『パラダイン夫人の恋』 (1947)

『パラダイン夫人の恋』 アメリカ (1947)

ThaParadineCase_01.jpg
原題:The Paradine Case
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ、アン・トッド、ルイ・ジュールダンほか


映画の記事は久しぶりで、見ると昨年(2012年)の四月以来ということになるようだ。映画の視聴をノート型コンピューターで行っており、いつだったかレンタル店で借りてきたDVDを再生しようとしたところ不具合が生じて再生できなかった。結局、見ることもないままお金だけ払ったDVDを、憤怒の炎を胸に秘めつつも努めて冷静にレンタル店に返却したことがあった。

これは違法コピーがPCを使って行われることから、再生時に厳しいコピー制限をかけてあるDVDに当たってしまったからだそうで、購入したDVDとか著作権が切れたものを再生すると何の問題もないのだ。レンタル店側もPCでの再生は保証していない旨を書いてあるそうで、ちゃんと再生したければ専用のDVDプレーヤーを買え、ということなんだろう。

TheParadineCase_05.jpgだがあまり大きな声では言えないが、我が家にはテレビ受像機なるものが存在していないので、DVDプレーヤーだけ購入しても意味がない。テレビと一緒にDVDプレーヤーを購入しないと、映画を楽しめないわけであるが、それだけのためにわざわざたいして必要もないものを購入するのも業腹である。ただでさえ臥薪嘗胆(忍耐、我慢)が必要な時なのだから、映画から遠のくのも仕方がないと思っている。

今回は以前まとめてパブリック・ドメイン作品を購入したときのもので『パラダイン夫人の恋』(1947年、アメリカ)を見た。ヒッチコックものでグレゴリー・ペックが出ているなということで手にしたので、たぶん以前に見たことはないと思う。映画の舞台はロンドン、冒頭からいきなりパラダイン夫人(アリダ・ヴァリ)の住む家に警察がやって来て、彼女を逮捕する。

TheParadineCase_02.jpg容疑はパラダイン夫人が盲目の夫・パラダイン大佐を毒殺したというもので、彼女を弁護を担当することになった弁護士アンソニー(グレゴリー・ペック)が面会するのだが、彼はパラダイン夫人のえもいえぬ魅力に次第に惹かれていく。どうしても夫人が夫を毒殺したと考えられないアンソニーは、屋敷の中のだれかがやったに違いないという路線で弁護を進めていく。

パラダイン夫人役のアリダ・ヴァリといえば、あの『第三の男』(1949)でアンナ役を演じていた人ですね。この映画の中では留置所に面会に来る弁護士アンソニーに会って話をするだけなんだけど、独特の存在感がある。何事にも動じぬ気品を保った役柄にぴったりの、意志の強い顔立ちの女性。一方、アンソニーの妻を演じるのはアン・トッドで、夫がパラダイン夫人に惹かれていくのを知りながらなんとか支えていこうとする可憐な役回り。

TheParadineCase_04.jpgアンソニーは彼女以外のだれかが真犯人ではないかと考えて独自に捜査を始め、カンバーランドのパラダイン屋敷に赴く。そこで出会ったのが屋敷住み込みの使用人アンドレ・ラトゥール(ルイ・ジュールダン)だった。ラトゥールはパラダイン大佐に長年仕えた青年で、パラダイン夫人を悪魔呼ばわりし、あなたは何も知らないだけだ、とアンソニーに言い放つ。

ラトゥールが怪しいと睨んだアンソニーだが、パラダイン夫人はラトゥールに罪を着せるのはやめてほしい、と言う。どうしてもパラダイン夫人を救いたい一心で弁護を進めるアンソニーは、証人として出廷したラトゥールを問い詰め、きわどい立場に追い込んでしまう。そしてとうとう、ラトゥールが自殺してしまった、という知らせが法廷内に届き、口を閉ざしていたパラダイン夫人が真実を語り始める。

TheParadineCase_06.jpgヒッチコック流の心理的な揺さぶりというか宙づり状態(サスペンド)があまり感じられないためだろうか、それと知らされなければヒッチコック監督の映画であるかどうか、わからないのではないか。そのわりに今回、ヒッチコックがどこに出てきたのか、なんとなくわかってしまいましたよ。たぶんですが、アンソニーがパラダイン屋敷のある町の駅を出てきたとき、じゃないかと思う。まあそれはともかく、一風変わった(?)ヒッチコック映画として興味深いものがあると思う。


【付記】
● いわゆる法廷映画ということになるのですが、映画の中では裁判官や弁護士はみなカツラ(ウィッグ)を付けているのがなんだか面白いですね。法廷でカツラを付けるのは英国では伝統的慣習になっていて、つい最近ようやく、多少緩和された模様です。たしかイギリス統治時代の香港の法廷でもそうだったという話を聞いたことがあります。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

こんにちは。
知りませんでした。レンタルビデオ屋さんで借りたDVDは、パソコンで見る事が出来ない映画もあるのですね。
面倒な世の中ですね。

「パラダイン夫人の恋」はとても興味深いですね。
法廷ものは、好きです。

イギリスの法廷では、カツラが主流なんですね。
カツラは、正装の一つだったのでしょうか?より有利な判決への縁起かつぎでしょうか?ラッキーアイテム?

Re: かえるママ21さん

かえるママさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうなんですよ、レンタルものが全部見られないわけではないのですが、
一部コピー制御のきついDVDがあるようです。
せっかくみようと思っていたのに見れなくて、本当にがっかりですよ。

これは古い映画(パブリック・ドメイン)ですから、ひょっとしたら
YouTubeあたりでも見られるかもしれませんよ。
英国は今でも、正式にはカツラを使っていて、民事レベルの軽い(?)訴訟は
カツラなしでもよいことになったみたいです。

バッハとかモーツァルトって、肖像画はカツラでしょう?
あの時代からずっと伝統を引き継いでいるわけですから、
英国って本当に……

No title

僕は、この映画の一年前、
1946年のアメリカ映画『素晴らしき哉、人生!』が好きです。
監督はフランク・キャプラ。
ヒッチ・コックほど、シリアスではありません。楽天的で善人的です。

Re: 根岸冬生さん

根岸さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
その映画見たことないと思います。
銀幕映画は大人がテレビ放映されていたものを見ているのに
なんとなく付き合って見ていただけで、はっきり覚えているものはありません。

近所のスーパーマーケットなんかが、たまにCDとかDVDのセールをやっていて、
そのときにまとめ買いしたものを「映画」のカテゴリーで紹介しているのです。
もうそろそろ全部見てしまったので、セールをしてくれないかなあと待っています。
そのときは絶対「買い」ですね! 楽しみです。

プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/11 (6)

2017/10 (9)

2017/09 (9)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)