
今後ともよろしくお願いします。

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
モルトクラブは記事にも書いたように、たいへん飲みやすい、
本当、焼酎みたいな感覚で食中酒として飲めるものでした。

宴会ですぐにウィスキーですか?
ふつうはとりあえずビールで乾杯、
その後でウィスキーに移るんだと思うんですが……

焼酎ブームというものもありますからね、だけどひょっとして、
そっちのほうが日本人には合っているのかもしれませんね。
焼酎が似合う人も、素敵ではありませんか。

No title

記事を拝見しました。

スーパーで長考に入る時には候補に挙がる酒です。
私も改めて飲んだことがなかったので、参考になりました。

私も食事をする時など食中酒として余りウィスキーは選びません。
大抵焼酎のロックを注文したりするのですが、こう言うのが有ったのかと目からウロコです。
食中酒にウィスキーとは思い浮かびませんでした。良いかもしれない。

でも乙山先生の付記で「物足りない味なんだろうな」ということがよく判ります。

焼酎の値段が跳ね上がっている昨今ですから、こんな選択もアリだなと思いました。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
モルトクラブとオールモルト、ずっと見ないふりをしてきました。
ある意味それは正解で、もしニッカの他のラインナップと比べるなら、
これらの存在価値はありません。そういうものだと思います。

ですがこれらは「食中酒」として価値を発揮するものでしょう。
ニッカのホームページを見るとおわかりになると思いますが、
「おつまみレシピ」なんてのがあるのはここだけですよ。
ニッカがその旨はっきり明言しているわけではありませんが、
ビールの後に焼酎を飲むのなら、これはいかかですか、ということでしょう。

モルトクラブとオールモルトとして流通させる他に、
おそらく熟成用としていくらか保管しているでしょう。
すると、単式のポットスチルのモルト原酒のほかに、
カフェ式のモルト原酒の熟成ものができるわけで、
それはニッカの秘密兵器のようなものにちがいありません。

オールモルトは1990年の発売ですから、
24年物のカフェ式蒸留モルト原酒が存在しているはずで、
ひょっとしたら例の「ブレンダーズ・バー」あたりでは
それを使った新しいブレンドのウィスキーが出されているかもしれませんね。

挑戦者。

今、角瓶 黒43度を
ロックで飲りながらこのブログを
読んでいる所です。
飲んでみないと解らないウイスキーは
以外といっぱいあるものなんですね〜、
昔、焼酎に力を入れている鴨料理屋の
店主から 天使の誘惑 という焼酎で
それはそれはウイスキーみたいな味わい
で驚きました。
目指す所は違えども、蒸留酒が可能性を
探し出そうとしている答えは案外
同じかもしれませんね。(汗)

Re: 挑戦者。 ; 四の字硬目さん

四の字硬目さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> 今、角瓶 黒43度を
> ロックで飲りながらこのブログを
> 読んでいる所です。

おう、なかなか乙なことを。角瓶はハイボールとともに人気ですが、
かつてはそうやってじっくり飲むのものでしたね。
そろそろ、S社のことも書かないといけない時に来ています。

長期熟成焼酎は、明らかにウィスキーの感じを目指しているものですし、
モルトクラブは焼酎のような「飲まれ方」を目指している。
その境界線あたりがいちばん面白いのかもしれません。

ニッカの中ではなんだか鬼子のような扱い(?)かもしれませんが、
これを世に出すとき、かなり社内で反対にあったのではないかと想像します。
だって、だれが飲んだってニッカらしくないものだとはっきりわかりますから。
それを踏み切ったのは、英断ではないかと思うのです。
その御蔭で、カフェ式蒸留モルト原酒があるわけですからね。



No title

あ、これは飲んだことあります!
ウイスキー=特別な時にじっくり味わいながら飲む、というイメージが
私の中にはあるのですが、食事を楽しみながら気軽に飲めるウイスキーは
結構貴重です♪
ウイスキーは単品で酒自体の味を楽しむように製造されているとは思うのですが
モルトやなんやの奥深いウイスキー道にどっぷりはまるだけではなく、
その道の入り口で気軽に楽しめるタイプもあってよいのではないかと・・・

日本酒でも純米大吟醸なんかは食事と合わせるより単体で飲む方が良いと聞きますし
(実際飲んだことは無いのですが)、シチュエーションによってベストなお酒を
飲めるよう、いろんなタイプのウイスキーがあっても良いなぁと思います。

まぁ勿論「基本」をきちんと踏まえた上で、ですが・・・
(メーカー都合の安かろう悪かろうの単なる水っぽいお酒ではなく)

No title

 嗜好は人さまざまですが、ぼくはウィスキーはスモー
キーなのが好みかな。

 たいていは寝酒ですから、オンザロック、まれにはス
トレート・ノー・チェイサーで、少しずつ口に含み、いっ
たん噛みしめてから、一気にのどに流しこみます。噛み
しめたとき、鼻孔にかぐわしい香りが漂うのは、まこと
にけっこうなものです。

 しかしそれも最初のうちで、だんだん酔ってくると、
スモーキーも香りもあったものじゃなく、ただ酔うため
に飲むという堕落した状態に……

 なにごともほどというものが大切なようですけれど、
その「ほど」というのがどのへんなのか、いまだによく
わかりません(笑)。

Re: zumiさん

zumiさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうそう、ウィスキーはふつう食後とか、食前に飲むイメージがあります。
たしかにそうなんですよね。だけど「モルトクラブ」は、
明らかに食中酒を意識して作られたものだと思います。

日本酒でも、大吟醸など、香りが強過ぎるものは、
やはり「塩を舐めながら」とか言うように、単独で飲んだ方がいい、
のかもしれませんね。だけどまあ、日本酒の包容力からして、
大吟醸酒に何を合わせても大丈夫なんです、たぶん。
そういうのはおそらく大吟醸酒に対する礼儀のようなものでしょう。

その酒に合わせて、いろんな飲み方があるわけでしょうが、
ウィスキーは何か特別な感じもしますね。
それに合わせた料理なんてのも面倒くさい。
そういときに、モルトクラブ、オールモルトなのでしょう。


Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
寝酒の一杯にウィスキーというのは賛成です。
最後の一杯というか、一日の終わりを締めくくるのにふさわしいのが、
ウィスキーではないかと思います。

>  なにごともほどというものが大切なようですけれど、
> その「ほど」というのがどのへんなのか、いまだによく
> わかりません(笑)。

そんな、何を仰るんですか!
4月頃、大学周辺の飲み屋さんで見かける、
酔い潰れた若者みたいなことを仰ってはなりませぬ。
「ほど」がわからないというのは、たいへん強健である、ということです。

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Re: 鍵コメントさん

鍵コメントさん、ありがとうございます。
いやあ、どうもどうも!
乙山も皆さんのコメントに感謝しておりますよ。

こんばんは

最近、食事中にウイスキーを呑みたくなって、このブログの記事を思い出しました。で、スーパーに有ったので買ってみました。

味は今から栓を開けるのでわかりませんが、きっと美味いはずです。最近ウイスキーの良さを感じているところなんです。

Re: こんばんは ; 一生喜劇さん

一生喜劇さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
モルトクラブは「食事中に飲む」ことを目指したウィスキーなので、
晩酌とか夕食にぴったりだと思います。
ちょうど、焼酎を飲む感覚で飲むといいのでしょうね。
いい晩酌を!
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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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