デヴィッド・シルヴィアン 『ブリリアント・トゥリーズ』

David Sylvian / Brilliant Trees (1984)

DavidSylvian_BrilliantTrees.jpg
1. Pulling Punches
2. The Ink In The Well
3. Nostalgia
4. Red Guitar
5. Weathered Wall
6. Backwaters
7. Brilliant Trees


デヴィッド・シルヴィアンという人をいつごろ知ったのかもう定かではないが、彼がJapanというロックバンドで活動していたことや、Japanが日本でたいへん人気を博したということは知っていた。当時日本での熱狂ぶりは相当なものだったようだし、坂本龍一とのセッションやJapanのツアーに日本人ギタリスト土屋昌巳が参加したことなどからメディアに登場することも多かったのではないかと思う。

当時(1970年代の終わり頃)日本で熱狂したのは若い女の子たちだったようで、彼女たちはどうもJapanの音楽というよりはデヴィッド・シルヴィアンのルックスに惹かれて騒いでいたように見えた。ただでさえ流行ものはとりあえずパス、という姿勢をとっていたのに加え、女の子たちが熱中することに対する個人的なやっかみもあって(苦笑するしかない)か、Japanとデヴィッド・シルヴィアンを避けるようにしていた。

そんなわけで長らくJapanとデヴィッド・シルヴィアンは、名前だけは知っているけれど聞いたことがない人たちの中に入っていたのだが、キング・クリムゾンのロバート・フリップと仕事をしていてそれがなかなかいいようだし(といっても1992~3年頃の話ですが)、もうそろそろ聴いてみてもいいじゃないか、ということで数年前にようやく、例によって「マルチバイ特価」とやらで他のCDといっしょにデヴィッド・シルヴィアンの『ブリリアント・トゥリーズ』(1984)と、Japanの『ティン・ドラム』(1981)を購入した。

『ブリリアント・トゥリーズ』はJapan解散後に発表されたデヴィッド・シルヴィアンのソロ一枚目。クレジットを見るとスティーヴ・ジャンセン(ds, per)とリチャード・バルビエリ(g)のJapan勢に加え、坂本龍一(kd, syn)、ホルガー・シューカイ(ドイツのロックバンド、Canの人)、ブライアン・イーノやトーキング・ヘッズとの仕事で知られ、エフェクトをかけてちょっとくぐもったような不思議なトランペットの音を出すジョン・ハッセル(tp)などで録音されている。

全体を通して感じるのはビートがひねくれていてノリが発生しにくいことだろうか。なんでこんな複雑なリズムパターンにするんだろう、と首をかしげたくなるのだが、聴いているうちにこれがだんだん気持ちよくなってくるのが不思議だ。(2)などはデイヴ・ブルーベック・カルテットの「テイク・ファイブ」とかジョン・コルトレーンの「マイ・フェイヴァリット・シングズ」を思わせるビート。とにかくロック的ノリが生まれるような明快でシンプルなビートは意識的に避けているのではないかと思う。

デヴィッド・シルヴィアンのヴォーカルは、極端に体調が悪い時のデヴィッド・ボウイ(失礼)のようで、ちょっと力のない(というか頼りない)バリトン・ヴォイス。もともとJapanでもヴォーカルはミック・カーンが担当する予定だったが、どうしてもできないということで仕方なくデヴィッド・シルヴィアンが歌うようになったのだという。デヴィッド・シルヴィアンも自身のヴォーカルには不満足なようで、インストゥルメンタル志向の曲作りが多いのもそれを語っているのではなかろうか。

ちょっとひねくれたエレクトロニック・ポップということになるのだろうけど、いかにも1980年代的なものを感じさせるわけではなくて、不思議と古さを感じさせない仕上がりになっていて、何度も繰り返して聴くに堪えるというか、むしろ繰り返して聴きたくなる味わいがあるように思う。それこそがデヴィッド・シルヴィアンの持ち味というべきもので、ちょっとヴォーカルを聴いて駄目だししたり、女の子に騒がれているからといって何も毛嫌いしたりすることはなかったんじゃないか、と改めて思った次第である。


【付記】
● もはや「愛聴盤」の域になってしまったかも知れぬ『ブリリアント・トゥリーズ』なので、これからはデヴィッド・シルヴィアンの隠れファンとしてひっそり聴いていこうと思っています。かりに自分はデヴィッド・シルヴィアンの大ファンなんだ、と公言しても誰も何も言わないと思いますが、なぜかどこか引っかかるものがあるんですよね。

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tag : デヴィッド・シルヴィアン

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No title

乙さん、これはなつかしすぎです。
いつもありがとう、
元気になったらまた来ます。

ほーぼー

Re:HOBOさん

HOBOさん、こんにちは! コメントありがとうございます。
そうですね、もう28年も前のアルバムですからね。
だけど乙山にとって1980年代というのは、今と地続きのような感じです。
だからそれほどは懐かしい感じがしません。
1980年代以前の事物に、何か懐かしさを感じるんです。

HOBOさん、元気になってくださいね!
フォルクスワーゲン・ビートルも、
JBLのC38も、待っているんですからね!

No title

これまた名前だけで実際に聴いたことの無い一つですね。

>不思議と古さを感じさせない仕上がりになっていて、
>何度も繰り返して聴くに堪えるというか、

ふむふむふむ。これは面白いですねえ。
言葉が悪いですけど「イロモノ」的なイメージのある人ですが、
ロック史に残ることはあるのかもしれませんね。

Re:RSさん

RSさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
名前は知っているが聴いたことはない、
これは1960~70年代に多いですね。
しかも、1980年代には背を向けがちだった乙山ですので、
1980年代の音源もあまり知らないのです。

イロモノというか、キワモノとしても見られていたんじゃないかと。
熱狂的に迎えられる一方で、酷評する人たちも多かったはず。
そうした中をくぐりぬけて今日に残っているのです。
賛否両論あるでしょうが、あらてめて聴いてみて、
けっこういけるんじゃないかと思っています。
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只野乙山

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⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

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