地下鉄谷町九丁目駅周辺を歩く(1) グリル大悟

GrillDaigo_HamburgLunch.jpg
外で食べるとなると中華料理ばかりになってしまって、拙ウェブログを訪問なさる方々の「またか」という顔が浮かぶような気がしないでもないが、和食や洋食も好きである。とくに洋食は幼少から少年時代に大好きだった。商店と住宅が混在する町に生まれ育ったため、生家の並びに「グリル**」という洋食屋さんがあって、そこの前を通るたびにラードのいい匂いが流れてきてうっとりしたものだ。

ましてやその「グリル**」でご飯を食べるとなると嬉しくて仕方がなかった。とにかくものを知らぬ子どもにとって洋食はどこか上等かつ高級な食べ物で、秋刀魚の焼いたものとかサバを煮付けたものを日頃食べているわけだからわくわくしないわけがない。スプーンとかナイフ、フォークを使うというのもなんだか改まって行儀よくなったりしたあの頃の自分を思い出しては苦笑したくなる。

さて今回は地下鉄谷町線谷町(たにまち)九丁目駅周辺を歩いている。地下鉄の駅を出ると谷町九丁目交差点があって、ここは谷町筋と千日前通りの交差点になっており、そこそこ人通りのある場所だ。大阪在住の方はご存知だと思うが、大阪市内の南北を結ぶ道路は「筋」と呼ばれ、東西を結ぶ道は「通り」と名前が付いている。谷町九丁目から東に200mくらい歩けば上本町六丁目、近鉄上本町駅とかハイハイタウンがある。

お昼を弁当にしてもよいのだが、それは職場の状況によると思う。結局、自分のデスク周りとか控室、休憩室の空気によるということだが、そこで落ち着いて食べられぬ場合はつい外食になる。耳栓をして平然と弁当を開く、というような悟りに近い境地にたどり着くのはまだまだ先のこと、聞きたくないも話を聞きながら食事をするのは苦痛というか苦行に近い。

というわけで外をぶらぶら歩いておるわけですな。店を見つけるのが上手だと言われることがあるけれど、とにかく歩くことである。ある店で食事を済ませたら、喫茶店に入ってのんびりコーヒーを飲むというのが最上であるが、そこを缶コーヒーなんぞであっさり済ませ、後の時間は周辺をてくてく歩きまわるのだ。すると、こんな所にこんな店があったのか、という発見もあるわけです。

今回はそんなふうにして歩いて見つけた店〈グリル大悟〉にてランチ。前振りで示しておいたように洋食屋さんである。いまどき「グリル**」という名前の店は珍しいのではないかと思う。昔はそれこそ、町に必ず一、二軒はあったかと思われる「グリル**」であるが、時代の流れの中で次第になくなっていく運命にあるのではないか。ならば今のうちに食べておこうではないか。

少し早目の時間に入店したので客も少なめでのんびり座れた。外のメニューで確かめておいたAランチ(ハンバーグと目玉焼き)を注文。うっかりして店の外観写真を撮影するのを忘れてしまったが、これはいつもの只野乙山的現象と思ってください。店内は落ち着いた雰囲気で、店主=料理人が一人で調理をし、配膳などは女性の方が行うようである。

さて料理が来ましたよ。おっ、というくらい早い仕上がりですね。たぶんこれは、ハンバーグをある程度焼いておいたからではないかと思う。薄いパテなら注文が入ってから焼いても間に合うが、厚いものはフライパンで焼いた後にコンべクション・オーヴンに入れて焼きあげるのではないかと思う。その通りにやるとかなり時間がかかるので、そのあたりはさっと出せるように工夫しているのだろう。

塩とホワイトペッパーで仕上げた目玉焼きに、ドミグラスソースがかかったハンバーグ、その下にはむかし懐かしいケチャップで絡めた太めのスパゲッティが敷かれていますね。千切りキャベツ、胡瓜、トマト、ポテトサラダからなるサラダにご飯、福神漬けが添えられていて、なんと、味噌汁付きで、箸で食べるという仕様。写真にあるように、これらが弁当箱のように一つになって出てくるわけです。

これはまずまず、といったところですね。前から思っていたのは洋食屋さんで皿盛りのご飯はいただけないなあ、ということである。洋食の流儀ではプレートを手で持つ、というようなことは不作法である。かといってそれを卓に置いたまま箸とかフォークで食べると距離があり過ぎる。ご飯はやはり、飯椀を左手で持って口に近いところで運ぶのがいちばん美しいのです。

弁当仕様だと、ご飯からの距離が遠いのである程度頭を料理のほうに近付けてしまうことになるんだけど、これは和食の流儀からいえば不作法なんですね。器に口を近づけて食うのは動物のすることで、食べるときはあまり前かがみにならぬ方がいいのです。まあだけど、どうでもいいか、ってことで少し前かがみになって箸で弁当洋食に食らいつく。

ハンバーグが柔らかいですね。ハンバーグというか牛の挽き肉を100%にしてよくこね、レアで仕上げるというやり方も悪くないのだが、その場合わりといい肉を使わないとうまい具合になってくれぬ。牛肉100%にこだわらず、豚肉とか玉ねぎ、パン粉とか卵を入れて焼きあげたほうが牛100%より柔らかくなるもの。そもそも挽き肉にするのにそんないい部位を使うわけではないからなおさらのことである。

わかっているけどハンバーグは表面がかりっとしている方が好きだなあ。玉ねぎもある程度存在がわかるくらいの方がいい。柔らかくなり過ぎると、なんというかミートボールのようなものを思い出してしまって、ハンバーグではないような気がする。ここ数年、外でハンバーグを食べた記憶がないからかもしれぬが、なんかちょっと違うなあ、という気がしないでもない。

だけど全体として、これはこれでなかなかいけているのではないかと思う。お値段は830円、洋食専門店の中では安いほうになるんじゃないだろうか。何軒か洋食屋さんを見たけれど、1000円を超えるランチを出している店もわりとあるみたいだ。自分の中にある「理想のハンバーグ」と違うからといって文句を言ってはいけない。何が理想のハンバーグだ、いつもはマルシンハンバーグを焼いて食べている男が、やれ何が旨いだの、利いた風な口をたたいてはならぬのである。


【付記】
● 前かがみになってがっついていると、あなたは犬ではないのだから、と母にたしなめられたことを思い出します。子どもがどれにしようかな、と箸をとめているのはある意味ほほえましい光景ですが、それもあまりよいことではないと言っていましたね。小鉢を箸で引き寄せようものなら、それこそこっぴどく叱られたものです。切り分けられた料理のど真ん中にまず箸を付けるのもそうでした。

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No title

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

No title

>お値段は830円、洋食専門店の中では安いほうになる

かなり安いんじゃないんですか…大阪の名の知れた洋食屋さんで2000円以内でランチが済ませる店なんて滅多にないもの…ハンバーグだけで1500円。それにスープとサラダとライスがついて2500円なんてざらですもんね。それにビールの小瓶なんてつけたら3000円を越してしまう。それだったらちょっとしたイタリアンでランチコースをたのんだ方がよっぽどお得かもしれないなんて思ってしまいます。
まあ、自由軒でインディアンカレーにビールの小瓶だったら1500円以内でゆうに楽しめますがね・・・

Re: 株の初心者さん

株の初心者さん、コメントありがとうございます。
どうぞどうぞ、またいらしてくださいね!

Re: gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
なるほど大阪で名の知れた洋食屋さんをよくご存知なんですね。
仰る通りで、乙山はほとんど行きません(行けません?)が、
洋食屋さんでご飯にしてちょっとアルコールを、となるとお値段が……

そんなわけでもっぱら安めの洋食屋さんを選ぶようにしています。
難波の〈自由軒〉はいいですね。あれくらいにしてもらわないと、
という気がしないでもありませんが、たとえばタンシチューなど、
やはりそれなりの値段がするはずなので、それはそれ、とも思います。

いい店はブラウンソースとかドミグラスソースをきっちり作るのでしょうし、
スープストックも時間をかけているものと想像します。
だからまあ、高いのは当たり前なんでしょうね。

No title

 日本のマチの「伝統的な」洋食屋さんの料理は、やはり
どことなく和風なところに味がありますね。

 ぼくはフレンチのコースなんかの正式なマナーはよく知
らないから、こっちのほうがずっと気楽です。ワリバシが
ついてくるとホッとしますもんね(笑)。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですね、箸で食わせる洋食屋さん、というのがほっとします。
しかもコンソメスープではなく、味噌汁ですからね。

テーブルマナーも、何だか鬱陶しいですね。
料理そのものより、マナーのほうが幅を利かせているような、
そんな時代もあったのではないかと思います。

そういうものが「洋食」とともにあったわけで、
昔の人はあれこれ、試行錯誤なさったのでしょう。
「ご飯の皿盛り」はそれを今に伝えているのではないかと思います。

No title

乙山先生の御家庭は御母堂のしつけが厳しかったようで。
うちも割合、うるさかったです。
うちの母は、電車に乗った時に、子供が座るのを許しませんでした。
子供は半分しか払っていないのだから、大人が優先。
ガラガラになってきて、「まだ座ったらダメ?」と聞いて、ようやく許可が出るのですが
窓に向かってお座りする時は、必ず靴をぬがされました。
客がぼちぼち乗ってくると、空席があっても前を向かされ、そして立たされました。

まあ、昭和の母親はそんなかねえ。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ああ、いい話ですね!
近頃は自分が立って子どもを座らせる親が多いので、
話を伺って、そうだった、昔はそうだったな、と思い出しました。
靴を脱がさずそのまま座らせ、自分はメイクをしている人もいますね。

しつけは平仮名で書くことが多いのですが、漢字で書くと、
言葉の持つ意味がよく伝わってきますね。
「美」と「身」が合わさった字が、しつけなのです。
改めて「躾」を眺めていると、美しいふるまいを身につけるという、
広義の美学、そして道徳に通じるものだったのでしょう。

いまは、だれもしつけをすることができなくなった時代です。
しつけをする立場の人を、まずしつけなくてはなりません。

No title

記事を拝見しました。

この間からバタバタとして職場の事務机で弁当を開けるハメに・・・
聞きたくもない話が交差しておりまして、どこも同じなんだなと妙なところに感心しております。

しかし、おっしゃるように街には洋食屋が必ず一軒あったものですが、最近は珍しくなってしまいました。
地元のアーケード(死語になりつつあります)の中にあった洋食屋さんが店を閉め、中華屋さんが地上げで更地になり、行くところが徐々に減って行ってるのが現状です。
地方に二度と光が当たることはないのかなぁと国士気取りでつぶやいたりしてますが・・・

街に行けばまだそんな風景が残っているのが羨ましいです。

Re: Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
風邪を召されたそうで、お身体のほうは大丈夫でしょうか?
そちらへのコメントなども控えていたのですが……

本当にデスク周り、控室、休憩室など、どこへ行っても
だめな時というのはあるものでして、どうしても外へ行くことに。
それを見込んでなのか、厚生関係にあまり力を入れていない企業がありますね。

洋食屋さん、昔はありましたよね。それが今では探していくほどになりました。
時代の流れとはいえ、少しさみしいものがありますよ。
今後、小規模の商店は軒並み潰れていき、資本力のある大店(おおだな)だけが
幅を利かせることになっていくでしょうね。

大阪でもその傾向はありますが、あまりにも多数の小規模店の集合。
それが大阪なのでしょう。もう少しこのまま行きそうな雰囲気もあります。
規模の小さな町は、ただのベッドタウンとなっていくしかないのかもしれません。
お身体お大事になさってくださいね。

No title

いつも、拝見させて頂いておりますが、只野乙山さんの外食は、とても美味しそうなのに、とてもリーズナブルな値段のものばかりですね!?
見た目の豪華さと、値段の安さのギャップに驚きます。
珍しい味付けも良いですが、素朴で慣れ親しんだ味は、ホットしますね。
足を運んで、色々とご覧になって、見つけられるのでしょうね。
その様な情緒のある記事を拝見出来て楽しいです。

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
まあ大阪ですからね、場所によってはもっと安くてうまいものもあるんです。
500円とか600円で「えっ」と驚く(地元の人はそれが当たり前ですが)ランチが、
大阪にはあるわけで、それは大阪ならではということでしょう。

本当は弁当なんかでいきたいところですけど、
結局は職場の環境によるということなんです。
食事くらいゆっくりできるようになりたいものですね。
いくら平均でお金持ちとか裕福だとか言われても、
ちっとも実感がありません。
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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