ニール・ヤング 『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』

Neil Young / After The Gold Rush (1970)

NeilYoung_AfterTheGoldrush.jpg
1. Tell Me Why
2. After the Gold Rush
3. Only Love Can Break Your Heart
4. Southern Man
5. Till the Morning Comes
6. Oh, Lonesome Me
7. Don't Let It Bring You Down
8. Birds
9. When You Dance You Can Really Love
10. I Believe in You
11. Cripple Creek Ferry


1980年代に思春期を迎えた世代の人間にとってボブ・ディランがすでに伝説の人となっていたように、ニール・ヤングもそのように受け止められていた(と思う)。周囲を見回しても、ニール・ヤングを聴いているという者などいなかったし、あの「ウッドストック」(1969年の夏、アメリカのニューヨーク州で行われたロックを中心とする野外コンサート。延べ40~50万人とも言われる若者が集まった)に参加したミュージシャンなどを聴いている者もそれほどいなかったのではないかと思う。

そんな状況でもニール・ヤングの名前はどこからか伝わってきて、聞いたことはないけれど名前だけは知っているという状態だった。私(乙山)より何年か上の世代の人たちの中にはニール・ヤングの熱心なファンがいて、そういう人たちの発言や書いたものが、たとえば『ロッキング・オン』や『フールズ・メイト』などの音楽情報誌を通じて入ってきたわけで、ニール・ヤングはどうもすごいらしいぞ、くらいに思っていた。

ニール・ヤングの画像として、『トゥナイツ・ザ・ナイト』(1975)のジャケットに写っているサングラスに長髪の姿を何度か見かけたので、なんだかワイルドな感じだなあ、と思っていたのである。それでもニール・ヤングのCDはどういうわけか買う気にならず、2000年を過ぎてからようやく買ったのではないかと思う。伝説だけを聞いていて、勝手にイメージを膨らませていたニール・ヤング。さて聴いてみると……

「は?」である。本当にその時、力が抜けて椅子からずり落ちそうになってしまったのだ。いや、熱心なファンの人には申し訳なく、お叱りを受けるかもしれないが、あえて言わせてもらうとニール・ヤングのヴォーカルは「なさけない」のである。その容貌から野太いというか力強いヴォーカルを想像していたのに、スピーカーから再生されるその声は、フェイク・ヴォイスのような妙に甲高い、しかも力のない、もう「なさけない」としか形容しようのないものだった。

ニール・ヤングのヴォーカルをそんなふうに思うのは私だけだろうか。ロックシンガーというのは、たとえばブルース・スプリングスティーンとかU2のボノ、あるいはロッド・スチュワートとかブライアン・アダムスのようなヴォーカルであってほしい。聴いているうちに目を閉じて熱唱(絶唱)したくなるようなそれでなくてはいけないのである。なのに、ニール・ヤングときたら……これほど外見と声が一致しない(?)例も珍しいのではないか。

今これを書く折に改めて聴いてみると、やはり「がくっ」ときてしまうところもあるけれど、あのヴォーカルがたまらなくいいんだ、というファンがいるというのもなんだかわかる気がするようになってきた。線の細い声が、ロック調の(4)では悲痛な叫びとして、バラードでは切なくそして優しく、プラスの方向にうまく作用して響いてくるではないか。だからこそ「あのヴォーカルが好きなんだ」ということになるのだろう。

また決して流れるようにフレーズが続くのではなく、どこか不器用で力技で押し通したようなニール・ヤングのエレクトリック・ギターも、やはりニール・ヤングとしか言いようのない独特のものだ。どこか不器用で無骨だけれども一本筋が通っているのはサウンドだけでなく、彼の生き方そのものだと言える。ヴォーカルがどうのとか、そういう次元を超えたところで深い共感を与える何かを、ニール・ヤングは表現しているわけで、そこに人はたまらなく惹かれるのではないかと思う。


【付記】
● ソラリゼーションを用いたアルバムジャケットはなんだか不気味で、これもまたニール・ヤングの一面を表しているように思えます。どこか暗い面があって、そこに惹かれる男性がけっこういるのではないか。思春期のどうしようもなく鬱屈した時期に、これに出会ってしまっていたら、今とは全く違った受け止め方をしていたかもしれません。

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tag : ニール・ヤング

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No title

アルバムを全然知らないし、どういう人であるかもあまり知らない…
にも関わらず曲はいくつかバラバラに聴いたことがあり、
そして結構好きなんです。

声…確かに。ロッカーとしては、なよっとしてますよね。
でも不思議にあまり気にならなくって。
曲が、メロディが好きなんだと思います。ギターも個人的に気持ちいいフレーズをぐいぐい使ってくれる感じで。

ちなみに私、ボブ・ディランの良さが全然わかりません。

Re:RSさん

RSさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
乙山もリアルタイムでファンになったわけではないので、
ニール・ヤングのことはそれほど思い入れがあるわけではないのです。

だけどこの人を好きになるのはやはり男でしょうね。
女性でニール・ヤングが好き、という人をあまり(ほとんど/まったく)知りません。
あの情けなさ、そして暗い影が差すあたりが、それなのかな、と。

ボブ・ディランの良さがわからなくても、いいんじゃないですか?
だけどそれと知らずにボブ・ディラン経由の曲を聴いているかも。
誰かが歌っている曲を「いいな」と思っても、
それを作った(歌った)のがディランとは知らないこともあるかもしれませんね。

Neil Young好きな女ですみません

初めまして。私はNeil Youngの歌声が好きでファンになった40代女です。90年代「ハーヴェスト・ムーン」の頃来日公演にも行きましたよ。
ちなみに彼を聴いたキッカケはTelevisionのヴォーカルTom Verlaineが好きだったからです。Tomもハイトーンで音程が不安定な、いわゆるヘタウマヴォーカルでした。その後イギリスのネオサイケと呼ばれたEcho & The Bunnymenあたりも同系だと思いますし、下の世代だとSonic Youthとかグランジの影響でNeil Youngに辿りついたファンもいたりしますので、女性ファンは決して少なくないと思います。
ところで、私が一番好きな曲はTime Fades Awayです。CDはプレミアついてて入手困難ですが、YouTubeで聴けます。
長々と失礼しました。

Re:yuccalinaさん

yuccalinaさん、はじめまして! コメントありがとうございます。
いやあ、うっかりしてましたね!
ニール・ヤングを聴いたとき、これは男性が好みそうな歌だな、
と直感的に思ってしまったのです。
本当、うっかりしすぎですね。

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只野乙山

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