スクリッティ・ポリッティ 『キューピッド&サイケ85』

Scritti Politti / Cupid & Psyche 85 (1985)

ScrittiPolitti_CupidPsyche85.jpg
1. The Word Girl
2. Small Talk
3. Absolute
4. A Little Knowledge
5. Don't Work That Hard
6. Perfect Way
7. Lover To Fall
8. Wood Beez
9. Hypnotize
10. Flesh & Blood
11. Absolute (Version)
12. Wood Beez (Version)
13. Hypnotize (Version)


デヴィッド・シルヴィアンを取り上げたのなら、これを忘れてはいかんでしょう、ということでスクリッティ・ポリッティの『キューピッド&サイケ85』(1985)である。スクリッティ・ポリッティはグリーン・ガートサイドという人の音楽ユニットというかソロ・プロジェクト・バンドのようなもので、1982年に『ソングズ・トゥ・リメンバー』でデビューしており、これは以前記事にしている(『ソングズ・トゥ・リメンバー』の記事へ≫)。

で、なんでそれがデヴィッド・シルヴィアンと関係があるのかといえば、グリーン・ガートサイドがシルヴィアンに負けず劣らずの男前なんである。シルヴィアンはポスト・グラムロックとでも言えばいいのか、デヴィッド・ボウイとかロキシー・ミュージック的な外見をしながら内省的な精神性へ沈潜(志向)していったのに対して、ガートサイドはポスト・パンク世代らしくスタイル・カウンシルのようなスタンスでレゲエやジャズも取り入れ、ファンク(ブラック・ミュージック)に傾倒していたと言える。

ScrittiPolitti_Portrait.jpgシルヴィアンはJapanで活躍していたころから日本で熱狂的に迎え入れられ、若い女性ファンを獲得したけれど、ガートサイドは大々的な日本ツアーなどをしなかったせいか、さほど騒がれはしなかったのではないかと思う。しかしそのルックスからコアな女性ファンが必ず、少なからず存在するのではないかと想像する。CD付属のブックレットの写真を載せておきますが、鏡に映っている真ん中の男性がグリーン・ガートサイドその人です。ね、なんとなくわかるでしょう?

私(乙山)もスクリッティ・ポリッティのことは全然知らなくて、中古レコード店で『ソングズ・トゥ・リメンバー』のシンプルなジャケットに惹かれて買ったものの、変なサウンドだったからその店でもう一度売ろうとしたら拒否されたくらいなのだ。これも何かの縁だろうな、と何度か聴いているうちにスクリッティ・ポリッティの良さが少しずつ染み込んでいき、今では『ソングズ・トゥ・リメンバー』は愛聴盤といってもいいほどになっている。

グリーン・ガートサイドのヴォーカルはキーは高めなのだがフェイク(ファルセット)ヴォイスを多用しているためか芯のある力強いものではない。もしチェット・ベイカーがロック/ポップをやったらこうなるんじゃないか、などと思わせる中性的な雰囲気があって、それがあのルックスと相まってなんとも不思議な魅力を醸し出していたように思う。ヴォーカルでシルヴィアンと比べることにさほど意味があるとは思えないが、あえてすれば僅差でガートサイドの勝ち、なんてこれは冗談ですので念の為。

さて『キューピッド&サイケ85』はスクリッティ・ポリッティ2枚目のアルバムで、アコースティックな感じを残していた前作とは違ってシンセサイザーを多用し、スネアに残響を効かせた典型的な1980年代のサウンドという感じに仕上がっている。セルフ・プロデュースしている曲のほかにアメリカのアリフ・マーディンもプロデュースしている(3、5、8)ようだ。どんな人なのか気になったので検索をかけてみると、2006年に亡くなっているたいへん高名なプロデューサーのようだ。

プロデュースしたアーティストの名前を少し転記しておくとクィーン、ビージーズ、アレサ・フランクリン、チャカ・カーン、フィル・コリンズ、ホール&オーツ、デヴィッド・ボウイ、カルチャー・クラブ、アヴェレージ・ホワイト・バンド、MJQ、ジョージ・ベンソン、ノラ・ジョーンズなどとあり、(3、5、8)でドラムとクレジットされているスティーヴ・フェローンはアヴェレージ・ホワイト・バンド絡みだったのだろう。

かつて(相当昔だが)バンドの真似事をしていたとき、メンバーが揃って練習できない場合など、ドラムのパターンとキーボードでコードを付けた音源をテープに録音したものを渡してもらって、それに合わせてベースを弾いてみたりしたものだが、ちょうどあの頃ヤマハのシンセサイザーが出回って、それまでリズムボックスなどと呼んでいたものとはずいぶん違うんだなあ、と感心したのを覚えている。

それにしてもシンセサイザーと残響を効かせたスネアはたくさん使われ過ぎたように思える。なんだか1980年代という刻印がなされているようで、そこに時代性を強く感じてしまうのは私だけだろうか。『キューピッド&サイケ85』はチャーミングでいいんだけど、個人的には前作の『ソングズ・トゥ・リメンバー』のほうが好みかもしれない。つかみどころのないファンキーなポップとでも言うべきスクリッティ・ポリッティの魅力が、いささか後退しているように感じてしまうのもやはり私だけなんだろうか。


【付記】
● 『キューピッド&サイケ85』はもう少し聞きこんだ方がいいのかもしれませんね。そうすると、また印象も変わるかもしれません。『ソングズ・トゥ・リメンバー』がそうだったように。

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tag : スクリッティ・ポリッティ

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ここにいます

グリーンのファンが。
デビシルには全く興味なく、キューピッド&サイケは聞き倒してました。
たまらん声です(^^)

乙山さんはプリファブスプラウトは聴かれないんですか?私の最も愛するアーティストなので、ちょっと尋ねてみたく…

Re:白プードルとお散歩さん

白プードルとお散歩さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
お久しぶりですね。お元気でしたか?

そうでしょうね、やはりグリーン・ガートサイド(スクリッティ・ポリッティ)の
ファンがいらっしゃるのではないかと、思っていました。
グリーンのファンは、シルヴィアンのファンとはちょっと違うぞ、なんてね。
個人的にはスクリッティ・ポリッティのサウンドのほうが好き、かも。
スクリッティ・ポリッティは、シンプルなのがいいですね。
乙山はね、どっちも好きなんですよ。

プリファブ・スプラウト! ああ、『スティーヴ・マックイーン』とかね。
もちろん、そのうち、ですよ!
乙山は1980年代の音楽に背を向けていた、なんて書いてますけど、
カーズとかREM、スミス、プリファブ・スプラウトとか、
自分が思っている以上に、1980年代の音楽は豊かだったのかもしれませんね。

面白いですね

私はこうしてブログを読ませて頂いているので、乙山さんの消息(?)をなんとなく知っている気がしていますが、そういえば乙山さんからはお久しぶりなのですね。
お陰様で白プードルと元気にお散歩しております(^^)

はい、JAPANを毛嫌いといいますか、仰るとおり、私は違うぞ!と思っておりました(笑)
実は今回、この記事を読んで初めてまともにデビット・シルヴィアンを聴いたのです。それで、あらいいじゃない…って(^^;;
教えて頂いてありがとうございます。

1980年代の辺り、語ってください。私の中では美しくも素晴らしい…と相当美化されてしまっております。是非、乙山さんのご意見も伺いたいなぁ。トーマス・ドルビーやらXTCを聴いてたので、80年代だけって訳でもないのですけどね。

Re:白プードルとお散歩さん

白プードルとお散歩さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
FC2ブログの方々は「訪問者履歴」という機能があるので、
来て下さったとわかるのですが、FC2以外の方々は、
コメントを残してくださった場合だけわかるんです。
なので「お久しぶり」ということになるんですね。

デヴィッド・シルヴィアン、なかなかいいでしょう?
シルヴィアンはインストゥルメンタル志向で、小難しい音楽が好きな人に
受ける音楽をやっているわけでして、プログレ好きの人も
ロバート・フリップ絡みでわりと聴いているんじゃないかと思います。
だから意外と熱心な男性ファンも多いんですよ。

反コマーシャリズムというか、玄人受けするというか、そんなサウンドなので、
いくらルックスがいいからといって、女の子たちがああいうサウンドで
あそこまで盛り上がることができるというのが不思議なんですね。

ロックなら1960~70年代、ジャズなら1930~50年代が大好きなので、
1980年代の音楽はだいぶ後回しになるかもしれませんけど……
ふっとその気になったら、書いてみると思います。
ダイアー・ストレーツ(マーク・ノップラー)なんかもいいですしね。

アンディ・パートリッジ(XTC)って、いい人に違いないですよねえ。
それにしてもXTCは渋い……あれも玄人筋が好む感じですね。


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只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

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