ピー・ウィー・ラッセル 『ウェアリー・ブルース』 

Pee Wee Russell / Weary Blues (Quadromania 4CD)

PeeWeeRussell_WearyBlues.jpg
ジャズのクラリネット奏者といえば古いところでシドニー・ベシェやジョニー・ドッズ、スウィング時代のベニー・グッドマンやアーティ・ショウ、ウディ・ハーマンなどが思い浮かぶ。モダン・ジャズでもエリック・ドルフィー(バス・クラリネット)やローランド・カークの名前が出てくるが、音圧というか音の大きさでやはりトランペットとかサキソフォンに負けてしまうのか、現代のジャズではあまり見かけなくなってしまった楽器と言える。

古いジャズをYouTubeで聴いていると、わりとよく見かけるちょっと格好いいクラリネット奏者がいて、コールマン・ホーキンスやレスター・ヤングらとセッションしている映像だったと思うが彼らに負けじとクラリネットを吹いているのだ。無理し過ぎてちょっと割れたような音を出しているが、本来の性質からするとやはりグッドマンとかアーティ・ショウのようにスマートにやるのがいちばんいいのではないかと思う。

そのクラリネット奏者がピー・ウィー・ラッセルというのを知って、早速ネット通販で何点かまとめて買ってみた。その中から今回は例のMembranの4CDセット「クアドロマニア」を聴いてみた。たしかMembranはドイツを本拠地にしていると思うのだが、ジャケットを見ると日本語で「クアドロマニア」と書いてある。意図は不明だが主な購買層(ターゲット?)の中に日本も含まれているというわけだろうか。

外国製のCDは粗雑な作りになっているものが多く、この4CDセットもディスクを留める部分が初めから崩壊していて使いものにならず、すぐさま「フラッシュ・ディスク・ランチ」に入れ替えねばならなかった。4枚組CDのうち1枚目から3枚目までは1930~40年代までのSP時代の音源で3分間以内の曲がぎっしり詰まっている。4枚目は1960年代の録音で、わりと一曲が長めの構成になっている。

演奏メンバーと録音日時が記載されているのは同社の「ドキュメント」シリーズとは違うところのようである。メンバーを見ると、どうやら4枚目を除くほとんどがエディ・コンドンと一緒にやっていた時代の音源のようだ。ううむ、エディ・コンドン名義だと売れないと踏んだのだろうか、そのあたりは不明だがエディ・コンドンのファンはこのCDセットは「買い」ではないかと思う。

もっとも、例の奇妙な四弦ギターかバンジョーをアコースティックで演奏しているのでほとんど聞こえないのだ。これは他のエディ・コンドン名義の音源でもまったく同じことで、LPやステレオの時代になってもエディ・コンドンは一切ソロをとらないという自分のスタイルを貫き通した。カウント・ベイシー楽団のフレディ・グリーン以上に、というかおそらくジャズ史上で最も目立たないであろうギタリスト、それがエディ・コンドンなのである。

だから構成はトランペットまたはコルネット、トロンボーン、クラリネット(ピー・ウィー・ラッセル)の3管にピアノ、ベース、ドラム、そしてギター(エディ・コンドン)となっており、ここにサキソフォン(バド・フリーマン)が加わることもある。録音はほとんどすべてニューヨークで行われているようだが、演奏はディキシーランド・ジャズを継承しながらどこか洗練された感じのシカゴ・スタイルのジャズ。

1920年代初頭にニューオーリンズの歓楽街ストーリーヴィルが閉鎖されたため、ジャズメンたちはシカゴやニューヨーク、カンザスシティなどへ流れて行き、シカゴで彼はレッド・ニコルス(tp)やビックス・バイダーベック(co)と活動していたが、そのうちエディ・コンドンと一緒にやるようになったようである。YouTubeでレッド・ニコルスの映像があり、そこでは若き日のヴォーカルをとるエディ・コンドンやピー・ウィー・ラッセルを見ることができる。

一応ピー・ウィー・ラッセルの名前で販売されている音源だけど、CD1~3枚目は彼のリーダーセッションというわけではなくて、彼のクラリネットを堪能したい向きにはちょっと違うかなあ、という感じがしないわけでもない。そもそもエディ・コンドンのバンドではボスが一切ソロをとらぬ人なのか各奏者のソロはだいたい控えめになっている。私(乙山)はディキシーランド・ジャズとかシカゴ・ジャズが好きなので、ただ流しているだけでもじゅうぶん楽しい。

「ザッツ・ア・プレンティ」なんて現代では演奏されることもほとんどないようだけど、このコンピレーションには2曲収録されている。ボビー・ハケット(co)やジャック・ティーガーデン(tb)、そしてファッツ・ウォーラー(p)なども参加している曲もある。バド・フリーマンのテナーサックスは、当時すでに登場していたレスター・ヤングを思わせるような、よれっとした演奏を聴かせてくれる場面もあって思わず笑ってしまいそうになる。

CD4枚目は1960年代になって昔のスウィング仲間が集まり、楽しくセッションした雰囲気が伝わってくる。メンバーはピー・ウィー・ラッセル(cl)、コールマン・ホーキンス(ts)、ボブ・ブルックマイヤー(tb)、エメット・ベリー(tp)、ナット・ピアス(p)、ミルト・ヒントン(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)ら。こちらの方が円熟して落ち着いた雰囲気のジャズ、そしてピー・ウィー・ラッセルのクラリネットを楽しめるのではないかと思う。


【付記】
● 古いジャズが好きな人間にとって、ちょっと嬉しい顔ぶれと価格なのが「クアドロマニア」と言えるでしょう。LP以前の古い音源となると、なかなか聴いてみることのできぬ今、まとめて廉価で古い音源を入手できるのですから、こんないい機会は他にないと言っても言い過ぎではないのかもしれません。

Membranの音源を何度か正規音源と比較視聴してみましたが、ほとんど(いやまったく)わからなかったことを報告しておきます。と言っても、報告者が只野乙山ですから、あまりあてにならぬことは言うまでもありませんが。

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