ジョン・レノン 『プラスティック・オノ・バンド』」

John Lennon / Plastic Ono Band (1970)

John_Lennon_PlasticOnoBand01.jpg
1. Mother
2. Hold On
3. I Found Out
4. Working Class Hero
5. Isolation
6. Remember
7. Love
8. Well Well Well
9. Look At Me
10. God
11. My Mummy's Dead
12. Power To The People (originally unreleased)
13. Do The Oz (originally unreleased)



ビートルズ解散後のジョン・レノンのソロアルバムで一番最初に聴いたのは二枚目の『イマジン』(1971)で、ジョンのソロ一枚目『プラスティック・オノ・バンド』(1970)はなぜか聴いていなかった。少し後になってそれを聴いたとき、一瞬、本当に言葉を失った。(1)は重たい鐘の音から始まり、いきなりシャウトするような鋭いジョンの声に驚くが、歌われている内容が衝撃的だった。

最後は「母さん行かないで/父さん戻ってきてよ」と繰り返し歌われるのだが、それが次第に叫び声のようなものになっていくに従って、もうまともに聴いていられなくなってしまったのだ。これは「自分のための歌」というより「自分自身の魂の叫びなんだ」と思ったのは、それがあまりにも自分の境遇とそっくりだったからだろう。いちばん最初に聴いたとき、そばにだれもいなくて本当によかったと今でも思う。

あまりに重たくて、『プラスティック・オノ・バンド』はあまり聴かれることがないままになっているんだけど、たまに取り出して(1)をスキップして聴くと、やはりすごいものがある。あのビートルズのジョン・レノンが、こんなに自分を曝け出してしまっていいんだろうか、と聴く人に衝撃を与えたものと思う。

アコースティック・ギター1本で歌われる(4)、そして独特の不安定な和声進行を見せる(5)など、たまらないですね。ビートルズ時代の「アクロス・ザ・ユニヴァース」とか「イマジン」、そして「ジェラス・ガイ」にしてもそうなんだけど、ジョン独特の和声進行っていうのがあって、それがなんか大好きなんである。

録音にはリンゴ・スター(ds)、「ゲットバック・セッション」でも参加していたビリー・プレストン(p, kd)、『リヴォルヴァー』(1966)のジャケットデザインをしたクラウス・ヴァーマン(b)、そして後にキング・クリムゾン加入のためにイエスを抜けたビル・ブラッフォードの後任としてイエスに参加するアラン・ホワイト(ds)らが参加している。

John_Lennon_PlasticOnoBand02.jpgプロデューサーは「ゲットバック・セッション」で大量に残された音源をまとめ上げて『レット・イット・ビー』(1970)として発表するのに尽力したフィル・スペクター。後に『レット・イット・ビー ネイキッド』が出るなど評価の良くないフィル・スペクターだが、ジョンは彼を高く買っていて、『イマジン』でもプロデュースを任せている。ここではストリングスを駆使したお得意のサウンドではなく、シンプルに仕上げている。

(10)はあまりにも有名な「……を信じない」というフレーズを繰り返す曲で、後の「イマジン」における無神論的リベラリズム(?)に通じる境地=心境を歌い上げている。ジャケットはイギリスかどこかの片田舎で大きな木にもたれたオノ・ヨーコにジョンがすっぽりと抱かれて、二人でのんびり空を見上げている写真だけど、これが本当にアルバムの中身をうまく表わしているように思える。


【付記】
● CD付属のブックレットにはジョン自筆の歌詞があります。「ゴッド」のところを見ると、例の〈i don't believe in〉の後に否定されるべき言葉が並んでいて、最後のほうにElvis, Dylan, Beatlesとあるのがわかります。


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tag : ジョン・レノン

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No title

思わず引越し後未整理(遅すぎ)のCDを漁って聴きかえしてしまいました・・・
めっちゃウイスキーが飲みたくなったのですがボトルを出すのをこらえた自分を
褒めてあげたいです(笑)(ジョンの声には朝まで飲ませる魔力がありますし)
私がビートルズ(ジョン)を聴くようになったのはかなり遅かったのでこのアルバムの
何曲かはどこかで聴いたことがあったのですが、それでもなお1曲目の出だしは
インパクトがありました・・・
あとWorking Class HeroとPower to The Peopleは未だに私のお気に入りです♪

Re:zumiさん

zumiさん、こんばんは! コメントありがとうございます。
個人的なことを書いてしまいましたが(いつもそうだけど?)、
あまりに重たくて書けないことって、あるものなんです。
その一つが、この『プラスティック・オノ・バンド』です。

何がどう重たいのかっていうのは、それぞれ個人的なことだと思いますが、
とにかく、これは乙山にとって非常に重たいアルバムなんですね。
重たさを感じられるかどうか、それがたいせつなのだと思うのです。

ついハードリカーを取り出して、というお気持ち、よくわかります。
危ないんですよ。これを聴くと、乙山も「やばい」のです。
だから"mohtder"はスキップして聴くようにしています。

鋭いジョンの声に驚くが

>シャウトするような鋭いジョンの声に驚くが、歌われている内容が衝撃的だった。

発売された1971年よりも
むしろ今日の世界へのメッセージがぴったりだと思います。
ジョンの世界観と先見力に圧倒されます。

Re:ミキタカ08さん

ミキタカ08さん、こんばんは! コメントありがとうございます。
そうですね、遠くへ届く言葉、というものが確かにあると思います。
ジョン・レノンとは少し違うかもしれませんが、
19世紀末に「おしまいの人間(der letzte Mensch)」をえがいたニーチェの言葉も
そのような遠くへ届く言葉ではないかと思います。
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只野乙山

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