0.4W電池式アンプ 完成編

400mW_Amplifier_Bottom01.jpg
この男(只野乙山)のいったいどこにそのような意地と底力が潜んでいたのであろう、もしそれの百万分の一でも仕事に傾注することができたなら、今のようなうだつの上がらぬ体たらくにはなっていなかっただろうに、などと書きたくなるほどの張り切りぶりで、いよいよ「0.4W電池式アンプ 完成編」である。

ケースにゴム足を付ける。これのために3.2mmの穴をあけ、同時にアンプユニットを取り付けるための金属スペーサー用の穴もあける。写真一枚目はゴム足を取り付けてみたところで、取り付けた後になってからもう少し内側に入れておくんだったな、と思った。斜め上から見たときに少しゴム足が見えてしまうわけで、たんに見た目の問題だけなんだけど、こういう失敗は常にあるものだ。

400mW_Amplifier_Bottom02.jpg道具や工具にある程度精通してくると、「皿ビス用のザグリ加工」などというおよそ日常生活にはまったく必要のないことまでできるようになる。写真二枚目をご覧になると、ふつうのナベと呼ばれるビスではなく、皿ビスを使っているのがおわかりになると思う。こうすると、ケース表面とビスを面一(ツライチ)に仕上げることができる。

フロントとバックパネルの塗装に入る。缶入りスプレー塗料を吹き付けるだけだが、その前にもともとあった表面をサンドペーパーでこすって地金を出しておく。その後丁寧に汚れをふき取り、できればアルコールなどでしっかり地金を拭いておければ完璧だ。よく晴れた日を見計らって塗装することをお勧めする。仕事で塗装する人は別として、素人の場合はできるだけ日当たりがよく空気が乾燥している日に塗装すると乾きが早く、仕上がりも美しい。

400mW_Amplifier_Painting.jpg写真三枚目は缶入りスプレー塗料を吹き終わったところである。「ハンマートーン仕上げ」というものを使っているが、フロントパネルよりバックパネルのほうがハンマートーンらしく仕上がっているのが見える。一般には下地塗装を施したほうがいいのだが、この塗料はサーフェーサーなど下地塗装施すを必要がない、とスプレー缶の裏側に書いてあり、本塗装も重ね塗りせずに一発で仕上げたほうが綺麗に仕上がるようだ。

外装部品のすべての仕込みが終わったら、いよいよケースに部品を取り付け、配線作業に入る。配線材が長すぎず短すぎないように注意してカットし、はんだ付けをしていく。別にそうしないといけない決まりはないわけだが、今回はいちばん初めにDC入力端子のプラス側から始め、そしていちばん最後にDC端子のマイナス側にリターンをつなぐようにした。電気がそこから入って、最後にそこに戻って行く経路をイメージできたらOKだ。

400mW_Amplifier_InnerConstraction.jpg注意すべき点はとくにないけれど、これはキットと違ってフリースクラッチビルドなので、うっかり配線ミスをしてしまうのだけは避けたいものだ。ただ、ボリュームとスイッチはしっかりケースに接地するようにした方がよい。これが浮いていると、金属ノブなどを使った場合、ボリュームノブに手を触れるだけでノイズが乗ってしまうことがまれにある。

そこまですることはないと思うが、本機では接地(アース)回路を一点にまとめ、それを菊ワッシャーと卵ラグを介してケースに接地するようにした。そのポイントとボリュームのシャフトやスイッチノブ、入出力端子のマイナス側すべてに導通があるか、テスターで確認した。ただしこのパワーIC(HT82V739)は出力段がBTL回路になっているようで、スピーカー端子のマイナス側を接地してはいけない。これがいちばんの注意点といえるかもしれない。

400mW_Amplifier_FrontView.jpg写真四枚目はすべての配線を終え、ケースを組み立てるだけになった状態。真空管回路と違って磁束漏洩がなく、半導体ディバイスは誘導ノイズにも強いためシールド線は一切使わず、ふつうの配線材だけで構成した。発光ダイオード(LED)のところに抵抗がシリーズ(直列)で使われていて見苦しいが、これはACアダプターと併用することを考えて予定変更したため、手元にある抵抗を使ったことによる。まさか1/4Wカーボン抵抗1本=5円のために交通費(往復約1000円)を払って日本橋まで行くわけにはいかんでしょう。

この状態でテストしてみるのがいいのかもしれないが、もう面倒くさいので組み上げてしまった。フロントパネル左側のスイッチはミュートで、これはデジットのウェブログに掲載されていた回路を参考にさせていただいた。回路の通りでばっちりミュート回路として機能していることを報告しておきます。ミュートがあると本当に便利で、iPodをつないだときや電源スイッチのオン/オフのときもノイズが出るのを抑えることができ、ミュートのオン/オフの際も一切ノイズが出ないのには感心した。

400mW_Amplifier_BackView.jpg一発で決まるというのは本当に気持ちがいいものですね。ここ数日間の疲労が癒され、ビールが格段に旨いことこの上ない。正直に告白すると、アンプユニットを製作するときに裏返して配線するのだが、うっかりピン配列を間違えてしまったんである。気が付いてすぐに訂正したけれど、それを見逃すと音が出ないどころか、下手をすれば部品を破壊してしまうこともあるのが電子工作というものである。

バックパネルの写真をご覧になると、中央のスピーカー端子が仮組の時とは少し違って見えることに気づいた方もいらっしゃるかもしれない。これはバナナジャックを表面にあまり出ないようにしたもので、私はたいていこの使い方をしている。こうして出来上がったものを改めて見ると、バックパネルのほうが塗装がうまくいっていることがはっきりわかる。だからといって、商品ではあるまいしもう直しはしない。

最後の写真は電池ボックス(単3×3)をアンプの上に載せたもの。併用スピーカーはアンソニー・ギャロのマイクロサテライトにした。これは出力音圧レベルが89dB/W/mとこのクラスの小型スピーカーの中では能率が高いほうだと言える。ノート型コンピューターのライン出力ではけっこう大きな音が出るのに驚く。さすがにiPodでは出力が低めなのでボリュームノブは2時を超えてしまったが、深夜だったらこんなものでいいんじゃないか。

400mW_Amplifier_FrontViewDark.jpgコンピューターの電源を落とすと本当に静かで、そんなときはiPodと本機によるフルバッテリーオペレーションでしみじみ音楽を楽しむことにしよう。本機のような小出力のアンプは、その出力の小ささを嘆くより、できるだけ高能率のスピーカーと組み合わせるのがいちばんいいのではないかと思う。

アンプとスピーカーの幸福な組み合わせというものが確かに存在するのである。出力0.4Wなどというと話にならないという感じがしたけれど、HT82V739というパワーICは予想した以上に「使える」ものだった。ちょっとはまってしまいそうな小出力パワーICの世界だが、今度はD級アンプというものも作って聴いてみたいものだ。あれっ、かんじんの真空管アンプはいったいどうなってしまったのか……


≪ 0.4W電池式アンプ 製作編へ  6463シングル回路設計編へ ≫


【付記】
● 出力0.4Wなんて、という声がどこかから聞こえてきそうですが、実際に体験してみるとこれはこれでなかなかいけるじゃないかと思いました。乾電池とACアダプターの連携もうまくいき、どちらも運用できる状態です。もちろん乾電池は再充電可能の「エネループ」を採用しました。出力に限度があるので周囲に迷惑をかけず環境も配慮した、なかなか楽しいアンプができたのではないかと思います。

人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

 完成おめでとうございます。LED(昔ならパイロットランプです
か)の灯ったところがいいですね。

 なるほどノートパソコンと併用するのは使い道としては上々
ですね。ぼくはたまにヘッドフォンを使うんですけど、どうも疲
れていけません。

 お祝いにジンを一杯……もうおやりになりましたか?

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうですね、昔ならネオンブラケットなんかを使った
パイロットランプでしょうけど、このアンプは電池式なので、
LEDでなくてはいけません。

ネオンランプとLEDでは電流が一ケタ違います。
ふつう、真空管のアンプではあまり気にしないのですが、
電池式の場合は話が違うのです。

個人的な趣味としては、もう少しぼんやり光るものがいいのですが、
なかなか、思う通りの物は入手できない始末です。
ちょっと暗めのアンバーなんかが、本当はほしいんですけどね。

ジンを飲みました! ですがジンはもう底を尽きかけていて、
そろそろウィスキーに移行しようかな、なんて考えているところです。
日本のウィスキーを飲む、はずなのですが……

No title

記事を拝見しました
完成おめでとうございます
凄く綺麗な仕上がりで敬服致しました

基盤を裏返しての配線を間違えることは良くありますよね
私にも色々経験がありまして他人事には思えない…

しかし最近は塗装でハンマートーンなんて出来るんですね
ちょっとびっくりしました
色々な計測器などはハンマートーン仕上げの物が多いので、そんな雰囲気がとてもかっこ良いです

今晩は完成祝いにかこつけて竹鶴12年の封を切ろうかなと思ってます
飲みかけのボトルばかり増やすなと嫁に嫌みを言われるんでしょうけど…

Re:Noriさん

Noriさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
いやあどうにか一発で決められてホッとしています。
作ったけれど音が出なかったり、部品が壊れたりしたらめげますものね。

ハンマートーンの塗料はそんなにたくさんではありませんが、
出ているものも少しはあるようです。もちろん専門業者の本物の
ハンマートンにはかないませんよ。ハンマートーン風の仕上がり、なんですね。

乙山は測定器を持っていませんので、作って音が出たら
「わっ」とか「きゃっ」とか言ってそれでおしまいです。
本当にすごいのはきっちり測定している方たちでしょうね。

ぜひ〈竹鶴12年〉で楽しいひと時をお過ごしください!
竹鶴は本当にいいウィスキーですね。
乙山もとうとうネット通販でウィスキーを買いました。
近々(?)記事になるかもしれません。
祝いの御言葉、ありがとうございました。

No title

見事な仕上がりですね。
とてもマネができません。
昔、オーディオ評論家の江川三郎さんが、電池式小出力アンプでポータブルCDプレイヤーを鳴らし、素晴らしい音だと自賛していましたが、きっと良い音なんでしょうね。
完成おめでとうございました。

Re:パックさん

パックさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
まあ「良い音」というのは主観的なことですので、
それにかんして乙山の申し上げることは、あまりないのです。

ごく家庭的な、小さなレベルで「使える」と申し上げているので、
これを大きな会場に持っていくとか、試聴会に使うとなれば、
また話は別になってくると思います。

江川先生の仰っていたことは、乙山のレベルでは
よくわかりませんが、たぶん電源からの干渉(影響)を受けない、
バッテリーオペレーションの利点を述べておられたのではないかと想像します。

昔、テクニクスとか他のメーカーでも、バッテリー駆動のプリアンプなんてありましたよね。
あれも、電源由来のノイズに対して有利である、ということではないかと、今では思っています。
その意味では、今回の試みはまずまずのものではないかと思います。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/10 (6)

2017/09 (9)

2017/08 (8)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)