ピュアモルト 〈ブラック〉



〈遊歩者 只野乙山〉 特別企画
【日本のウィスキーを飲む】


PureMalt_Black01.jpg
1980年代の中頃だったかと思うが、当時住んでいた近所の酒店主が、いいウィスキーが出ましたよ、もう絶対お勧め、と熱心に勧めてくれたことがある。その店は小さかったけれど店主が熱心で、味見用としてミニチュア瓶もたくさん置いていた。ミニチュア瓶のジャック・ダニエルズを飲んでその香りのよさにしびれてしまったのを覚えているし、コニャックとはこういうものか、と初めてブランデーを試したのも今では懐かしい。

その酒店主「絶対お勧め」というのがニッカウヰスキーの〈フロム・ザ・バレル〉と〈ピュアモルト〉だった。店主は前者を強く推していたように覚えているが、なにしろアルコール度数がたいへん高く、ちょっと引けてしまったのでピュアモルトの黒を買った。後にフロム・ザ・バレルを飲んだ際に店主がどうしてあれほど強く推したのか、なんとなくわかった気になったものだ。

ずいぶん昔のことだから正確ではないかもしれぬが、ピュアモルトはたしか500ml=2500円くらいで、サントリーオールド(720ml=2800円?)より安かったのではないかと思う。だけど両者は容量が違うので単純に比較するのはおかしいのだが、当時はそんなふうに思わずピュアモルトのほうが安い、と思い込んでいたのだから不思議なものだ。いま換算してみるとピュアモルトは段違いに高級なウィスキーだったことが分かる。

なにしろまだウィスキーを飲み始めたころだったので今のように吟味するようなことはできず、一口飲んで本当だピュアモルトってけっこういけるじゃないか、などと思ったのだが、後で飲んだフロム・ザ・バレルに惚れこんで、爾後もっぱらそればかり飲んでしまってピュアモルトの赤とか白を飲まずじまいになってしまったことは他でも書いたとおりである。

PureMalt_Black02.jpgさて今回、ピュアモルトのブラックを久しぶりに飲んでみた。というか本当は二度めの久しぶりなのだ。前回ピュアモルトのブラックを布で拭こうとした時、うっかり蓋のあたりをつかんでしまって床にぶちまけてしまったのである。なんだか脱力してしまって記事に書く気になれず、今回ネット通販で再購入、仕切り直しと相成った次第である。

小さなグラスに注いで香りを確かめる。まず果実のような、それでいてセメダインを思わせる香りがする。口に含むとほど良いピート香と木の香りが広がり、その後でバニラを思わせる甘さがほんのりと漂ってくる。どっしりとした飲み応えと深いコクがあり、いつまでも、何度でも味わっていたいような気持になる。

ピュアモルトの赤ほどバランスの良さはないかもしれないが、これはこれでよくできたブレンドだと思う。余市蒸留所のモルト原酒をキーモルトにしているブレンドだそうだが、そう言われてみると、この深いコクと飲み応え、そして強めのピート香が余市モルトなんだろうかと想像する。

ピュアモルトを飲み比べ、もし一本に絞れと言われたら自分だったら赤を選んでしまうかもしれない、と書いたこともあるが、こうして手元に黒を置いて飲んでいると、これもまた旨いではないか、と以前書いた気持ちが揺らいでくる。本当に、ピュアモルト三種はいずれも甲乙つけがたい、ブレンドの妙を味わわせてくれる。ソーダ割りにするよりも、氷に注いで少しずつ飲むとか、トゥワイス・アップ(ウィスキー:水=1:1)で楽しみたいウィスキーだと思う。


≪ サッポロウィスキー37°へ  ニッカ〈モルトクラブ〉へ ≫


【付記】
● これでピュアモルト三種すべてを記事に書くことができました。近所の酒屋さんに売ってないもので、すべてネット通販で買い求めましたが、今後もその方向でいくことになると思います。ピュアモルトは乙山にとって「とっておき」のものでして、ふだんはブラックニッカスペシャルとかG&G、または1000円程度のいいスコッチを、ソーダで割って楽しんでいます。仕事帰りの一杯は、なんというかビール的なものに近いものがよく、その点、ソーダ割りはうってつけの飲み物なんですね。

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非公開コメント

No title

 そういえば最近千円スコッチかバーボンばかり。まったく
冒険していません。酒飲みの姿勢としてはちと問題ありかも
しれませんね。

 TPPはしゃくにさわるから、情勢によっては、バーボンは
やめようかなあ(笑)。国内メーカーも少しは応援しなくちゃ……

No title

これはさすがに私も飲んだことがありますよ。たしか「赤」だったかな。2,3度は飲みました。
最近はめっきり遠ざかってますが、とてもおいしかった記憶があります。

同じぐらいの他のメーカー(限られてしまいますが)のものよりははるかに純粋な(なんてたってピュア・・・ですからね)印象があります。

とてもマイルドで華やかで・・・ウイスキーの味を語るにふさわしい語彙が自分にないのがもどかしいのですが・・・

No title

記事を拝見しました。

全快とまでは行きませんが、休みをもらって何とかある程度の仕事ができる様になりました。
ただ、モノの味が判らなくなったのは、なかなか治りません。

ところで、懸案のピュアモルト・ブラックですね。
私もブラックかレッドで大いに悩みます。
遠洋漁業の母港としてフロム・ザ・バレルを置いていたのですが、かなり個性が強いので標準にするのは厳しい・・・
ということで、この二種の内1つを必ず置くようにしています。

落ち着くんですよね。ピュアモルトは・・・

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

>  そういえば最近千円スコッチかバーボンばかり。

ふつうそうなりますよ。乙山でも企画がなければ1000円スコッチでしょう。
日本のウィスキーを飲めば飲むほど、スコッチの品質の高さがわかるのです。
あれに太刀打ちできるのは限られたものだけだと思います。

本物を作るしか、もう生き延びる道はありません。
大変な費用と、時間がかかって利益を回収する前に潰れてしまうかもしれませんが。
国産のいいウィスキーになると、やはりお値段が……

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ピュアモルト、本当にいいウィスキーですね。
ピュア、それは創業者の魂をも表していると思います。
これはS社のS氏とは似ても似つかぬもの。

たまに手にとって召し上がるのもいいじゃありませんか。
gatayanさんにはピュアモルトの赤をお勧めします。
宮城峡蒸留所のモルトが主成分のブレンドだそうです。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
風邪のほうが大丈夫ですか、コメントでは少し回復なさったようですが。
鼻をやられてしまった場合、匂いが断たれてしまうので、
味もよくわからぬことになりますね、これは本当につらい。

乙山も風邪は鼻と喉で受けることが多いので、
小青龍湯を欠かさず常備しております。

仰るようにフロム・ザ・バレルは申し分のないものですが、
乙山もあれは「とっておき」のものでして、毎日のお付き合いにはできません。
気分次第でピュアモルトの赤か黒を、というのはいいアイディアですね。
御大事になさってくださいね。

No title

乙山先生

>ふだんはブラックニッカスペシャルとかG&G、または1000円程度のいいスコッチを、ソーダで割って楽しんでいます。

ほっとしました。
いまだに、それなりのウイスキーをグラスを傾けながら味わう心の余裕がありません。
早く酔って、早く飯食って、早く寝なくちゃというときは
ガブガブガブです。

でも、全日空ホテルのバーで飲んだ軽井沢は美味かった・・・・・・

No title

興味深く拝見させてもらっています。この前レッドをのんでしまいました。次はブラックを狙っています。最近ウイスキーが好きになりました。もしかして単なるアルコール好きになってしまったのかも知れませんが...(・_・;)

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
お忙しいことでしょう、早く酔って、早く飯を食って、寝る、という流れですね。
どうしてもそうなってしまうでしょうし、システムがそれを要求している。

ゆっくり酔って、酔った時間を限りなく楽しむ、
というふうな流れにはなりにくい、というか今の日本では無理でしょう。
お手本としてスペインあたりが考えられるのですが、
あまりにもかけ離れているようで現実的ではありませんね。

豊かさって何だろう、と立ち止まって考えるのにいい機会のはず、
なんですけどねデフレというやつは。
忙しいのはありがたい、というのとは別の問題かと。

〈軽井沢〉はいいウィスキーでしたね。
梅田の地下街のとあるバーで軽井沢を出しておりまして、
たまに飲むのが本当に楽しみでした。
安いのに、おっ、といいたくなるものだったのです。

某会社が買収して、今は軽井沢蒸留所が記念館のようなものになってしまいました。
これは文化の破壊でしょう。蒸留所を立ち上げるのにどれほど費用がかかることか。
そして製品になるまで、どれだけ時間のかかることか。
残念でなりません。

Re: 一生喜劇さん

一生喜劇さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
たんなるアルコール好き、ではないと思いますよ。
一生喜劇さんには日々の考察や思索がありますからね。
だけどまあ、いいではありませんか。

ニーチェも『悲劇の誕生/再生』でデュオニュソス(バッカス)を祭り上げたので
「酔っ払い哲学」とかいわれていますし、
オマル・ハイヤームの『ルバイヤート』もあるではありませんか。

あっ、だけど乙山のせいではないですよね?
煙草とか酒は自己責任でお願いします。
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只野乙山

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