レスター・ヤング 『レスター・ヤング ケン・バーンズ・ジャズ』

Lester Young / Lester Young : Ken Burns Jazz

LesterYoungKenBurnsJazz.jpg
1. Oh, Lady, Be Good!
2. Every Tub (with Count Basie & His Orchestra)
3. Honeysuckle Rose (with Count Basie & His Orchestra)
4. Pagin' The Devil (with the Kansas City Six)
5. A Sailboat In The Moonlight (with Billie Holiday & Her Orchestra)
6. He's Funny That Way (with Billie Holiday & Her Orchestra)
7. Getting Some Fun Out Of Life (with Billie Holiday & Her Orchestra)
8. If Dreams Come True (with Teddy Wilson & His Orchestra)
9. Taxi War Dance (with Count Basie & His Orchestra)
10. Twelfth Street Rag (with Count Basie & His Orchestra)
11. Clap Hands, Here Comes Charlie (with Count Basie & His Orchestra)
12. Lester Leaps In (with Count Basie's Kansas City Seven)
13. Tickle Toe (with Count Basie & His Orchestra)
14. Sometimes I'm Happy
15. I've Found A New Baby
16. D.B. Blues
17. Jumpin' With Smyphony Sid
18. This Year's Kisses
19. Polka Dots and Moonbeams (with Count Basie & His Orchestra)


もし初めてレスター・ヤングを聴くとしたらどのCDを選ぶべきか? かなりマイナーな話題かもしれないが、AmazonとかHMVなどで検索をかけると、たくさん出てくるだけに難しいところだろう。村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ』(2003、新潮文庫)のレスター・ヤングの個所で紹介されている『プレズ・アンド・テディ』(1956)などがとりあえず好適なのかもしれない。

たしかにそこでは晩年のレスターのゆったり落ち着いた演奏を堪能できるが、1930年代から晩年までの網羅的なコンピレーション盤としてお勧めできるのが『レスター・ヤング ケン・バーンズ・ジャズ』ではないかと思う。これはケン・バーンズという人がかつて『ジャズ』という膨大なドキュメンタリーを制作した際の副産物だと思うが、きっちり要所を押さえたコンピレーションCDになっているのではないだろうか。

付属のブックレットを見ると、録音年代、演奏メンバー、レコード会社とレーベルがきちんと書かれていて、音源も確かなものだと思う。(1~4)は1930年代のオールド・ベイシー楽団時代の音源で、多少ノイズが目立つけれどいいスウィング・ジャズを堪能できる。ベイシー楽団を聴いていると、ソロの合間にリズム隊だけで進む箇所がわりとたくさん出てくるのだが、それが私(乙山)は好きだ。

カウント・ベイシー(p)、ウォルター・ペイジ(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)、そしてフレディ・グリーン(g)というメンバーがそれなんだけど、これはオール・アメリカン・リズム・セクションと呼ばれていたのはご存知の方も多いと思う。この4人にレスター・ヤング、バック・クレイトンほかを加えたのがカンザス・シティ・セヴン(またはシックス)というらしい。

(5~8)はビリー・ホリデイとの共演。ホリデイのヴォーカルの合間にさらっと入るレスターのソロが何ともいえず軽やかでいい雰囲気だ。いつも演奏する曲の歌詞を念頭に入れて吹いていたというレスターだからこそ、とも言えるフレーズではないかと思う。ジャズの中では曲のコード進行だけをなぞって高度なアドリブにするやり方もあるけれど、あまり高度になり過ぎると原曲がなんだったのかわからないこともあるくらいで、その意味でレスターの演奏は原曲に寄り添ったものだと思う。

(9~14)は1939~43年のオールド・ベイシー楽団とレスターの最後の演奏。1930年代後半のレスターの演奏がベストだという人もいるようで、なるほど(12)の「レスター・リープス・イン」を聴いていると、アップテンポなのにレスターの演奏はじつにリラックスしているように聞こえ、流れるようにフレーズが次々と飛び出してくるのがわかる。引き出しが豊富というのかアイディアにあふれていると言えばいいのか、とにかくよく続けてフレーズが出てくるなあと感心するほかない。

(15)から後はレスターの兵役後の録音。アラジン・レコードでのセッション、ノーマン・グランツと組んだヴァーヴ音源などからピックアップされている。晩年のレスターの演奏はより柔らかく抒情性が増すようになって、流れるようなフレーズはないけれど一音一吹きを大切に慈しむかのような演奏である。そのいい例が(18)だろう。この演奏メンバーはあの『プレズ・アンド・テディ』とほぼ同じで、『ジャズ・ジャイアンツ '56』から収録されている。

テディ・ウィルソンのエレガントなピアノに支えられてレスターが吹くソロはなんだか歌っているようで、だからかもしれないが真っ直ぐ心に入ってくるように思う。ジャズを聴き始めたころ、早いうちにレスター・ヤングを聴いて本当に良かったと思う。あまりに高度なモダン・ジャズを無理して聴かなくてよかった、ということなんだけど、晩年のレスターはビ・バップを思わせるような演奏もあるんですよ。


≪ 『プレズ&テディ』へ  『ジャズ・ジャイアンツ'56』へ ≫


【付記】
● 「ケン・バーンズ・ジャズ」には他にもたくさんのジャズ・ミュージシャンのコンピレーションCDがあるのですが、入手のほうはちょっと難しいかもしれません。これらCDが出たときにすかさず買っておけばよかった、と今になって後悔しています。


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No title

乙山様、こんばんは。

Lester Young は好きなテナー・マンの一人です。リリカルな歌声がたまりません。それにあの首の角度がなんともいえないですね。(笑)

Ken Burns のフィルム・シリーズは、大変に勉強になりました。このDVDシリーズを先に観ているので私もCDの方は気になるものだけを購入しましたが、実はこのシリーズ(全巻10本ほどのDVD)は図書館にあったのです。もう10年も前ですが発売と同時くらいに図書館で購入されていたので飛び上がってしまいました。これは本当に内容も良く観ていて楽しくジャズの歴史を学べる教材でもあります。機会があればご観覧ください。

この時代のミュージシャンは、早くに亡くなってしまった方が多すぎですね。彼ももう少し長生きしていたらと思います・・・が先週いったコンサートの主役はなんと85歳のトランペッターでした!

今年は、古い盤を掘り返す作業をしようと思っています。



Re: まん丸クミさん

まん丸クミさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
レスター・ヤングは何とも言えぬ雰囲気がありますね!
乙山はもっぱら「雰囲気派」ですので、なぜかピタッとくる感じなんです。

「ケン・バーンズ・ジャズ」が製作されて、日本でも紹介されたのが、
ちょうど10年くらい前だったですね。その後、CDも発売されました。
本当、全部買ってもいいくらいのシリーズでしたね。

古いほうのジャズに重点が置かれているあたり、とても気になっています。
カナダはモントリオール(モンレアル)のジャズ・フェスティバルがあるなど、
ジャズに力を入れているんですね。図書館にもあって当然かな、という感じです。

ダイアナ・クラールとかソフィ・ミルマンもそうですし、
カナダ系のジャズといえばかなりの数になるのではないですか。
たしか奨励基金みたいなものもあったのではないかと……

> この時代のミュージシャンは、早くに亡くなってしまった方が多すぎですね。彼ももう少し長生きしていたらと思います・・・が先週いったコンサートの主役はなんと85歳のトランペッターでした!
>
> 今年は、古い盤を掘り返す作業をしようと思っています。

そうですね、ジョン・コルトレーンにしてもチャーリー・パーカーにしても、
ちょっと早く亡くなりすぎ、という感じですよね。
それにしてはソニー・ロリンズはすごいなあ。
ジャズの古い音源を掘り返すというのはとても大事だと思います。

何かいいのがありましたらアップして下さいね。
乙山もわりと古い音源を好んで聴いています。

No title

こんばんは、乙山さん。

まん丸クミさんが言われるように、レスターは首をかなり傾けていますね。
仕事柄首が悪かったのかななんて思います。
首は、脳に近いですから首の筋肉が緊張が強すぎるのは良くないです。

Re: バランス屋さん

バランス屋さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
レスターが首を傾けるのは、古い時代の演奏ブースが狭かったため、
という俗説があります。後期になってからも、座って吹いているときなど、
レスターは首を傾けていますから、癖になっていたのかもしれませんね。

No title

こんにちは、乙山さん。
なるほどそういう説があったのですか。
どちらにしても、首を傾ける癖があるのは、首の調子があまり良くなかったということでしょう。

ところでジャズミュージシャンの癖で面白いと言っていいかわかりませんが
演奏中に唸り声をあげる人がいますね。
リズムを取るためにうなり声を上げているのでしょうか?
有名なところでは、キースジャレット、オスカーピーターソン、バドパウエル、アートブレーキー、エルビンジョーンズなどがいますが、特にキースジャレットは半端じゃないですね。
演奏の最初から最後まで唸っています。
あの唸り声がいやでキースジャレットがダメだっていう人もいるようです。
もっとも癖も個性だと言ってしまえば、それまでですが。


Re: バランス屋さん

バランス屋さん、こんにちは! 再コメントありがとうございます。
仰る通り、ジャズ奏者でうなり声をあげる人は多いですね。
キース・ジャレットのソロを聴けば、たしかにうなっていますねえ!
あれはメロディを口ずさんでいるんだと思います。
ドラマーの場合は「合いの手」とでもいえばいいんでしょうかね。

ジャズだけじゃないんですよ、クラシックでも多いんです。
ご存知かと思いますが、グレン・グールドも相当口ずさんでいます。
最初に聴いたとき、幽霊でもいるのかと思ったくらいです。
パブロ・カザルスもかなり弾きながら歌って(?)いますね。

No title

こんばんは、乙山さん。
キースは今まであまり聴いたことはなかったのですが
じっくり聴くといいですね。
特にスタンダードなどは。
しかし、体を動かしたり、鍵盤から手を離してピアノの中を叩いてみたりと忙しいです。
声を出すのも、唸り声というよりか奇声を発する感じです。
体を動かすのは、モンクほどではないですが。

クラッシックは、どちらかと言うとかしこまって演奏しているというイメージがあったのですが
声を出しながら演奏する奏者が多いというのは意外でした。


Re: バランス屋さん

バランス屋さん、コメントありがとうございます。
キース・ジャレットはソロしか聴いたことがなく、
ピアノ・トリオのほうを聴いてみようと思っています。
それこそ、スタンダードな演奏を聴いてみたいですね。

グレン・グールドの「歌い」は有名だと思います。
どれも歌っているわけではありませんが、
後期というか晩年のものには多いようですね。
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只野乙山

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