『レベッカ』 (1940)

『レベッカ』 アメリカ (1940)

Rebecca_01.jpg
原題:Rebecca
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ローレンス・オリヴィエ、ジョーン・フォンテイン、ジョージ・サンダース、ジュディス・アンダーソンほか


アルフレッド・ヒッチコック監督『レベッカ』(1940)は、もう十数年も前にレンタル店で借りて見た記憶がある。その頃はまだレンタル店でもVHSテープを扱っていて、見終わった後はちゃんとテープを巻き戻して返却するのが礼儀だった。そのまま返そうものなら店員に「次回からは巻き戻しをお願いします」などとたしなめられたものだった。

記憶はかなり曖昧だが、当時(1980年代後半)はまだパブリック・ドメイン作品を扱った廉価版VHSなど出回っていなかったのではないか。やはりそれらはVHSからDVDへ移行した後に出回ったように思う。いつの間にやらなぜか廉価なDVDなんかが出回っているのを見て、なにやら怪しい海賊版(盤)のようないかがわしい印象を持ったものだった。パブリック・ドメインなんてのを知ったのはずっと後になってからの話である。

Rebecca_03.jpgさて『レベッカ』はヒッチコック渡米第一番目の映画で、ダフネ・デュ・モーリアという人の原作を映画化したものだという。映画はマンダレー屋敷での出来事を「わたし」(ジョーン・フォンテイン)が回想するという形式になっていて、そういえば映画の中でも「わたし」に呼びかけるときには「ダーリン」とか「ハニー」などと言って一度も名前が出てこなかったようである。

ヴァン・ホッパー夫人の付き人として働く「わたし」は南仏モンテカルロのホテルでイギリスの富豪マキシミリアン・ド・ウィンター(マキシム、マックス:ローレンス・オリヴィエ)と出会い、ほどなくして恋に落ち、マキシムのプロポーズを受け、二人は結婚した。そしてイギリスはコーンウォールのマンダレー屋敷にド・ウィンター夫人として住むことになるのだが、屋敷の大きさや住み込みの使用人の多さに驚くばかり。

そのうえ、海難事故で前妻レベッカを亡くしたことは聞き及んでいたものの、屋敷の中はレベッカが生きていたときと同じように、そっくりそのままレベッカの遺品が残されていた。それはレベッカと共にマンダレー屋敷にやってきたダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)の意思によるものらしく、新参者の「わたし」にダンヴァース夫人はよそよそしく冷たい慇懃無礼な態度をとり続ける。

Rebecca_04.jpgそれにもめげず、なんとか明るく元気にふるまおうとする「わたし」(ジョーン・フォンテイン)は見ていて本当に可憐ですね。きゅっと締まったハイウェストにAラインが美しい、典型的なお嬢様スタイルがじつに似合っています。階段なんかを上り下りするときに、すっとロングスカートを持ち上げないといけないのですが、その仕草がまたエレガントなんです。

それにしても怖いのはダンヴァース夫人。マックスが嫌がるのを知っていて、なにも知らない「わたし」に舞踏会の服にレベッカと同じものを用意させ、激昂したマックスを見て悲嘆にくれるヒロインのそばにすっと現れ(いや、本当にすっと現れるんです)、ここから出ていくがいい、しょせんお前の出る幕ではない、ここから飛び降りると楽になれる、さあ、と窓際で迫るのだ。

すんでのところで船が海岸ちかくで座礁するという騒ぎが起きて「わたし」は我に返るのだが、同時に引き上げられたボートには女性の遺体もあって、なんとそれがどうやらレベッカのようだというので人々は騒然となった。なぜなら、レベッカの遺体は遠く離れた海岸で発見され、マックスはそれをレベッカに間違いないと確認したからだった。

Rebecca_05.jpg思い込み、すれ違い、そしてどんでん返し。一度も画面に出てこないけれど、見る者はレベッカという女性に思いをはせ、気配を感じ、そして彼女の意外な面に驚かされるだろう。そして最後の最後で、もうひとひねり、あるのです。それでいったいレベッカってどんな女性なのか、と問われても、答えはたぶん藪の中、というしかありません。


【付記】
● いやあ、たっぷり130分間、楽しませてもらいました。前に見たことがあるはずなのですが、もう一度見てもいい映画ですね。今回、ヒッチコックはどこに登場したのか、うっかり見逃してしまいました。今度見るときは必ず、チェックしようと思うのですが……


人気ブログランキングへ blogram投票ボタン
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

ジョーン・フォンティーン美しいですね

こんにちは。
「レベッカ」はその昔デュ・モーリアの原作を面白く読み、
映画も教育TVで放映されたのをVHSに録って観たのですが、
細かいところは忘れていますね。
機会があればもう一度観てみます。
でもジョーン・フォンティーンの清楚で可憐な美しさはとても印象的でした。

Re:木曽のあばら屋さん

木曽のあばら屋さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
ダフネ・デュ・モーリアの原作、乙山はまだ読んでいません!
これは読まないと……なんだかとても良さそうな感じです。

木曽さんのおっしゃるように、ジョーン・フォンテインの可憐な感じ、いいですよね。
彼女の実像は知りませんが、ここではいいところが十全に映し出されていた
ような感じがしますね。これだけ見ると、なぜオードリーのように評価されなかったのか、
不思議な感じがします。それほどいい感じに思えました。

No title

 『レベッカ』はずいぶん以前に原作を読みました。邦訳は新潮文庫を
持っていましたが、残念ながらまちがいだらけのお粗末な翻訳だったの
で、途中で癇癪を起こして捨ててしてしまいました。とてもおもしろい小
説ですから、別のいい翻訳書が出ていればいいのですが。

 映画もNHKで放映されたときに見ましたよ。DVDを入手したので、そ
のうちにゆっくり鑑賞したいと思っています。ヒッチコック登場の場面、
なんとかみつけたいですね。

Re:薄氷堂さん

薄氷堂さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ううむ『レベッカ』の原作をしっかり読んでいらっしゃる人は多いようですね。
乙山は不勉強ながらまだ読んでおりません。

ちょっと調べてみると、新潮文庫からは新版と旧版があるようで、
翻訳者が違うようですね。薄氷堂さんが失望なさったのはおそらく
旧版のほうだと思われますので、入手するなら新版にしてみます。

乙山は例によってパブリック・ドメインものを入手しました。
正規版(?)だと画質もいいのでしょうかね。
ノート型パソコンで再生すると、意外に音がうるさいのが難点です。

No title

『レベッカ』…ゴシックノベルの傑作ですね。
ヒッチコックの『鳥』の原作も、このダフネ・デュ・モーリアですよね。
私、大好きな小説で、シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』と
並んで勝るともおとらない名作だと思います。
たぶん私は、そのまずい翻訳の方で、読んでいると思います(笑)。

映画は、その原作を見事に映像化して、私も大好きな作品の一つです。
ローレンス・オリビエもジョーン・フォンティンも好きだし。
ジョーン・フォンティンは『忘れじの面影』というのにも出ていて、
これももう、泣けます!廉価版で見ることが出来ます。
ゴシック・ノベルではない、純粋な恋物語です。
ジョーン・フォンティンはまた、今言った『ジェーン・エア』にも主演しています。
相手役は、かの『市民ケーン』のオーソン・ウエルズで、これはもう、
原作の『ジェーン・エア』のロチェスター卿の私にとってのイメージ
ぴったりで、泣けました。

ゴシック・ノベルの傑作と言えば、シャーロット・ブロンテの妹、エミリ・ブロンテの
『嵐が丘』は大傑作ですね。行くたびか映画化されていますが、私は
ローレンス・オリビエの主演のものが一番好きです。
これらのどれもが、今では廉価版で再び見ることが出来て、私のようにその時代に
映画館で見ることのできなかった者には大助かりです。^^

欧米には、貧しい娘が(大金持ちの)お屋敷に引き取られて、そこで幸せになる
という、こういった筋立ての名作が数々ありますね。
『赤毛のアン』『秘密の花園』『あしながおじさん』…
家政婦や家庭教師、養女…こういった文化が当たり前のように歴史的に
あるからでしょうね。

私も、もう一度、『レベッカ』見たくなりました♪
あ。あと、『ジェーン・エア』は新しく映画化されて、6月に全国で封切りされます。

…いつも乙山さんに教えていただいてばかりですが、 たまにはこうして、
それについて語れる話題がありました!(大爆笑)
いつもありがとうございます。


Re:彼岸花さん

彼岸花さん、こんにちは! コメントありがとうございます。
ヒッチコックの有名な『鳥』もダフネ・デュ・モーリアの作だと
調べていてわかった次第です。本当だ、という感じですね。

ヒッチコックの『鳥』は、また別の機会に譲らないといけないとして、
ゴシック・ノベルをしっかり読んでいるわけではない乙山としては、
勉強になることが多いです。

ブロンテ姉妹のこともそうですが、
どちらもしっかり見た、とか読んだ、というわけではないのが本当のところ。
『ジェーン・エア』にしても『ウェザリング・ハイツ』にしても、
読んでおかないと、というくらい有名な作品ですよね。

そうですね、思い出してみれば、
いわゆる「シンデレラ・ストーリー」のようなものが西洋には多いですね。
『マイ・フェア・レディ』もそうではないかと思うのです。
とすれば『ローマの休日』は逆ヴァージョン、というわけでしょうか。

ジョーン・フォンテインといえば、ヒッチコックの『断崖』にも出ていましたね。
『断崖』についても、そのうち書こうと思っているのです。
『裏窓』にしてもそうですが、ヒロインがもう……
このあたりは、乙山も大好きでしょうがないのです。

「教えて」、なんてとんでもないことです。
ジャズ関係とか、ロックのアンダーグラウンド的なものとか、
そういうのは、乙山も「知っていた」わけではなくて、
どこかで、だれかに教えてもらった、あるいは知ったものを、
すかして書いているだけなんです。


ヒッチコック

そういえばレベッカ、ちゃんと観たことなかったな、と借りてくる気になりました。TSUTAYAが旧作100円セールしてますし(笑)
ヒッチコックは意外と観てないかも(^^;;サイコはアンソニーパーキンスのファンだったのでビデオで持ってますが、デッキが無くて既に観れません…

ポールウェラーはジャムの頃にファンレターを出した位好きでした。なので、乙山さんのこのブログは色々とツボです(^^)

Re:白プードルとお散歩さん

白プードルとお散歩さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうそう、乙山も21時過ぎに「新装」とやらを打ち出している、
池田の駅前スーパーマーケットに行ってきましたよ。
仕事帰りだったんですね。例の「100円レンタル」とかをやっていましたね。

『レベッカ』、なかなかいい映画でした、お楽しみいただけると幸いです。
VHSのテープを持っていらっしゃる方は、再生に苦労なさるでしょうね。
そもそも、それを再生できる機械自体が、ほとんどないのです。
とりあえず、というのならあるかもしれませんが、ステレオハイファイでの再生は
苦しいかもしれません。そういう機種が、本当に、店頭にはないのですからね。

ポール・ウェラーにファンレターを……
乙山はずいぶん失礼なことを書いたかもしれません。
それにしてもあの当時(っていったいいつ?)、ザ・ジャムを聴いている人たちって、
相当音楽に詳しい人たちだったように思うのです。
白プードルとお散歩さんに脱帽ですよ。
プロフィール

只野乙山

Author:只野乙山

⚫︎ できれば「只野乙山=ただのおつざん」とお読みくだされば、と思います。

⚫︎ 文字中心のウェブログ。ほとんど一話完結で、どの記事をご覧になっても楽しめ(?)ます。文字数だけなら一冊の本に匹敵(凌駕?)するほどありますので、ごゆっくりどうぞ。

⚫︎ 下の「全ての記事を表示する」をクリックすると、全記事のタイトル一覧が出ますので過去記事を参照することができます。

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント

openclose

最新トラックバック
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アーカイヴ

2017/08 (6)

2017/07 (9)

2017/06 (9)

2017/05 (9)

2017/04 (8)

2017/03 (9)

2017/02 (4)

2017/01 (1)

2016/06 (1)

2016/05 (13)

2016/04 (13)

2016/03 (20)

2016/02 (10)

2016/01 (11)

2015/12 (10)

2015/11 (10)

2015/10 (11)

2015/09 (13)

2015/08 (10)

2015/07 (11)

2015/06 (10)

2015/05 (10)

2015/04 (10)

2015/03 (11)

2015/02 (9)

2015/01 (11)

2014/12 (9)

2014/11 (10)

2014/10 (11)

2014/09 (10)

2014/08 (10)

2014/07 (10)

2014/06 (10)

2014/05 (11)

2014/04 (10)

2014/03 (10)

2014/02 (9)

2014/01 (11)

2013/12 (9)

2013/11 (10)

2013/10 (10)

2013/09 (10)

2013/08 (11)

2013/07 (10)

2013/06 (10)

2013/05 (10)

2013/04 (10)

2013/03 (11)

2013/02 (9)

2013/01 (11)

2012/12 (9)

2012/11 (10)

2012/10 (11)

2012/09 (10)

2012/08 (10)

2012/07 (10)

2012/06 (10)

2012/05 (11)

2012/04 (10)

2012/03 (10)

2012/02 (10)

2012/01 (9)

2011/12 (9)

2011/11 (10)

2011/10 (10)

2011/09 (10)

2011/08 (10)

2011/07 (9)

2011/06 (9)

2011/05 (10)

2011/04 (8)

2011/03 (8)

2011/02 (12)

2011/01 (12)

2010/12 (12)

2010/11 (13)

2010/10 (15)

2010/09 (15)

2010/08 (14)

2010/07 (16)

2010/06 (17)

2010/05 (21)

2010/04 (18)

2010/03 (20)

2010/02 (23)

2010/01 (27)

2009/12 (27)

2009/11 (27)

2009/10 (26)

2009/09 (24)

2009/08 (19)

2009/07 (21)

2009/06 (30)

2009/05 (26)