アジの干物

Aji_Hiraki.jpg
以前夏目漱石の「彼岸過迄」を読んだとき、アジの干物にかんして書いた箇所に当たって感心したように覚えている。漱石は食にかんする事柄をあまり書かない人のように思っていたからだろうか。これはおそらく漱石の胃病によるものではないかと想像するが、もし漱石が世の健啖家とか食通とか言われるようなタイプの人だったら、もう少し小説の中に食べ物にかんすることが書かれていたのかもしれない。少し引いておきましょう。

……彼女はその時偶然口に上った一塩にした小鯵の焼いたのを美味いと云ってしきりに賞めた。
(中略。ここでアジの干物に関する会話がある)
 こんなくだくだしい会話を、僕がなぜ覚えているかと云うと、僕はその時母の顔に表れた、さも満足らしい気持をよく注意して見ていたからであるが、もう一つは僕が母と同じように一塩の小鯵を好いていたからでもある。(ちくま文庫版『夏目漱石全集6』「彼岸過迄」〈須永の話〉19節)

そもそもアジの干物なんて、旅先の旅館とか民宿の朝食で食べた以外はほとんど食べた記憶がなく、ましてや自分でアジの干物を買って食べるなどということは絶えてなかったわけだから、ふだんの私(乙山)なら小説のそういう部分は素通りしてしまったと思うけれど、このたびそれが引っ掛かってきたのはおそらく「さかな作戦」を実行しているからであろう。

この間干しカレイを生まれて初めて買った、などと大袈裟に書いたけれども、じつはアジの干物もそうなのである。いかにふだんから魚を食べてこなかったかということなのだが、私のような人間はそんなに珍しいわけではないと思う。まあとにかくそんなわけで、例によって近所の寂れた小さなマーケットでアジの干物を買ってきた。

これをやはり例によってガスレンジ付属の魚焼きグリルで焼くのだが、3~4分間予熱をするのを忘れないようにしたい。グリルに油とか酢を塗っておくといい、などと言う人もあるようだが、面倒くさいのでそのようなことをしたことがない。多少グリルに魚の身が付着することもあるが、そんなひどいことにはならないように思う。開いた身を上にして約5分、裏返して約4分で焼き上がる。

熱々のアジの干物に大根おろしを添えて食べよう。塩味が付いているのでそのままでも食べられるし、別に大根おろしがなくてもおいしく食べられると思う。食べてみると、うむ、アジというのはイワシや秋刀魚のような背青の魚と、白身の魚のちょうど中間のような味わいである。なかなか乙な味ではないか。夏目漱石もたぶん、アジの一塩ものが好きだったのではないかな、などと想像しながら味わった。

ところでアジの干物は「日本の朝食の定番」などと言われることもあるようだが、これを本当に朝食で食べている家庭がどれだけあるのだろう。アジの干物にご飯、そして味噌汁があれば相当豊かな朝食ではないか。晩酌にアジの干物をつつきながらそんなことを考えているんだけど、かといって、アジの干物を夕食のメイン料理に、となるといささか役不足になるような気がしないでもない。これが秋刀魚だと夕食の主役たりえるのが不思議なところで、やはりアジは朝食に似合う魚ということになるんだろうか。


【付記】
● アジは朝食に似合う魚と書いたのですが、さて朝から自分でそれを焼いて食べるとなると、かなり面倒で億劫になってしまいます。手間を考えると想像するだに恐ろしく、とても実行する気にはなれません。朝食は朝食でも、やはり「旅館の朝食」の定番料理なのかもしれませんね。

● 先日某所で「アジのいいのが入っていますよ」と聞いて、どれどれ、と買ってみたのですがこれが大当たり。なるほどこれはいいわ、と食べながら感心してしまいました。アジの干物も、いいものに当たれば本当にびっくりするほどおいしいものですね。

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No title

>漱石が世の健啖家とか食通とか言われるようなタイプの人

食通かどうかは知らないんですが、漱石はかなり食い意地が張っていたようで・・・

伊豆修善寺での大患で大量喀血する前も卵かけご飯を何倍もおかわりしていたらしいですし、その大患の治療でお腹を温めるという治療のためにお腹の上に載せていたこんにゃくをちぎって食べて食べたりという噂だってある・・・

それに旧連雀町の洋食屋、松榮軒の洋風かき揚げなんてのも、そのはじまりには漱石が絡んでいるっていうし・・・

Re:gatayanさん

gatayanさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
漱石の「満韓ところどころ」などを読んでいても、夕食のお誘いがあったのに、
断った旨のことが書かれていて、そうかこれも胃病のためだろうか、などと思っていたのです。

漱石にかんする逸話などをあまり読んでいませんので、
その実像を、乙山はあまりというかほとんどわかっていないようです。
卵かけご飯を何杯も……なるほどねえ。
いやいや、その手の逸話をちょっと読んでみたくなりましたよ。

No title

「アジの干物」は言葉としては知ってましたが、実は一度も食べた事がありません。
「アジの干物」は本州のお魚というイメージです。
そうそう、小説に登場するお魚。
アジは調理法も分からないし、こちらでは割と高級だし、なかなか売ってませんね。
本州では、庶民の魚なのかしら?
今日は、なんだかとても新鮮な記事でした。

Re:かえるママ21さん

かえるママさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
えっ、本当ですか?
北海道には「アジの干物」は流通していないのか?

日本の朝食の定番、などといわれるアジなのですが、
今回のログは「朝食でアジの干物を食べている家庭は存在するのか」
というものでした。いや、本当に「朝食の定番」なのか、疑わしいものですね。

アジというのは、こちらではけっこう馴染みのある魚でして、
朝食で、アジの干物として食べないとしても、
「アジのフライ」などとしてけっこうランチメニューにもある魚です。

なのでこちらの感覚としては「いまさら」なのですが、
そちら(北海道)にはアジは流通していなかったのでしょうか。
ううむ……興味深いです。

No title

はじめまして。

あじの干物は、実家ではよく食べました。

我が家では、朝ごはんは和食にしますけど、
あじの干物は、骨があって、食べるのに時間がかかるからと
家族に不評で出しません。ちょっと懐かしい朝食ですね。

ごくたまに私があじの干物を食べたくなると、
夕食に焼いてみますけど・・・

あじも大きさによって、食感も変わって面白いですね。
朝食には小さ目、夕食には中~大の大きさがいいでしょうか?

世間ではあじの干物を食べる家庭も少ないのでしょうか?
日本の伝統料理(?)を味わうことも少なくなっているのかと思うと
残念ですね。

Re:りーさん

りーさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
アジの干物はやはり、ゆったりできる旅館の朝食向きでしょうか。
記憶をたどってみても、家の朝食でアジの干物を食べたのを思い出せません。

本当に、アジは大きさで変わってきますね。
ログの付記にも書いたんですが、つい最近「アジのいいのが入ってますよ」と
勧められたままに買ってみたんですが、本当にびっくり。
いいアジに当たると、幸せな気分になりますね。

アジの干物は「日本の朝の定番」などと言われるようですが、
本当だろうか、と疑いたくなりますね。乙山の私見では、
アジの干物を食べている家庭はそんなにあるとは思えません。
調べたわけではないのですが、なんとなく、そう思えてなりません。
今後ともよろしくお願いします。

No title

 アジの干物が北海道で食べられるようになったのは、比較的最近だろう
と思いますよ。全国展開しているスーパーの店頭に並ぶまでは、道民には
なじみがなかったですから。

 実際ぼくも学生時代に本州で食べたのが初体験です。

 このごろではわりと入手しやすくなりましたが、人気のほどはどうでしょうか、
あまり売れていないような気がしますね。

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
なるほど、北海道の方々のコメントから察するに、
北海道では「アジの干物」はそれほど流通していない、
ということでしょうね。

北海道でなじみのあるもの、たとえば「ホッケ」ですが、
これはすでに1980年代前半頃から「居酒屋メニュー」として
定着していたのではないかと思います。

なのにアジの干物が北海道では一般的ではない、と。
あれっ、どうしたのかなあ、と思ってしまいました。
アジの干物は、物にもよりますが、いいものは本当にいいのです。

あまり魚を食べてこなかった乙山でもそう思うのですから、
アジの干物は相当、いけるはずなんですけどね。
今度は「カマス」を買ってみようかな、とか。

^^

アジの干物~

自分は朝食というより。
昼食に~という認識があります。
それは漱石と同じく。
母がまだ健在だった頃の思い出があるからだと思います。

にしても・・あの頃。
毎朝何を食べてたんだろう・・・
味噌汁は常にあったにしても?

記憶が飛んでますわ^^;)/

Re:waravinoさん

waravinoさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
なるほど、アジはお昼に食べてもいいですね。
わりと大きなものなら晩御飯にでもいけそうですので、
アジの干物はもう「いつ食べてもよい」万能(?)メニューでしょうかね。

昔はもっと、魚の干物自体がたくさん食べられ、
流通していたのではないかと思います。
家で食べた魚としては、とにかく太刀魚を思い出します。
それ以外はどうしてか、記憶に残っていないんですね。
いや本当……なにを食べていたんだろうと乙山も思いました。

No title

こんばんは。
「アジの干物」の「本物」を食した経験がないため、どういうがいいのか(だじゃれじゃないですよ)分からない、というのが本音でしょうか。
例えスーパーで売ってても、調理に馴染みがないので、どうやって食べるの?と躊躇してしまうのですね。小骨の上手な取り方は?等など....
でも、こちらの記事を拝見して、ちょっと挑戦してみたい気持ちになってきました。

Re:かえるママ21さん

かえるマママさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
なるほど、北海道はアジは一般的ではないのですね。
釧路在住の方(薄氷堂さん)もそのように仰っていたので、
本当にそうなのでしょうね。

アジはね、そうですね、たとえてみると「ホッケ」でしょうか。
ですが、そちらの方はホッケとアジを食べ比べてみると、
なあんだ、ホッケのほうがおいしいじゃないか、となるかもしれないのです。

アジは、秋刀魚のような脂と臭いがあるわけではないが、
カレイのようにあっさり味ではありません。
ちょうど、背青の魚と、白身の魚の、中間くらいなのです。

ホッケは、そのあたりにあると思いますが、脂が乗っていて、
そんなに「魚臭い」感じのない、いい魚でしょう?
だから、アジは、ホッケに比べて見た場合、そんなにインパクトがある、
美味しい魚というイメージにはならないのではないか。

そのあたりが、人気の出ない一因ではないかと、
乙山などは推測しています。
せっかくですからアジを擁護しておきますと、
なかなか、いい味を出している魚なんですよ。

いちばん初めの、かんじんな時ですから、
いいものが当たるといいですね!

No title

ありゃ。鯵談義が盛り上がってますね。^^
あら。そうなんですか!北海道ではあまり鯵、見ないのですね!
九州でホッケになじみがないのと同じかなあ。
私は鯵、大好きです。
朝食にも時々は出しますよ~。朝は確かに、小ぶりのやつですね。
大きいのは確かに夜向き。
小田原の新鮮なのを買ってきてもらって食べた時は、ほっぺたが落ちるくらい
美味しい!と思いました……そのときは中くらいのサイズでした。
鯵はレモンの搾り汁をぎゅうっと思いきりかけて食べるのも美味しい。

鯵の開きもそんなふうでとても美味しいのですが、私は、新鮮なのが出回る
季節になると、生のを買ってきて、自分で塩をしてガスレンジのグリルでこんがり焼きます。
それにレモンや、カボスなどを、焼きたての熱々にじゅっと絞って食べると
もう最高ですよ!よく焼けば、普通人が気にする鯵の『ゼンゴ』という、あのうろこ、
それもパリパリ食べられちゃいます。大きい鯵のは無理ですけれどね。

小さな小さな鯵は、から揚げにして酢油ドレッシングにつけ込みます。
赤とんがらしを刻み入れて。そこにスライスした玉ねぎ、細切り人参、セロリの
薄切り、ピーマンなどを一緒につけ込んでも色どりが綺麗な洋風おかずになります。
これは長持ちするので、ご飯にパンにと重宝します。カルシウムもたっぷり。
鯵はフライも美味しいですぞ。^^これは開いたりするのが面倒なので、
私は買ってきて食べます。青しその葉っぱと重ねてフライにしたのが美味しい。
フライパンで一匹丸ごとムニエルにしてたっぷりのレモン汁、というのも美味しい。
鯵のお刺身もとっても美味しい。
鯵は、煮魚がだめなくらいで、その他はほんとに美味しい、庶民の魚です。

うん。触感はホッケに確かに似てますね。味も似てるかも。
小ぶりの鯵の開きは、とっても繊細な味ですぅ。
逆に私は、美味しいホッケを食べたことがないので、悲しいです。
北海道のひとに言わせると、東京で売っているホッケなんて、あれはホッケじゃない!
という…しくしく。 

Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうそう「遊歩者 只野乙山」、アジ談議に花が咲いておりますよ!
これもコメントをくださる皆さんのおかげ。
いやいや皆様、ありがとうございます。

札幌と釧路の方がそれぞれあまり見かけないとおっしゃっているので、
北海道にアジが出回っていないのは本当でしょう。
だけど意外ですね。あちらではアジが網にかからないのでしょう。
こっちの網にホッケがかからないようにね。

小田原のアジ。確かにおいしそうですね。
夏目漱石の引用部分は、たしか鎌倉での会話です。
鎌倉でも海辺の町ですからアジはおいしいはず。
東京暮らしの「母」が感心するのもうなずけます。

魚の内臓の処理が面倒で、生魚はまだ買っていません。
切り身にしたものだと、生魚でもいいでしょうけどね。
おっしゃるように、生魚に塩をして焼くのがいいですね。
干物とはまた違った味わいに違いありません。
乙山の「さかな作戦」におけるステージが上がったら、やってみようかな。

彼岸花さんのアジ料理、とても美味しそうです!
今そこでお書きになったことを、ウェブログにできそうです。
あえてそうなさらないところが、彼岸花さんなんですけど。
アジの刺身は、一度食べてみたいなあ。
こちらではあまり見かけませんね。

というか、乙山がいい店を知らないだけなのですが。
北海道でアジにいちばん近い魚は、たぶんホッケだと思うんです。
だけどホッケのほうが脂が乗っている感じがします。

だから北海道の方はホッケのほうが旨いと思うのではないか、
そんなふうに思うのですよ。しかもホッケは身がたいへん大きい!
乙山はどっちも好き、なんだか得な気分ですね。

No title

あら。自分の書いたもの読みなおしてたら、『ゼイゴ』のこと、『ゼンゴ』って
書いてありました。正しいのは『ゼイゴ』です!^^

漱石のこと書くの忘れてました。漱石は胃弱でしたが、食い意地ははっていたようです。^^
食パンにお砂糖を乗せて食べたりするの楽しんでいたみたい。う~!聞いただけで
胸やけがしそうですね!(笑)
白砂糖は当時まだぜいたく品の感覚だったんでしょうね。台所でこっそり一人
砂糖つぼを出して、そうやって食べているのを娘たちが見てあきれていた、というような
ことが書いてありました。
『猫』のワンシーンでしたっけ?それとも奥さんの夏目鏡子さんが書いた
エピソードだったかな。

その本には、私が大好きなシーンがあります。
あるとき、神戸の禅寺から、漱石に心酔している若いふたりの雲水さんが上京して来て
漱石の家に泊るんです。漱石のところには弟子たちがそれこそ入れ替わり
立ち替わり出入りしているんですが、彼らは先生にすっかり甘えていて、
それこそ虫がいいというか時にはずうずうしいところも見せる。
ところがその若い雲水さん達の極めて茫洋として悠揚迫らぬところが
漱石は至って気に入った。なにか御馳走しようと言うので、
帝劇で映画を見た後、洋食屋に連れて行ってビフテキを食べさせるんですね。
すると一人の雲水が、ナイフフォークに慣れないものだから、ビフテキを半分
テーブルの下に落しちゃったんです。普通ならボーイを読んで片付けさせるところ。
ところが彼は何気ない顔をして、それを拾い上げて食べ続けた…
漱石は自分の若い弟子たちとひき比べ、たいそう感心したそうです。

後に、漱石がいよいよ胃が悪くなって危篤に陥る。新聞にその報が載ります。
その雲水さん達はそのときちょうど8日間寝ずにする修行の最中。
8日目にそれが明けると、夜に一杯だけ甘酒が寺ではふるまわれる。
若い僧はそのために大きな鉢を買いに神戸の町に出て、新聞で漱石危篤の報を見た!
彼はボロボロ泣きながら大鉢を抱えたまま、神戸の町をところかまわず
歩き回ったということです。

漱石のエピソードの中で、私がすごく好きな話の一つです。

Re: 彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> あら。自分の書いたもの読みなおしてたら、『ゼイゴ』のこと、『ゼンゴ』って
> 書いてありました。正しいのは『ゼイゴ』です!^^

いやね、あれは「ぜんご」ともいうのか、なんて思っていましたよ!
乙山は漱石の全集を持っているだけで、漱石について書いた本を
ほとんど読んでいないため、漱石の身辺にまつわるエピソードをあまり知らないのです。
食い意地が張っていた、というのはだれもがおっしゃることのようですね。

なにしろ御汁粉を毎日食べるくらい甘いものが好きな人。
台所で砂糖を、というのはなんだかわかる気がしますが、
トーストに砂糖はちょっとね。
ハチミツはその頃なかったのかな、バタートーストに蜂蜜をつけるとおいしいのに。

漱石のもとには熊本の五高時代の教え子たちもやってくるようですし、
なにか慕われるものがあったんでしょうね。
禅寺の若い修行僧たちも、たぶん新聞で漱石を読んだのでしょうが、
それで漱石に会いに東京まで行くのがすごいですし、
彼らを泊めてやる漱石も懐が広い。

落として(落ちて)しまった食べ物をどうするか。
これは人それぞれ、いろいろあるでしょうが、家ではたぶん、
皆さん拾って食べているのではないですか。

どこかで読んだのですが、外国人の奥さんと結婚した方が、
そうして床に落ちてしまった食べ物を拾い上げ、
食べようとしたところ、外国人の奥さんは吃驚仰天、
「お母様はどういう教育をなさっていたのか、信じられない!」
と激怒した、ということです。

だって、もったいないじゃありませんか。
日本人の普通の感覚からすると、たぶんみんなそうするんです。
だけど、レストランではやっぱり、やってはいけませんね。
それを平然とするというのは、修行僧さんたちが無心というか、
邪気がないというか、そういうことだったと思うんです。
いいお話ですね。

No title

トーストに砂糖、じゃないんですよ。
そのままの食パンに砂糖を乗っけて食べる(笑)。
ああ、乙山さんはやはり私より新しい時代の方だなあ、とこういうところで
思います!(爆)
私は自分の子供時代のことを振り返ってこの感覚よくわかるんです。
食パンに砂糖。
トーストって、私の子供時代には。超ハイカラな食べ物だったような。
ジャムとかバターもうちには少なくともなかったなあ…
母は明治生まれの女でしたしね。
白砂糖も、私が幼かった戦後間もない頃は貴重品。代用砂糖としてサッカリン
などというものを使っていました。ところがそのサッカリン、発がん性が
あるということが後にわかり、日本もだいぶ豊かになって来ていたので、
徐々に白砂糖が当たり前になっていきました…。
それでも、まだ砂糖は貴重品、の感覚があったんでしょうね、
お砂糖をそのままなめたりすると、『そんなことすると虫(寄生虫)が湧くよ!』
と怒られたものです。きっと科学的なことなんかじゃない、脅しだったんでしょうが。^^

漱石は私よりはるかに古い明治のひと。でも彼は洋行もしていたし、
当時のひととしてはすこぶるつきのハイカラな生活者だったと思います。
その漱石が、ただの食パンにお砂糖を乗っけて食べる、というところに
なんとも言えぬ可笑しみがありますね。
『おい、ト―スト焼いてくれ。ジャム出してくれ』なんて、奥さんの鏡子さんに
言おうものなら、『胃が悪くてらっしゃるのに間食なんてとんでもありません!』
って、怒られるので、それで『こっそりお砂糖つぼ開けて食パンに』してたところを
娘たちに見られて告げ口されたのかも知れませんね。
あの謹厳な漱石が!と思うと愉快かつ、なぜかほろりとします。

床に落とした物を拾って食べようとしたら、外国人の奥さんに怒られた、
という方のお話、それ、面白いですね!
日本には『勿体ない』精神が当たり前のようにありますものね。^^
さすがにレストランでやる人はいないでしょうが。^^

Re: 彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。

> トーストに砂糖、じゃないんですよ。
> そのままの食パンに砂糖を乗っけて食べる(笑)。

そうでしょうね、この場合、そのほうが本当らしい。
「それから」に「焼き麺麭(たぶんトースト?)に乳酪(バター)を」という
くだりがあるので、漱石は日常的にトーストを食べていたのか、
と勝手に思い込んでしまったのかもしれませんね。

夜など、ちょっとお腹が空いたとき、台所で食パンを
食べようとするのですが、何かあれば、と思って
砂糖を乗せてというか付けて食べたのでしょうね。
たぶんジャムはその時なかったのかもしれません。

娘たちにその姿を見られた漱石は、やはり気まずい思いを
というか、格好悪いような、恥ずかしいような気分でしょう。
しまったなあ、という感じでしょうか。
そういう人間臭い部分が魅力なんだと思います。

乙山は東京オリンピックを知らない世代ですから、
給食でも粉ミルクではなく、瓶詰めの牛乳でした。
代用食品もほとんど見聞きしたことがないんです。
もう少し上の世代の人に粉ミルクの話を聞いて「えっ」となったくらいで。
恵まれた時代に生まれたわけなんでしょうね。

砂糖壺で思い出すのは狂言「ぶす」のこと。
師匠に決して舐めてはいけない、舐めると死んでしまう、と
釘を刺された壺。何が入っているのか、太郎冠者と二郎冠者は
蓋をあけて舐めるんですね。甘くておいしいものだから、
二人はすっかりなめ切ってしまうのです。

壺が空になっているのを見て激怒する師匠ですが、
二人は「勝手に舐めた罰として、これを舐めて死のうと思い……」
などと言うものですから師匠としてはそれ以上叱るわけにはいきません。

甘いものと言えば、カステラなどと共に日本に入ってきたこんぺいとう。
大名や豪商クラスの人しか食べられなかったそうですね。
戦国時代にはおそらく第一級の茶菓子として供されたのでしょう。

それから、伊藤整がコンデンス(ト)・ミルクを舐めるのを楽しみにしていた
という話もどこかで読んだことがあります。
甘いものが好きな人はうっとりするような話です。

甘いものを食べたから糖尿病になるわけではないと思いますが、
晩年の漱石は胃病に加えて痔、糖尿病にも悩まされたとあります。
食べ物に制限がかかるでしょうから、漱石としても辛かったんじゃないか、
そんなふうに想像します。美味しいものをたくさん食べたい、
というのは漱石に限らず、多くの人が願うことですものね。




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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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