キング・クリムゾン 『リザード』 (1970)

King Crimson / Lizard (1970)

KingCrimson_Lizard.jpg
01. Cirkus (including Entry Of The Chameleons)
02. Indoor Games
03. Happy Family
04. Lady Of The Dancing Water
05. Lizard: Prince Rupert Awakes / Bolero - The Peacock's Tale / The Battle Of Glass Tears(including Dawn Song, Last Skirmish, Prince Rupert's Lament) / Big Top



個人的には少しも変だとは思わないけれど一般的にはやはり変だと認識されているらしいプログレ(プログレッシヴ・ロック)の記事ばかり書いている。自分でもどうかな、とは思わぬでもないが、まあいいか、と開き直ることにしよう。料理や酒の記事で訪問して下さった方々にはなんだか申し訳ないのだが、今後もっと変な音楽(たとえばフランク・ザッパ、ヘンリー・カウとかジョン・ゾーンなど)が登場するかもしれませんのでご注意を。ていうか、スルーしてくださいね。

というわけで言い訳はたっぷりしておいたので思う存分(?)プログレ三昧といかせてもらおう。キング・クリムゾン『リザード』(1970)は、前二作からの流れや印象を払拭した、いわば転回点を明確に示したものとなっている。まるで違うグループの演奏みたいに仕上がっているためか、『リザード』は好みがはっきり分かれてしまうようである。「こんなのはクリムゾンではない」と「これこそクリムゾンだ」という、ファンの意見の極端な分かれようが興味深いところだ。

この時期のラインナップはロバート・フリップ(g, mellotron)、ゴードン・ハスケル(b, vo)、メル・コリンズ(s, fl)、アンディ・マクロック(ds)、そしてピート・シンフィールド(lyrics)。イエスのジョン・アンダーソンがヴォーカルで、その他にキース・ティペット・グループがゲスト参加して録音されている。

(1)の深いエフェクトがかかったささやくようなヴォーカルの導入から、破壊的ともいえるメロトロンで衝撃を与えるあたりにクリムゾンらしさが表れている。『ポセイドン』でもそうだったけれどフリップのアコースティック・ギターについ耳を奪われていると、今度は澄んだ音のメロトロンを背景に夢見るようなサキソフォンのソロが舞う。このあたりの音作りは本当に巧いなあと何度聴いても感心する。

スネアが軽いですね。アンディ・マクロックのドラミングは、なんでそんな裏拍子をとるんだ、とか、なんでそんなに手数が多いんだ、と言いたくなるのだが、おそらくこれは主にフリップの指示によるものだと想像する。マクロックのスティックさばきはじつに繊細で、それだけをつい聴き込んでしまうほどなんだけど、改めて聴き直してみるとビートというかノリ、あるいはグルーヴ感にいささか欠けるところがあって、それが後のイアン・ウォレスへの交代劇へとつながったのではないかと想像する。

(2)はヴォーカル・パートの後に各メンバーのインプロヴィゼーションが展開するのだが、フリップのギターもメル・コリンズのサックスも控えめだなあという感じがする。ここはもっとぐいぐい引っ張っていくタイプのソロ奏者が欲しいところだ。全然違うタイプの曲のようだけど、初期の「ゲット・バイ・ベアリングス」と同じ構造の曲と言えるだろう。

ヴォーカル・パートの後で遊び(?)の即興演奏を挟み込み、もう一度ヴォーカル・パートでしめるというスタイルがお好みなんだろう。まあだけど、そんなことを言ったら「スキツォイド・マン」も後の「イージー・マネー」「スターレス」もみんなそうなんですけどね。かなりジャズよりになっているのはキース・ティペットのプロジェクトへの協力をはじめ、英国の一部で盛り上がっていたジャズとロックの歩み寄りを反映しているのだろうか。

(3)ではキース・ティペット・グループが絡んできて、途中の即興バートはもうジャズである。キース・ティペットのヴォーカル伴奏の音の入れ方というか拍子の取り方がジャズなので、たとえば同じピアノでもビリー・ジョエルとかエルトン・ジョンだと決してこういうふうにはならないだろう。いかにジャズっぽいとはいえ、通常ジャズで行われるジャム・セッションとは違って、メンバーが各ブースで少しずつ録音したものを後に編集するという方法だったようである。

(4)はメル・コリンズのフルートが素晴らしい。サックスといいフルートといい、前任者のイアン・マクドナルドに負けぬ演奏を見せている。ゴードン・ハスケルのバリトン・ヴォイスはセクシーな大人声で、ドラムが一切入らぬ静かな曲に合っているように思う。フリップもアコースティック・ギターを弾いていて、これがまた味わい深いのだ。

(5)はLPアルバムのB面すべてを使った組曲。「ルパート王子のめざめ」ではイエスのジョン・アンダーソンがヴォーカルをとっているが、この曲想にはベストの選択だろう。続く「ボレロ」ではアンディ・マクロックがスネアで正確なリズムを刻む上にオーボエが絡むのだが、このオーボエが美しいですね。作曲者としてのフリップもなかなかのもんだと感心する部分。「ボレロ」の後は人によってはうっとうしいと思うかもしれない。

フリップ公認の唯一のキング・クリムゾン本(?)である、シド・スミス『クリムゾンキングの宮殿~風に語りて』(2007年、ストレンジ・デイズ)によれば、フリップ本人は『リザード』をあまり高く評価していないという。クリムゾンのクロニクル的コンピレーションCDに収録されることがないのはそのためだろうか。だけど私(乙山)は個人的に『リザード』が大好きで、一時期よくこればかり繰り返して聴いていたように覚えている。


≪ 『ポセイドン』へ  『アイランズ』へ ≫

【付記】
● 今回聴いたのは『30周年記念エディション』の輸入盤です。1999年のリマスターらしく、例の低い録音レベルは多少改善されている(?)ように思えました。聴くところによると、『40周年記念エディション』はたいへんよい音である、ということですが、5chの再生にはあまり興味がわかず、手を出すのを控えました。

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No title

> 料理や酒の記事で訪問して下さった方々にはなんだか申し訳ないのだが

 そんなことはけっしてありませんから、どうかご安心ください。

 ブログを含め、ウェブサイトのいいところは、もしかしたらどこかにいるかも
しれない読者に向かって文章を書けるということだと思うのです。一文にも
ならないかわりに、売れ行きを意識したプロにはなかなか書けぬ文章を発
表できるということには、おおげさにいえば、人類史上革命的な意義があ
ると信じます。

 ぼくもレスはできないながら、たまには乙山さんがお書きになったアーテ
ィストの演奏を YouTube で聞いてみることもあるんですよ。

Re: 薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
共通の感覚というか、ああこれならみんなが、という部分で、
書けたらな、などと思うのですが、拙ウェブログは、
「好きなこと」を「勝手に」という、あるかなきかの主義を、通させてもらっています。

音楽といってもいろいろですからね。
ですが、薄氷堂さんに改めて仰って頂き、
なんだか少し、肩の力が抜けたような気もいたします。

このような記事は、そのときはだめかもしれませんが、
時間を経て、じわじわと、見てくださる方もいらっしゃるのでは、
などと都合のいいように考えることにします。

個人的にですが、変な音楽、わりと好きなんですよ!
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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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